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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
Bグループのファイナル進出を懸けた一戦は北関東ダービー。下野の桃色集団と上野の濃蒼軍団が対峙する準決勝は引き続き清瀬下宿です。
県予選は準決勝までに14ゴールを挙げる破壊力で決勝進出を果たし、近年の栃木を牽引し続けている矢板中央にはPK戦で敗れたものの、2年連続で関東大会に駒を進めてきた佐野日大。今年から自らも選手として母校を全国大会16強に導いた経験を持つ海老沼秀樹監督が指揮官に復帰し、その海老沼監督も「私も今年から戻ってきたような感じですが、その前からコーチ陣がしっかりやってくれている」と評するコーチングスタッフも全員がOBという"佐日愛"に溢れた体制で狙うは王座への返り咲き。まずは好結果を叩き出し、直後に控えるインターハイ予選への自信を深めるための80分間を戦います。
新年度の公式戦初戦となった県予選4回戦では伏兵の市立前橋に苦しめられながらも延長で振り切ると、決勝は前橋商業に屈したとはいえ、こちらは2年ぶりに関東大会のステージへと勝ち上がってきた桐生第一。前日の市立浦和戦は滝沢昴司(3年・リトルジャンボ)が2ゴールに滝沢和司(3年・リトルジャンボ)が1ゴールと、滝沢兄弟の活躍もあってセミファイナルへ。「関東の強豪ともやれるなという自信もあったし、もっと結果を出さないといけないなとも思ってきた」とは田野豪一監督。目の前で前橋商業の激闘を見せられた直後とあって、自然とモチベーションも上がっている様子が窺えます。気温はさらに上昇して32度と完全に真夏日。注目のゲームは佐日のキックオフでスタートしました。
ゲームは立ち上がりからお互いに様子見のような展開に。9分は桐一。右から井上翔太(3年・AZ'86東京青梅)がロングスローを投げ込み、こぼれを井上が自ら狙ったミドルがクロスバーの上へ外れると、以降は膠着状態へ。桐一は滝沢昴司が前を向いてボールを受けた時に、スイッチこそ入り掛けるものの完全には入り切らず。佐日は右SHの末岡北都(3年・埼玉羽生南中)の推進力はアクセントになっていましたが、チャンスの一歩手前で攻撃は停滞。お互いに手数を繰り出せません。
18分は佐日。長﨑達也(2年・足利ユナイテッド)が右へ振り分け、末岡のクロスに青木佑斗(3年・横河武蔵野FC JY)が頭で飛び付くもヒットせず。19分も佐日。ミドルレンジから長﨑が思い切って放ったシュートは桐一のGK休石陸(3年・前橋ジュニア)が丁寧にキャッチ。21分は桐一に決定機。滝沢和司のドリブルで奪った左CKを島田祐輔(3年・坂戸ディプロマッツ)が蹴り込むと、フリーで飛び込んだ一宮憲太(3年・AZ'86東京青梅)のヘディングはクロスバーの上へ。桐一ベンチも思わず頭を抱えてしまいます。
24分に早くも動いた海老沼監督。ボランチの久岡拓馬(3年・アスペガスFC)を小矢島成輝(3年・ヴェルディSS小山)に入れ替え、中盤の顔触れに新たな変化を。28分にはその小矢島が右からFKを蹴り入れ、最後は島田のクリアに遭いましたが、小矢島とキャプテンの小野智史(3年・町田JFC)のドイスボランチで引き寄せたいゲームリズム。
30分は桐一。左サイドでSBの内林晴佳(3年・前橋ジュニア)が粘ってクロスを上げ切ると、ファーに走り込んだ井上のヘディングは枠の左へ。33分も桐一。一宮の右CKは青木がクリアしましたが、島田が頭で押し戻し、最後は木暮一樹(3年・前橋ジュニア)が合わせたボレーはクロスバーの上へ。40+1分も桐一。島田の左CKは佐日のGK江田唯斗(3年・ヴァルディSS小山)がきっちりフィスティングで回避。やや桐一ペースで推移した最初の40分間はスコアレスで終了しました。
後半のファーストシュートも桐一。43分、CBの宇賀神裕人(3年・ウイングス鹿沼)を起点に滝沢和司が繋ぎ、滝沢昴司が放ったミドルはゴール右へ。「昨日は相手が来てくれて空いたからやれた」と田野監督も話したように、前日のゲームで輝いた10番がフィニッシュを取り切りましたが、その5分後にスコアを動かしたのは「自分を犠牲にしてやってくれる選手」と海老沼監督も評価したピンクの18番。
48分、右サイドで末岡が短く付けると青木はそのまま中央へ斜めのパス。うまくDFラインと入れ替わって収めた長﨑が縦に持ち出しながら放ったシュートは、GKのニアサイドを破ってゴールネットへ到達します。「ポイントポイントで点を取ってくれる子で、2年生だけど3年生からの信頼も凄く厚い選手」と海老沼監督も言及した、スタメンただ1人の2年生がこの舞台で大仕事。佐日が1点のリードを手にしました。
「カウンターでやられる回数が多過ぎる。それは減らさないといけない」と田野監督も渋い顔の桐一はビハインドを追い掛ける展開に。50分には左から島田が蹴り込んだCKもシュートには結び付かず。逆に58分には佐日も、相手のミスパスを拾った小矢島がそのまま放ったミドルは休石がキャッチ。59分にも長﨑が左へスルーパスを通し、青木のクロスから5分前に投入されたばかりの加藤亮太(3年・町田JFC)がファーに潜って合わせたシュートはヒットしませんでしたが、続く佐日の時間帯。
2度目の歓喜は先制弾の長﨑と佐藤拓海(3年・川崎西中原中)を入れ替えた3分後の65分。ラインの裏へ蹴ったフィードから、飛び出した相手GKのクリアを加藤が拾って右へ振り分け、青木は中央へ。そこへ走り込んだ小野がループを選択すると、GKの頭上を破ったボールは綺麗な弧を描きながらゴールネットへ吸い込まれます。アイデアと技術の融合した見事なゴラッソに「後ろから走り込めたのでああいう状況になった。それまで突っ込み過ぎている状況があったので、たぶんあの子が考えてタイミング良く入っていったのかなと思います」と指揮官もその修正力をきっちり評価。キャプテンの華麗な一撃でさらに点差が広がりました。
苦しくなった桐一は67分に木暮を下げて、「ずっとメンバー外だったんですけど、攻撃だけだったらかなりできる子」(田野監督)という狩土名禅(3年・アメリカCOPPELL中)を左サイドへ送り込んで最後の勝負へ。佐日も4人目の交替として奮闘した左SBの平田悠太(3年・川崎西中原中)と福田一成(2年・プログレッソ佐野)をスイッチして、最終ラインのさらなる安定に着手。双方がカードを切り合い、ゲームはいよいよ最後の10分間とアディショナルタイムへ。
71分は桐一。右から内林が上げたクロスに、ファーへ突っ込んだ狩土名はとんでもない打点でヘディングを敢行するも、ボールはクロスバーの上へ。72分も桐一。金子凌大(3年・前橋ジュニア)の右FKに滝沢昴司が頭で飛び付くも、江田ががっちりキャッチ。73分も桐一。一宮のパスから狩土名が抜け出し掛けると、「ポジショニングで勝負できる子」と海老沼監督も認めるCBの高柳洸太(3年・前橋ジュニア)が完璧なカバーリングで確実にクリア。高柳と長谷川哲哉(3年・FCおおた)のCBコンビに、右SBの上野貴章(3年・ヴェルディSS小山)も加えた佐日の最終ラインは高い集中力を継続させ、相手のチャンスを1つずつ潰していきます。
74分も桐一。中央で粘った島田がミドルを打ち切るも江田がキャッチ。76分は桐一の間接FK。一宮が小さく蹴り出し、井上が放ったシュートはカバーに入った福田が大きくクリア。79分も桐一。井上のパスを滝沢昴司はスルーで流し、滝沢和司を経由して狩土名が放ったミドルも枠の右へ。最終ラインを3バックにして攻め続ける桐一のアタックもなかなかゴールに至りません。
そして、80+2分に滝沢昴司が、80+3分に狩土名がそれぞれ枠へ飛ばしたシュートを、どちらも江田が丁寧にキャッチすると、灼熱の清瀬に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「昨日の初戦は失点があって自分たちの思うような試合ができなかったんですけど、今日は良い試合ができたので良かったと思います。選手たちが本当に頑張ってくれました」と海老沼監督も選手を称えた佐日が試合巧者ぶりを発揮して、Bグループのファイナルへと勝ち進む結果となりました。
全体的に体格の良い選手や技術の高い選手が多かった桐一を相手に、「守備はあの子たちも頑張れる気持ちがある」と指揮官も言及した守備の粘り強さからカウンターで2点を取り切るなど、80分間をデザインする力で佐日が上回った印象を受けました。最終ラインも決して高さがある訳ではありませんでしたが、再三のカバーリングで相手のアタックを消し続けた高柳を筆頭に、対人の粘れる力は特筆すべきポイント。その対応力が最後の最後まで研ぎ澄まされていた結果が、この無失点という成果に繋がったのかなと。実はこの前日にサッカー部で出場していたフットサルの県大会でも勝利を収め、見事に関東大会出場を勝ち取ったということで、「今年は1年生から3年生までみんなで団結してできるようなことを考えています。今回はこっちに来ていない子も、応援していた子たちも本当にみんな頑張ってくれる選手なので、向こうの応援席にいる子たちにも期待しています」ときっぱり言い切った海老沼監督。138人の団結力で勝負する今年の佐日からは、何かを起こしそうな雰囲気が十二分に漂っています。 土屋
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