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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年11月25日

J2第42節 京都×岐阜@西京極

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1123kyoto.jpg様々な想いが重なり合うシーズンの42試合目。8位の京都と18位の岐阜が、掛け値なしの勝ち点3のみを目指して対峙する一戦は西京極です。
2年連続3位という十分過ぎるほどの成績を残しながら、2年連続で"プレーオフ"という魔物に飲み込まれる格好で昇格を阻まれてきた京都。3度目の正直を期して迎えた今シーズンは、バドゥ監督の下で昇格プレーオフ圏内ラインを上下する順位が続くと、18節でクラブはその指揮官の解任という決断を。後任に就いた地元出身の川勝良一監督は「ここ5、6試合見ていても安定的にゲームができているし、90分最後まで戦うというのが出てきたと思う」とチームへ小さくない変化をもたらしたものの、一度も昇格プレーオフ圏内へは浮上することなく、勝利した前節の長崎戦後に来シーズンの昇格の可能性は消滅しました。ただ、そんな状況下でも確かな熱量を持つサポーターが集結した最終節は勝利のみが求められる一戦。紫の誇りを懸けた90分間に挑みます。
21位という順位で何とか残留を果たしたのは1年前。日本サッカー界が誇るカリスマ指揮官のラモス瑠偉監督に率いられ、確実に意識とプレー面での改革が進み、ホームの観客動員をとってみても昨年の2倍近くに跳ね上がるなど、新たなクラブに生まれ変わりつつある岐阜。第36節から悪夢の5連敗で順位を大きく落としましたが、前節のホーム最終戦では昇格を決めている松本に3-1で快勝。既に引退を発表している木谷公亮と美尾敦のサッカーキャリアを笑って締め括るためにも、このゲームを落とす訳にはいきません。試合前のピッチでは幼稚園生や小学生が芝生の上でボールを蹴り、キッズチアの女の子たちも華麗なダンスを披露。勝利と同じくらい大切なものは、次世代へ繋ぐ明確なバトン。10717人が見つめる中、今シーズンのラストゲームは岐阜のキックオフでスタートしました。


先にこの一戦への意欲を打ち出したのは岐阜。4分に高地系治が左から蹴ったCKは酒井隆介にクリアされましたが、5分にもやはり左から高地が入れたCKは関田寛士まで。ヘディングはヒットせずに、京都のGK杉本大地がキャッチ。7分にも高地とのワンツーからナザリトが単独で抜け出し、GKともつれながらエリア内で転倒したプレーはノーホイッスルだったものの、直後の右CKも高地が鋭いボールを蹴り込むなど、まずはシンプルにハイサイドを取った岐阜がペースを掴みます。
9分には岐阜に最初の決定機。難波宏明のシュートはDFにブロックされるも、宮沢正史がヘディングで前方に送ったボールは比嘉諒人へ。シュートは体を投げ出した杉本がファインセーブで回避しますが、惜しいチャンスを創出。11分は京都もボランチに入った駒井善成が右へ振り分け、工藤浩平のクロスをファーでドウグラスが折り返すも、DFがきっちりクリア。12分は再び岐阜。難波が左足のミドルを枠の左へ。流れは変わらずアウェイチームに。
16分には京都にファーストシュート。石櫃洋祐の左CKは跳ね返されるも、大黒将志が拾って左へ。石櫃が再度上げたクロスに、右SH起用となったドウグラスが得意のヘディングで飛び込むと、ボールはクロスバーを越えたもののようやく1つフィニッシュまで。「最初は付き合っちゃってウチもロングボールが多くて、その中でちょっとバタバタした」(工藤)立ち上がりを経て、やはり工藤が「相手のプレッシャーを避けられたのがそのくらい」と振り返った15分前後から、ようやくボールが回り始めた京都にも攻撃のリズムが。
20分は京都。石櫃の左CKはヘニキがクリア。21分も京都。石櫃が左から蹴ったCKは、ニアへ駒井が突っ込むも頭にしっかり当たらずゴールキックに。22分も京都。石櫃が速いボールで放り込んだ右FKは、岐阜のGK川口能活が何とかキャッチ。直後も京都。伊藤優汰が左サイドをドリブルで運び、そのまま放ったシュートは枠の左へ外れるも、流れの中から初めてのフィニッシュが。28分も京都。駒井が左へ展開し、比嘉祐介が裏を狙ったスルーパスは、読んでいた木谷が懸命にクリア。「徐々に相手も下がって、ボールも回ったかなと思う」と話す工藤と駒井を中心に、ボールがしっかり動く京都へ傾いたゲームリズム。
ややロングフィードというよりは単調なクリアが増え、なかなか攻撃の手数を出せなくなった岐阜のチャンスは30分。駒井と比嘉祐介がお見合いしたボールを比嘉諒人がかっさらってドリブル開始。必死に戻った比嘉祐介と比嘉諒人が1対1で向き合った"比嘉対決"は前者に軍配が上がりましたが、一瞬の隙を見逃さずに突き付けた鋭利なカウンター。ゴールの可能性を感じるチャンスは岐阜が多く創ります。
33分には見応えのある局面が。中央でボールを持った工藤は「常に狙っていて欲しいと思っているし、それで点になる」という大黒へのスルーパスを敢行。大黒も素晴らしい動き出しで裏を完全に取っていましたが、ここはCBでパートナーを組む木谷も「ポテンシャルだけ考えたらJ2にいる選手じゃない」と評価する関田がギリギリでカット。35分は岐阜のビッグチャンス。益山司が右からフィードを送ると、受けた難波はヒールで後方へ。走り込んだ高地の枠内シュートは杉本がワンハンドのファインセーブで応酬するも、やはりゴールへの迫力で上回るのはアウェイチーム。
38分は京都。カウンターから工藤が左へ流すと、「特にウチの右サイドの方には結構グイグイ来る選手もいた」と高地も言及するなど、果敢な突破へのチャレンジが目立っていた伊藤がここもドリブルシュートを枠の左へ。41分は岐阜。益山が縦に付けたボールを、高地は2人の間に絶妙のソフトパス。ヘニキのクロスは石櫃に弾かれるも、エリア付近でのコンビネーションは良好。45+3分は京都。中盤を完全に制圧した工藤がドリブルから右へラストパスを通し、右に流れながら駒井が打ったシュートは川口がキャッチ。基本的には膠着した展開ながら、京都も少しずつ盛り返したものの、わずかに岐阜がゲームリズムを手にしていた前半は、スコアレスのままでハーフタイムへ入りました。


泣いても笑ってもシーズン最後の45分間に、躍動感を持って入ったのは「全員が木谷選手や美尾選手のためにいい結果を残したかったし、勝利をプレゼントしたかった」とラモス監督も話した岐阜。47分、高地の右FKは杉本がキャッチ。51分、高地が右からショートで始めたCKを、森勇介が返したボールは高地のオフサイドを取られましたが、紙一重の好連携。52分、益山を起点にヘニキが右へ送ったボールを、難波は左足で中央へクロス。ナザリトのワントラップシュートは枠の左へ外れたものの、「監督からも入り方のことを言われていたので、たぶんそこを全員でしっかりやろうというので、ああいう風にできていた」と高地も認めたように、岐阜がゲームリズムを持って後半がスタートします。
逆に「セカンドボールの潰し合いで負けていた」と工藤も話した京都は、前へと出て行くパワーが打ち出せずに得点ランクトップを独走する大黒も孤立気味に。55分と57分に石櫃が続けて放り込んだFKもシュートには繋がらず、61分に駒井がドリブルから繰り出したスルーパスに大黒が反応するも、「ちょっと目を離したらいつもオフサイドラインギリギリの所を狙っているので、その逆にこっちも意識すればオフサイドになるし、そういう意味ではオフサイドもいっぱいあったからやっていて楽しかった」とその大黒との駆け引きを振り返る木谷のラインコントロールがわずかに優り、大黒がオフサイドに。最終ラインで繰り広げられるギリギリの攻防は見応え十分。
沸いたスタンド。ラモス監督の決断は2枚替え。難波宏明と森勇介の替わりにピッチへ駆け出したのは、遠藤純輝と美尾敦。京都に在籍していた美尾には試合前にも大きな拍手が送られていましたが、交替時には両ゴール裏のみならず、メインスタンドからもバックスタンドからも大歓声が。美尾の引退試合は61分にキックオフを迎えます。
62分は岐阜。ナザリトのポストプレーを受け、高地がミドルレンジから狙ったシュートは枠の右へ。63分も岐阜。ルーズボールを収めたヘニキが、思い切って打ったミドルは枠の右へ。シュートこそ外れたものの、「しっかり繋ぐのか弾くのかというのは大きいと思う。質というか弾き方も相手の嫌な所に弾くというか、相手はそういう所が上手かった」と工藤が言及したように、ヘニキが披露した効果的なセカンドへの対応もあって、続く岐阜のペース。
なかなか攻撃のギアが上がらない京都でしたが、「ここで5チーム目だけど、京都で監督をしたことは物凄い印象に残る半年というか、選手が本当に素直で明るいし、いいまとまりを持っているのでね」と語る川勝監督の采配ラストゲームで、このまま引き下がる訳には行かず。70分、ドウグラスが左へ送ったボールを伊藤が中央へ戻し、駒井のミドルは枠の左へ外れましたが、ようやく後半最初のシュートが記録されると、71分にもカウンターからドウグラスが右へ送り、工藤のクロスは木谷がクリア。72分に石櫃が蹴った右CKはナザリトにクリアされますが、掛かり始めた前へのエンジン。
すると、74分には決定的なシーンが。工藤と共にボールへよく絡み、京都のアタックを牽引していた駒井が右へ展開したボールを、受けた石櫃は浮き球でマーカーをかわしながら中央へ。良い位置で待っていた大黒がフリーで放ったダイレクトシュートは、しかしクロスバーの上へ消え、絶好の先制機もゴールを陥れるまでには至りません。
78分は京都。伊藤の右FKがこぼれると、拾った工藤は柔らかいロブでラインの裏を狙うも、大黒の目前で飛び出した川口が何とかキャッチ。78分にラモス監督は最後のカードとして、左SBへポジションを移していた比嘉諒人と野垣内俊をスイッチ。80分は京都。石櫃の左FKへ飛び込んだドウグラスのヘディングは、川口がしっかりキャッチ。81分は岐阜。右サイド、ゴールまで約25mの角度のない位置から、ナザリトが直接狙ったFKはわずかにクロスバーの上へ。同じく81分には川勝監督も1人目の交替を。比嘉祐介に替えて三平和司を投入し、1点を取りに行く姿勢を鮮明に。今シーズンもいよいよ残りは10分間とアディショナルタイムへ。
83分は京都。石櫃の右CKにニアへ飛び込んだ大黒のヘディングは、叩き付け過ぎて枠の右へ。85分は岐阜。ヘニキがさすがのボールカットから反転し、少し運んで打ったミドルはクロスバーの上へ。直後も岐阜。ナザリトのパスを引き出した美尾は、タイミングを計ってスルーパス。走った遠藤の目前で石櫃がクリアしましたが、美尾のセンスはやはり秀逸。双方がスコアを動かせないまま、刻々と近付いてくる別離の時。
89分の決定機は岐阜。高地が浮かせたボールを遠藤が執念で残すと、後方から走り込んだナザリトはそのままかっさらって縦へ。間髪入れずに繰り出したシュートは枠を捉え、あらゆる人が息を呑んで見守るスタジアムに響いたのは、ボールとクロスバーが奏でる乾いた金属音。惜しいシーンは何度も生み出すものの、どうしても1点が奪えません。
90+1分は京都。別格のパフォーマンスを披露し続けた工藤が左へ送り、ドウグラスが上げたクロスを左足で叩いた大黒のボレーはクロスバーの上へ。「いつもどんな練習をやっても楽しそうにボールを蹴れるとか、そういうのをもっともっと若い人も観てほしい。こっちも勉強になったし、尊敬できる選手の1人」と指揮官も評した大黒も、この日はゴールを奪えず。
90+2分は岐阜。益山が右から投げ入れたロングスローは中央で混戦を生み出すも、反応していた美尾もシュートは打てず。90+3分は京都。石櫃が左から蹴り込んだFKも中央で混戦になりましたが、岐阜の中ではチーム最古参となった野垣内が大きくクリアすると、程なくして松尾一主審が吹いたのは様々な終わりを告げるホイッスル。「0-0だったけど勝ってもおかしくなかったし、またはどこかでやられたら負けてもおかしくなかったというか。良い試合だったんじゃないですか」と木谷が話したように、どちらにも勝つチャンスのあったリーグ最終戦はスコアレスドロー。両者が勝ち点1ずつを分け合う結果となりました。


「選手たちも最後のゲームを勝って終わりたいということで、90分良く戦ってくれたと思います」と教え子たちを称えた川勝監督。「最後も今季の京都らしい結果で勝ち切れなかったけど、後半戦は3回しか負けていないとか、負けない強さが徐々に浸透したりとか、選手も闘う姿勢とか、いい集団だけども勝負事に対しての意識も変わったりだとか出てきたと思う」と手応えも口に。それだけに「京都がいつか強いチームになってくれるという基盤を本当は創りたかったけど、もうちょっとやりたいというのが素直な気持ち」と本音も口にされていました。また、選手へのメッセージを問われ、「大好きなものをやらせてもらうのに手を抜くとか、その日の気分でやるとか、日本人だから照れもあると思うけど、そういうのには違和感がある。やっぱり好きなモノは時間を忘れて熱中すると思うし、子供の時からの競争で限られた人がプロに入ってきているという、最初の原点を常に忘れないでいて欲しい」と語った言葉はまさに至言。川勝監督が率いてきた"6ヶ月"を今後に生かせるかどうかは、来季以降のチームに課された大きな宿題と言えそうです。
ラモス監督の就任初年度は17位という数字が残った岐阜。「全体のことを考えると、5連敗以外はすべてうまく行ったのではないかなと。勝ち切れない試合が残念ながら3つか4つはあったし、ここに負けてはいけない所で負けちゃうとか。でも、来年改善する所は大体分かっているけどね」とその指揮官。来シーズンへの道筋は大枠で見えてきているようです。そして、試合後にはアウェイでも少なくない人数で声援を送り続けたサポーターの前で、現役生活を終えたばかりの美尾と木谷の胴上げも。トラメガでのメッセージを問われて「『ありがとうございました』って。『FC岐阜をこれからもよろしく』ぐらいしか言ってないですけど(笑) 胴上げもいつ落とされるかって(笑)」といつも通りの雰囲気で答えたのは木谷でしたが、その彼も「もちろん去年からも大きく変わったし、良い若い選手もたくさんいるので、ベテランと若手がうまくミックスされればもっともっとよくなると思うし、今年はなかなか順位も期待通りという訳には行かなかったですけど、これからの飛躍の土台になった1年になったと今後思えればいいんじゃないですか」とチームにエールを。激動とも言うべきこの1年が飛躍の土台にできるか否かは、今後の彼ら自身に託されています。       土屋

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