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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
共に全国制覇を明確に掲げる強豪同士の対峙。東京A代表の國學院久我山と広島皆実がぶつかる好カードは、おなじみ味の素フィールド西が丘です。
2年連続での全国出場を果たした昨年の選手権は、前原と日章学園を相次いで撃破してベスト16まで進出。最後は京都橘にPK戦で敗れたものの、大きな存在感を示してみせた國學院久我山。迎えた今シーズンはインターハイで全国を経験しているものの、初戦で明徳義塾に無念の逆転負け。それでも「負けたことによって得るものが今年のチームは大きかった」と清水恭孝監督も明言した通り、その敗退をきっかけに再び立ち上がったチームは、選手権予選でも暁星、国士舘、成立学園といずれも優勝経験のある難敵を確実に退け、ファイナルでは帝京にPK戦で競り勝って東京3連覇を達成。「まずは目の前の試合に勝つことだけを考えたい」と話すキャプテンの宮原直央(3年・FC多摩)を中心に、昨年のこの舞台を経験している選手を数多く揃え、まずは聖地で初戦突破を目指します。
昨年、一昨年に続いて強豪が居並ぶ県予選を勝ち抜き、最後は今シーズンすべてのファイナルで対戦してきた広島観音を2-1で下して、3年連続となる冬の全国へと駒を進めてきた広島皆実。夏の兵庫インターハイでは徳島市立と旭川実業を倒し、ベスト8進出を果たしましたが、関東第一にはカウンターから2ゴールこそ奪ったものの、4失点を喫して力負け。7年前の全国制覇以降は早期敗退を余儀なくされている現状を打ち破るためにも、東京勢相手の勝利というのは夏のリベンジも含めて、上位進出に弾みを付ける意味でも格好の相手です。西が丘のスタンドにはオレンジの大応援団を含めて4226人の大観衆が。注目の一戦は広島皆実のキックオフで幕が上がりました。
ファーストシュートは4分の久我山。左サイドで獲得したCKを山本研(3年・横浜F・マリノスJY)が蹴り込むと、CBの野村京平(3年・横河武蔵野FC JY)がヘディング。ボールは枠の右へ逸れたものの、昨年の選手権で飛躍的な成長を遂げた3年生が惜しいシュートを放つと、8分のチャンスも久我山。澁谷雅也(2年・ジェファFC)のドリブルで得たFKは中央左寄り、ゴールまで約25mの位置。スポットに立った山本が直接狙ったキックは、広島皆実のGK對川敦紀(2年・サンフレッチェ広島JY)が何とかキャッチしましたが、「前半の前半は自分たちのペースで行けた」(野村)「前半の立ち上がりは良かった」(宮原)と2人が共通認識を口にした通り、久我山が掴んだゲームリズム。
すると、15分の咆哮は勢いそのままに久我山。今度は右サイドで獲得したCK。キッカーの鈴木遥太郎(3年・東急SレイエスFC)が正確なボールを打ち込むと、ニアへ飛び込んだのは内桶峻(3年・GRANDE FC)。ヘディングで合わせたボールは、ニアサイドを綺麗に破ってゴールネットへ吸い込まれます。「イメージ通りにボールが来た。今シーズンはトーナメントの公式戦で点を取れていなかったので嬉しかったです」と笑った8番が、この総決算のトーナメントで大仕事。「久我山というチームは他の高校に比べて身長も低いですけど、それでもセットプレーで一発取れるのは今年の良さでもある」と宮原も話すストロングが飛び出し、久我山が1点のリードを手にしました。
「セットプレーの失点は県大会の決勝でもありましたし、ニアでやられるというのはここ数試合の練習試合も含めて多かったので、結構準備してきたつもりなんですけど、それでやられたのは残念」と河江俊明監督も話したように、警戒してきたポイントで失点を許してしまった広島皆実。18分には右サイドを伊佐将吾(3年・FCバイエルン ツネイシ)がドリブルで切り裂くと、久我山ディフェンスはたまらずファウル。このFKを前谷慧(3年・FCバイエルン ツネイシ)が蹴り込み、ファーへ飛び込んだ藤井敦仁(2年・FCバイエルン ツネイシ)のヘディングは枠の左へ。22分にも伊佐がドリブルで右サイドを運びながらクロスを放り込み、有國修平(3年・サンフレッチェ広島JY)がやはり頭で枠内へ収めたシュートは、良く帰った久我山のCB上加世田達也(1年・Forza'02)が頭で掻き出しましたが、「前半で怖かったのはサイドからのクロス」と野村も話した通り、右WBに入った伊佐の推進力も目立ち始めた広島皆実にも徐々にチャンスの芽が。
逆に久我山はチャレンジのパスをあまり繰り出せずにボールを後ろで回す時間が増加。「コースを切るのが上手くて、ポジショニングも上手かったので出し所がなかった」と野村が話し、宮原も「ぴったりは付いていなくてもインターセプトできる距離にいたりとか、本当に的確なポジションに付いていた」と言及したように、広島皆実もコースを上手く消しながら、縦に入った時は素早くかつ力強くプレスに掛かるため、縦のスイッチが入らなくなった久我山はなかなかエリアの中へ侵入できません。
36分は広島皆実。右サイドをドリブルで運んだ前谷のクロスは、DFに当たって久我山のGK平田周(1年・FC東京U-15むさし)がキャッチしましたが、ワイドからのクロスに可能性を感じさせる広島皆実のアタック。39分は久我山。この日3本目となるCKを右から鈴木が蹴り入れ、こぼれを収めた山本のクロスに内桶がシュートを放つも、DFが丁寧にクリア。「点数を取る前は良い入りをしたかなと思ったんですけど、以降は負けたくないという気持ちが強くなってチャレンジが減ったと思います」と清水監督が話せば、「失点は覚悟していたので、0-1で相手リードで折り返すのは十分ある展開だと思っていました」と河江監督。徐々に広島皆実が押し返した前半は、久我山が1点のリードを握ってハーフタイムに入りました。
後半のファーストチャンスは広島皆実。44分、中央でドリブルをスタートした藤井敦仁は、そのままグイグイと40m近く持ち込んでエリア内へ。最後は懸命に寄せたDFに阻まれ、こぼれに反応した有國もシュートまでは持ち込めませんでしたが、いきなり中央突破から創ったチャンスに沸き上がる黄緑の応援席。続けて49分にも久我山のビルドアップが乱れた隙を突き、ボールを奪ったボランチの田村勇(3年・広島ビジョンFC)は思い切ってミドル。ボールはわずかに枠の左へ外れたものの、「後半は広島皆実が結構前から来ていて、押され気味になっていた」と口にしたのは野村。キャプテンの林耕平(3年・シーガル広島JY)、二井野巧(3年・KELT東広島FC JY)、坂下剛基(3年・シーガル広島JY)で組んだ3バックも時間を追うごとに安定感を増しつつある広島皆実が引き寄せたゲームリズム。
先に動いたのは清水監督。53分にボールロストの続いた知久航介(2年・浦和レッズJY)に替えて、比留間公祐(3年・横河武蔵野FC JY)をそのまま中盤に送り込み、ビルドアップの安定感向上を。一方の河江監督も直後の54分に1人目の交替を決断。「今日の相手を見ると早めに行った方が良いかなという所と、サイドでボールを受けられる展開になると思っていたので」有國を下げて、片岡永典(2年・シーガル広島JY)を投入。「ウチのジョーカー」(河江監督)にさらなるペースアップを託します。
55分は広島皆実。左から田村が入れたFKは1年生守護神の平田がしっかりキャッチ。57分は久我山。ミドルレンジでボールを持った鈴木が果敢に狙ったミドルは枠の左へ。59分は広島皆実。片岡がドリブルから左へ送り、溜めた藤井敦仁がクロスを上げると、藤井陸(3年・サンフレッチェ広島JY)が右へ流し、前谷のワントラップシュートは枠を捉え切れず、こぼれを拾った藤井敦仁の左クロスを前谷が狙うも、ここは鈴木が体でブロック。
63分は久我山。こちらも細かいパスワークがようやく出始め、小林和樹(3年・ジェファFC)のパスから、比留間が叩いたミドルは對川が丁寧にキャッチ。68分は広島皆実。WBの安原修平(2年・シーガル広島JY)を起点に片岡が左サイドをドリブルで突き進み、シュート気味に入れたクロスは、飛び込んだ前谷も届かずゴールキックへ。お互いに手数は出し掛けるものの、エリア内でのフィニッシュまでは持ち込めないまま、後半も残された時間はわずか10分余りとアディショナルタイムに。
71分には比留間を起点に名倉巧(2年・FC東京U-15深川)がスルーパスを狙い、走った澁谷はオフサイドになりましたが、「今回の試合は名倉や澁谷の足元の個が生きた試合かなと思います」と宮原が話し、「思った以上でした」と敵将も認めたこの2人の貢献度は絶大。特に「澁谷の動き出しは効果があったと思います」(清水監督)「ラインを上げろと言ったが、澁谷君がうまく裏を取りに来ていた所もあったので、そういう所でうまく下げさせられたのかなと思います」(河江監督)と両指揮官が声を揃えたように、澁谷はなかなか攻撃のテンポが上がらない中でも、一発で裏を狙う動きも縦パスを引き出して反転しながら裏へ抜け出す動きも再三試みながら、相手のラインを押し下げることに成功。「本人たちの判断に任せている」(清水監督)という澁谷と小林のポジションチェンジも、この日は流れを見て澁谷がそのまま中央に居座ったことが、結果的に広島皆実に厚みのある攻撃を許さなかったことにも繋がった印象を受けました。
71分は久我山に2人目の交替。小林に替えてルーキーの川野裕大(1年・横浜F・マリノスJY追浜)を比留間とのドイスボランチへ送り込み、ここで澁谷が左ウイングへ張り出し、3トップ下に鈴木、CFに名倉という布陣にシフト。74分にここも片岡がドリブルで長い距離を運びながら、シュートを打ち切れなかった一連を見て、広島皆実も2人目の交替を。前谷と中島陵吾(3年・広島高陽FC U-15)をスイッチして最後の勝負へ。清水監督も直後の75分には3枚目の交替として、鈴木と多嶋田雅司(3年・FC東京U-15むさし)を入れ替え、突破力とキープ力のある多嶋田を左ウイングに置くことで、サイドで時間を創る狙いを携えながらゲームクローズへ着手。両ベンチも持てるカードを切り合いながら、ゲームはいよいよラスト5分間の攻防へ。
78分は久我山。名倉が思い切ったミドルを枠内へ打ち込み、對川にキャッチされたものの、最終盤まで落ちない運動量と強さを披露。79分も久我山。比留間のパスを引き出した澁谷は、右サイドからゴリゴリとドリブルでカットインしながら左足でシュート。ボールは枠の右へ外れましたが、名倉同様にこの時間帯でも足腰の強さを象徴するようなドリブルシュートにざわめくスタンド。掲示されたアディショナルタイムは3分。180秒間のファイナルバトル。
80+2分は広島皆実のFK。GK以外は全員が上がる文字通りのラストアタック。田村が丁寧に丁寧に右から蹴り込んだボールを、ファーで伊佐が高い打点のヘディングで折り返したものの、中央でオフェンスファウルを取られてしまい万事休す。「試合内容からすると決して満足できないですし、課題も多かった試合ですけど、勝ったからこそ次があるのでこの1勝は大きいですね」と宮原も話した久我山が、昨年と同じスコアの"ウノゼロ"で難しい初戦をモノにして、1月2日に行われる2回戦へと駒を進める結果となりました。
「関東大会もインターハイで1つ目で負けていたのもありますので、代表権を取った後の一発目は自分にとっても鬼門だと思っていましたし、どの大会も初戦というのは簡単ではないと思っていますので、とりあえず勝てて良かったと思います」と清水監督が安堵の表情を見せたように、久我山は苦しみながらもきっちり勝ち切る逞しさを披露。「1点を争うゲームで勝ってきているのが今年のチームの特徴でもある」(野村)「久我山の美しく勝つという部分を出しつつも、泥臭く守ったり、球際の激しさも兼ね備えているので、勝負強さが今年のチームはこの集大成で出てきたのかなと思います」(宮原)と昨年からレギュラーとしてチームを牽引してきた2人も言及しているように、ある意味でこういうゲームをきっちりモノにできる所は、今年のチームの"らしさ"が十分に出たゲームだった印象です。実は久我山の3年生にとって、西が丘は都予選で6連勝を飾っている上に、今日の勝利で7戦全勝と非常に相性の良いスタジアム。2回戦もその聖地で戦うことは決まっており、宮原も「本当に自分たちとしての最後の西が丘が1月2日なので、勝って西が丘の無敗を継続させて良い置き土産を残しつつ、1,2年生に繋げていきたいと思います」と決意を口に。西が丘無敗継続と昨年度に続くベスト16を懸けた勝負の一戦は、もう2日後に迫っています。 土屋
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