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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
キックオフは10時、12時、14時、16時、18時。駒沢第2球技場を舞台に全5試合で構成されるTリーグフェスタ。そのオープニングアクトを飾るのは、昨年の東京を大いに沸かせた駒澤大学高と都立東久留米総合です。
インターハイでは東京王者に輝き、同校初となる全国大会出場を達成。T1リーグでも2位に入るなど、昨シーズンの都内でも大きな存在感を発揮していた駒澤大学高。ただ、頂点に立つことが最大の目標だった選手権予選は、圧倒的に攻め込みながらも都立三鷹に屈し、準々決勝敗退という悔しい結果を突き付けられました。迎えた今シーズンも目指すは当然あらゆるコンペティションでの頂点のみ。幸先の良いシーズンのスタートを切るべく、"最初"の90分間に臨みます。
T2リーグ優勝という素晴らしい成績は残したものの、選手権予選では結果的に全国ベスト16まで躍進した國學院久我山に準決勝で惜敗。その試合後に齋藤登監督も「全国に出たい出たくないじゃなくて、より多くの人たちにウチの子たちを見て欲しかったなというのはあります」と話すほど、昨シーズンは手応えのあるチームを仕上げてきた都立東久留米総合。主力がほとんど入れ替わった今シーズンは、初めてT1リーグへとチャレンジする勝負の年。先輩たちを超えるための1年間はまさに今日、スタートの時を迎えます。会場の駒沢第2は10時キックオフにもかかわらず、多数のフットボールジャンキーが集結。強豪同士の激突は駒澤のキックオフでその幕が上がりました。
いきなりの決定機は駒澤。2分、佐藤瑶大(1年・FC多摩)が裏へ送ったボールに深見侑生(2年・FC東京U-15深川)がラインブレイク。右から放ったシュートはクロスバーの上へ外れたものの、まずはシンプルな形でチャンスを創出すると、8分も駒澤。ここもボランチの武智悠人(1年・Forza'02)が裏へ落とし、再び抜け出した深見のシュートは久留米のGK井上大地(2年・杉並西宮中)がキャッチしましたが、似たような形から駒澤が2度の好機を生み出します。
9分も駒澤。左SBを務める東方陸真(2年・FC東京U-15むさし)のロングスローに佐藤瑶大が競り勝ち、深見のボレーはクロスバーの上へ。14分も駒澤。野本克啓(2年・FC多摩)が蹴った右CKにやはり佐藤瑶大が競り勝ち、こぼれを叩いた深見のシュートは、久留米の左CB吉田恭平(2年・三鷹FA)が体でブロック。17分も駒澤。野本が浮き球で裏を狙い、反応した深見がマーカーをかわしてようやく枠へ飛ばしたシュートは、井上がワンハンドでのファインセーブで回避したものの、「結構ずる賢いというか駆け引きができるので、そういう部分で使っている」(大野監督)という深見が決定的なシーンに絡み続け、ゴールへは至らないまでも引き寄せたゲームリズム。
すると、21分に生まれた先制弾もやはり赤黒。左サイドでスポットに立った野本がFKを蹴り込むと、ニアサイドへ突っ込んだ高橋勇夢(1年・Forza'02)はドンピシャヘッド。ボールはゴールネットへ鮮やかに突き刺さります。「去年は4人ぐらいいたキッカーが今年は1人しかいないんですよね」とは大野祥司監督ですが、その重要な"1人"のキッカーが呼び込んだ歓喜の瞬間。駒澤が1点のリードを奪いました。
さて、昨シーズンまで採用していた4-4-2ではなく、3-4-2-1でゲームに入った久留米は、ややバラつく最終ラインの裏を再三狙われてピンチの連続に。攻撃でもシャドーの"2"に入った大庭諒介(2年・東京ベイFC U-15)と荻野稔(2年・レッドスターJY)が斜めに走りながら、最終ラインからのフィードを引き出す動きを試みますが、そのフィードも含めてパスミスが頻発し、なかなかチャンスを創れず。22分には右から岩田航平(2年・FCエクセル)が蹴ったFKを熊倉海都(2年・帝京FC)が頭で残すも、直前に交替出場していた佐藤瑛磨(2年・立川第四中)がきっちりクリア。直後の左CKも岩田の入れたボールはDFがクリア。ファーストシュートが生まれません。
27分は駒澤。東方のスローインを佐藤瑶大がすらし、野本を経由して矢崎一輝(1年・大豆戸FC)が狙ったシュートは、DFに当たってゴール右へ。29分も駒澤。野本が左へ振り分け、矢崎がアーリー気味に上げたボールはクロスバーに当たってゴールキックに。32分は久留米も荻野の浮かせたパスに大庭が走るも、飛び出した駒澤のGK江口達也(2年・名古屋グランパス三好FC)とDFの3人で交錯したボールはCKへ。それを左から岩田航平が放り込み、ファーで合わせた荻野のヘディングは枠の右へ外れましたが、ようやく久留米に1本目のシュートが記録されます。
前半の終盤はお互いにセットプレーで窺う相手ゴール前。34分は駒澤の左CK。野本が蹴ったボールは、ニアで岩田航平がしっかりクリア。40分も駒澤の左CK。野本がショートで蹴り出し、矢崎のリターンを野本が中央へ送るも、久留米の右CB飯塚小次郎(2年・東京久留米FC U-15)がクリア。45分は久留米の左FK。山川涼(2年・レッドスターJY)が短く始め、荻野が戻したボールを山川が裏へ飛ばすもDFがクリア。最初の45分間はスタメンに5人の1年生が名前を連ねたフレッシュな駒澤が躍動し、1点のアドバンテージを握ってハーフタイムに入りました。
試合前にお話を伺った際に、「ここまでの試合でもボールは持てるんだけどね」と齋藤監督も話していた久留米は、自らのイージーなパスミスでテンポを掴めなかった前半を受けて、ハーフタイムできっちり修正を。48分にはカウンターから山川が左へ流し、ドリブルで駆け上がったキャプテンの川村涼太(2年・FC府中U-15)が中央へ戻したボールは、駒澤のCB春川龍哉(2年・Forza'02)が冷静にカットしたものの、いきなりチャンスの芽を創ると、51分にも岩田航平を起点に荻野が左へ展開し、山川のクロスは江口にキャッチされましたが、勢いを持って残された45分間へ向かいます。
53分には大野監督も2人目の交替として矢崎と菊地雄介(1年・VIVAIO船橋)を入れ替えるも、58分のチャンスも久留米。熊倉のパスを飯塚が中央へ打ち込み、1トップの武田海青(2年・JACPA東京FC)がダイレクトで落とすと、篠藤晃大(2年・東京久留米FC U-15)は右へスルーパス。岩田航平のシュートはゴール左へ外れましたが、流れるようなパスワークからフィニッシュまで。63分にも飯塚が縦に付け、相手のギャップにフリーで潜った篠藤は右へ。大庭のクロスはDFのクリアに遭うも、一気に奪還したゲームリズム。
この変化の要因は大きく2つ。1つは飯塚、熊倉、吉田で形成される3バックが、GKの井上も交えながら落ち着いて最終ラインでボールを回し始めたこと。これでイージーなボールロストによる忙しない展開が格段に減少し、本来持つパスワークのリズムがアタッカーたちにも伝染して、スムーズな攻撃が出てきた印象です。もう1つは、63分の篠藤のように相手の間に顔を出す動きが出てきたことで、縦方向へのテンポアップが増加したこと。とりわけ飯塚は常に縦を狙いながらルックアップを繰り返し、前の選手が間に顔を出すことでそこを飛ばした裏へのボールも効果的に。久留米の狙いがようやく奏功し始めます。
「今まで練習試合をたくさんやってきて、ポゼッション型のチームともやってきて、前半は勢いで頑張れるんだけど後半バタバタっとやられちゃったりしてきた」(大野監督)という駒澤は、相手にボールを持たれる時間が長くなった状況でも、春川と竹上有祥(2年・ヴェルディSSレスチ)で組んだCBを中心に、際どいエリアへの侵入は許さず。67分には高橋のFKに佐藤瑶大が競り勝ったボールは井上にキャッチされましたが、70分にも野本の右CKが井上にパンチングで弾かれるも、野本が再びクロス。最後は吉田のクリアに阻まれましたが、セットプレーに滲ませる追加点への意欲。
それでも追い付きたい久留米は続けて手数。71分、右サイドからカットインした山川がスルーパスを繰り出し、右に流れた武田の角度のないシュートはクロスバーの上へ。75分、川村が右へ振り分け、山川が中央へ潜ると、こぼれを拾った荻野の左足ミドルは江口がキャッチ。77分、山川の右CKはファーまで届き、走り込んだ飯塚のヘディングはわずかに枠の左へ。80分には齋藤監督も1枚目の交替として荻野と野々村大輝(2年・杉並FC)をスイッチ。残された10分間の勝負へ打って出ます。
81分は駒澤。左サイドできっちりキープした佐藤瑶大が中へ送り、佐藤瑛磨が飛び込むもオフェンスファウルの判定。85分は久留米。川村を起点に飯塚が右へ送り、大庭は高速クロスを送るも突っ込んだ武田と野々村はどちらも触れず。86分に前線で奮闘した佐藤瑶大と松田拓海(2年・三菱養和調布JY)を入れ替えた駒澤は1分後、佐藤がミドルレンジからシュートを放つも枠の上へ。88分も駒澤。佐藤のパスを引き出した深見は絶妙のボールを左へ。菊地が丁寧に狙ったシュートは、熊倉が体を投げ出して決死のブロック。アディショナルタイムは3分。勝敗の行方はあと180秒で。
90+1分は久留米。レフティの山川が蹴った右CKはゴールへ向かうも、ニアサイドで江口が何とかパンチング。武智と岩田光一朗(1年・大田東調布中)を入れ替える駒澤5人目の交替を経て、90+1分も久留米。大庭、篠藤、山川と細かく繋ぎ、大庭が蹴り入れたクロスは、ファーサイドで高橋が懸命にクリア。途切れない駒澤の高い集中力。
90+3分、山川の右FKがわずかにクロスバーの上へ外れると、ほどなくして聞こえたのは赤黒の勝利を告げるファイナルホイッスル。「だいたい練習試合を見ても、前半良くても半分しかできない、1試合通してできないというのがあったんですけど、今日はよく最後まで粘りましたね」と辛口の大野監督も一定の評価を口にした駒澤が新チーム最初の公式戦を粘り強く制し、勝ち点3をもぎ取る結果となりました。
前半は駒澤、後半は久留米という、非常にわかりやすい構図で進んだ90分間だったと思います。そんなゲームをモノにした駒澤は、とりわけ後半の押し込まれる時間帯にも「そこで自分たちでプレスに行って剥がされ出した時に、ちゃんとリトリートしてブロック作ってとか取り所を決めてというトレーニングもしてきたので、そこは今日は考えてやれていたなとは思うんですけどね」と指揮官も認めたように、冷静に対処して無失点で抑えたのは大きな自信に繋がったのではないかなと。加えて「新チームになって最初は上級生にチャンスをあげていたんですけど、練習試合でなかなか結果が出ないので、今日は18名のメンバー中で10人が1年生で8人が2年生。下級生が多いのは僕的には珍しくて、何年ぶりくらいだろうと思いました」と大野監督が話したように、非常に若いチームでこの一戦へ臨んだこともあって、勝利が何よりも自信を深める上で大事な要素だったことは間違いありません。一方、敗れた久留米もトップチームでの試合出場はほとんど初めてという選手たちで挑んだ一戦で、後半のようなゲーム運びができたのは確実に1つの収穫。今年もこの2チームが都内を牽引していく可能性を十分に感じさせる好バウトでした。 土屋
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