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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2015年06月01日

関東大会Aグループ準決勝 前橋商業×日大藤沢@清瀬下宿

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0531kiyose1.jpg3日間の集中開催で行われる関東大会も今日が2日目。千葉王者の八千代を下した前橋商業と栃木王者の矢板中央を退けた日大藤沢のセミファイナルは灼熱の清瀬下宿です。
群馬予選を2年ぶりに制し、過去4度のファイナル進出を経験している関東大会に帰ってきた前橋商業。昨年から母校の指揮官に就任した笠原恵太監督の下、半年前の選手権予選でも最後は前橋育英との"群馬クラシコ"に敗れたものの、やはり決勝まで勝ち上がるなど、ゼブラ軍団復活の気配は着々と進行中。2週間後に迫ったインターハイ予選に弾みを付ける意味でも、全国ベスト4の難敵を下して自信を手に入れるための一戦に挑みます。
まだ記憶に新しい年始の選手権では同校史上初となる全国4強まで躍進し、最後は埼玉スタジアム2002で散ったとはいえ、一気にサッカーファンの注目を集めた日大藤沢。迎えた今シーズンは「彼ら選手も去年だけの日藤と思われたくないと言っている」と話す佐藤輝勝監督の下、「そのためにタイトルは三冠獲りたいという話は出ていた」中でも関東予選で一冠目の神奈川制覇は見事に達成。全国へと繋がる県内ニ冠目への挑戦が間近に迫る状況で、まずは関東制覇という新たな"同校史上初"を獲得すべく、セミファイナルへと臨みます。気温29度、湿度34%というインターハイ本大会のような気候の中、前商のキックオフでゲームはスタートしました。


いきなりのファーストシュートは前商。1分、縦パスに抜け出した星野周哉(2年・子持中)はそのままボレー。ボールは日藤のGK鈴木孔明(3年・横浜F・マリノス追浜)がキャッチしましたが、早くも積極的なフィニッシュへの意欲を。8分には日藤も左に開いたボランチの仁科千優(2年・FC明浜)がアーリークロスを放り込み、収めた興膳和希(3年・湘南ベルマーレU-15平塚)の左足シュートは大きく枠を越えたものの、お互いにシュートを打ち合ってゲームは立ち上がります。
ただ、徐々にリズムを掴んだのは前商。比較的コンタクトに笛を吹く主審との相性もあって、星野と金枝晃平(2年・吉岡中)の果敢なドリブルでセットプレーを続けて獲得。11分には自ら奪ったFKを左から金枝が蹴ると、ファーで風間朝陽(2年・図南SC群馬)が折り返すも鈴木がキャッチ。12分には10番を背負った堀口護(3年・図南SC群馬)が左CKを奪い、金枝のキックのこぼれを左SBの豊田博斗(3年・図南SC群馬)が叩いたミドルはクロスバーの上へ。14分にもやはり星野のドリブルが相手のファウルを誘い、金枝の左FKは住吉ジェラニレショーン(3年・BANFF横浜ベイ)がクリアしたものの、再び豊田が合わせたボレーは枠の左へ消えましたが、サイドでの仕掛けが奏功した前商が続けた手数。
17分には日藤も右SBの福屋凌平(2年・横浜F・マリノス追浜)がドリブルでFKを獲得し、石坂尚己(2年・大豆戸FC)のキックはニアで前商のキャプテンマークを託された干川裕人(3年・吉岡中)がクリアしましたが、こちらも日藤のキャプテン小野寺健也(3年・秦野南中)がフワリと狙ったヘディングはクロスバーの上へ。19分は前商が流れの中からチャンス。右から金枝が斜めに入れたボールをバイタルに潜った星野が落とし、ボランチの宮下倖希(3年・前橋エコー)が打ったシュートは枠の左へ外れたものの、「中盤でセカンドを拾えなかった」(佐藤監督)日藤を尻目に、上州のゼブラが良い時間帯を創ります。
25分は日藤にセットプレーの好機。蛭田悠弥(3年・横浜F・マリノスJY)の左CKはストーンの干川が掻き出すも、再び蛭田が中へ送り込み、CBの工藤泰平(2年・SCH.FC)がスルーで呼応すると、仁科のシュートはクロスバーの上へ。前商も28分と29分にはそれぞれ堀口と風間がミドルを放ちましたが、どちらもゴールを陥れられず。33分は日藤に流れの中から好機。石坂、興膳と繋いで右へ展開したボールを、福屋はグラウンダーでクロス。ニアへ突っ込んだ矢後佳也(3年・湘南ベルマーレU-15小田原)はわずかに届かなかったものの、ようやく日藤にも出てきたゴールへの雰囲気。
36分の歓喜はやはりドリブルとセットプレーの合わせ技。金枝が右サイドで獲得したFKを自ら蹴り込むと、受けた堀口が懸命に粘って残し、エリアへ入った干川が右足で渾身のシュート。ボールはきっちりとゴールネットを揺らします。「ボランチの2枚は守備力があって良い」と笠原監督も守備面での期待を寄せていたキャプテンが攻撃面で大きな成果を。前商が先にスコアを動かしました。
「頭がカラッポになっていて誰も反応していなかった。『セカンドを俺に任せろ』というヤツが出てこないのが問題」と佐藤監督も言及した日藤は1点のビハインドを追い掛ける展開に。37分には福屋のクロスに「県予選は1試合も使っていなかった」(佐藤監督)という住吉が頭から飛び込むも、副審のフラッグが上がってオフサイドの判定。40+1分には石坂の突破で手にした、ゴールまで約25mのFKを蛭田が直接狙うもボールは枠の右へ。全体的には攻撃の回数も多かった前商が1点をリードして、ハーフタイムに入りました。


後半のファーストチャンスは日藤。42分、興膳がクイックFKで裏を狙い、走った矢後より一瞬早く前商の守護神を任された田村健太朗(1年・前橋ジュニア)がクリアしましたが、桃色の同点弾はその1分後。43分、興膳のドリブルで左CKを獲ると、蛭田はショートで手前へ。仁科のリターンを受けた蛭田は、そのまま左サイドをえぐって右足一閃。ボールはニアサイドをぶち抜いて、ゴールネットへ突き刺さります。「蛭田が良いタイミングで取ってくれた」と10番を称えた佐藤監督。たちまちスコアは振り出しに引き戻されました。
以降は一気に上がった日藤のギア。52分には「今日は興膳が途中まで暴れながらやってくれた」と名指しで指揮官に評価された興膳に替わって、佐藤拓(3年・SC相模原JY)が右SHへ投入され、矢後が中央にスライド。56分には蛭田の右CKに小野寺が宙を舞うも、ヘディングは当て切れず。58分にも佐藤のパスを矢後がヒールで落とし、石坂が狙ったミドルは前商の守備職人とも言うべき右SBの若林泰輝(2年・図南SC群馬)が体でブロック。「後半はちょっと中を止めて、サイドの頑張りと崩しを狙おうと」佐藤監督に送り出された日藤が引き寄せたゲームリズム。
「1-0で勝てるとは思っていなかった」と笠原監督も口にした前商は耐える時間帯。60分には若林が斜めに打ち込んだクサビを風間が落とし、堀口がミドルレンジから打ち切ったシュートはゴール右へ。62分には佐藤監督が2人目の交替を決断。住吉を下げて菅原大雅(2年・SC相模原JY)をピッチへ解き放ち、そのまま最前線へ配置しましたが、「良い展開で取り切れないから、やっぱりゲーム的に苦しくなってしまった」と佐藤監督。「守備の所は良い選手が多いかな」と笠原監督も認める、豊川柊弥(3年・吉岡中)と木村に加えて干川を軸とした前商守備陣の奮闘でスコアは動かず、ゲームはいよいよ最後の10分間へ。
70分はゼブラの咆哮。後半に入って初めて獲得したCKを金枝が左から蹴り込むと、ファーで豊川がドンピシャのダイビングヘッド。ボールはゴールネットへ飛び込み、前商の勝ち越しゴールかと思われましたが、主審はその前にオフェンスファウルを取っていたためノーゴールに。頭を抱える前商応援団に胸をなで下ろす日藤応援団。
逆に日藤も73分、74分と連続セットプレーを迎えるも、フィニッシュへは持ち込めず。74分に前商が星野と小此木駿(1年・図南SC前橋)を、76分に堀口が放った枠外ミドルを挟み、80+1分に日藤が佐藤と石井峻(2年・Confiar町田)をそれぞれ入れ替え、80+2分に蛭田が放ったミドルが枠の右へ外れると、聞こえたタイムアップのホイッスル。両者譲らず。ファイナル進出の行方は前後半10分ハーフの延長へと持ち越されることになりました。


わずかな休息を与えられたイレブンが円陣で気合を入れ直し、ピッチへと帰ってきた20分のエクストラタイム。81分の決定機は前商。左サイドの高い位置を1人でえぐった豊田はそのままフィニッシュまで繋げ、間一髪でDFがブロックしたものの、突然のビッグチャンスに再び緊張感を取り戻したスタンド。
それでも、ここからは日藤のラッシュ。83分、石坂、仁科とボールが回り、蛭田のミドルはDFに当たってわずかに枠の右へ。84分、左SBのレフティ西尾隼秀(3年・バディーJY)が蹴った右CKは干川がクリア。86分、福屋のパスから蛭田が枠へ飛ばしたミドルは田村がファインセーブで阻み、詰めた矢後の至近距離ショットは体勢を立て直した田村がまたもやビッグセーブで仁王立ち。86分から蛭田が3本連続で中へ送ったセットプレーもすべてDFがクリア。89分には前商も豊田を起点に堀口が鈴木にキャッチされる枠内ミドルを。すぐさま経過した10分間。残された時間は泣いても笑ってもあと10分のみ。
笑ったのは藤沢の桃色。92分に蛭田がエリア内へ侵入すると、マーカーはタックルで対応。蛭田の転倒を受けて、主審は躊躇なくペナルティスポットを指差します。日藤に訪れた千載一遇の勝ち越し機。キッカーは蛭田自ら。短い助走から右スミを狙ったボールに田村もきっちり反応したものの、蛭田のコースとスピードが上回り、揺れたゴールネット。10番のドッピエッタが飛び出し、この試合では初めて日藤がリードを奪いました。
追い込まれた前商は96分に風間と堀井景太(1年・FC川越水上公園)をスイッチするも、直後には蛭田のパスを引き出した福屋にゴール右へ逸れるミドルを打たれると、98分には宮下と高橋直希(1年・図南SC前橋)も交替して、最後の勝負に。99分に左から金枝が丁寧に蹴ったFKも鈴木がキャッチ。100分に左から堀井が投げ込んだロングスローもシュートには繋がらず。誰もが勝敗の行方を悟った瞬間、しかしゼブラは屈せず。
100+1分は左サイドでのスローイン。ここも1年生の堀井が強肩を生かしてロングスローを投げ入れると、混戦の中で少し輪から外れたボールへいち早く反応した木村は思い切ってミドルを敢行。DFに当たったボールは本来のコースへ飛んでいたGKを避けるかのように、無人のゴールネットへゆっくりとゆっくりと吸い込まれます。「相手は本当になかなか粘り強かったですね」と佐藤監督が苦笑した"粘り強さ"は前商の「譲っちゃいけないかなと思う伝統」(笠原監督)。土壇場で前商がスコアを揺り戻し、ファイナルへの切符はPK戦へと委ねられることになりました。


同点に追い付かれた瞬間、佐藤監督が最後の交替カードとして送り出したのはGKの小菅陸(3年・川崎チャンプ)。「ここで前日練習をさせてもらった時にPKになったら今回は小菅というのは決めていた」とその指揮官。昨年の選手権1回戦でも同様に試合終了直前にゴールマウスへ解き放たれ、連続セーブでPK戦勝利に貢献した"職人"にファイナル進出を託します。
前商1人目の干川がほとんど中央にグサリと打ち込めば、日藤1人目の蛭田は試合中と同じ右スミへ蹴り込み、今度も読んでいた田中はわずかに及ばず。前商2人目の豊川は小菅もコースは読んでいたものの、気持ちでねじ込みゴール。日藤2人目の工藤も田中に読まれながら右下へ成功。前商3人目の木村は完全にGKの逆を突いてゴールネットへ流し込み、日藤3人目の石坂も田中の反応よりわずかにポストギリギリの左スミへ成功。この段階に来ても両者に差は生まれません。
前商4人目は上下動を繰り返し続けた豊田。右足で打ち抜いたボールはクロスバーにハードヒット。日藤4人目の菅原は冷静にGKと逆のゴールネットへボールを送り届け、とうとう両者に1点の差が生じます。外せば終わりとなる前商5人目の堀口はプレッシャーを跳ね除けて左スミへきっちり成功。そして日藤5人目はキャプテンの小野寺。キックは向かって右。田中が飛んだのも向かって右。1秒後に拳を突き上げたのは小野寺。「去年のアレもあってPK戦は無敗なんです。桐蔭学園にも準決勝はPK戦で勝ってきているので、そういう意味では思いっ切り自信を持って蹴っていましたし、次に繋がるゲームになると思います」と佐藤監督。激闘を制した日藤が明日のファイナルへと駒を進める結果となりました。


100分間プラスアルファの超熱戦でした。「力の差はあったので追い付いたのは良かったなと思います」と笠原監督も話した前商のメンタルタフネスは見事の一言。関東の舞台で強豪相手に2試合を経験したことは大きな財産であり、しかも「守ってばっかりじゃない」(笠原監督)スタイルでこういうゲームができたことも大いに胸を張っていいポイントでしょう。また、「本当は2‐1で勝ち切らなくてはいけないゲーム」と佐藤監督も苦笑いした日藤は、やはり今年も面白いチームになっていきそうな印象を受けました。GKも含めた守備陣には昨年の選手権を経験したメンバーが多く残り、アタッカー陣にもいわゆる"タレント"は豊富。「もちろんこの優勝はステップアップになると思いますから、明日も全力で勝ちに行きますけど、先を見据えてインターハイに向けての課題を自分たちも出し切りながら、色々なチームが教えてくれることは凄く良い意味で捉えています。明日は最大限のパフォーマンスで優勝したいですね」と佐藤監督。県内一冠目の先にあった今シーズンの"ニ冠目"まではあと1勝です。       土屋

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