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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
サースデイナイトマッチのT3リーグはまだ第2節。T2昇格を狙うFC町田ゼルビアユースと2年前に東京制覇を経験している都立三鷹中等の一戦は小野路公園グラウンドです。
昨シーズンは激戦の関東予選を勝ち抜いて堂々と夏の群馬へ乗り込むと、惜敗したものの名古屋グランパスU18と激闘を繰り広げ、モンテディオ山形ユースには2-1で競り勝って全国初勝利を経験。T4リーグでも7戦全勝で昇格を決めるなど、躍進の1年となったFC町田ゼルビアユース。今シーズンも新人戦で東京Vユースとドロー劇を演じるなど、今や間違いなく東京の2種年代の中でも確かな存在感が。既に終わっているクラブユース選手権1次予選も全勝で勝ち抜いており、来週から始まる決勝トーナメントに向けて弾みを付けたい90分間に臨みます。
強豪を次々となぎ倒して見事に東京制覇。全国の舞台では絶対的な優勝候補と称された東福岡に善戦しながら敗れたものの、冬の主役を張った一昨年度からの暗転。昨シーズンはT2リーグでまさかの全敗。各トーナメントコンペティションでもすべて初戦敗退という厳しい結果を突き付けられ、公式戦未勝利に終わってしまった都立三鷹中等。それでも「彼らは自分たちの力を知っていたので、全国に出たプライドや先輩たちの想いを引き継いで、弱くてもサッカーに込める気持ちは十分あったと思います」という佐々木雅規監督の言葉は、後輩たちも十分に理解済み。「勝てない中でどうやったら勝てるのかというのを凄く考えながら先輩たちはやってくれましたけど、『自分たちが付いていけなかったんじゃないか』『もっとできたんじゃないか』と凄く後悔している所はあるので、今年はその分も頑張りたいとみんなが思っていると思います」と話したのはキャプテンの芝﨑鉄平(3年・三鷹中等)。今シーズンは既にリーグ開幕戦で私立武蔵に2-0で勝利し、公式戦の連敗は23でストップ。リーグ連勝を手にするために、難敵相手の一戦へ挑みます。夜の小野路には町田のサポーターや両チームの保護者の皆さんも大集結。楽しみなナイトゲームは町田のキックオフでスタートしました。
いきなり町田が創り出した決定機は開始14秒。右サイドに開いた金子誠幸(3年・ランサメントFC)がクロスを送ると、10番を背負った青木義孝(3年・FC町田ゼルビアJY)は枠内シュート。ここは三鷹のGK齋藤想平(3年・三鷹中等)がファインセーブで掻き出したものの、セカンドチャンスで手にした歓喜。その直後の2分にCBの西前一輝(3年・FC町田ゼルビアJY)が右のハイサイドへフィードを落とし、走った金子の1対1は左のポストに跳ね返りましたが、こぼれ球を青木は難なくゴールネットへ送り届けます。電光石火の先制弾。町田が早くも1点のリードを手にしました。
「立ち上がりがいつも通り悪かったですね」と芝﨑も苦笑いした三鷹の反撃は、しかしすぐさま。4分に右サイドで獲得したCK。スポットに向かったCBの芝﨑が丁寧なキックを蹴り込むと、ファーサイドに潜った加地修大(2年・三鷹中等)は右足一閃。ボレーで叩いたボールは密集をすり抜け、ゴールネットへ突き刺さります。セットプレーから2年生のサイドハーフが大仕事。あっという間に両者の点差は霧散します。
揺れ動くスコアの乱気流。次のゴールは同点弾の8分後。佐々木そら(3年・ヴェルディSS AJUNT)の左CKがDFに弾き返されるシーンを経た12分、相手の浅いラインを見定めた青木は背後に絶妙のロブでラストパス。抜け出した金子はGKの位置を冷静に見極めながらループを選択。綺麗な軌道を描いたボールは、そのままゴールネットへ吸い込まれます。開始12分間で早くも3つ目のゴールが生まれ、再び町田が一歩前に出ました。
以降は町田にボールを動かす意識は見られるものの、「サイドバックからサイドハーフに入った所で取り切ろうという形を目指しているんですけど、今日は割と行けたのかなというのはありました」と芝﨑も話したように、辻良太朗(3年・三鷹中等)と泉舜大(3年・三鷹中等)の2トップが前から果敢に走った三鷹のプレスを受け、長いボールも徐々に増加。27分にこの日はボランチを任された、指揮官も「ボールを握れる子」と評する金山竜己(2年・FC町田ゼルビアJY)のスルーパスに青木が抜け出し掛けるも、芝﨑が決死のタックルで回避すると、岸本塁(3年・FC町田ゼルビアJY)のシュートはクロスバーの上へ。「相手の3列を見ながら、どこにフリーマンを創りながら、どこに供給していくかという判断が今日はあまりなかった」と竹中監督も話したように、攻撃のギアを上げ切れません。
30分は三鷹。ピッチ中央左、ゴールまで約25mの位置から芝﨑が直接狙ったFKは、カーブしながらわずかに枠の上へ。32分は町田。青木のパスを引き出した岸本が枠へ収めたシュートは、齋藤がきっちりファインセーブで阻止。33分も町田。ここもキッカーを任された佐々木が左からCKを蹴り込むも、DFが確実にクリア。変わらない双方の"数字"。
この膠着に近い状況を打破したのは、「点を取るという所で本人に自我が芽生えてくれている」と竹中監督も認めるストライカー。38分に石田和成(2年・FC町田ゼルビアJY)がややアバウトなフィードを蹴り込むと、受けた青木は2枚のマーカーをドリブルで外しつつ、左に流れながら前に出たGKを見極めて左足でフィニッシュ。ボールは左スミのゴールネットへ吸い込まれます。これで10番は前半だけでドッピエッタ。町田が点差を2点に広げて、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートから三鷹に勢いが。47分と50分に続けて芝﨑が左から蹴ったFKはシュートに繋がらなかったものの、浦和史哉(2年・三鷹中等)と加地の左右を入れ替えた両サイドハーフにもボールが収まり始め、吉田凌(3年・三鷹中等)と奥村耕成(2年・三鷹中等)のドイスボランチもセカンドボールへの反応が鋭くなり、攻撃の形の一歩手前までは雰囲気が出てきます。
58分は町田。金山が左へ振り分けたボールを青木が中へ折り返すと、岸本のシュートはわずかにゴール右へ。63分は三鷹。右サイドバックに入った神原大槻(3年・三鷹F.A.)の突破で獲得したCKを、右から芝﨑が蹴り込んだキックはそのままゴールキックに、64分は町田。重山の丁寧なクロスに岸本が頭で合わせたシュートは枠の左へ。65分も町田。佐々木の右CKを高い打点で叩いた西前のヘディングは枠の左へ。押し返す町田。差し込まれ始めた三鷹。
切り合ったベンチのカード。66分は町田に1人目の交替。佐々木に替えてルーキーの大塚拓哉(1年・横浜FC JY)を送り込み、サイドの推進力アップに着手。69分に金山の右CKから青木が枠の左へ外したヘディングを挟んで、69分には三鷹にも1人目の交替が。吉田を下げて早見俊紀(3年・三鷹中等)を投入し、辻は奥村と並ぶドイスボランチの一角へスライドし、早見は右サイドハーフに入って整えた反撃態勢。さらに76分には町田も岸本と谷口幸太(2年・FC町田ゼルビアJY)を入れ替え、谷口がアンカーに配したシステムチェンジを竹中監督は施し、残された15分間に向かいます。
77分に魅せたのはホームチームのナンバー10。中央でボールを持った青木はそのままゴリゴリと突き進みつつ、エリアに侵入しながらそのままフィニッシュ。齋藤も懸命に飛び付きましたが一歩及ばず、ボールはゴールネットへ飛び込みます。「『おまえが勝敗を握っている』という言い方を本人にもしていますし、その責任感を持ってこれからもやって欲しいと思っています」と竹中監督も言及する青木はこれで圧巻のハットトリック。4-1。この試合で初めて3点の点差が付きました。
町田が須藤友介(2年・FCトッカーノ)と馬場渓(2年・FC町田ゼルビアJY)を入れ替えた79分の交替を経て、81分に輝いたのは「チームの中で一番体を張ってプレーで引っ張っていきたいというのはあります」と語るキャプテン。ハーフウェーラインを少し越えたあたりで三鷹がFKを獲得すると、それまでもキッカーを務めてきた芝﨑が「先生からは『GKが出てくるから直接の意識を持て』と言われていたので、ゴールの方に伸びるボールを蹴った」と振り返ったキックは、ぐんぐん伸びながら少し前に出ていたGKの手を弾き、そのままゴールネットを揺らします。「たまたまというのはあると思いますけど、あの位置からは初めて入りました」という芝﨑の45m弾が飛び出し、またも両者の点差は2点に縮まりました。
なかなか行方の見えないゲームに終止符を打ったのは4番を背負ったサイドバック。金山のシュートが齋藤のファインセーブに阻まれた直後の87分。CKの流れから右に開いた青木がピンポイントクロスを上げ切ると、中央に突っ込んだ石田はドンピシャヘッド。ゴールネットを射抜いた一撃は勝負を決める5点目。「去年は加倉井(拓弥・青山学院大)という絶対的な選手がいたので、そういう選手を見て1年間育ってくれていた彼に今年は左サイドバックをやってもらっています」と指揮官も口にした石田はこれで1ゴール1アシストの活躍を。最後は鈴木直人(2年・FC町田ゼルビアJY)をピッチヘ解き放ち、きっちりゲームをクローズした町田がリーグ戦の開幕連勝を手にする結果となりました。
結果から見れば快勝でしたが、「入り方とかTリーグのゲームの重要性というのは選手たちに伝えていたので、選手が理解もして戦ってくれたとは思いますけど、それに内容が付いてこなかったというのが本音です」と話したのは竹中監督。「見ている人が楽しいかという所にフォーカスすると、今日のゲームは青木がただ個で点を取るとか、金子がただ頑張るとか、そういうことになっちゃうので、そういう意味では今日は満足できないですけどね」と渋い顔が続きます。ただ、それは「もう僕の言いたいことはわかっていると思いますし、今いる3年生の選手は3年間一緒にやってきていますし、あとは選手が試合中にどうフィット感を出すかとか、選手が自己判断して何を選択してくれるかという所だと今年は特に思っている」という段階に来ているから。やりたいことは十分共有できている中で、それを試合の中できっちり発揮できるかできないかという波を小さくすることが、これからのチームが目指す躍進に繋がっていくことは間違いありません。「今日は良い意味で課題がかなり出て、選手もそれを感じているようなので、ポジティブには捉えていますけどね」と口にした竹中監督の下、今年も夏の群馬で躍動するため、来週から町田は関東予選の決勝トーナメントという大海原に漕ぎ出します。
ようやくリーグ戦で連敗はストップしたものの、インターハイの支部予選に続く黒星で、またも公式戦連敗となった三鷹。それでも、「私立武蔵戦で勝利という結果が出たというのは、自分たちでも大きく変われるポイントになったのかなと思います」と芝﨑が話したように、このゲームも守備がハマるシーンや攻撃の形を創る場面も少なくなく、今後への期待が垣間見える内容だったのではないでしょうか。前述したようにインターハイ予選は既に敗退しているため、彼らに残されているトーナメントコンペティションは選手権のみですが、今年は18人の3年生が全員現役続行を決断。「1人鎖骨の折れていたヤツが『折れていたら辞める』と言っていたんですけど、治ったので18人全員が『じゃあやるよね』みたいな感じで、自然にやることになりました。でも、選手権の予選はもう8月で時間がないので、しっかり準備してまずは1勝できるように頑張っていきたいです」と芝﨑が話せば、「力はないけど練習も一生懸命頑張っているので、少しでも良い想いをさせてあげたいですし、『最後は楽しかったな』と思えるようにしてやりたいですね」と佐々木監督。悔しい想いをした先輩たちに、そして何よりも後に続く後輩たちに自らの姿勢を刻み込むため、18人の3年生を含めた三鷹のチャレンジは続きます。 土屋
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