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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
「子どもたちに夢を!」の誓いを胸にトップディビジョンを目指す新たな夢のリスタート。新指揮官を頂いた赤雉の開幕戦はシティライトスタジアムです。
5年続いた影山雅永監督体制にピリオドを打ち、コーチから昇格した長澤徹新監督の下、J1という目標に向かって再び走り出した岡山。指導陣にも布啓一郎コーチや戸田光洋コーチなど新たな顔触れを招き入れ、長澤監督も「あの2人ほど上を見ている人間はいない。彼らの衰えない向上心に凄く期待している」と信頼を寄せる加地亮に岩政大樹という元日本代表コンビも加入。「予定通りというかある程度狙った通りの状態で、開幕は迎えられていると思う」とはその岩政。ホームのサポーターへ開幕勝利を届けるための90分間に臨みます。
ラモス瑠偉監督の就任1年目は17位という結果に終わったものの、1試合平均観客動員は一気に3000人以上増加し、クラブの今後へ向けて色々な意味で期待も高まっている岐阜。木谷公亮、美尾敦、杉山新といったベテランが引退を決意し、三都主アレサンドロもチームを離れる中で、川口能活や宮沢正史など70年代生まれの重鎮も健在。10位以内という目標を掲げる今シーズンは、より勝負にこだわる姿勢が求められる1年間になることは間違いありません。改称されて初めての試合となるシティライトスタジアムのスタンドには、いきなり10995人の大観衆が。岡山のキックオフで新シーズンの幕が上がりました。
まずペースを掴んだのは「最初の入りは相手に躍動させないことを選びました」と長澤監督も話したホームチーム。2分に伊藤大介が左から蹴ったCKは難波宏明にクリアされるも、5分には再びCKのチャンス。左から伊藤が蹴り込んだボールを岐阜のGK川口能活がパンチングで弾き出すと、拾った田所諒は左へ。伊藤のクロスに飛び込んだ岩政のシュートはヒットしませんでしたが、「チームメイトにも僕がどういうタイミングで抜け出すかというのは見てもらわないといけない」とは本人の弁。9分にも岩政のフィードを片山瑛一が収め、押谷祐樹のスルーパスは加地とタイミングが合わなかったものの、岡山が手数を繰り出します。
「最初は相手の背後を大胆に突くというか、オープンなサッカーをしようと言っていて、相手は凄く嫌がっていた」と渡邊一仁が話した通り、岡山は最終ラインでボールを回しながら、機を見てフィードを送り込み、押谷、伊藤、片山の1トップ2シャドーが裏へ抜けるシーンが頻繁に。16分には千明聖典、伊藤と繋いだボールを片山がカットインしながら放ったシュートは関田寛士にブロックされたものの、22分には左CBの竹田忠嗣がシンプルにフィードを放り、相手のミスを拾った押谷はクロスバー直撃のミドルを披露。ゲームリズムは間違いなく岡山に。
さて、プレシーズンは4-2-3-1のシステムで熟成を深めてきた岐阜は、好調だったロドリゴの負傷離脱を受け、「彼の所でなかなか代わりが見つからなくて、だったらサイドをもうちょっと高い位置でマス(益山司)と富士で崩したかった」(ラモス監督)と3-4-1-2のシステムでゲームに入りましたが、「繋いでいくと約束していたのに、何で相手の甘いアプローチでみんなバタバタしてるのかな」とはその指揮官。20分過ぎからは少し高地が低い位置まで降りてボールを引き出し、わずかにボール回しのリズムは出てきたものの、フィニッシュへと結び付けるまでには至りません。
すると、先制弾もやはりフィードから。26分、「サッカーには流れというものがあって、どういう時にどういう風にやれば得点の確率が上がるかというのは大体ある。その1つ」と語る岩政がフィードを狙うと、押谷が頭で粘って残し、伊藤は丁寧にスルーパス。抜け出した片山のシュートは一旦関田がブロックしたものの、「シュートブロックが自分の所にこぼれてきて、中を見たら諒くんがいたので、そこへ送り込むことができました」という片山は丁寧に中へ。田所が左足に当てたシュートは、コロコロとゴール右スミへ転がり込みます。「今年は監督からも中に入って、どんどん得点を狙って行けという指示は両ワイドに出されていましたし、その指示の通りに中へ入っていったらボールが来たので、あとは落ち着いて入れるだけでした」と話す25番がいきなり結果を。岡山が1点のリードを手にしました。
「ウチの前半の最初の25分ぐらいは『何やってるの、この人たち』って。『この人たち、本当に監督いるのかな』ぐらいに見ていた」とらしい言葉で指揮官が振り返った岐阜は、それでも失点の前後からは高地の落ち着きと「慣れないポジションではあったけど、あそこで結果を残さなきゃ次はない」という清本拓己の機動力、さらにヘニキのセカンド回収力をポイントに、少しずつアタックの芽が。34分には高地の左FKを高木和道が頭で折り返し、ヘニキのクロスはDFが何とかブロック。35分に高地が入れた右CKはニアで片山がクリア。岡山も39分には加地、押谷、伊藤と回ったボールを片山が粘るも、シュートまでは行けずに川口がキャッチ。わずかに変わり始めた風向き。
41分は岐阜。高地が右へ振り分け、益山のクロスに対するクリアが小さく、突っ込んだ清本のシュートは岡山のGK中林洋次が果敢に体でセーブ。直後に連続で得た左CKの2本目を高地が蹴り入れ、拾った清本の右クロスを深谷友基が残すと、益山の強烈なミドルはDFが体でブロック。その流れからヘニキが上げた右クロスを、ダイレクトで狙った高木のシュートはゴール右へ。45+3分も岐阜。ピッチ右寄り、ゴールまで約30mの位置から高地が直接狙ったFKはクロスバーの上へ。終盤は「個人個人に凄くパワーがあって、非常に破壊力を1人1人が持っている」と長澤監督も評した岐阜が盛り返しましたが、最初の45分間は岡山が1点をリードした状態でハーフタイムに入りました。
後半は開始から岐阜に選手交替が。キャプテンマークを託されていた深谷を下げて、新外国籍選手のレオミネイロを投入し、「自分たちのリズムでなかなかできないから、4バックにして前の選手を入れた方がいいかなと。後半は攻撃的にやろうかなと思った」というラモス監督は益山と冨士の両WBをSBに落とし、高木と関田と並べる4バックへシフト。さらに難波の下に右から清本、高地、レオミネイロを配した4-2-3-1へ回帰して、逆転まで狙う態勢を整えます。
48分は幅を使ったアタック。左の冨士から高地を経由して、ヘニキは右へ展開。益山のクロスを残した清本のヘディングは中林にキャッチされましたが、55分はカウンター。片山のロングスローを奪うと、中央から高地がスルーパス。ここは岩政がさすがの読みでカットするも、こぼれをさらったレオミネイロのミドルは枠の右へ。57分にも右の清本、高地と繋いでレオミネイロは左へ。冨士のミドルは枠を越えたものの、「立ち上がりはボールも受けられていた」と清本も話したように、きっちりサイドを使い分けながら岐阜の攻勢が続きます。
「途中セカンドボールを拾われ始めて、少し流れを取られたシーンはあった」(長澤監督)中でも、相手のシステム変更に対して「最初は少し戸惑いがなかった訳ではないですけど、練習試合でも4バック相手に結構やっていましたし、特に苦手意識もピッチの中では生まれていませんでした」と話したのは渡邊。守備面では「バランスが崩れないようにずっと気を張っていた」という岩政を中心に、エリア内への侵入はほとんど未然に防止。58分には右CBの篠原弘次郎がオーバーラップを敢行し、加地のリターンからクロス。ニアへ潜った片山のヘディングは川口にキャッチされたものの、最終ラインの選手でも機を見た攻め上がりはむしろ重要な破調に。変わらないスコア。
65分に伊藤が無回転気味の30m級FKをクロスバーの上へ外すと、双方に相次いで交替が。65分は岐阜。「できていた部分もあるけど、僕の感覚ではそんなにできなかった部分が多い」と語ったものの、機動力は十分見せた清本と遠藤純輝をスイッチ。67分は岡山。伊藤に替わって、古巣対決となる染矢一樹がそのままシャドーの位置へ。67分にはその染矢がいきなり左サイドをえぐってあわやというシーンを演出すると、5分後に飛び出した追加点。
72分、右サイドでボールを持った染矢が後方に下げ、渡邊のクサビを押谷が右へ押し出すと、染矢はドリブルで縦へ持ち運んで中へ。このボールをダイレクトで押谷がGKとDFの間へ通し、無人のゴールへ片山が落ち着いて流し込みます。「常に前は準備してくれていますし、そこを逃さず僕と千明はボールを入れることというのがポイントになってくると思う」という渡邊のクサビを起点に、最後は「監督からも『チームのためにどれだけ身を削れるか』というのを凄く言われているので、そのために自分ができることを100パーセントで試合の中で出していくだけだなという風に思います」と献身的に走り続けた片山がフィニッシャーに。岡山のリードは2点に変わりました。
ビハインドの広がった岐阜は、75分に冨士のミドルが枠の上へ外れると、直後に最後の交替を決断。ボランチの宮沢を下げて、これがJリーグデビューとなるルーキーの苅部隆太郎をそのままボランチへ送り込みましたが、次の得点もホームチームに。78分、「自分のストロングポイントというのは、ああいった前向きで取ってカウンターに繋げるという所」と鋭い出足でパスカットに成功した渡邊は、押谷のリターンから少しドリブルを挟んで中央へ。浮き球をうまく処理した染矢が躊躇なく右足を振り抜くと、ボールはゴール左スミへ力強く飛び込みます。「割と自分の慣れたポジションを動かして、それに必死で全員トライしている状態で、やはり他の選手もそれにストレスはあるんですけど、それを断ち切ってでもクラブのために、チームのために、今の目標のためにということで全員が取り組んでくれています」と3点目にしてようやく派手なガッツポーズが飛び出した長澤監督も言及した、新しいトライに取り組んでいるグループの象徴的とも言える存在の染矢がトドメの一発。点差が広がりました。
苦しくなった岐阜は82分、苅部を起点に遠藤が繋ぎ、難波の落としを狙ったレオミネイロの枠内シュートは中林がしっかりキャッチ。83分には岡山が2枚目の交替カードとして矢島慎也を送り込むと、85分に高地、レオミネイロとボールを回し、ヘニキが打ち切ったミドルもゴール左へ。87分に最後の交替カードとなる島田譲を千明に変えて投入した岡山は、88分に決定的なチャンス。矢島が相手のイージーなミスパスを拾い、染矢がドリブルから左へ流したボールを、フリーの田所は左足で強振。やや力んで当たり損ねたボールは枠の右へ消えましたが、4点目を狙う姿勢をサポーターへ最後まで見せ付けます。
90+3分のラストチャンスは岐阜。右サイドの混戦から難波が粘って残し、高地がミドルレンジから狙ったシュートがクロスバーに当たると、しばらくしてCスタに鳴り響いた家本政明主審のファイナルホイッスル。その瞬間、「また来週から政田で何より厳しいチーム内の競争が始まりますので、ここで1つ一区切りという意味で区切りだけ付けておきました」と新指揮官は大きなガッツポーズ。「得点を奪おうが、0-0だろうが2-0になろうが、全体のバランス、コンパクトさを維持したまま90分やれたと思います」と岩政も一定の手応えを口にした岡山がサポーターとおなじみのラインダンスを共有し、2015年シーズンのスタートを最高の形で飾る結果となりました。
「サイドチェンジもまったくなし、中盤の経由なしで蹴って蹴ってセカンドボールを拾おうとしてもなかなか拾えなくて、自分たちでどうすればいいのかわからなくなって。繋いで繋いで自分たちのサッカーをやらないと勝てないぞと。まあいい勉強になったんじゃないの。何もできなかった。何だったんだ、今までのトレーニングは」と辛辣な言葉でゲームを振り返ったのはラモス監督ですが、それでも後半の失点するまでの時間帯は決して悪くなかったと思います。「サッカーをやっていたのは系治くらいかな」と指揮官も言及した高地や、セカンドをかなりの確率で奪っていたヘニキ、2トップの一角と右SHで奮闘した清本など、個々にはパフォーマンスの目立った選手も。「ちょうどいいです。今年は忙しくなります。改善することがいっぱいあって。まあ開幕はそんなもんです」とラモス監督。まだまだシーズンは始まったばかりです。
岡山は前半の終盤から後半の中盤までは、どちらかと言えば相手にペースを握られていた中で、「こっちがしんどい時間帯に点が取れて、相手にとっては相当嫌だったと思います」と渡邊も振り返った2点目は形もタイミングも最高だったかなと。あの1点がゲームを大きく左右したファクターだったことは間違いありません。ただ、相手に打たれた12本のシュートを見ても、エリア内からのシュートは41分の1本のみ。「みんなが献身的にやれていたので、1試合通してバランスは崩れずにやれていたと思います。なので、あまりやることはなかったですね」と話した岩政を軸にした守備は、今後も確実に計算できることがこの90分の中で証明されたように感じました。「マラソンで言えば一歩目が出たと。それが出ないことにはレースが始まらないので、そういうことに関してはあと41ゲームですかね。しっかりと戦うための一歩目は踏み出せたという気持ちでいます」と長澤監督。"一歩目"を力強く踏み出した岡山の"あと41歩"が非常に楽しみになるような開幕戦でした。 土屋
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