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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
スプリング・ハズ・カム。春分の日のマンデーモーニングマッチ。共にここまで無敗を続けている都立東久留米総合と実践学園の一戦は都立東久留米総合高校グラウンドです。
人工芝の専用グラウンドを有しており、基本的にホームゲームは9時30分キックオフという時間設定の下、自らの学校で行っている都立東久留米総合。途中出場の岡野雅也(2年・A.N.FORTE FC)が同点弾を叩き込み、ドロー発進となった開幕戦のホーム東京実業戦を経て、先週のアウェイ成立学園戦は「内容的にはボコボコで、だけど勝っちゃったような"屈辱的勝利"でしたよ」と齋藤登監督は苦笑したものの、今井凱斗(2年・世田谷桜丘中)と岡野の2戦連発弾で1勝1分けと数字から見れば上々の滑り出し。ホームでの2試合目はスッキリと勝利を収め、結果を自信に繋げて行きたい所です。
昨シーズンは関東大会予選こそベスト4まで勝ち上がったものの、インターハイ予選と選手権予選では紙一重の勝負に屈する格好で上位進出は果たせず、T1でも7位となかなか思ったような結果は出し切れなかった実践学園。2シーズンぶりにリーグの覇権奪還を狙う今シーズンは、開幕戦で選手権準優勝の國學院久我山相手に「負ける可能性もあったけど、勝てる可能性も十分あったゲーム」(深町公一監督)を繰り広げ、0-0のスコアレスドローで勝ち点1を獲得すると、2節は東京武蔵野シティFC U-18を辻ヶ堂稜(2年・目黒東山中)の後半アディショナルタイム弾で振り切って、今シーズン初勝利を記録。アウェイゲームとはいえ、連勝を飾って弾みを付けたい90分間に挑みます。校舎から聞こえてくるBGMは全国大会出場を決めた筝曲部の美しい演奏。楽しみなゲームはおなじみの9時30分にキックオフされました。
先にセットプレーから攻勢を掴んだのは実践。2分に石井惇平(2年・FC多摩)が蹴った右CKを荒川耀士(2年・FC.GONA)が拾い、再び石井惇平が上げたクロスは中でオフェンスファウルを取られましたが、7分にも左から藤尾圭悟(2年・VIVAIO船橋)がCKを蹴り込み、ファーで合わせた内藤和也(2年・ARTE八王子FC)のヘディングはクロスバーの上へ。10分にも前原龍磨(1年・三菱養和調布JY)のドリブルで左CKを奪うと、藤尾の蹴ったボールは久留米のGK清水星那(2年・S-P FUTE SC)がパンチングで回避したものの、まずは「ボールを取ったら同サイドの高い所を積極的に取って行く」(深町監督)という共通意識の下、実践が手数を繰り出します。
14分も実践。左サイドからSBの浅貝崇裕(2年・VIVAIO船橋)がロングスローを投げ込み、荒川がフリックしたボールを藤尾がエリア内まで持ち運ぶも、ここは飛び出した清水が果敢にキャッチ。16分も実践。左サイドでルーズボールを収めた浅貝が、思い切って振り抜いたミドルはDFに当たり、清水が丁寧にキャッチ。19分も実践。左から浅貝が入れたロングスローは中央でオフェンスファウルという判定となりましたが、実践が手放さないゲームリズム。
さて、「相手がロングボール主体でDFの裏にどんどん蹴ってきて、その後でウチが拾ったとしてもそこにプレッシングを掛けてくるという中で、その勢いにタジタジでしたね」と齋藤監督も話した久留米は、CBの谷海斗(2年・HIBARI FC U-15)と町田拓也(2年・明星中)の所でボールは握るものの、なかなか池尻隆人(2年・FC杉野)、今井、纐纈隆輝(2年・FCトリプレッタJY)のアタッカー陣にはボールが入りませんでしたが、いきなりの先制弾は29分。右サイドで獲得したこの日1本目のCKを、レフティの吉田和司(2年・東京久留米FC U-15)がニアサイドへ蹴り込むと、走り込んだ米山達也(2年・Forza'02)が合わせたヘディングは左スミのゴールネットへ飛び込みます。ようやく放ったファーストシュートがそのまま結果に。キャプテンの一撃で劣勢の久留米が先にスコアを動かしました。
これでエンジンの掛かり出した久留米は31分にもチャンス。左サイドでボールを持った米山が外へ付け、上がってきたSBの吉田がクロス。ファーに突っ込んだ岡野のシュートは大きく枠を外れましたが、左右の幅を使ったアタックからフィニッシュまで。32分にも左から徳増純太郎(2年・FC府中U-15)がCKを蹴り込み、DFのクリアを今井はそのままダイレクトでシュート。ボールはわずかに枠の左へ逸れたものの、漂い出した追加点への雰囲気。
それでも、「ウチのリズムとしては相手にボールを持たせておいて、ボールをどう奪ってそこから速い攻撃に移るか」と深町監督も認める実践は、その切り替えの部分で手数を。38分にはショートカウンター気味に浅貝が左サイドを持ち出し、前原とのワンツーから放ったシュートは左のバーとポストの"角々"にハードヒット。45分に左から藤尾の蹴ったCKを、ニアで合わせた荒川のヘディングはクロスバーの上へ。45+3分にも荒川の丁寧なポストから、浅貝がグラウンダーで良い位置へ流し込んだクロスは清水が飛び出してきっちりセーブ。全体としては実践が押し気味に進めた前半は、久留米が1点のアドバンテージを握ってハーフタイムに入りました。
後半のファーストチャンスは久留米。50分に徳増が左から蹴ったCKはファーまで届き、岡野のヘディングシュートがゴール右へ外れると、ここからは再び実践のラッシュ。51分にはここも荒川がきっちり落とし、辻ヶ堂が左へ振り分けたボールを藤尾がクロス。最後は良く戻った町田がクリアしましたが、53分にも浅貝が自ら投げた左ロングスローのこぼれを中央へ蹴り込み、ファーで叩いた石井惇平のボレーは枠の右へ。「後半は前が2トップ気味に追い掛けたので、ちょっと違ってきたかなという感じはしました」と深町監督。追い付きたいアウェイチーム。
58分は実践の決定的なチャンス。前原とのワンツーから、エリア内で粘った荒川のシュートは清水がファインセーブで掻き出したものの、歓喜の瞬間はその2分後。60分に右サイドで獲得したCKを石井惇平がゴール方向へ蹴り込むと、虚を突かれた格好になったGKは弾き切れず、そのままボールはゴールネットへ到達します。同点弾は意外な形から。「追い付くために後半最初の15分は飛ばさせた」(深町監督)という実践がスコアを振り出しに引き戻しました。
予期せぬ形で追い付かれた久留米は63分に決定機。右サイドを粘って突破した岡野が中央へ折り返すと、フリーで放った今井のシュートは枠の上へ外れ、思わず天を仰いだのはその今井。直後に実践は1人目の交替を決断。前原に替えて、川村彰良(2年・ARTE八王子FC)をそのまま左ウイングへ投入。65分にゴールまで約30mの距離から徳増がクロスバーの上へ外した久留米のFKを経て、67分には実践に2人目の交替が。辻ヶ堂と石井達大(1年・FC多摩)を入れ替え、石井達大もそのまま右ウイングへ。両ワイドの顔触れに変化を加え、「基本的にはボールを動かしながらサイドの突破からクロスボールをというシンプルな形で今年は創っている」(深町監督)というベースの再徹底を交替策に織り込みます。
すると、74分に生まれたゴールは逆転弾。左サイドに開いた荒川が何とか残して中央へパスを送ると、待っていた川村は右足で丁寧なフィニッシュ。左スミを捉えたボールは正確にゴールネットを射抜きます。「あまりサイドの運動量もなかったし、サイド突破するイメージが創り切れなかった」と振り返る深町監督を含めたベンチがサイドへ施した交替策がきっちり成果へ。実践が残り15分で逆転に成功しました。
すぐさま動いた齋藤監督。75分の交替は2枚替え。纐纈と米山を下げて、清川開(2年・FC駒沢)と島村優志(1年・FC.VIDA)をピッチヘ送り込み、清川は最前線に、島村は左サイドにそれぞれ配置。77分に藤尾のスルーパスから、駆け上がったSBの内藤が清水にキャッチを強いるシュートを打ちこんだ実践も、78分にはアンカー気味の位置で攻守に効いていた佐々木良和(2年・稲城第六中)に替えて、早瀬雄太(2年・ヴェルディSS AJUNT)を投入すると、その早瀬を清水喜一(2年・フレンドリー)とCBに並べ、CBの浦寛人(1年・GA FC)は1列上がってボランチへ。83分は久留米に3人目の交替。岡野と高橋海地(2年・東京八王子FC)をスイッチして、何とか奪いたい同点ゴール。
執念を見せたのは「サッカー観的には良いモノを持っている」と齋藤監督も評価を口にするアンカーの20番。84分に久留米は右サイドで手にしたスローインを、内山隆弘(2年・清瀬第五中)がロングスローで中央へ。一旦跳ね返されたボールを内山が左足で入れ直すと、このクロスに頭から突っ込んだのは徳増。気合い満点のダイビングヘッドが実践ゴールを打ち破ります。終盤での同点弾に沸き上がる久留米の応援席。今シーズンの久留米にとって戦術的にもカギを握ってきそうな徳増が、ゴールという数字でもきっちりアピール。両者の点差は一瞬で霧散しました。
押し切りたい久留米は84分にもチャンス。右から途中出場の高橋がクロスを上げ切ると、ニアに入った今井のヘディングはゴール右へ。89分は実践に4人目の交替。先制弾の石井惇平を下げ、坂井啓希(2年・FC府中)を送り込んで最後の勝負へ。掲示されたアディショナルタイムは4分。「乱打戦になってしまった」(深町監督)一戦に決着の時は訪れるのか。
久留米の咆哮は90+1分。相手最終ラインでのボール回しを執拗に追い掛けた今井が、GKにも激しくプレスを掛けると、GKのクリアは今井の体に当たってルーズボールに。これを自らいち早く拾った今井が左足で流し込んだボールは、そのままゴールネットへ吸い込まれます。それまでも再三に渡ってチャンスに絡んでいたものの、ゴールの遠かった11番のストライカーが土壇場で得点という満額回答。3-2。久留米が再逆転を果たします。
実践は死なず。90+3分に浅貝のロングスローから粘って獲得した左CK。スポットに向かった藤尾は少し時間を掛けて、自らの間合いで丁寧にボールを蹴り込むと、ニアサイドの混戦を抜けたボールは中央へ。この軌道に誰よりも早く反応していた浦は、無人のゴールへ右足でボールを大事に流し込みます。3-3。諦めなかった実践が追い付いて、ようやく陽射しも出てきたピッチへ鳴り響いたタイムアップのホイッスル。最終盤に激しく揺れ動いたゲームは両者に勝ち点1が振り分けられる結果となりました。
最後の最後で執念の同点弾を叩き込み、勝ち点1を強奪した格好になった実践。「今年のチームは見てわかるように個でどうこうという子はいないので、ボールを上手く奪うことができれば良いチャンスはある」と深町監督も話した通り、アンカーに入った佐々木を中心に中盤でボールを奪えば、荒川という確かなターゲットもいるだけに、そこからサイドという実践おなじみのパターンは間違いなく大きな武器に。当然そのサイドアタックがセットプレーを誘発すれば、1点目や3点目のような場面も生まれてくるため、「攻撃の全員の共有化がもうちょっとできれば」(深町監督)今年も"らしい"チームになっていきそうな雰囲気は十分です。実は今シーズンから磐田や横浜FCでもプレー経験を持ち、J SPORTSで解説も務められている遠藤雅大氏を新コーチとして招聘し、「東京の中でしっかりとしたサッカーのスタンダードを創りたいという話をしている」と深町監督。ブレない実践の2016年にも大いに注目したいと思います。
「勝てると思った試合で最後の最後で指の間から勝ち点3がこぼれ落ちたみたいな所はあるけど、今日の内容を見れば引き分けで御の字でしょう」といつもの"齋藤節"で苦笑しながら試合を振り返ってくれた齋藤監督。確かに最終盤でスコアを引っ繰り返したことを考えると、勝ち点1はもったいない気もしますが、「残念だけど良いんじゃない?あまりショックじゃない。結果として引き分けで良い所でしょと言うのがあるし、この間は負けて当たり前のゲームで勝ち点3を取らせてもらったから、神様は見ているからこんなものでしょ。そんな贅沢言わないよ」と続いた"齋藤節"。そういう意味では得るものの多い試合であったとも言えそうです。久留米にしては珍しい3-4-3のシステムを昨シーズンの1年間でやり切ったことで、とりわけビルドアップのスタイルは相手の並びや戦い方によって幅のある可変型に。「『久留米にはプレスに行ったって無理だよ』と思わせるくらいポゼッション率を高めないとダメなんじゃないのかなと。他人事のように言ってるけどね」と笑って煙に巻いた齋藤監督の頭の中には、おそらくまだまだいくつもの"引き出し"が引き出される適切な時を待っているようです。 土屋
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