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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国8強の扉にその手を掛けた両雄の対峙。愛媛代表の松山工業と東京B代表の駒澤大学高がぶつかる3回戦は、おなじみ駒沢陸上競技場です。
最後に選手権で勝利を収めたのは50年前。大会前にはその当事者だったOBからも、激励の言葉を送られたという松山工業。大きな期待を背負い、臨んだ今大会は2回戦からの登場。そのゲームは前半から「全国大会はなかなか自分たちのサッカーをさせてくれない場」と坂本哲也監督も振り返ったように、丸岡の攻撃を受ける形で難しい展開を強いられながらも、「いつものサイドバックが駆け上がる形」(坂本監督)で、キャプテンを務める右SB兵頭俊昭(3年・八幡浜保内中)のアシストから、徳永吉晟(2年・伊予郡砥部中)のゴールで先制。その後に追い付かれてPK戦までもつれ込んだものの、「『(PKの順番を)どうする』と兵頭に聞いたら、『自分たちで決めます』と。だから『わかった、わかった』と。私の考えは採用してくれなかったです(笑)」と指揮官も苦笑する自主性を発揮したチームは、4人全員がきっちり成功して50年ぶりの全国1勝を獲得。「ベスト8ということはずっと言ってきました」と坂本監督も口にした通り、勢いそのままに50年前へ並ぶベスト8進出を真剣に狙います。
暁星、都立東久留米総合、堀越と全国経験を持つ強豪を次々と撃破し、5年ぶりに全国の舞台まで駆け上がってきた駒澤大学高。「ウチは全員と言ったらメンバーの20人だけではなくて、257人の事を指す」と大野祥司監督も話す、200人を超えるサッカー部員を中心に構成された大応援団の後ろ盾も得て、開幕戦では阪南大学高を向こうに回して深見侑生(3年・FC東京U-15深川)、竹上有祥(3年・ヴェルディSSレスチ)とシーズンを通じて苦しんできた3年生の2発で鮮やかな勝利を。昨日の2回戦では優勝候補に挙げる声もあった尚志に後半はかなり押し込まれながらも、最後はPK戦をモノにして前回出場時に並ぶベスト16進出まで。「5年前と1回戦も2回戦も同じ形なので、次は勝てたらなと思います」とCBの佐藤瑶大(2年・FC多摩)。ここまでの2試合は5年前と結果だけではなく、スコアまでまったく同じ。新たな歴史を切り拓く準備は整いました。今大会3日目となる駒沢のスタンドには、今日も5735人の大観衆が集結。注目の一戦は松山工業のキックオフでスタートしました。
キックオフから1分経たないファーストチャンスは駒澤。深見が右へ振り分けたボールから、今大会初スタメンとなった安元奨(2年・SC相模原JY)がアーリークロスを放り込み、こぼれを叩いた矢崎一輝(2年・大豆戸FC)のシュートはDFのブロックに遭うも、いきなり惜しいシーンを創りましたが、松山工業も3分に野川稀生(3年・松山三津浜中)の右FKをファーで筑波柊(3年・FCゼブラ)が折り返し、徳永のボレーは枠の上へ消えたものの、以降は「今までの試合と違ってかなり浮き足立った立ち上がりになってしまった」と竹上も振り返った駒澤を尻目に続く松山工業のラッシュ。
5分に左へ開いた野川がクロスを送ると、ファーで待っていた山西恭平(2年・松山北中)のシュートはDFに当たって枠の左へ。その左CKを兵頭はショートで蹴り出し、日野貴登(3年・FCゼブラ)がヒールで残したボールを、兵頭が入れたクロスはDFが何とか跳ね返しましたが、「右SBがいきなり変わっていたので何かあったんだろうなと。ウチのチームの攻撃が左にポイントを置いているので、自然となった形でもあると思うんですけどね」と坂本監督も口にしたように、SHの日野とSBの有光駿汰郎(3年・FCゼブラ)が絡む左サイドを中心にアタックを繰り出し、吉村泰成(3年・松山三津浜中)と越智楓岳(3年・とべSC)のドイスボランチもことごとくセカンドを回収しながら、とにかく押し込み続ける松山工業。
「立ち上がりは飲まれた感じで、いつもの駒澤じゃないなという危機感はありました」と佐藤も話した状況を受けて、大野監督は10分を前に決断。「昔は右サイドバックもやっていて、スピードもあるので付いてはいけるなと思ったので」ボランチの春川龍哉(3年・Forza'02)と右SBの安元を入れ替え、「自分たちの想像を上回ってきた」(竹上)相手の攻撃を何とか凌ぐための策を講じます。
この采配は結果的に奏功。「ヘディングも負けない自信はありましたし、1対1も負けないかなと思っていましたし、細かいことをしないで自分なりにシンプルにやれば良いかなと思っていた」という春川がきっちり相手のサイドアタックに対応したことで、全体のバタバタ感も劇的に解消。逆に11分には村上哲(2年・FC府中)の右CKへ佐藤と春川が突っ込み、共にボールには触れなかったものの、ようやく反撃の一手も。19分に野川が1人外して枠へ収めたミドルも、守護神の鈴木怜(2年・S.T.F.C)が確実にキャッチ。「ちょっと落ち着いたと思いますね」とベンチの大野監督に、「立ち上がりよりは落ち着いたかなと思いました」とはピッチの春川。ほとんどフィフティに近い形まで駒澤がゲームリズムを引き戻します。
20分に矢崎のパスから野本克啓(3年・FC多摩)がクロスを送り、松山工業のGK野口龍也(2年・松山道後中)がパンチングで回避したボールを、深見がボレーで狙ったシュートがDFに阻まれたシーンを経て、21分に駒澤は早くも最初の交替を。安元を下げて、そのままの位置に武智悠人(2年・Forza'02)を送り込み、中盤の安定感向上に着手。25分には春川の右ロングスローから、こぼれを拾った武智のパスを矢崎はシュートまで持ち込めず、竹上のミドルは大きく枠外へ外れたものの、右サイドの春川を起点にしたフィニッシュも。「中盤の枚数を揃えてきて、うまくウチがハメられた」とは坂本監督。むしろ矢崎の推進力が目立ち始め、少し駒澤が押し返した格好の前半は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
後半はスタートから松山工業に1人目の交替が。山西に替えて大木秀仁(2年・松山三津浜中)を投入することで、サイドの推進力アップを図ると、歓喜の瞬間は開始早々の43分。左サイドで奪ったFKを野川が速い弾道で中央へ蹴り込み、飛び込んだ志摩奎人(1年・松山三津浜中)が頭で薄く触ったボールはそのまま右スミのゴールネットへ吸い込まれます。開通した三津浜中ホットラインをゴールで締めたのは1年生CB。志摩の貴重な先制弾で松山工業が1点のリードを手にしました。
「『後半はとにかく立ち上がりは気を付けろ』と。『スイッチを入れてくるし、スピードもあるぞ』ということを言っていたんですけど」と大野監督も悔しがった駒澤はビハインドを追い掛ける展開に。45分には野本が蹴った左CKへ西田直也(1年・横浜・FマリノスJY追浜)と栗原信一郎(2年・FC多摩)が突っ込むも、フィニッシュは取り切れず。46分にも野本の左FKに佐藤が競り勝つも、ここはオフサイドの判定。49分には2枚目の交替として竹上と岩田光一朗(2年・大田東調布中)を入れ替え、岩田は2トップの一角へ、野本はボランチに下げて、前線の顔触れに変化を。50分には野本が右へ送って深見が走るも、筑波がきっちりカバーして野口がキャッチしましたが、「ハーフタイムで喝を入れられて、走るということは意識していた」(佐藤)駒澤が繰り出す手数。
51分の主役は「自分のミスでファウルを与えて失点していたので、『取り返さないとヤバいな』という危機感を持っていた」という駒澤のCB。左サイドで獲得したFKを野本が丁寧に蹴り入れると、ファーサイドで飛んだ佐藤は高い打点から強烈なヘディング。マーカーのはるか頭上から打ち下ろしたボールは、力強くゴールネットへ飛び込みます。「ファーがフリーになっていて、ファーにくれというのは要求していたので、後は合わせるだけという感じでした。アレでチャラって感じですね(笑)」と笑った佐藤の汚名返上とも言うべき同点弾が飛び出し、駒澤がスコアを振り出しに戻しました。
やや流れの良くない中で追い付かれた松山工業。54分には兵頭のパスから、右サイドを抜け出した徳永がエリア内へ潜ってシュートまで持ち込むも、佐藤が懸命に体でブロックして勝ち越しは許さず。55分に駒澤が早くも切った3枚目のカード。「1対1の守備や球際には負けない自信がある」という自身の言葉を証明するような奮闘を見せた春川に替えて、「ドリブラーでボールを失わないのでウチの選手としては異色」と指揮官も評する菊地雄介(2年・VIVAIO船橋)を左SHへ解き放ち、深見を今大会ではお馴染みになりつつある右SBに、矢崎を中央の1.5列目にそれぞれスライドさせて、狙うは一気に逆転まで。
61分は駒澤。佐藤が左のハイサイドへFKを打ち込み、追い付いた菊地は栗原とのワンツーから野口にキャッチを強いるシュートまで。直後の61分は松山工業。有光が左サイドからアーリークロスを放り込み、野川がトラップで収め掛けるも、飛び出した鈴木が果敢にキャッチ。63分は駒澤。武智の右クロスに矢崎が合わせたヘディングは枠の左へ。66分も駒澤。村上の左クロスを菊地が残すと、武智のミドルは枠の左へ外れましたが、「ボールを動かせるヤツをどんどん出していって、うまくボールを支配できた」(大野監督)「前線にボールを持てるプレーヤーが増えたので、そこで結構ボールを持てていた」(深見)と2人が声を揃えた通り、ゲームリズムは間違いなく駒澤に。
68分の主役は「何の根拠もないんですけど、何かやってくれそうな気がしていた」と指揮官も言及した駒澤のナンバーセブン。縦パスを引き出した矢崎がエリア内で粘り、ルーズボールへいち早く駆け寄った菊地が思い切って左足を振り抜くと、ボールはクロスバーの下を叩いて、そのままゴールネットへ弾み込みます。「相手も疲れてくるので切れ込んでいけるんじゃないかなと。良くやってくれたと思います」と大野監督も称賛した途中出場の7番が、この大一番で見事に結果を。采配的中。駒澤が鮮やかにスコアを引っ繰り返しました。
「2点目はあの瞬間だけ足が止まりました。プレスも甘かったですし、簡単に入れ替わられましたし」と坂本監督も天を仰いだ松山工業は、このゲームで初めてビハインドを負う状況に。72分にはサイドを駆け上がった兵頭がクロスを送り、こぼれに反応した日野がミドルを狙うも鈴木怜がしっかりキャッチ。既に67分には2人目の交替として徳永と石井隆之介(1年・帝人SS)をスイッチしていましたが、その石井と野川の2トップまでボールを付け切れません。
こうなると、「どっちかというと向こうに主導権を持ったサッカーをされていた」と坂本監督も語ったように、むしろ勢いはリードしている駒澤。74分には菊地が枠を越えるカットインミドルを放ち、77分には深見の右スローインから、最後は武智がミドルボレーを枠内へ飛ばし、野口が懸命にファインセーブ。その右CKを村上が蹴り込むと、ニアに飛び込んだ矢崎のヘディングはGKを破るも、カバーに入っていたDFが頭で掻き出し、かなり微妙な判定ではありましたが、副審のジャッジはノーゴール。最終盤になっても落ちない運動量は「駒澤さんはハードワークが凄いですね。落ちないです」と敵将も舌を巻くほど。アディショナルタイムは3分。両校の応援団も全力で振り絞る最後の大声援。
80+1分は松山工業。有光がミドルレンジから放ったシュートは鈴木が確実にキャッチ。80+2分は駒澤に最後の交替。岩田と服部正也(2年・S.T.F.C)のスイッチで、前からのプレス強度アップに抜かりなし。80+2分は松山工業。右から兵頭が蹴ったFKは、中央と合わずにそのままゴールキックへ。80+3分は松山工業のラストチャンス。左から野川が蹴った渾身のFKも、駒澤ディフェンスが大きく跳ね返すと、程なくして吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「目指してはいましたけど、まさかここまでというのは本当にビックリですね」(竹上)「関東も予選のベスト16で負けて、インハイも予選のベスト8で負けていたので、まさか自分たちが全国でベスト8に入れるなんて」(深見)と3年生の2人も驚きを口にしながら笑顔を見せた駒澤が、前回出場時の"5年前超え"を達成し、全国8強を手繰り寄せる結果となりました。
前述したように初出場でベスト16まで躍進した5年前を超えて、とうとう最後の8チームまで辿り着いた駒澤。ただ、その5年前に「3回戦は2日連続の試合で頑張り過ぎちゃったので、頑張ろうとしていたけど頑張れなかったということがあった」という教訓を得た大野監督は、「今回は必死になり過ぎず、大人のサッカーをやろうというスタンスに変えました」とのこと。つまり、「休む所は休んで、行く所は行ってみたいなサッカーをやろう」というスタンスをチームに落とし込むことで、この試合をモノにしようという狙いを携えて臨んだのが今日のゲームであり、それに「前半は前から結構ガンガン行って、後半はやられるという展開だった」(深見)2回戦の教訓もチームが共有したことで、メリハリを付けた試合展開を80分間全体でデザインしながらやり切った印象が。それに加えて「あとは地元の応援のおかげというか、『自分の後ろにはこんなにたくさんの人がいる』という想いを大きなパワーに変えてやっているので、『どこが相手でも怖くないぞ』という形でやっている」(大野監督)という大応援団のパワーも間違いなく大きな武器に。それは春川も「スタンドから『もっと行けよ』とメッチャ言われますし、そういう声は凄く聞こえてくるので、アイツらに言われたらやるしかないというか、あれだけ応援してくれる人がいるので、その期待に応えないといけないですよね」と、その後押しを強調していました。次に対峙する相手は夏の日本一に2年連続で輝いている東福岡。「全国チャンピオンとできることなんてなかなかないことなので楽しみです。相手にとって不足はないので胸を借りて走って走って走りまくりたいと思います」と竹上が意欲を見せれば、「全国に出た段階で自分たちは全国優勝という目標があったので、ここまで来たら優勝するだけかなと思います」と深見も決意を新たに。赤黒が堂々と続けてきた全国行進は、いよいよ最強の相手との一騎打ちを迎えます。 土屋
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