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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
関東のユース年代を牽引してきた2つの強豪が激突するビッグマッチ。柏U-18とFC東京U-18の"再会"は日立台の人工芝です。
ようやく辿り着いた最高峰のステージをいきなり手中に。最後はC大阪U-18に屈して日本一とはならなかったものの、2011年のトップチームを想起させる鮮やかさで東の頂点に立った柏U-18。そのトップチームへ昇格した中山雄太や大島康樹を筆頭に、多くの主力が抜けた中で立ち上がった今シーズンのリーグ戦は、ここまで2分け1敗と白星に恵まれず。「前の方の3年生は去年出ていたヤツが残っているので、どっちかと言ったら車で言うと前輪駆動のチーム」と下平隆宏監督が形容したように、山﨑海秀(3年・柏レイソルU-15)や伊藤達哉(3年・柏レイソルU-15)、浮田健誠(3年・ミナトSC)といった3年生アタッカーら"前輪"の活躍がシーズン初勝利の鍵を握ります。
激戦のプリンス関東を2位で駆け抜けると、迎えたプレミア昇格決定戦では徳島市立と清水桜が丘を相次いで撃破し、史上初めてとなる"プレミア復帰"を勝ち取ったFC東京U-18。久々となるプレミアの印象を「色々な戦い方をしてくるチームが多いので、よりトップのサッカーに近いと言うか、情報がたくさんもらえる代わりに逆に僕らも見られているので、そういった中で策を練るという雰囲気はプリンスにいた時よりも感じます。サッカーの本質も追うんですけど、多少戦術的な所も踏み込んでいかないと、なかなか今後難しくなってくるのかなというのは感じています」と話したのは佐藤一樹監督。黒星スタートとなった開幕戦以降は現在2連勝中。さらなる上位を窺うために大事な90分間に挑みます。この日は午後からトップチームもリーグ戦を戦うため、レイソルサポーターも大挙して金網周辺に集結。気温27.7度とポカポカ陽気を通り越したコンディションの下、東京のキックオフでゲームはスタートしました。
開始1分に東京の相原克哉(3年・FC東京U-15むさし)がいきなりイエローカードを受けるなど、双方が火花を散らしあう格好で立ち上がったゲームのファーストシュートは柏。7分、右サイドでボールを持った浮田はミドルレンジから枠内へ。ここは東京のGK波多野豪(2年・FC東京U-15むさし)がキャッチしたものの、2種登録のレフティストライカーが積極性を打ち出すと、試合が動いたのはその直後。
8分、右サイドから熊川翔(3年・柏レイソルU-15)がスローインを投げ入れ、受けた大谷京平(2年・柏レイソルU-15)はそのままクロス。ファーへ流れたボールへフリーで走り込んだ伊藤が右足ボレーで叩いたシュートは、クロスバーの下を叩いてそのままゴールネットへ飛び込みます。「彼が1人で局面を変えたりとか違う味付けをするので、そこはチームとして違うアイデアになっている」と指揮官も評価するドリブラーが見事なフィニッシュで一仕事。柏が1点のリードを奪いました。
さて、早くもビハインドを追い掛ける格好になった東京。10分には内田宅哉(2年・FC東京U-15深川)がドリブルで運び、10番の佐藤亮(3年・FC東京U-15むさし)がミドルを放つもDFがきっちりブロック。14分には佐藤が左から入れたCKも浮田がきっちりクリア。なかなか縦へのスイッチが入っていきません。
一方、基本的には最終ラインからきっちりボールを繋ぐスタイルは例年の継続がありながら、「もっと去年は俺がベンチにいて『もういいんじゃない』と思うくらいねちっこかったんだけど、今年へ結構せっかちで逆にストップを掛ける感じ」とは下平監督ですが、逆にその縦への速さもアクセントに。16分にはCBの城和隼颯(2年・柏レイソルU-15)がシンプルに左へフィードを送り、走った伊藤はわずかに届きませんしたが好トライ。20分には浮田がこの日2本目のミドルを枠内へ打ち込み、波多野が何とかキャッチしたものの、良い意味での早めのトライが生み出すゲームリズム。
すると、26分には狙い通りの形から決定機。アンカーの安西海斗(3年・柏レイソルU-15)が左のハイサイドへボールを送ると、まったくのフリーで飛び出したのは伊藤。シュートは波多野が弾き出して追加点とはいかなかったものの、「相手はダブルボランチが人に付いて持ち場からいなくなっちゃうので、あそこの空いたスペースは健誠かサイドハーフが取って、健誠が降りたスペースには伊藤が入っていく」(下平監督)という意図通りの格好でチャンスを生み出します。
16分、26分と使われた右のスペースに関して「攻撃で先手を取れという風には僕も言っていた中で、なかなか前の方に行けずにボールの奪われ方も悪くて、ポーンと入れられる回数が増えてしまった」と話したのは佐藤監督。3-4-3を基本布陣にしながら、相原が高い位置を取る右サイドはある意味で諸刃の剣。「2人で右往左往してしまってちょっと悲惨でしたね」と指揮官も話したように、やや相原と柳貴博(3年・FC東京U-15深川)の右サイドはこの日の前半に限って言うとうまく使われた印象でした。
何とか早く追い付きたい東京も30分以降は手数を。30分には小山拓哉(3年・FC東京U-15むさし)の左クロスに大熊健太(3年・FC東京U-15深川)が競り合い、こぼれに合わせた安部柊斗(3年・FC東京U-15むさし)のボレーはクロスバーの上へ。36分にも小山が左クロスを送り込み、大熊のヘディングは柏のGK滝本晴彦(3年・柏レイソルU-15)がキャッチ。40分には安部のパスから佐藤が、45分には佐藤のパスから安部が、それぞれ枠内シュートを放つも共に滝本が確実にキャッチ。「基本的にはしっかり前から行って圧力を掛けて、自分たちのペースにできればなと思っていたんですけど、うまくレイソルに剥がされ続けてしまった」と佐藤監督。最初の45分間はペースを握った柏が1点をリードして、ハーフタイムに入りました。
後半は「とにかくまずはメンタリティの部分でしっかり戦えているのかという所をまず見直した」(佐藤監督)東京が先にチャンスを。47分には大熊とのワンツーから安部がクロスバーを越えるフィニッシュ。51分には果敢な守備でボールを奪った大熊が中へ付けると、鈴木喜丈(2年・FC東京U-15むさし)は強烈なミドル。ここは滝本がファインセーブで弾き出し、直後に佐藤が蹴った右CKはゴールラインを割ってしまいましたが、まずはアウェイチームが同点への意欲を打ち出します。
55分は柏。「レイソルっぽい所がちょっと足りなかった所が実際あったけど、他のプレーのレベルの水準も上がってきて、その上で特化したドリブルというものがある」と下平監督も評価した伊藤が、左サイドから中央に鋭く切れ込んで右へ。上がってきた熊川の好クロスに、飛び込んだ浮田は利き足と逆の右足ボレー。ボールは枠の右へ外れたものの、伊藤、熊川、浮田と昨年から出協機会を得ていた3人の持ち味が凝縮された崩しで、漂わせた追加点の香り。
ただ、63分に佐藤が、65分に内田がフィニッシュを取り切るなど、時間が経過していくにつれて「後半は思い切って行ける所が増えたので、そこで勇気を持って圧力を掛けられて奪える回数も増えてという形にはなったと思う」と佐藤監督も話した東京がジワジワとゲームリズムを奪還。その理由の1つはドイスボランチを務める鈴木のプレーエリア。「(岡崎)慎と善丈が普段から仲良くて、近い位置でやりたいのかわからないですけど、あの2人のパス交換がやたら多くて僕は凄く気になっていたので『恋人を捨てて前に行け』と言いました(笑)」と佐藤監督は冗談交じりに笑ったものの、確かに前半は鈴木が最終ライン付近でパスを裁くことが多く、縦へボールが動かない一因になっていた印象も。それが後半は比較的前へと進出する回数が増えたことで、全体の推進力も上がったように見えました。
「ちょっと歯車がうまくいかなくなった時に戻せないというのが今年のチームの課題」と下平監督が口にした柏は、少し押し込まれる時間が長くなってきた中、66分にセットプレーのチャンス。右サイド、ゴールまで約30mの位置で獲得したFKをキャプテンの下澤悠太(3年・FC PROUD)が小さく出すと、浮田が強烈な無回転ミドル。波多野は何とか弾き出したものの、一発の脅威を見せ付けます。
守備はキャプテンの渡辺拓也(3年・FC東京U-15深川)を中心に格段に安定。良い流れを成果に結び付けたい東京は74分に1人目の交替。内田に替えて南大輔(3年・クマガヤサッカースポーツクラブ)をそのまま3トップの一角に送り込むと、千載一遇の同点機が訪れたのはその4分後。左サイドでボールを引き出した鈴木はDFラインとGKの間にピンポイントアーリー。潜った佐藤とGKが交錯すると、主審はペナルティスポットを指し示します。キッカーは佐藤自ら。10番の選択は右。滝本も同サイドに飛びましたがわずかに及ばず。終盤に差し掛かってスコアは振り出しに引き戻されました。
勢いは完全に東京。81分、右から大熊が入れたFKを岡崎慎(2年・FC東京U-15深川)が頭で狙うも、ボールはクロスバーの上へ。何とか凌ぎたい柏は82分に山﨑と鬼島和希(2年・柏レイソルU-15)、84分に浮田と白川恵士朗(3年・柏レイソルU-15)を相次いでスイッチ。86分には佐藤の左CKを再び岡崎がヘディングでクロスバーの上へ外すと、下平監督は86分に「自分たちがボールを持っている分にはレイソルのCBとして遜色はない」と評価した1年生CBの岡本宗馬(1年・柏レイソルU-15)と宮本駿晃(1年・柏レイソルU-15)、87分に大谷と窪田匡輔(3年・柏レイソルU-15)も入れ替え、左SBの古賀太陽(2年・柏レイソルU-15)を城和とCBに並べて守り切る意識を高めに掛かります。
90分は東京の決定機。鈴木が中央で粘って残し、直前に投入されたばかりの西元類(3年・FC東京U-15むさし)が放ったシュートはわずかに枠の左へ外れ、頭を抱えたベンチと溜め息を漏らした応援席。90+1分も東京の決定機。ここも鈴木がパスを繋ぎ、佐藤が左スミを狙ったミドルは滝本が横っ飛びでファインセーブ。90+3分に柏にとって最後の交替となる下澤と昼間拓海(2年・柏レイソルU-15)のスイッチを経て、90+4分には粘って収めた安部のシュートを滝本が何とかキャッチすると、これがこのゲームのファイナルシュート。「まだこのチームは発展途上なので、90分通して前半みたいなサッカーをずっと披露できない。そういう未熟な部分を伸ばしている段階で、勝ち点1で今はしょうがないかなと思っています」と下平監督が話せば、「圧力はだいぶ前半よりか掛けられたと思いますし、シュート数も多かったので、もう1個くらい入っていてもらえればラッキーだったと思うんですけど」と佐藤監督。両者に勝ち点1ずつが振り分けられる結果となりました。
「前半にペースを握っている間にもっと行ければ良かったんですけど、こっちの消耗も激しかったので『我慢の試合になるな』というのは最初からずっと言っていた」と下平監督が話した柏は、その意味ではとりわけ相当押し込まれた終盤を我慢しながら、勝ち点1に結び付けたという意味では決して悪いゲームではなかったのかなと。ただ、「後ろは本当に若いので、そこは来年に向けて良い経験をさせてあげられてるなというポジティブな部分と、当然勝ち点を乗っけていかないといけないという所では、本当はもっと勝っていきたいんですけどね」と指揮官は本音もチラリ。この厳しいステージを経験していく過程で、チームの新たな成長が待たれる所です。
「初戦のアントラーズ戦は自分たちのミスで失点して、今日も自分たちのミスみたいな形で最初に失点したと。アントラーズ戦はそのまま勝ち点を取れずに終わる形だったので、そこも踏まえて今日は自分たちがどういう成長をしているのかという中で『勝ち点1でも取るのか、3を奪い切れるのかというのが試されているんだよ』という形の話もハーフタイムにした」と佐藤監督。途中からリズムを奪い返しながら、先に取られた失点が響いて1点に届かないという、鹿島戦のような"負けパターン"を払拭したことは、東京にとって小さくない意味のある勝ち点1獲得だったのではないでしょうか。個人的にチームのキーマンだと感じているのはボランチの鈴木。「本当に前半と後半では別人だったので、まだまだのびしろがあるなと思っていましたね」と指揮官も言及したレフティには今後も注目していきたいと思います。 土屋
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