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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2015年05月11日

J2第13節 金沢×岡山@石川西部

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0509kanazawa.jpg「順位表を見た時に『エッ?』みたいなこともある」と笑った水永翔馬の話す"順位表"で彼らが位置するのは一番上。堂々たる首位の金沢と9位の岡山が対峙する一戦は石川県西部緑地公園陸上競技場です。
J3の初代王者に輝いたのはわずかに半年前のこと。そして、それから半年後の彼らを待っていたのは、現在まで続く9試合負けなしという偉業が導いたまさかの首位。ただ、「J3で積み重ねてきたことが、そのままJ2でも通用している」と太田康介が話せば、「今年J2を戦う上でキャンプからずっとやってきていることを今も続けてやってくれている」とは森下仁之監督。東京VやC大阪といった"先輩"にもきっちり競り勝ち、世間を驚かせてきた勢いが本物であることを怒涛の5連戦のラストゲームでもホームで証明するだけです。
長澤徹コーチを監督に昇格させ、ここ数シーズンの躍進で間違いなく視界に捉えつつあるJ1へ辿り着くためのリスタートを切った岡山。ホームで迎えた開幕戦では岐阜を3-0で一蹴し、以降もC大阪や大宮に加えて磐田とも引き分けるなど好スタートを切ったものの、9節で札幌に敗れてからは4試合未勝利とやや停滞傾向に。それでも「雰囲気は全然悪くない」と話したのは妹尾隆佑。その雰囲気を一気に上向かせるために、アウェイでの首位撃破は格好の材料です。試合前には両チームのサポーターが暖かく交流を深める一幕も。前述したように過酷な5連戦の最終戦は岡山のキックオフでスタートしました。


ファーストシュートを放ったのはホームチーム。2分、相手のクリアミスを拾った清原翔平は思い切り良くミドル。ボールはDFに当たって枠の右へ外れたものの、ここまでフォルランに次いでJ2得点ランク2位に付ける7番がフィニッシュへの意欲を前面に押し出すと、山藤健太が蹴った右CKはDFのクリアに遭いましたが、まずは金沢が勢い良く立ち上がります。
4分には岡山も田所諒が左からクロスを送り、こぼれを叩いた渡邉一仁のボレーは枠の左へ。同じく4分は金沢。右サイドから辻尾真二がアーリーを蹴り込むと、山藤が放ったミドルはDFをかすめてゴール左へ。ここから3本続けて辻尾が入れた左CKは、それぞれ岩政大樹、中林洋次、片山瑛一に弾き出されるも、「立ち上がりはそんなに悪い入りではなかった」と森下監督も評したように、ペースはやや金沢に。
さて、「テンションを落としてブロックを組んで、本当に待ち構えているようなスタイル」(長澤監督)という相手に対して、スローペースでゲームに入った岡山もセットプレーから窺うチャンス。8分には左サイドで持ち出したCBの竹田忠嗣のクロスから奪った左CKを田所が蹴ると、ここはDFがクリア。16分には左から片山が得意のロングスローを投げ込み、ここもDFがクリアしましたが、少しずつ「ボールを動かしながらというゲームプラン」(長澤監督)が顔を覗かせ始めます。
20分は岡山。相手DFのクリアが小さくなったボールを千明聖典が頭で繋ぎ、片山が左足ボレーで狙ったシュートはクロスバーの上へ。25分も岡山。片山を起点に「バイタルエリアをうまく使いたいなとは思ってやっていました」という妹尾が粘って右へ。上がってきた加地亮がマイナスに折り返すと、千明のシュートは枠の右へ外れたものの、このゲームで一番の崩すイメージをフィニッシュまで。「岡山さんがもうちょっと早く縦に来るかなと思いましたけど、意外と我慢して左右にボールを動かしていたので、そこはちょっと思惑と違いました」とは森下監督。アウェイチームがジワジワと奪い返すゲームリズム。
金沢も27分には辻尾の左FKから、最後は「本当にやってみないとわからないという感じだったので、そんなに驚きとかも特にない」と今の好調を見ている山藤が左足で狙うも、ボールはゴール左へ。28分は岡山。千明のラストパスに片山が走るも、ここは太田がきっちりカバー。36分も岡山。田所の右CKから妹尾が打ち切ったシュートは枠の右へ。攻める時間の長い岡山も「焦ってどんどん前に入ってカウンターというのは嫌」(妹尾)というリスクマネジメントを当然考慮する中で、ジリジリとした展開が続きます。
両チームを通じて初めての枠内シュートは40分の岡山。高い位置まで竹田が上がり、左サイドに開いた押谷祐樹は右足でクロス。うまく潜った妹尾のバックヘッドは金沢のGK原田欽庸がキャッチしたものの、ようやく決定機に近い形を創出。41分は金沢。秋葉勝のパスを引き出し、清原がミドルレンジから放ったシュートは岡山の右CB久木田紳吾が体でブロック。45分も金沢。太田のシンプルなフィードを「あそこで収めることが僕の役目だと思う」と語る水永が収めて右へ振り分けるも、辻尾のクロスはゴールキックに。「前半はしっかり自分たちの許容範囲の中でできていたんじゃないかなと思います」(太田)「前半はゼロで終われていたので、別に悪くはなかったと思います」(山藤)と金沢の2人が声を揃えれば、「脅威の一歩手前まで与えながら、リスクを踏まずに前半は終えました」と長澤監督。失点だけはしたくない両者の思惑が交差した最初の45分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。


赤雉の歓喜は唐突に。50分、中林のキックを収めた押谷が短く繋ぐと、左へ開いてパスを受けた片山は左足一閃。強烈な弾道を描いたボールは豪快にゴールネットへ突き刺さります。これには「自分が競った後のセカンドで決められてしまったんですけど、シュートを褒めるべきかなという風には思います」と金沢の太田も脱帽。「バランスゲームの"ジェンガ"をやっているような」(長澤監督)ゲームは、岡山が先にスコアを動かしました。
以降も全体的なペースは大きく変わらない中、「気持ち的にはどんどん前に行きたかったですけど、結局それで2点目を入れられたらほぼゲームは決まってしまうので、そのへんのバランスと、監督も『まだ慌てるな』と言っていたので、じっくりやっていればチャンスはあるかなと思っていました」と山藤が振り返ったように、金沢のギアはそこまで上がらず。61分は岡山。加地のクサビを片山が落とし、妹尾が放ったシュートはクロスバーの上へ。63分は金沢。太田がインターセプトからそのまま持ち上がって打った35mミドルは中林がしっかりキャッチ。出し合う手数も点差は変わらず。
63分は双方にカウンターからチャンス。先に岡山。中央を運んだ押谷が右へラストパスを送ると、「ちょっとボールが外に行って『コースがないかな』というのとGKも寄ってきていたので、打つフリをして折り返したら逆を突けてゴールに流し込めるというイメージ」を持った妹尾は折り返しを選択し、片山は触り切れずにDFが何とかクリア。一転、金沢は右サイドを辻尾が運んでクロスを送るも、佐藤和弘はシュートまで持ち込めず。双方フィニッシュには至りませんでしたが、とりわけ前者のシーンは完全な決定機。金沢は「少し前掛かりになった危ない場面」(森下監督)を創られるも、相手に助けられたような格好で何とか1点差を保ちます。
同時に両指揮官が動いたのは64分。長澤監督は妹尾を下げて、同じシャドーの位置に矢島慎也を投入。森下監督は2枚替え。左SHの大槻優平と佐藤に替えて、金子昌弘と廣井友信をピッチへ送り込み、廣井の右SB起用を受けて、辻尾は1列上がって右SHへ、右SHの清原は左SHへそれぞれスライド。双方が全体のバランスへ変化を加え、ゲームは残された25分間へ。
67分は金沢。金子の果敢なドリブルで奪った左CKを辻尾が蹴るも、DFがきっちりクリア。69分は岡山。田所のパスを千明が捌き、押谷のミドルはクロスバーの上へ。70分は金沢。太田のフィードに水永が抜け出すも、ここはオフサイドの判定。74分も金沢。ルーズボールを拾ったチャ・ヨンファンが左からカットインしながら狙ったミドルは、わずかにクロスバーの上へ。75分も金沢。山藤が左へ狙ったスルーパスは、わずかに清原と合いませんでしたが、「金子が入って、辻尾を1つ前に出したあたりから全体が前に掛かるようになって、攻撃的に相手のゴールを脅かすことになったんじゃないかな」と森下監督。赤母衣衆の勢いに比例して、上がっていくスタンドのボルテージ。
『タオルを回せ!』。蹴球劇場の結実は75分。右から山藤が蹴ったボールはファーサイドへ届き、飛んだ水永のヘディングは彼の頭上へ。「上に上がったのがすぐ見えたので、急いで走り込んで中へ折り返しました」という水永の連続ヘディングに、チャ・ヨンファンがボレーで呼応した1秒後、ボールはゴールネットへ飛び込みます。「前半はニアに蹴っていたんですけど、あの場面は蹴る前に太田選手が『ファー、ファー』みたいに言っていたので、それでファーに蹴った」と明かしたのはキッカーの山藤。沸騰したホームのゴール裏。両者の点差はたちまち霧散しました。
77分に金子とのワンツーから太田が果敢なミドルを枠の上に外すのを見て、長澤監督は2人目の交替に着手。ボランチの千明と島田譲を入れ替え、レフティ同士のスイッチで中盤に新たな活力を。81分にその島田の縦パスから、マーカーを外した矢島が原田にキャッチされる枠内ミドルを打ち込んだのを見て、森下監督は最後の交替を決断。辻尾に替わってピッチへ解き放たれたのは田中パウロ淳一。ムードメーカーであり、ジョーカーでもある"パウロ"に託された逆転への糸口。
84分は岡山に好機。右サイドから加地が斜めにパスを蹴り入れ、うまくギャップに潜った矢島のパスを島田が狙うも、入ったばかりの田中がきっちりブロック。87分は金沢にビッグチャンス。水永が前線で粘って残し、田中がワンテンポ溜めて中へ戻すと、山藤の鋭いミドルはゴール方向へ。軌道がほんの少しだけ枠の左へ外れたのを見て、頭を抱えたのは選手とベンチと、そしてスタンド。直後に長澤監督も最後のカード投入を。加地を下げて、今シーズン初出場となる澤口雅彦を同じ右WBに送り出し、整える守備バランス。
首位の証明とも言うべき猛ラッシュのスタート。88分、田中の丁寧なスルーパスを、金子はトラップし切れずにボールロスト。90分、相手のクリアから水永が粘って獲得した右CKを山藤が蹴るも、誰も触れずゴールキックへ。掲示されたアディショナルタイムは4分。90+2分、金子が粘って中央へ放り込んだクロスへ、長い距離を駆け抜けて突っ込んだ大田はわずかに届かず、中林が大事にキャッチ。90+4分、金子のパスから山藤が枠へ収めたミドルは中林がパンチングで回避。赤き犬鷲は赤雉を撃ち落とせるのか。
付け加えられた240秒を少し回った90+5分は「ウチのチームの武器の1つかなと思います」と山藤も話したセットプレーのチャンス。その8番のレフティが左からFKを蹴り込み、「ラストプレーというのも何となくわかっていた」太田が頭から飛び込むと、ボールは右スミギリギリのゴールネットへ弾み込みます。アウェイのゴール裏を除いたスタジアムのすべてが瞬時に沸騰しましたが、その熱をこれまた瞬時に醒ましたのは副審の上げたオフサイドフラッグ。「僕は入ったと思いましたけど。ちょっとラインは見えていないので」とは森下監督。「自分がオフサイドかどうかもわかっていなかったので、喜ぼうと思った瞬間に副審がフラッグを上げているのが見えちゃった」という太田は続けて「『あ~、ヒーローになり損ねたな~』という感じですよね」と苦笑い。ファイナルスコアは1-1。両者が記録したゴールとまったく同じ数字が、両者に勝ち点として振り分けられる結果となりました。


「結果的に金沢さんのストロングであるセットプレーのセカンド、サードの所でちょっと足が止まってしまってやられたのは非常に悔やまれるのですが、その前に綺麗な形のカウンターとか、そういう部分で差し切れないと、この世界のルールで痛いしっぺ返しが待っているなというのは、身に染みてチームとして持ち帰って勉強したい」と長澤監督が話したように、失点シーン以上に悔やまれるのは63分にカウンターで掴んだ決定機逸。「個人で打つ部分でもああいう折り返しの部分でも結果に繋げたかった」と妹尾も振り返りましたが、完全に相手を崩しながらシュートまで持ち込めなかったあたりに、今のチームが抱える課題が象徴されていたように感じました。ここ3試合は引き分けが続いているだけに、この"勝ち点3"を生かすためにも次の福岡戦はアウェイゲームとはいえ、絶対に落とせない90分間だと言えそうです。
「好調なのか快進撃なのかわかりませんけど」と笑いながら、「選手たちがそれぞれの良さというのをしっかりと理解しながら、誰一人エゴというかそういったものを持たずに全員が助け合いながらできている」と好調の要因を語った森下監督。これで10まで伸びた金沢の無敗記録がフロックではないことは、この日の90分間を見ていれば十二分に理解できました。最前線で体を張り続けた水永は「1人1人がやっぱり挑戦者というか、下から上がってきたチームということを自覚して、監督が練習で落とし込んでいることをゲームでしっかりやれていることが、一番今の結果に繋がっていることだ思います」と力強く話し、「これから苦しい時期が来ると思うんですけど、その中でもうまく立ち返る所があるので、あまり先行きに関して今は悲観はしていないですね」と言い切ったのはチーム最年長の太田。「別に首位になったからといって選手たちの気持ちの変化だとか、取り組み方というのは大きく変わっていないという風に感じています」と話す森下監督に率いられ、今の状況に浮かれることなく、しっかりと足元を見て確実に一歩一歩進んでいる金沢の進撃はどうやらまだまだ止まりそうにありません。    土屋

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