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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年10月05日

高校選手権東京A2回戦 東京実業×都立三鷹@駒沢第2

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1004koma2 2.jpg昨年度の西が丘進出チームと全国経験もある古豪の激突。2回戦の中でも間違いなく好カードに数えられる注目の一戦は、引き続き駒沢第2です。
荻原脩作(現・尚美学園大)という絶対的なエースを擁し、1年前の選手権予選は堂々ベスト4まで勝ち上がった東京実業。今シーズンは関東大会予選、インターハイ予選となかなか上位に顔を出すことはできなかった中で、「西が丘に行くことが当たり前みたいな感じには思って今年も入っていたが、そんな甘いもんじゃないなというのは選手が良くわかっている」と森昌芳監督。一戦必勝のメンタルでまずはベスト8進出を狙います。
関東大会予選は多摩大目黒、インターハイ予選は関東第一と、いずれも初戦でいきなり強豪との対戦を強いられたことで敗退の憂き目に遭い、都内のトーナメントコンペティションでは結果を出し切れていない都立三鷹。とはいえ、中盤には昨年の選手権予選でベスト8を経験しているレギュラーを数多く揃え、指導力に定評のある佐々木雅規監督の下で間違いなく頂点を目標として掲げています。第2試合は正午スタートということもあってスタンドも大盛況。ベスト8を懸けた80分間は三鷹のキックオフでスタートしました。


ファーストチャンスは三鷹。3分、左からキャプテンマークを巻く巽健(3年・SC相模原)が蹴り込んだCKは、東実のGK杉村修平(3年・品川荏原第一中)がキャッチしましたが、8分にもやはり三鷹のセットプレー。河内健哉(3年・FC駒沢)のドリブルから獲得した右CKを平光太一(3年・FC.GIUSTI世田谷)が入れると、河内のヘディングはクロスバーを越えたものの、まずは三鷹がサイドアタックを主体に勢いを持って立ち上がります。
一方、序盤はなかなか手数を出せなかった東実も12分にチャンスが。前線に入ったキャプテンの前田航大(3年・MKFC)は、果敢な飛び出しからGKとフェアに交錯。こぼれを栗田マーク(2年・東京ベイFC)が狙ったシュートは、カバーに入っていた三鷹のCB湯浅辰哉(3年・プロメテウス)が何とかクリアしましたが、直後にも野口優人(3年・郁文館中)の右ロングスローに前田が競り勝ち、栗田のヘディングはゴールを陥れますが、主審のジャッジは前田のオフェンスファウル。先制とはいきません。
14分も東実の決定機。右SHの小玉塁(3年・大田東調布中)がフィードを裏へ落とすと、抜け出した栗田は左に持ち出しながらフィニッシュ。ここは三鷹のGK武田啓介(3年・東村山第二中)がファインセーブで応酬し、湯浅が掻き出したもののシンプルなアタックからビッグチャンスを。15分にも野口優人の左ロングスローから前田がシュートまで持ち込んで奪ったCK。左から宮田剛(3年・川崎橘中)が蹴ったボールはDFがクリアしましたが、そのスローインも右から野口優人がロングで投げ入れるなど、徐々に東実がセットプレーからリズムを掴み始めます。
境亘平(2年・大田雪谷中)や安藤雄祐(2年・フレンドリー)のCBコンビを中心に繰り出される相手のシンプルな長いボールで、「結構ボランチが飛ばされていたので、シャトルランのような感じ」(佐々木監督)を強いられた三鷹。24分には長島潤也(3年・渋谷広尾中)が粘って取ったFKを、左からCBの吉野秀紀(2年・三鷹中等教育学校)が放り込むも、杉村がしっかりキャッチ。なかなか創れない攻勢の時間帯。
26分も東実。野口優人の右ロングスローに守川和樹(3年・川崎枡形中)が競り勝ち、栗田が足を伸ばすもシュートは打ち切れず。27分、28分、29分と野口優人の3連続ロングスローは、ファウルスローとDFのクリアでフィニッシュは取れず。33分も東実。境の右FKを野口優人が頭で残し、左へ流れた前田のシュートは枠の左へ外れるも、セットプレーで突きつけ続ける脅威。
「チャンスが数少ないので、その中でワンチャンスをモノにするために集中してやっている」というストライカーの仕事完遂は34分。右サイドで平光が後ろに下げたボールを、「良いキックを持っているので使っている」と指揮官も評価する背番号10のSB傳川祐真(3年・東村山第七中)は、浅いラインの裏へピンポイントのダイレクトパス。「逆サイドが空いていることは気付いていたのでうまく抜け出すことができた」長島はGKとの1対1も冷静に浮かせ、ボールをゴールネットへ送り届けます。「GKが出てきたのは覚えていて、左足で蹴ったのは覚えているんですけど、浮かしたのは覚えていないです」と笑った長島の先制弾。前半2本目のシュートで三鷹がリードを手にしました。
決して悪くなかった流れの中、ワンチャンスで失点を喫した東実。38分には野口優人の右ロングスローを守川がすらし、武田のパンチングを宮田がシュートへ持ち込むも、河内が果敢にブロック。39分にも左CKの流れから、伊ノ木洸平(2年・川崎臨港中)が繋いで野口優人がクロスを中へ。前田が粘って落とすと、宮田のミドルはクロスバーの上へ。40分は三鷹にもチャンス。巽の右FKに河内が競り勝ち、こぼれを叩いた傳川のシュートは枠へきっちり収まるも、東実の右SB宮崎聖志(3年・稲城第四中)がライン上で決死のクリア。最初の40分間は三鷹が1点をリードして、ハーフタイムへ入りました。


後半に入っても大枠のゲームリズムは変わらず。42分に左から野口優人が投げ込んだロングスローは三鷹ディフェンスがクリアで逃れ、44分にやはり左から野口優人が入れたロングスローは小玉が拾うも、最後は武田がキャッチ。45分には三鷹も吉野が右からFKを蹴り込みましたが、杉村ががっちりキャッチ。46分は東実。野口優人の右ロングスローは武田がパンチングで応酬。47分も東実。野口優人の右ロングスローはDFが掻き出すも、境が残して伊ノ木のミドルは枠の左へ。「ロングスローは来るなと思っていたけど、ハーフウェーラインくらいからも投げてくるのは予想していなかった」と長島。丁寧に1つずつ凌いでいく三鷹。
「ウチはショートカウンターのチーム」と佐々木監督も胸を張るストロングの結実は48分。早くもこの日"14球目"となった野口優人のロングスローを三鷹ディフェンスが弾き返すと、一転カウンター発動。自陣でボールを持った長島は「巽の声が聞こえたので、そこで走ってくれているなと」マーカーに寄せられながらもハーフウェーラインの手前からスルーパス。抜け出した巽はそのまま相手陣内を駆け出すと、エリア内で1つ切り返してシュート。DFをかすめたボールは絶妙の軌道を描いてGKの頭上を破り、ゴールネットへ転がり込みます。「ちょっとカウンター気味なのがうまく出たかなというパターン」とは佐々木監督。後半のファーストチャンスをモノにした三鷹がリードを広げました。
ハイサイドをある程度は攻略し、セットプレーを取り続けながらも点差を広げられてしまった東実。53分の15球目はオフェンスファナル。55分にはルーズボールを強奪した前田が、右サイドを縦に持ち出しながら放ったシュートはクロスバーの上へ。57分に境が蹴った長いFKも、最後はオフェンスファウルで相手ボールに。決定打を繰り出すことができません。
「ファウルしないで献身的に跳ね返す」(佐々木監督)ことを徹底してやり続けた三鷹は、61分に1人目の交替を決断。先制アシストの傳川を下げて、同じポジションに唯一1年生でベンチに入っていた芝崎鉄平(1年・三鷹中等教育学校)をそのまま右SBへ送り込み、改めて守備のバランス維持に着手。その芝崎はロングスローをいきなり披露し、ここはファウルスローを取られたものの、落ち着いた雰囲気でゲームへ入っていきます。
勝利には3点が必要な東実も66分に1枚目の交替カードを。栗田を下げて、赤松尚斗(2年・プロメテウス)をピッチへ解き放ち、一層の攻撃性を前面に。68分の16球目はシュートまで持ち込めなかったものの、69分の17球目は小玉の前にこぼれ、思い切って狙ったボレーは、しかし武田がファインセーブで仁王立ち。遠い三鷹のゴール。
69分の18球目はDFがクリア。70分の19球目は野口優人がクイック気味に投げ入れ、こぼれを叩いた境のボレーは武田がキャッチ。71分から72分の間に続いた20球目、21球目、22球目はすべて三鷹ディフェンスがクリア。74分に殊勲の長島と金澤宏樹(3年・府ロクJY)の交替を挟み、直後の23球目もDFがクリア。75分に宮田が右から蹴ったCKもDFがきっちりクリア。「1個1個がピンチだったし、俺らはそんなに背も高くないので厳しい所もあったけど、ちゃんと競ってセカンドも拾うことができたので、怖かったけどディフェンスを信頼してできた」と長島。右から金澤、湯浅、吉野、安田航(3年・FC.GIUSTI世田谷)と並んだ4バックに、堀田将弘(3年・FC.GIUSTI世田谷)と田嶋優也(3年・昭島瑞雲中)で組んだドイスボランチも守備に専念し、途切れない三鷹の集中力。
追い込まれた東実も75分に2人目の交替。優人と双子の兄弟に当たる野口優斗(3年・郁文館中)を投入して、最後の勝負に。75分の24球目はこぼれ、自らそれに反応した野口優人のシュートは、替わったばかりの金澤が体を投げ出してブロック。76分に宮田が蹴った右CKはゴールキックに。78分には赤松が左サイドを抜け出し、決定的なシュートを放つも、武田がファインセーブで阻止。同じく78分にも伊ノ木のパスを前田が残し、赤松が放ったボレーは枠の左へ。攻める東実。守る三鷹。
執念で引き寄せた追撃弾。79分、長いボールへ懸命に食らい付いた前田が頭で競り勝ち、裏へ抜けたボールへ野口優斗が駆け寄ると、目の前にはGKとゴールのみ。右足から振り抜かれたボールは武田もよく触ったものの、高く上がってバウンドしながらゴールネットへ弾み込みます。兄弟の連投に応え、兄弟が大仕事。土壇場でようやく動いたスコア。点差は再び1点に縮まり、いよいよゲームはアディショナルタイムの攻防に。
80+3分は野口優人が粘って獲得した左FK。ベンチからの指示もあって、守護神の杉村もゴール前へ。宮田が丁寧に蹴り込んだキックへ、宮崎が体を伸ばして触ったヘディングは、武田が大事に大事にキャッチすると、程なくして駒沢第2の曇り空へ吸い込まれたファイナルホイッスル。「ロングスローとセットプレーにどう対応するかは練習していたんですけど、やっぱりちょっと粘り強く頑張ったかなという気はします。まあ、本当にヒヤヒヤものでございます」と佐々木監督も笑った三鷹が、最後は逃げ切る格好で次のラウンドへの進出権を獲得する結果となりました。


前述したようにロングスローの対策はきっちりしていたという三鷹。「前日に長いボールを投げられるOBに来てもらって、ロングスローの練習はやってもらっていたので、まだ対応はできていたと思う」と長島が話せば、「練習の時は本当に危なかったけど、自分の所というよりはその前の巽と河内の所に来ていたので、そこでしっかり先に当てられたというのがあった」とは、9月の1回戦で肋骨を折りながら、この日も最後まで奮闘し続けた湯浅。そのファイターが「みんなでそこは共通の意識を持って良くできたかなと思います」と語った通り、1回1回セットされて流れがブツブツ切れる難しい展開にも、最後まできっちり守り切った集中力は感動的ですらありました。実は今の3年生が『三鷹高校』として募集があった最後の世代に当たり、来年からは校名も『三鷹中等教育学校』に統一されるとのこと。「自分たちは全部外から来ているので、自分は校名にこだわりがあります」と今の校名で上位進出を果たす覚悟を口にした湯浅。「自分たちは下手なので、気持ちだけでは負けないようにしてきた」(湯浅)という『三鷹高校』としてのラストマッチを、まだまだ簡単に迎えるわけにはいきません。      土屋

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