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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年06月07日

インターハイ東京1回戦 関東第一×修徳@駒沢第2

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0607koma2 2.jpg真逆のスタイルを掲げた全国を狙い得る両雄が早くも激突。東東京を代表する2チームの"ベスト11"は引き続き駒沢第2です。
近年は2年連続選手権予選準優勝など、都内でも間違いなく強豪というポジションを確立した感のある関東第一。ところが、昨年はインターハイ予選、選手権予選とまさかの初戦敗退。新チームの立ち上げとなった新人戦も地区予選敗退と、非常に厳しい時期を強いられます。ただ、「もう腹を決めて、子供たちがゲームの中で逃げないようにやっていくしかないと思っている」という小野貴裕監督の下、今大会の1次予選は都立三鷹、かえつ有明、高輪という曲者たちを確実に撃破。2年前にこの大会で敗れた修徳にリベンジを果たして、勢いに乗りたい一戦になります。
過去2年の全国が懸かった都予選で、落としたのは昨年のインターハイのみ。今年初頭の高校選手権では全国ベスト8に輝き、改めてトーナメントマスターぶりを見せ付ける格好となった修徳。関東大会予選は岩本慎二郎監督も「都内で3点取られたのは久々」と話したように東久留米総合に0-3で完敗。T2リーグでも黒星が先行しており、ややその力を不安視する声も聞かれましたが、今大会の1次予選は前評判の高かった堀越を得意のウノセロで葬ると、東海大菅生には3ゴールを叩き込んでの快勝。「一番になる力というのはまだまだない」と指揮官は話したものの、今年のチームにも確実に"らしさ"が宿ってきています。駒沢第2の雨は一向に止む気配なし。注目の好カードは12時ちょうどにキックオフされました。


ファーストシュートは修徳おなじみのキックオフシュート。雪江悠人(3年・三郷JY)の50m弾は枠を捉え、関東第一の小さな守護神・岸将太(3年・FCクラッキス松戸)がキャッチしたものの、まずは先制パンチをお見舞い。5分には右サイドで石原海(2年)が縦に付けると、10番を背負った小野寺湧紀(3年・荒川第五中)のクロスは岸が何とかパンチングで回避しますが、ゲームは修徳が押し込む格好で立ち上がります。
意外な形で動いたスコア。7分、窪田アルファサワネ(3年・ヴェルディSS AJUNT)の縦パスが流れると、DFも体を入れてゴールキックを狙いましたが、ここに上半身をねじ込んでボールを奪ったのは音泉翔眞(3年・VIVAIO船橋)。ゴールライン上からマイナスに折り返したボールを中央で流し込んだのは角口大征(3年・FC府中)。帰ってきたキャプテンがいきなり大仕事。関東第一が先にアドバンテージを手にしました。
一気呵成。9分も関東第一。音泉と窪田の連携で奪ったCKを左から坂東智也(3年・VIVAIO船橋)が蹴り込むと、中央でまったくのフリーになっていた戸室公輔(3年・クリアージュFC)は、ヘディングでボールを難なくゴールへ押し込みます。「ウチもある程度セットプレーでの取りに行き方を考えていた」と小野監督が話した、そのセットプレーから追加点。早くも関東第一のリードは2点に広がりました。
イージーミスとセットプレーという何とも"らしくない"形から2つの失点を献上してしまった修徳は、小野寺のFKや雪江のロングスローからゴール前にボールを放り込みますが、関東第一も「前半の最初から立石と戸室の所が一番ヘディングの回数が多かった」と小野監督が言及した通り、立石爽馬(1年・フレンドリー)と戸室のCBコンビにボールを跳ね返すリズムが醸成され、ドイスボランチを組む坂東と浦川眞世(2年・三井千葉SC)のセカンド奪取も上々。26分には河野哲史(3年・ナサロットSC)が蹴ったFKのこぼれを中村大志(2年・ジェファFC)が叩いたボレーは枠の上へ。なかなか決定的なシーンを迎えられません。
ワンチャンスを生かす驚異の集中力。29分、ルーズボールを収めたボランチの許享文(3年・修徳中)が右へ付けたパスから、縦に運んだ石原は右足一閃。左スミへ最高の軌道を描いて向かったボールはサイドネットへ一直線に飛び込みます。「この前までいたのはCチームとかDチームだけど、この大会で初めて抜擢した」(岩本監督)という2年生が堂々たる一撃で、修徳が1点を返します。
「2点取れちゃったのがちょっと早過ぎたというか、ああなるとどう考えても修徳も出てくる」という小野監督の言葉通り、点差を縮めたことでさらに出てきた修徳の迫力。36分、河野のFKを雪江がダイレクトで落とし、小野寺が狙ったミドルはわずかにクロスバーの上へ。40分、エリア内で相手ボールをかっさらった雪江が決定的なシュートを放ち、ここは全身を投げ出した岸の超ファインセーブに阻まれましたが、意気上がるのは修徳応援団。最初の40分間は関東第一が1点のリードをキープして、ハーフタイムに入りました。


後半のスタートから動いてきたのは岩本監督。左SHの大畑雄亮(2年・ジェファFC)に替えて、1次予選決勝でもダメ押しゴールをマークした宮腰一生(3年・江東大島西中)を投入。一発のあるレフティにさらなるギアの加速を託し、残された40分間で逆転する覚悟を改めてチームへ注ぎ込みます。
46分は関東第一。右サイド、ゴールまで約25mの位置から、前線でスタメン起用されたレフティの道願翼(2年・VIVAIO船橋)が直接狙ったFKは枠を襲うも、修徳のGK久保井寿(2年・クリアージュFC)はファインセーブで応酬。指揮官もキーポイントに挙げていたセットプレーの好機も追加点には至らず。
輝いた男の背番号は10。52分、小野寺が右サイドから蹴り込んだFKは岸がパンチングで回避したものの、2回中央に放り込んだ2回目のルーズボールへ駆け寄ったのは小野寺。エリアやや外から右足で振り抜いたボールは、水しぶきを上げてゴール左スミへ飛び込みます。全国ベスト8をレギュラーで経験した小野寺が圧巻の同点弾。スコアは振り出しに引き戻されました。
前半のリードを吐き出してしまった関東第一は、56分に窪田を下げて堀内学(3年・FC杉野)を右SHへ送り込み、角口を最前線へスライドさせましたが、57分に修徳の右SBを務める田原迫隼人(3年・Forza'02)のクロスから、石原にあわやというヘディングを被弾。以降もなかなかボールを回すことができず、逆に修徳にポゼッションでも上回られる展開に。セットプレーを与える回数も多く、守備の時間を長く強いられます。
ただ、「お互いに2次予選の1回戦だから思っていることはできないだろうなと思っていたので、そこはもう腹を括っていた」という小野監督がハーフタイムに選手へ送っていたのは「2-1というスコアで戻ってきて、最初に1点取られて2点追い付いたのも2-1だし、ウチが2点取って1点取られたのも2-1。だから、次の2点目を取られてもスコアとしては一緒だよ」というメッセージ。67分には道願と浦川を下げて、小笠原翔紀(3年・三菱養和巣鴨JY)と松本蓮(3年・川崎フロンターレU-15)を同時に投入する2枚替えでバランスを微調整。自らが手数を出せない中で、相手に手数も出させず。カウンターを受けるリスクも取り除きながら、うまく行かない時間をやり過ごしていきます。
右サイドにアタッカーの須田恭平(3年・松戸第一中)を投入していた修徳は、攻撃の主導権は完全に握っているものの、流れの中からはフィニッシュを取り切れず。セットプレーも決定的な場面へ結び付けることはできません。79分は修徳。雪江がゴールまで25m近い距離から打った無回転FKは枠の右へ。80+2分は関東第一。佐藤勇斗(3年・VIVAIO船橋)が蹴った右CKは中央にこぼれ、松本がかぶせたボレーはわずかに枠の上へ。80+3分は修徳。今度は35m近い距離にもかかわらず、果敢にトライした雪江の無回転FKは枠の上へ。80分間では決着付かず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へと委ねられました。


エクストラタイムも最初の決定機はトーナメントマスター。まだキックオフから1分も経たない81分、左サイドを切り裂いた宮腰がそのままカットインから枠へ飛ばすと、ここは岸が横っ飛びで掻き出すファインセーブ。守備面では河野、足達広大(3年・レジスタFC)のCBコンビと許、小澤翔(2年・荒川南千住第二中)のボランチコンビが強固な網を中央に張り巡らせ、醸し出す安定感はさすが修徳。90分にも高い位置でボールを奪った雪江が繋ぎ、右へ流れた須田のミドルは枠の左へ外れましたが、やはりゲームリズムは修徳に。1分間のブレイクを挟み、いよいよゲームは最後の10分間へ。
93分は関東第一。佐藤のオーバーラップで獲得した左CKを坂東が蹴り込み、戸室のヘディングはDFがブロック。直後の右CKは佐藤が担当し、こぼれを狙った松本のシュートはクロスバーの上へ。97分は修徳。右から田原迫が上げたアーリークロスを雪江がフリックで流し、許がボレーで打ち切ったシュートは枠を捉えるも、ボールはクロスバーに跳ね返ってピッチへ帰還。スタンドを包んだ溜息と悲鳴。
"修徳魂"を上回った"関東第一魂"。誰もがPK戦を確信し始めていた99分。角口を起点に小笠原は右サイドへ短く展開すると、それまでほとんど効果的なオーバーラップを繰り出せていなかったSBの菊地優生(3年・三菱養和調布JY)は、丁寧なグラウンダーのクロスを中へ。走り込んでいた坂東が渾身の力で放ったシュートは、食らい付いたDFとGKを振り切ってゴールネットに吸い込まれます。「今回は任せようと思って3年生を多く入れたんです」という指揮官の期待に応える、3年生4人のハーモニーが奏でたのは魂の決勝弾。土壇場で修徳を突き放した関東第一が、駒澤大学高の待つネクストステージへと駒を進める結果となりました。


率直に言って修徳のゲームでした。1点を返した前半途中からはポゼッションでも関東第一を向こうに回して優位に立ち、再三セットプレーも獲得するなど、一方的と表現しても差し支えないような展開だったと思います。それでも、最後に勝ったのは「いつもこんな感じの試合でやられてきていた」(小野監督)関東第一。ある意味で両者のスタイルが逆転したような、不思議な試合でもあったように感じました。「結局東久留米総合とか帝京とか強い所が負けていくのを見ているので、もう勝った所が強いということでしかないなというのは、ここ何年間かずっと見ている」と小野監督。間違いなくチームのターニングポイントになり得る一戦を"魂"で勝ち切ったイエロー軍団にとって、この日の100分間は今後とてつもなく大きな意味を持ってくるような気がします。        土屋

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