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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2年ぶりに帰ってきたのは両サポーターが敬意と愛情を持って称する"世界三大カップ"。ジェフユナイテッド千葉と柏レイソルが再会する『ちばぎんカップ』。今年の舞台はフクダ電子アリーナです。
昨シーズンはJ2降格以降で考えると最も悪い成績の9位。3年連続で出場していた昇格プレーオフの出場権すら逃すなど、非常に厳しいシーズンとなった千葉。不退転の覚悟で臨む今シーズンは、何と24人の選手を放出して、19人の選手を獲得するという、なかなか前例のない大きな血の入れ替えを敢行。それでも「沖縄のキャンプで我々が今やろうとすることをトレーニングで落とし込んで、それを実戦の中でという所でカップ戦に参加できて、貴重な試合をやれて良かったなと思います」と関塚隆監督も言及したスカパーニューイヤーカップ宮崎ラウンドでは鹿島を抑えて今シーズンの"一冠目"を手に。この伝統のカップタイトルももぎ取り、シーズン"二冠目"と行きたい所です。
吉田達磨監督体制初年度となった昨シーズンはリーグ戦で10位、ACLでもベスト8進出と、一定の結果は出したように見えましたが、クラブの決断は1年での指揮官交替。サッカー王国からミルトン・メンデス監督を新たに招聘し、再スタートを切ることになった今シーズンの柏。戦力的にも鎌田次郎や伊東純也、レンタルバックの中村航輔といった日本人選手に加え、ディエゴ・オリベイラやジュリアーノ・ミネイロなどのブラジル人選手を新たに加え、さらに田中順也も期限付き移籍で古巣復帰。まずは新監督にとっても初めての公式戦となるこの伝統の一戦で、今シーズンに懸ける想いをピッチで表現したい90分間を迎えます。注目のダービーには共に黄色を纏ったサポーターを含めて12921人の観衆が。正真正銘のタイトルマッチは柏のキックオフでスタートしました。
いきなりのチャンスは千葉。3分に柏最終ラインのビルドアップで中谷進之介の横パスがずれ、鎌田のトラップも大きくなってボールロスト。こぼれを拾った船山貴之のスルーパスは走ったエウトンと合わずに中村がキャッチしましたが、まずは相手のミスを見逃さなかった千葉のアタックが。7分に柏もエデルソンの左FKがゴール前で弾むも、千葉の新守護神を託された佐藤優也がパンチングで回避すると、直後にも伊東のパスミスを奪った千葉はショートカウンター。エウトンのスルーパスに船山が抜け出し、ここは飛び出した中村が何とかブロック。千葉が柏のミスを突いて2つのカウンターを仕掛けます。
「我々にとって初戦ということもあって、非常に選手の入り方がナーバスだったんじゃないかなと思います」とミルトン・メンデス監督も話した柏のファーストシュートは11分。大津のパスを左サイドでディエゴ・オリヴェイラが粘って縦に返すと、大津が少し運んで放ったシュートは佐藤優也がキャッチ。14分は再び千葉に好機。船山が左へはたいたボールから井出遥也が仕掛け、回った阿部翔平のクロスはファーで輪湖直樹がクリアしたものの、サイドアタックから良い形を創ると、フクアリの沸騰はその直後。
15分の右CKを山本真希がショートで蹴り出し、井出がワンフェイクからクロスを上げ切ると、DFに当たったこぼれにいち早く反応したのは船山。やや当たり損ねた右足のシュートは結果的に良いコースを突く格好で、右スミのゴールネットへ転がり込みます。「久々にゴールネットを揺らすことができて嬉しかった」と話す船山は、松本時代にJ1昇格を決めた福岡戦以来となる実に1年3か月ぶりの公式戦ゴール。新エース候補の一撃でホームチームが1点のリードを奪いました。
17分にも千葉は船山と小池純輝の連携から右CKを獲得。山本のキックにディエゴ・オリヴェイラが一旦クリアしたボールを、小池が入れ直した浮き球に柏の反応は鈍く、若狭大志がまったくのフリーに。何とか大谷秀和が寄せてシュートは枠の左へ逸れましたが、続けてセットプレーから千葉がビッグチャンスを。ミルトン・メンデス監督もたまらず1トップ下の茨田陽生と大津のポジションを入れ替えると、今度は柏に大きなチャンス。右サイドでルーズボールを拾ったエデルソンがアーリークロスを放り込み、ラインの裏へ飛び出した茨田のボレーは枠の左へ外れたものの、早くも配置転換を生かしたアタックで千葉ゴールを脅かします。
以降はボールを握る柏に、ブロックを敷いてカウンターを狙う千葉という構図が明確に。19分は柏。中央に潜って茨田がスルーパスを通し、ディエゴ・オリヴェイラが走るも佐藤優也が果敢な飛び出しできっちりセーブ。22分も柏。大津が自陣で山本からボールを奪ってすかさず縦へ。受けたディエゴ・オリヴェイラは40m近い距離を1人でグイグイ運び、左足シュートは佐藤優也にキャッチされたものの、迫力あるドリブルからきっちりフィニッシュまで。27分も柏。エデルソンの左CKは佐藤優也がパンチングで弾き出し、再びエデルソンが入れた左クロスは佐藤優也がキャッチ。チャンスの芽は見え掛けるものの、同点までには至りません。
28分前後にはエデルソンと茨田の左右も入れ替えた柏は、キープする時間が長い中で「ボールを動かそうとした時に人が遠いという感じ」(大谷)「距離感的にちょっと広いのかなという感じはするので、どうしても近くでボールを繋げない時間が多くて落ち着かせられなかった」(小林祐介)とドイスボランチが声を揃えたように、やや全体の距離感が遠く、数人が絡んでのアタックという形はなかなか繰り出せず。33分には中谷のクサビをディエゴ・オリヴェイラが巧みに収めて左へ流し、輪湖のクロスを茨田が残すと、エデルソンのシュートは佐藤優也が体でセーブ。こぼれに反応した大津の枠内シュートは若狭が好カバーで掻き出したものの、その流れから大谷の縦パスをエデルソンが粘り、大津の左足ミドルは枠を越えるも、ようやく複数人の絡んだ波状攻撃が。
35分は柏の「我々がこれまで取り組んできたトリックプレー」(ミルトン・メンデス監督)。左サイドで奪ったFKをエデルソンは短く中へ蹴り込むと、茨田はボールを返し、エデルソンの巻いたミドルはゴール右へ外れるも、練り込んだセットプレーを。40分は千葉のCKから一転、柏がカウンター発動。小林、大津と回したボールをエデルソンが右へ振り分け、伊東のクロスはファーへ流れるも、「まだ若いということもあって、今ポジションの役割の理解を深めている所」と指揮官も評した右サイドバックがようやく好機を創出すると、43分にもその伊東はカットインからDFにブロックされる左足シュートまで。「チームとしても特徴的なスピードを持っているので、そこは生かしていかないといけない」と小林も認める新たな武器が続けてチャンスに絡みます。
イ・ジュヨンと若狭のCBを中心にある程度引き込みつつ、落ち着いて柏の攻撃を1つずつ凌いでいた千葉も、44分には久々に流れの中から決定機が。エウトンが確実なポストプレーで落とし、後方から走った小池はグングン加速して中谷をぶっちぎり、エリア内へ侵入すると自らシュート。ここは上手くコースを狭めた中村のファインセーブに遭いましたが、ライバルひしめく2列目のポジション争いに身を投じている小池が自身の特徴をしっかりアピール。45分に大津の狙ったミドルがクロスバーを越えると、これが前半のラストシュート。「我慢する所は我慢して、攻撃になったらゴールに向かうという部分」(関塚監督)という狙いを一定以上体現した千葉が、1点のアドバンテージを持ってハーフタイムに入りました。
後半はスタートから両チームに交替が。千葉はボランチの山本を下げて、そのままの位置に富澤清太郎を投入。一方の柏は一気に2枚替え。鎌田と茨田に替えて、今井智基と山中亮輔を投入。山中はそのまま茨田のいた左SHへ送り込まれましたが、今井は意外にも中谷と並ぶCB起用。双方の指揮官も新たな狙いをピッチヘ落とし込みながら、残された45分間へ向かいます。
49分の咆哮は再びホームチーム。小池が自ら仕掛けて獲得した右CKをニアへ蹴り込むと、ディエゴ・オリヴェイラがクリアし損ねたボールはファーへ流れ、さすがの嗅覚で詰めていたエウトンがきっちりゴールへ流し込みます。「まだセットプレーの時間もそう割いてきた訳じゃないですけど」とは関塚監督ですが、そのセットプレーからまたもや貴重なゴールを。両者の点差は2点に広がりました。
55分には千葉に2人目の交替。足を痛めてピッチに座り込んだ船山に替えて、一昨シーズンのJ2で二桁ゴールを記録している吉田眞紀人を2トップの一角へ。57分には柏も3人目の交替を。小林と替わってピッチヘ駆け出したのは、「わかりやすい状況だったし、自分が決めれば追い付ける点差だったし、そういう気持ちで入った」という田中順也。1年半ぶりに古巣へ帰ってきた新9番を最前線に置きつつ、右にディエゴ・オリヴェイラ、左に山中が開き、中盤は大谷がアンカー務め、その前に大津とエデルソンを並べる、かなり攻撃的な4-3-3に近い布陣で反撃態勢を整えます。
ただ、62分には少しずつ攻撃参加のタイミングを掴みつつあった伊東のクロスで右CKを奪いましたが、エデルソンのキックはファーに流れ、フィニッシュを取り切れなかったシーンを経ると、ミルトン・メンデス監督は64分に4人目の交替を決断。エデルソンと秋野央樹をスイッチさせ、中盤は大谷がやや前目のポジションを意識しなから、実質は秋野と並ぶドイスボランチ気味の並びに回帰。再度全体のバランスを見直しながら、狙うはサポーターの目の前に聳えるゴールネット。
65分は千葉。左サイドへ開いた富澤の正確なフィードをエウトンがきっちり落とし、小池のボレーミドルはショートバウンドで中村がしっかりキャッチ。関塚監督は66分に小池と長澤和輝、69分にアランダと佐藤勇人を相次いで入れ替え、中盤のパワーと推進力増強に着手すると、70分も千葉のアタック。井出が左へ付け、駆け上がってきた阿部のグラウンダークロスへ、ニアに突っ込んだ吉田のシュートは枠の左へ外れましたが、「相手が攻めないといけないという状況だったので、少し相手の裏の所や僕の所にスペースがあったかなという風には思いました」と長澤。流れの中からもホームチームにフィニッシュへの道筋が。
71分の柏は「非常に輝かしい将来への可能性を秘めた選手」と指揮官も期待を寄せる右サイドバックに見せ場が。大谷を起点に秋野が繋ぎ、大津が右サイドへ展開したボールから、伊東は軽やかに1人かわしてクロス。田中はヘディングを当て切れず、ボールは枠の左へ逸れたものの、伊東がスピードを生かしたチャンスメイクを。73分はディエゴ・オリヴェイラが奪った柏のFK。右寄り、ゴールまで約25mの位置から田中が直接狙ったキックは、左スミギリギリを捉えるも佐藤優也が横っ飛びでファインセーブ。追撃弾とは行きません。
75分に千葉はエウトンとの交替で入った北爪健吾を右SHへ配し、長澤は中央の位置へ。78分に柏は輪湖とスイッチした太田徹郎を左SHへ配し、山中は左SBの位置へ。79分に太田が蹴り込んだFKから、今井が合わせたヘディングがクロスバーの上をかすめて枠を越えたシーンを挟むと、ホームチームに訪れた3度目の歓喜はまたしてもセットプレーから。82分に阿部が高速で蹴り入れた左FKに、マーカーの中谷を外してニアへ全速力で走り込んだイ・ジュヨンは完璧なヘディング。ボールは左スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さります。「キッカーと中に入る人間が非常に良かったという点があると思います」と関塚監督も話したように、これで千葉はすべてセットプレーで3つのゴールを。試合の大勢は決しました。
残り時間は5分間とアディショナルタイム。千葉は85分に最後の交替として、好プレーを披露した井出とオナイウ阿道をスイッチ。柏も86分に最後の交替として大谷と栗澤僚一をスイッチ。88分は柏。伊東が打ち込んだクサビを大津は巧みなヒールで落とし、受けたディエゴ・オリヴェイラは左右に細かくフェイントを入れつつ、左足で枠へ飛ばしたシュートは佐藤優也がキャッチ。アディショナルタイムの掲示は4分。「柏には~負けられな~い」の大合唱がホームのゴール裏から巻き起こる中、90+2分に長澤が直接狙ったFKはカベに入った伊東がブロック。90+4分のラストチャンスも千葉。阿部のクリアを吉田が絶妙のスクリーンで収め、長澤のカットインミドルが枠の右へ外れると、これがこのゲームのファイナルシュート。「相手の前線の強力な3人を良く抑えながら、ゲームをコントロールして勝利できたというのは、我々にまた1つ自信に繋がるモノを創ってくれたかなという風に思います」と関塚監督も手応えを口にした千葉が、2年ぶりの開催となったちばぎんカップを快勝で制する結果となりました。
ここまでのプレシーズンで無敗を続けるなど、順調にチーム作りが進んでいる様子が窺える千葉。そのことを問われた関塚監督は「まだ組み合わせを試している状況の中で、1人1人がしっかりと狙いを持ったプレーを積み上げてきている結果だと思っています」と、個々のレベルアップに好感触を。揃ってゴールを記録した船山とエウトンの2トップも、「船山選手は動き出しがあるし、エウトン選手は収まる」と長澤も言及した通りに補完性も十分。小池と井出のサイドハーフ陣も持ち味を存分に発揮してみせるなど、アタッカー陣の競争は高いレベルで続いていきそうな雰囲気が漂います。今日は相手のパフォーマンスもあって、「昨年よりも最後の所で体を張る所は取り組んできた」と指揮官も話した守備面でシビアなシーンを迎える回数は少なかったものの、それでも無失点というのは大きな成果。例年とは比較にならない覚悟を示している千葉の新たなチャレンジは、2週間後にこの日と同じフクアリでスタートします。
セットプレーからの失点を繰り返し、終わってみれば大会史上最多得点差タイの0-3というスコアを突き付けられた柏。「本質的にはもちろん今日のゲームに関しては勝敗も重要な位置付けにあった訳ですけど、その中でこれまで我々が取り組んできた取り組みのプロセスをしっかりと実戦に落とし込んでもらうというのが今回の狙いでもありました」とはミルトン・メンデス監督ですが、やや場当たり的な選手起用も含めて、取り組んできたプロセスの全容が見えてくるのはもう少し先のことなのかなという印象を受けました。中でも「ウチがボールを持って、相手がオーガナイズされた所に攻めていく部分で課題が見えた」と話したのは大谷。それに関しては中谷も「監督から持ち運ぶことは凄くキャンプから言われているので、それを実践に移そうとしましたけど、周りとのタイミングや距離感が結構難しかったですね」とビルドアップ時について言及。前からプレスを掛け、奪ってからの速い攻撃という部分はある程度形になりつつある現状を考えると、ブロックを築かれた時にどう攻めるかという部分の課題には、継続して取り組む必要がありそうです。ただ、ディエゴ・オリヴェイラの巧みな体の使い方やフィニッシュまで持ち込むパワーをはじめ、大津に体のキレが確実に戻ってきていることが確認できたのも小さくない収穫。「今季初めての公式戦ということもあって、今後間違いなく選手たちは改善に向かってくれることを信じています」とミルトン・メンデス監督。ポジティブな空気を纏ったブラジル人指揮官を頂く柏の新シーズンは果たしていかに。 土屋
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