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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年07月22日

クラ選グループステージAグループ 山形ユース×横浜FCユース@前橋総合

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0722maeso2.jpg昨年は揃って未勝利に終わった両チームのリベンジとなる全国舞台。モンテディオ山形ユースと横浜FCユースの邂逅は引き続き前橋総合です。
2013年には初めてグループステージを突破してベスト16へ。昨年は勝ち点こそ奪えなかったものの、今年はベガルタ仙台ユースを抑えて、東北1位通過で全国へと駒を進めるなど、確実なステップアップを遂げているモンテディオ山形ユース。開幕から7戦勝ちなしと苦しい序盤を強いられたプリンス東北でも、以降の5試合は4勝1敗と上々の成績を。「J1でやっているチームの下部組織だという誇り」(今井雅隆監督)を胸に、まずは2年ぶりの全国勝利を目指します。
こちらも2012年にはベスト8まで躍進したものの、2013年は関東予選で敗退。昨年はグループステージ全敗と、この大会で見るとここ2年は雌伏の時を過ごしていた横浜FC。今回もFC東京U-18、横浜FMユース、横河武蔵野FCユースと同居した激戦区の関東予選をグループ3位で抜け出し、最後は柏U-18を振り切って関東第10代表で2年連続の全国へ。「ある程度のクラブとして積み上げる形やベースというのはだいぶ明確にされてきた」と重田征紀監督が話した通り、この日のスタメンは11人全員が横浜FCジュニアユース出身。足元を見つめつつ、まずは山形同様に2年ぶりの全国勝利に燃えています。11時30分キックオフの時点で気温は36.5度まで上昇。肌の焦げる音が聞こえるような環境の下、山形のキックオフでゲームはスタートしました。


ファーストシュートは7分の横浜。左SHの前嶋洋太(3年・横浜FC JY)が右へ流れながらミドルにトライ。ボールは
枠の右へ外れたものの、腕章を巻いたキャプテンが攻勢への狼煙を打ち上げると、11分には決定機。山本凌太郎(2年・横浜FC JY)が左へ展開し、SBの井上友也(3年・横浜FC JY)の折り返しを石山雄悟(3年・横浜FC JY)はきっちり枠内へ。ここは山形のGK井上怜(3年・モンテディオ山形JY庄内)がファインセーブで阻みましたが、まずは横浜が手数を繰り出します。
12分も横浜。SBの黒柳雅路(3年・横浜FC JY)を起点に奪ったCKを右から石山が蹴り込み、ファーに入った前嶋のボレーはゴール右へ。16分も横浜。石山がシンプルに縦へ送り、右へ持ち出した齋藤功佑(3年・横浜FC JY)のシュートは枠の右へ。18分にも左から石山が連続してCKを入れるなど、ボールを回しながらもハイサイドへとボールを入れて、基点を創った横浜の続くラッシュ。
「ゲーム展開は予想通りというか、横浜FCさんは個人のボールを持つ能力が高いので、ボールは保持されるだろうと思っていた」(今井監督)中で、突如として生まれた山形の決定的なチャンス。20分、中盤でボールを拾った大沼塁(3年・モンテディオ山形JY村山)は間髪入れずにスルーパス。完全にフリーで抜け出した高橋潤哉(3年・FCあきたASPRIDE)はGKの位置を確認しながら、冷静にゴール右スミへボールを送り届けます。「良い形で2トップのタイミングと距離感が合って、あの点数に関しては良かったですよね」と今井監督も認めるキャプテンの大きな先制弾。ファーストチャンスのファーストシュートをモノにした山形が1点のリードを奪いました。
「9番は走られた時の走力は高いので、あそこは警戒していたんですけど、あの失い方で一発で失点してしまった」と重田監督も振り返った横浜は、それでも続けてチャンスを創出。26分には落合祥也(3年・横浜FC JY)、右SBの青木天良(3年・横浜FC JY)とボールを繋ぎ、右から服部剛大(2年・横浜FC JY)が放ったミドルはここも井上がファインセーブで回避。28分にも齋藤のスルーパスから前嶋が完全に抜け出すと、ここも井上が足でのビッグセーブを披露。ジュニアユース育ちの守護神が掛ける山形ゴールの堅い鍵。
30分に魅せたのは1年生の左SB。相手陣内でスローインを獲得すると、スポットに向かった加藤雅也(1年・モンテディオ山形JY村山)は長い助走から飛距離十分のロングスローを敢行。高橋潤哉が競り勝ったボールは横浜のGK杉本将哉(2年・横浜FC JY)がキャッチしましたが、「ここ2,3ヶ月でゲームに出始めた」(今井監督)という15歳のロングスローがスタンドを沸かせます。
34分は横浜。井上の正確な左クロスをファーで山本が折り返し、齋藤が叩いたシュートは山形のCB佐藤魁人(3年・福島ユナイテッドFC U-15)が体でブロック。39分は山形の決定機。カウンターからドリブルで運び出した菅野裕介(2年・福島ユナイテッドFC U-15)は左へラストパス。受けた大沼の1対1は、しかし杉本がファインキャッチで応酬して追加点とはいかず。ただ、「あの展開で得点できたのでウチとしてはラッキーだったなと思います」と今井監督。前半は山形が1点のアドバンテージを握ってハーフタイムに入りました。


「前半は多少自分たちが主導権を握れた所もあったので、『相手は絶対後半は足が止まるよ』ということで選手たちも前向きにできていた」と重田監督も話した横浜は、後半スタートからラッシュ。42分には服部のパスを落合が裏へ巧みに落とし、走った石山より一瞬速く飛び出した井上がキャッチしましたが、ドイスボランチでフィニッシュの一歩手前まで。45分にも石山の左CKがニアで混戦を生み出し、最後は青木耀大が懸命にクリアしたものの、ジワジワと攻め入るハマのスカイブルー。
主役は「サイズはないんですけど、ああいう所で合わせる力はある選手」(重田監督)。46分、それまで5本のキッカーを担当していた石山ではなく、山本が蹴った左CKがニアへ向かうと、ここへ飛び込んだのは落合。169センチのボランチが完全にミートさせたヘディングは、再三の好守を見せていた井上の手を弾き飛ばして、ゴールネットへ飛び込みます。「意外とダークホース的に点を取っているので、そういう存在が点を取ったのは良かったと思います」と指揮官も言及した落合の完璧な一撃。横浜が後半早々に追い付いてみせました。
「後半最初の5分で1点を取りに行こうと話していた」(重田監督)中、"最初の5分"を1分回った段階でゴールを挙げた横浜はすぐさま逆転機を。49分に齋藤が繋いだボールを石山が右へラストパス。バウンドに合わせた山本のボレーは左ポストを直撃したものの、惜しいシーンに意気上がる横浜応援席。50分にも左で作った流れから、齋藤が井上にセーブを強いるミドルを枠内へ。一気に引っ繰り返したい意欲を前面に押し出します。
山形の反撃は当然この男から。51分に菅井脩(3年・モンテディオ山形JY村山)がクイックで始めたFKを引き出し、ドリブルでエリア内へ侵入した高橋潤哉はオフェンスファウルを取られましたが、キャプテンの勝負する姿勢はチームへ伝播。52分にも菅井を起点に菅野が右へ展開すると、青木耀大のクロスはファーへ流れるも悪くないサイドアタックを。55分には本職はCBながらチーム事情で右SBを務めた佐藤岳(1年・アラソール山形FC)を起点に、菅野、菅井、加藤、菅野と細かく回り、飛び込んだ加藤は一歩及ばすもスムーズなアタックも。56分には横浜も石山とのワンツーから左サイドを突破した前嶋がシュートまで持ち込むも、ボールは左サイドネットの外側へ。58分は再び山形。佐藤魁人のロングFKに高橋潤哉が競り勝ち、大沼のシュートはDFのブロックに遭ったものの、赤き山神に漂う勝ち越しへの希望。
60分の咆哮はハマのスカイブルー。石山が左へ送ったボールから、井上はパーフェクトクロスをファーへ。4分前に投入されていた瀬長直亮(2年・横浜FC JY)のヘディングは井上が驚異的な反応で防ぎましたが、最後は混戦の中から山本がプッシュしたボールがゴールネットへ到達します。「サイドからチャンスを創れる部分もあったので、そこを中心に行けるかなというのはたぶん選手たちも感じていた部分はあるのかなと思います」と重田監督が話せば、「右サイドを再三割られていたので、修正を掛けていたんだけどうまく伝わらなくてサイドバックの背後をやられた」と今井監督。左サイドの優位性をゴールにしっかり結び付けた横浜が逆転に成功しました。
1点を追い掛ける山形。今井監督は63分に2枚替えを決断。菅井脩と青木耀大を下げて、加藤康佑(2年・モンテディオ山形JY庄内)と佐藤啓太(2年・福島ユナイテッドFC U-15)を投入。ボランチに菅野と加藤が並び、高橋潤哉と佐藤啓太の2トップにシフトしましたが、65分にFKのチャンスを掴んだのは横浜。左寄り、ゴールまで約20mの位置から石山が直接狙ったFKは、井上がこの日5本目のファインセーブで仁王立ち。これ以上の点差を開かせません。
守護神の奮闘に応えたい山形はセットプレーに活路を見い出すも、73分に左から加藤が蹴ったFKは杉本がしっかりキャッチ。75分に左から菅野が蹴ったFKはゴール右へ。76分に加藤が放り込んだロングスローもDFがきっちりクリア。逆に78分は横浜。カウンターから途中出場の和田涼太(3年・横浜FC鶴見JY)がスルーパスを通し、こちらも途中出場の中村拓貴(2年・横浜FC JY)が放ったシュートはわずかに枠の右へ。進む時計の針。残された時間はもうわずか。
残されていた最後の見せ場は80分。もはやスタンドの誰もが何かの可能性を感じていたであろう加藤のロングスローが左から投げ入れられると、上がっていたCBの高橋成樹(2年・モンテディオ山形JY村山)が競り合ったこぼれ球は高橋潤哉の目の前へ。至近距離からエースが振り抜いた右足ボレーは、しかしクロスバーの上に消えて万事休す。「こういった展開で逆転できて次に臨めるというのは、凄くチームとして良かったんじゃないかなと思います」と重田監督も話した横浜が、逆転で2年ぶりの全国勝利を手に入れる結果となりました。


「短期決戦のリーグ戦と言えども初戦は凄く大事だと思うので、この勝利は大きかったんじゃないかなと思います」と重田監督が言及したように、難しい展開を強いられた初戦を確実に勝ち切った横浜。前述したようにこの日のスタメン11人は全員が横浜FCのジュニアユース出身。「クラブとして共有されている"絵"は描けているのかなと。それが強みでもあると思いますし、その中でここからステップアップするために何が必要なのかというのは課題だと思っています」と話した重田監督にそのステップアップするための課題をお聞きすると、「個々の力をどう伸ばすかということをトレーニングからも上げていかなきゃいけない部分もあるし、そういった特徴的な選手というのも求めていかなくてはいけない所なのかなとも思います」とキッパリ。個と組織の融合を目指すチームにとって、今回の真夏の群馬はその両面でステップアップすることを考えても、またとない絶好の機会であることは間違いありません。
先制しながらも最後は逆転負けという結果を突き付けられた山形。ただ、百戦錬磨の今井監督は「どうしてやられちゃったかというのをしっかり捉えれば、今日は負けたけど理由がハッキリしていることと、今日のような戦い方ではチャンピオンになれないというのもハッキリしているので、選手たちは割り切っていくと思いますけどね」と敗因の明確さによってメンタル面でのダメージは少ないと断言。その口調は国内のみならず、マカオやフィリピンでも指導者として経験を積まれてきた良い意味での余裕や懐の深さを感じさせてくれます。お話の最後に「勝ってもまた次は負けることもありますし、忍耐強くやるのが"楽しい"ということじゃないですか。でも、みんな一生懸命やってくれるので大きな部分では楽しくやっています」と笑った今井監督。その姿からはモンテディオの未来の一端が透けて見えてくるような気がしました。     土屋

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