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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年11月02日

高校選手権群馬準決勝 前橋商業×前橋育英@敷島

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1101shikishima2.jpg「伝統の一戦ということでバルサとレアルみたいな感じ」と話したのは前橋育英の山田耕介監督。白黒の縦縞、すなわち前橋商業と、黄黒の縦縞、すなわち前橋育英が激突する"前橋クラシコ"は引き続き敷島です。
最後に冬の全国へ出たのは12年前。近年はやや桐生第一の勢いに押され、県内でも第二勢力という位置付けになりつつある前橋商業。それでもOBの笠原恵太監督が就任した昨シーズンは、最後こそ育英に押し切られたものの、いきなり選手権予選で7年ぶりにファイナルまで進出。迎えた今シーズンも県総体で桐生第一を抑えてチャンピオンに輝き、関東大会でも昨年度の選手権全国4強の日大藤沢とPK戦までもつれ込む激闘を経験。今大会も伊勢崎商業に2-1、前橋東に2-0と粘り強く競り勝ってセミファイナルまで。永遠のライバルと対峙する80分間の先に"12年ぶり"を見据えています。
昨年度の選手権で久々の躍進。準決勝では鈴木徳真(筑波大)の劇的な同点弾で追い付き、最後はPK戦で流通経済大柏を撃破すると、勢いそのままに臨んだ決勝もいったんは逆転に成功しながら、延長の末に星稜の軍門に降ったものの、同校初の準優勝まで辿り着いた前橋育英。主力の大半が抜けた今シーズンは新人戦、インターハイ予選と共に桐生第一に敗れ、6年ぶりに県内無冠のままで最後の冬へ。今大会の初戦は高崎を4-1で一蹴すると、先週の準々決勝では桐生に8-1と大勝を収めて28年連続となるベスト4まで。ここで永遠のライバルを蹴落として、さらなる勢いに乗りたい80分間を迎えます。「"前橋クラシコ"ということでミーティングをしていました」と山田監督が話せば、「そこまでハッキリとは言っていないですけど本人たちもわかっていますし、やっぱり黄色と黒と白黒の縦縞はという感じはある」と笠原監督。2000人を超える観衆が見つめる中、前商のキックオフで伝統の一戦は幕を開けました。


3分のセットプレーは前商。右からCBの木村海斗(3年・伊勢崎第三中)が蹴ったFKは、育英のGK山岸健太(3年・FC小松)が冷静にキャッチ。9分のチャンスは育英。右からSBの井上滉斗(3年・前橋FC)が低いグラウンダークロスを蹴り込み、金子拓郎(3年・クマガヤSC)が丁寧に落とすと、横澤航平(3年・前橋FC)のシュートは大きく枠外へ。お互いにやや慎重な姿勢でゲームは静かに立ち上がります。
10分には育英に決定機。キャプテンの尾ノ上幸生(3年・東京久留米FC U-15)が左へ振り分け、SBの吉田朋恭(3年・前橋FC)がアーリークロスを放り込むと、野口竜彦(3年・高槻FC JY)は体を倒しながら左足でダイレクトボレー。枠を捉えたボールは前商の守護神を託された田村健太朗(1年・前橋ジュニア)がファインセーブで掻き出しましたが、「野口はボレーみたいなああいうのが凄く上手い」と山田監督も認めた通り、昨年の全国ファイナルでもゴールを決めている11番が一瞬で突き付けた鋭い牙。
さて、ボールを相手に持たれる時間はやや長いものの、「思い通りというか、ああなって我慢しかないので耐える形」とは笠原監督ですが、全体の主導権自体は決して譲り渡していなかった前商も、20分には豊田博斗(3年・図南SC群馬)のパスを受けたドリブラーの星野周哉(2年・渋川子持中)がクロス。飛び込んだ風間朝陽(2年・図南SC群馬)はシュートまで持ち込めなかったものの、2年生コンビが悪くない形を創出。21分にもバイタルでボールを収めた風間のミドルは山岸にキャッチされるも、徐々に打ち出す積極的なアタック。
23分は育英。尾ノ上が右から入れたアーリークロスを、野口は至近距離から枠内シュート。ここを田村がファインセーブで凌ぐと、結果的に野口の位置がオフサイドだったために間接FKにはなりましたが、「あのセーブでノった所はあったと思う」と話したのは、自身も選手権で全国を経験している中村楽GKコーチ。25分に金子がわずかに枠の左へ外したミドルを挟み、27分には金子のパスを引き出した野口が2人を外して放ったシュートも、田村が素晴らしい反応でファインセーブ。1年生守護神に勢いが出てきます。
以降はボールを持つ育英も「スペースがないのでどこでもらうのかという所で、DFラインと中盤の間で前を向けるような所があるんですけど、なかなか前を向けなかったですよね」と指揮官が苦笑したように、流れの中からは好機を生み出せず、お互いにセットプレーに活路を。34分は前商。国体選抜にも選出されている金枝晃平(2年・北群馬郡吉岡中)の左CKは、育英の右SHを務める高橋英暉(3年・FC東京U-15むさし)がクリア。36分は育英。井上の右CKを前商のCB豊川柊弥(3年・北群馬郡吉岡中)が弾き出すと、こぼれを拾った野口のシュートは枠の上へ。37分は前商。右から豊川が入れたFKに、187センチの堀口護(3年・図南SC群馬)が突っ込むもオフェンスファウル。40+2分も前商。豊田のスローインから、星野が上げ切ったクロスはそのままファーヘ。「うまくはないですけど、力強さはこっちにあったので対抗できるかなと思った」と笠原監督。前半はスコアレスで40分間が終了しました。


後半も立ち上がりはお互いにセットプレーの探り合い。42分は前商。木村の左FKは中央でオフェンスファウルという判定。49分は育英。井上の右CKを吉田が折り返すも、飛び出した田村が確実にキャッチしてここもオフェンスファウル。「パスの精度も今日は悪いですよ。全然繋がらないもん」と山田監督も口にした育英は、スタメン唯一の2年生となった大塚諒(2年・横浜F・マリノスJY追浜)と尾ノ上のドイスボランチを中心にボールを動かすも、全体的にパスの回りが遅く攻撃が停滞。出て来ないフィニッシュへの流れ。
53分の決定的なチャンスは白黒の縦縞。堀口がキープから左へ展開すると、粘った星野は「あんなクロスは見たことない」と笠原監督も驚くピンポイントクロスを中へ。飛んだDFもわずかに届かず、その背後に潜った宮下倖希(3年・前橋エコー)は完璧なタイミングでヘディングを敢行しましたが、ボールはわずかにゴール右へ。3列目から飛び出した宮下を「あそこに良く入ったというのは褒めたいですね」と称賛したのは笠原監督ですが、前商も千載一遇の先制機を生かし切れません。
ただ、「何か前商の術中にハマっていましたよね」と山田監督も言及したように、少しずつゲームリズムは前商サイドへ。54分には堀口が左サイドで一気に3人を置き去ってエリア内へ。最後はDFのカットに遭いましたが、前線のアタッカー陣にも仕掛ける意欲が。育英も60分には高橋を下げて、「ケガもあって今日は20分行こうかと話していた」(山田監督)という佐藤誠司(3年・FC東京U-15むさし)をそのまま右SHへ送り込んだものの、横澤のドリブル以外になかなか見い出せない攻撃の活路。
「しっかりブロックを作った状態であれば大丈夫かなと思っていました。あとはこっちが行った後のカウンター返しみたいな形だけは注意しろと言っていた」と笠原監督。キャプテンの干川裕人(3年・北群馬郡吉岡中)と宮下のドイスボランチもセカンド奪取に奔走し、CBの豊川と木村は言うに及ばず、右の若林泰輝(2年・図南SC群馬)、左の豊田という両SBも育英のドリブルを交えたアタックに粘り強く対応。指揮官も「やられる雰囲気はなかったですね」と振り返るなど、うまく前商がゲームを膠着させた展開のまま、残るは10分間とアディショナルタイムのみ。
71分の決定的なシーンも前商。左から金枝がCKを蹴り込むと、ファーサイドへ走り込んだ豊川のヘディングは枠を襲い、ここはカバーに入ったDFがライン上でクリアしましたが、「チャンスとしたらセットプレーはあるかなと思っていた」(笠原監督)という狙いの一端から惜しいシーンを。72分も前商。干川が左へ振り分けたボールを、豊田は右足でクロス。ファーで待っていた金枝のシュートはクロスバーを越えたものの、ペースは間違いなく白黒に。
「あそこの所は『ここが勝負だな』という感じがしました」という指揮官と意識を共有したタイガー軍団の咆哮は76分。右から井上が蹴ったCKはDFにクリアされましたが、今度は左CKを尾ノ上が蹴り入れると、こぼれを拾った野口は素早く左へ。再びボールをもらった尾ノ上のクロスは最高の軌道を描いて中央へ届き、飛び込んだ金子のヘディングはとうとう前商のゴールネットを激しく揺さぶります。「リスタートはずっと練習していました。尾ノ上のリスタートは良いんですよ」と山田監督も口にした通り、キャプテンの右足が呼び込んだ大きな大きな先制点。後半のファーストシュートで育英が1点のリードを強奪しました。
「運動量が落ちてきたので『延長になったら難しいかな』とは思っていた」(笠原監督)中で、手痛い失点を喫してしまった前商。78分には1人目の交替として星野と小此木駿(1年・図南SC群馬)をスイッチしましたが、焦りもあってかファウルも増えてしまい、時間ばかりが経過してしまいます。一方の育英は80+1分に井上と大畑隆也(3年・前橋FC)を入れ替えて、万全の態勢を整えながら待ち続けるホイッスルの瞬間。
掲示されたアディショナルタイムの3分を少し過ぎた頃、敷島の空に吸い込まれたのは堀越雅弘主審が吹き鳴らした試合終了を告げる笛の音。「クラシコに懸ける想いが前商にありましたよね。凄いですよ、やっぱり」と山田監督も認める永遠のライバルに苦しめられながらも、最後はセットプレーからきっちりゴールを奪い切った育英が、連覇を懸けたファイナルへと駒を進める結果となりました。


「総合的な力は向こうが上だと思いますけど、この試合に関してはチャンスがあったので。押し切るかなと思ったんですけどね」と悔しそうな表情を浮かべた笠原監督。とりわけ後半に関しては相手のシュートを1本に抑えながら、流れの中とセットプレーからそれぞれ決定機を迎えるなど、プラン的にもかなりハマっていただけに、最後の最後で勝利が手元からスルリとこぼれ落ちて行ったようなゲームだったと思います。それでも、「思ったよりよくやったなと思います。納得はしないと思いますけど、出し切ったんじゃないですかね」と口にした指揮官は続けて、「特に3年生に関しては100パーセントぐらいの形は出せたんじゃないかなと。持っているモノをしっかり出せたんじゃないかなと思います」とキッパリ。さすが前商、さすが"前橋クラシコ"という印象を見る者に刻み込んで、白黒の縦縞は大会を去っていきました。
シビアな戦いを何とかモノにして、実に11年連続となるファイナルへと勝ち上がった育英。この日の彼らで目立っていたのは小畑達也(3年・前橋FC)と大平陸(3年・前橋FC)の共に前橋FC出身でもあるCBコンビ。特に大平は10センチ近く身長差のある堀口にもことごとく競り勝つなど、高さと体の強さを存分に披露。山田監督も「あの子がずっと春夏とケガでいなかったので、陸がいないと今日あたりもやられていましたね。彼の存在は大きいですよ」と最大限の評価を口にするなど、タレント軍団の中でも抜群の存在感を放っていました。第1試合で勝利を収めていた桐生第一とのファイナルは今回で6回目。ここ4回の対戦では交互に全国切符を獲り合っており、今シーズンは前述したように新人戦決勝、インターハイ予選決勝と桐生第一に連勝を許しているだけに、この最後の決戦だけは絶対に譲れない所。「力は向こうが上だと思いますけど、このためにやってきたので全力で頑張りたいと思います」と話す山田監督も、「今度はスペースができるのでサッカーはやりやすいと思いますよ。面白い試合になるでしょう」と決勝への期待を。注目の試合は来週8日、10時10分に正田醤油スタジアム群馬でキックオフの時を迎えます。      土屋

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