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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国大会出場を懸けた"西東京ダービー"が関東の舞台で実現。FC東京U-18と東京武蔵野シティFC U-18の激突は小平グラウンドです。
トップチームがU-23を設立してJ3リーグに参入したことで、J3、高円宮杯プレミアリーグ、T1リーグと3つのコンペティションに選手を送り出しているFC東京U-18。それでも、プレミアは第5節を終えて首位に立ち、Bチームで挑んでいるT1も堂々首位と好調をキープ。「結果に一喜一憂することなくやれている中でも、勝てているので自分たちのやりたいことにパワーを持って進めているという意味では、今は決して矢印が横にも下にも向いていなくて、限りなく上に向いている状態だと思う」と佐藤一樹監督も、現在のチーム状況には手応えを感じている様子。夏の全国出場をこのホームで勝ち獲ることで、さらなる上昇気流に乗るための90分間へ向かいます。
一方、トップチームがJリーグ参入を目指す"百年構想クラブ"に認定され、U-18もNPO法人へ移管されるなど、新たな変革の時を迎えている東京武蔵野シティFC U-18。シーズン序盤はグラウンドの改修もあってなかなか練習するための時間と場所が確保できず、新人戦、リーグ戦共に結果が付いてきませんでしたが、ここに来て確実にパフォーマンスも向上中。先週の1回戦ではやはり"西東京ダービー"となったFC町田ゼルビアユースとの激闘を3-2で制して、このラウンドまで。新人戦のリベンジと全国切符を同時に手に入れるべく、重要な一戦に挑みます。おなじみゴール裏のスタンド席には、両チームを応援するサポーターと保護者でほぼ満席。注目のダービーは東京武蔵野のキックオフでスタートしました。
立ち上がりから目立ったのはFC東京が入れる長いボール。「郁也も陽介も背後を取れるので、まずラフに蹴って背後を取れたり、あそこで差し込めるという印象を与えることによって、自分たちの本来やりたいサッカーを表現しやすくなるのかなという所」と佐藤一樹監督も話したように、まずは最終ラインからフィードを続けて。「あんなに蹴るとは思わなかった」とは東京武蔵野の増本浩平監督ですが、5分には鈴木喜丈(3年・FC東京U-15むさし)が縦に付け、半谷陽介(3年・FC東京U-15深川)の落としを受けた生地慶充(3年・FC東京U-15むさし)はミドルにトライ。ボールはクロスバーを越えたものの、FC東京がCBコンビの蓮川壮大(3年・FC東京U-15深川)と坂口祥尉(2年・FC東京U-15むさし)もシンプルなフィードを繰り出しながらラインを押し下げに掛かったことで、少しボールが空中にある時間の長い形でゲームは立ち上がります。
ところが、ファーストチャンスでスコアを動かしたのは東京武蔵野。13分に指揮官も「一番気持ちが彼の中で充実しているかもしれない。この3年間で一番良いかもしれないなと思うくらい」と評するモリソン健太郎(3年・東京ベイFC)が右サイドでマーカーを吹っ飛ばしながら縦に持ち出し、そのまま速いクロスを中央へ。ここにフリーで潜っていた成実浩太郎(3年・Forza'02)のヘディングは鮮やかにゴールネットを揺らします。「狙い通りですよね。中に成実を置いたのもそうですし、4-4-2で入ったというのもそうですし、本当に狙い通りの良い形で点が取れました」と増本監督も納得の先制弾。アウェイの東京武蔵野が1点のリードを強奪しました。
畳み掛けた東京武蔵野。15分にもキャプテンマークを託された初田優真(3年・横河武蔵野FC JY)が縦に入れたパスから、前を向いた成実は積極的にミドル。DFに跳ね返ったボールを、そこまでも果敢な仕掛けの目立った猪股直希(2年・私立武蔵中)がダイレクトでシュートまで持ち込み、軌道は大きく枠の左へ逸れましたが、「あれぐらいはできる選手だと思います」と増本監督も認める猪股とモリソンが両サイドで推進力を打ち出し、岸拓哉(3年・横河武蔵野FC JY)と初田のドイスボランチも集中高くセカンドに食らい付いた東京武蔵野の続く好リズム。
さて、佐藤監督も「何となく硬さがあって、ましてや先制されて思い通りにゲームに入れなかった立ち上がりでした」と振り返ったFC東京も18分に決定機。キャプテンの蓮川が右へ振り分け、サイドバックの岡庭愁人(2年・FC東京U-15深川)がアーリークロスを放り込むと、鈴木郁也(3年・FC東京U-15深川)はシャペウでマーカーを外してフィニッシュ。ここは飛び出した東京武蔵野のGK西村大樹(3年・レッドスターJY)がファインセーブで弾き出したものの、20分にも岡庭のシンプルなフィードに鈴木郁也が抜け出し、わずかに枠の右へ外れる強烈なボレーを。22分には東京武蔵野も初田、西村悠(3年・ヴェルディSSレスチ)、成実とスムーズにパスが回り、西村悠のシュートはクロスバーの上へ外れましたが、少しずつFC東京の長いボールがチャンスに直結し始めます。
同点弾はやはりその流れから。伊藤純也(3年・FC東京U-15むさし)が惜しい直接FKを枠の左へ外した2分後の28分。GKの波多野豪(3年・FC東京U-15むさし)が大きく蹴り出したボールに、飛距離と軌道の予測でマーカーを上回った鈴木郁也は抜け出し独走。飛び出したGKの頭上を抜いた柔らかいループは右のポストを直撃したものの、きっちり詰めていた半谷がボールをゴールネットへ送り届けます。「思いのほか蹴って背後を取れるシーンが増えたことで、選手たちもその方が楽なのでそれが多くなって、前の2人にとっては凄く負担だったと思う」と佐藤監督も言及した、その"前の2人"がきっちり一仕事。スコアは振り出しに引き戻されました。
以降は徐々に地上戦でも優位に立ち始めたFC東京ペース。27分にはエリア内で半谷が仕掛け、そのまま左からのカットインシュートは西村大樹がファインセーブ。その左CKを伊藤が蹴り込み、ファーで蓮川が折り返したボールは西村大樹が懸命にキャッチ。31分にも蓮川、生地と繋いだボールを引き出し、2人のマーカーを剥がした伊藤のシュートは枠の上へ。東京武蔵野も33分に右サイドバックの草宏禎(2年・横河武蔵野FC JY)が中に送り、成実のミドルは波多野にキャッチされましたが、「徐々に自分たちのペースになっていった前半なのかなという所」と佐藤監督。ホームチームが引き寄せるゲームリズム。
39分はFC東京。半谷の左クロスから伊藤が枠へ収めたシュートは西村大樹がファインセーブで掻き出し、内田宅哉(3年・FC東京U-15深川)が残したボールを鈴木喜丈が右足で狙ったミドルはクロスバーの上へ。40分もFC東京。半谷のパスを鈴木郁也が中央へ届け、伊東が打ち切ったシュートは西村大樹がキャッチ。45分もFC東京。鈴木喜丈が粘って残し、生地が放ったミドルは枠の右へ。それでも「耐える時間が長くなった感じはあるけど、耐えるというようなメンタリティでアイツらもやっていなかった」と増本監督も話した通り、東京武蔵野も守りながらしっかり攻撃の意識をチラつかせていたため、一方的な感じのなかった前半は1-1のタイスコアでハーフタイムに入りました。
後半のファーストチャンスは東京武蔵野。47分に左サイドで獲得したFKをレフティの和田朋也(2年・Forza'02)が蹴り込むと、飛び込んだモリソンはドンピシャヘッド。ボールはクロスバーを越えてしまい、思わずモリソンも頭を抱えますが、1つセットプレーから絶好の勝ち越し機を。48分はFC東京。左から伊藤が放り込んだFKをここもファーで蓮川が折り返し、鈴木郁也が繋いだボールは半谷のハンドでシュートには至らず。51分もFC東京。鈴木喜丈、鈴木郁也と回ったボールを生地がミドルまで持ち込むも、「ずっと使っていたら本当に良くなってきた」と増本監督も認める猿渡菖汰(2年・横河武蔵野FC JY)が体でブロック。攻める時間は東京が長い中で、猿渡と長田真之祐(3年・ヴェルディSSレスチ)のCBコンビがしっかりこらえ、東京武蔵野も決定機は創らせません。
ただ、60分前後からは「横河さんも少しパワーダウンした感じはあったので、少し自分たちの方にゲームが転がってきたかなと」(佐藤監督)「向こうも入りが重かったし、ウチもリズムは掴めていたけど、ちょっと足が止まってきたのもありました」(増本監督)と両指揮官も口にしたように、徐々に東京武蔵野の運動量が落ち始め、上回り出すFC東京の圧力。65分には内田と伊藤の連携で左サイドへ展開し、鈴木郁也のクロスは必死に中へ絞った和田がクリアしたものの、ジワジワと押し込むサイド。67分には東京武蔵野も、ルーズボールを拾った成実がミドルを放つも枠の上へ。次の得点は果たしてどちらに。
青赤のスコアラーは「好き勝手に自分のプレーを選択するというよりは、全体を見た中でここという所でパワーを出せるようなサッカー脳になってきたと思う」と指揮官も言及したナンバー4。68分にバイタルでボールを持った鈴木喜丈は、半谷とのワンツーで中央へ切れ込みながら、続けて伊藤とのワンツーで左サイドへ持ち出すと左足一閃。右のポストを叩いたボールはそのままゴールネットへ転がり込みます。J3でのプレーも経て、「勝ち点を求められる中で、自分のタイミングで出て行くというよりは、全体のバランスを見た中での危機察知能力みたいなものは上がっていると思いますけど、逆にユースに来たらもっともっと攻撃に出ても良いかなとも思うんですよね」と佐藤監督が話す"攻撃"の部分で見事に結果を。FC東京が逆転に成功しました。
1点のビハインドを追い掛ける展開となった東京武蔵野。70分には和田が丁寧に蹴り込んだ左FKから、再びモリソンが頭で飛び込むも、再びボールはクロスバーの上へ。73分には猪股の突破から左FKを奪いましたが、ニアへ蹴った初田のキックは鈴木郁也がクリア。岸とケント龍生(1年・FC東京U-15深川)の交替を挟み、初田が蹴った左CKもDFがしっかりクリア。何とか追い付きたい武蔵野の増本軍団。
78分の歓喜に沸いたのは青赤のゴール裏。3分前に鈴木郁也との交替でピッチヘ解き放たれた杉山伶央(2年・FC東京U-15むさし)が、左サイドで少し時間を創って短く付けると、中へドリブルで潜った内田の強烈なミドルは、右スミのゴールネットへ一直線に突き刺さります。こちらもJ3での経験を積み始めている14番の豪快な一撃。そのまま足が攣って小林真鷹(2年・FC東京U-15)との交替を余儀なくされたのはご愛敬。FC東京のリードは2点に広がりました。
相次いで両者が切り合うカード。81分は東京武蔵野が成実に替えて外山真永(3年・横河武蔵野FC JY)を、FC東京も82分に生地と吹野竜司(2年・FC東京U-15深川)、84分に鈴木喜丈と品田愛斗(2年・FC東京U-15深川)を続けざまに入れ替えると、87分には双方が同じタイミングで交替を。東京武蔵野が積極性の光った猪股を下げて、ドリブラーの倉田一輝(2年・FC府中)を送り込めば、FC東京も半谷と今村涼一(1年・FC東京U-15むさし)をスイッチ。双方の思惑が交差する中で、いよいよ熱戦は最終盤へ。
好ゲームを締め括ったのは「日向小次郎みたいなヤツなんです」と佐藤監督も笑った1年生ストライカー。88分に伊藤がラストパスを送ると、うまい体捌きで自分の懐に収めた今村はそのまま右足でシュート。ボールは左スミのゴールネットへきっちりと吸い込まれます。指揮官も「ちょっと強引でもシュートに持って行こうとする力があるんですよ」とその能力を高く評価する"青赤の小次郎"がチームの4点目を叩き込み、ここで打ち止め。「自分たちの力を出し切ったゲームかと言えば、そんなことはなかったですけど、しっかりと全国を決めたという部分では悪いゲームではないと思います」と佐藤監督も話したFC東京が、夏の全国切符を手中に収める結果となりました。
「全体を通して後半の途中まではプラン通りやっていたと思う」と増本監督も語った通り、2点目を失うまでは我慢しながらも勝機を見い出せていたはずの東京武蔵野でしたが、その2失点目でメンタルのダメージと共に止まり始めていた足も一層動かなくなり、最後は相手の決定力に屈する形となってしまいました。それでも「負けたけど次に繋がるゲームだったと思う」と指揮官も一定の手応えを口にしたように、完全に崩し切って挙げた1点目や、長田や岸といった選手たちの奮闘は間違いなく今後へ向けての好材料。まだ可能性の残っている全国への扉をこじ開けるべく、再び顔を上げて次のゲームへ向かって行って欲しいと思います。
一見すると少し苦しんだように見えた前半も、「ハーフタイムの表情だったり、ゲームの中の選手個々の立ち振る舞いなんかを見ていると、点こそ入らなかったですけど、どこかでパワーアップして点が取れるんじゃないかという風な感じには僕も見て取ったので、あまりこちらからうるさく言うことの方が逆効果かなという所もありました。そのあたりの所は普段から色々見ていますし、『ちょっと乗り切っていないな』という風にも外からは見られがちなんですけど、意外と冷静にどこかで行くためにのんびりしたペースを構築しているということもあったりするので、一概に何とも言えないという所もあって、そこが面白い所でもあり、難しい所でもあるという感じですね」と佐藤監督。このゲームでも確かにうまくいかない時間帯も含めて、選手たちは一定のメンタルを保ってプレーしていたように感じました。そう考えると、既に今シーズンだけでも色々なカテゴリーで色々な状況を経験してきているチーム自体の経験値が、この時期のチームに大きなアドバンテージを与えているのは絶対的な強みと言えそうです。「あとは本当にBチームで試合に出られないような選手のトレーニングが凄く元気というか、それがチームの健康状態を測るバロメーターとしては一番かなという意味では、今はそういう状況なので良い傾向ですよね」と話した佐藤監督にとって、その"バロメーター"が良い状態を保っているのもポジティブな要素の1つ。いまだかつてない新たな挑戦に取り組んでいる『サトートーキョー』の今後も非常に楽しみです。 土屋
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