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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
ワールドカップ前にJリーガーたちがサポーターへ送り届ける、360分間のフットボールに対する情熱。Bグループの趨勢を決める重要な一戦は日立台です。
渡部博文の劇的な決勝ゴールで逆転勝利を収めた開幕戦は2ヶ月前。ただ、甲府、大宮と続いたアウェイ2連戦はいずれもドローでグループ3位に付けているのは柏。ここから始まる2週間で4試合の強行軍を考えても、今日のホームゲームは落とせない一戦。ディフェンディングチャンピオンとしての意地を、ホームでサポーターに見せたい所です。
ここまでの3戦は2勝1分けと無傷。なかなかゴールの生まれないリーグ戦とは裏腹に、3試合7得点と逆に攻撃力が牽引する格好でBグループの首位に立っている新潟。柳下体制3年目となる今シーズン、サポーターが求めているのは間違いなくクラブ史上初のタイトルであるのは間違いない所。アウェイとはいえ、難敵をきっちり叩いて首位固めと行きたい90分間です。雨上がりの日立台が計測した気温は.度。肌寒さすら感じる5月のナイトゲームは、柏のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは柏。3分、右サイドで高山薫のパスからソン・ジュフンと入れ替わった工藤壮人はそのままフィニッシュ。ボールの勢いが弱く、新潟のGK守田達弥にキャッチされたものの、ストライカーが示した勝利への意欲。新潟のファーストシュートは6分。レオ・シルバとのワンツーから岡本英也が右へ付け、ルーキーながら早くもチームの重要な戦力になっている小泉慶が中へ持ち込みながらシュート。ここはDFが何とかブロックしてCKに逃れましたが、お互いに積極的な姿勢を立ち上がりから打ち出します。
そんな中、9分に早くも歓喜に沸騰したサポーターは黄色。最終ラインでボールを持った鈴木大輔は、ソン・ジュフンと大野和成の門を通す極上スルーパス。完全に裏を取った高山が折り返すと、フリーの田中順也は右足で右スミへ丁寧に流し込みます。「練習ですずっとやってきた形。薫が良いボールをくれた」と語ったレフティの"右"が飛び出し、柏がパーフェクトな崩しから先制弾を叩き込みました。
いきなり追いかける展開となった新潟もすぐさま反攻。10分にはボランチからのスタートとなった舞行龍ジェームズを起点に、鈴木武蔵を経由したボールを小泉が狙うも、渡部がきっちりブロック。直後の右CKを松原健が蹴ると、ニアに突っ込んだ大井健太郎のヘディングは枠の右へ。シュート数ではホームチームを上回ります。
ところが、次に再び決定機を掴んだのは柏。茨田陽生が立て続けにミドルを放った直後の15分、「それが自分の仕事なので、前回の試合であまり入れられなかった縦パスを入れたいというのがあった」という茨田が縦に鋭いクサビを当てると、レアンドロのパスで裏を取ったのは高山。ニアへのクロスに合わせた工藤のジャンピングボレーはクロスバーにヒットしてピッチへ跳ね返ったものの、「あそこを突いていく他にチャンスはないと思った」というストライカーの強烈なシュートに、声を失う新潟サポーター。そして、工藤の話した"あそこ"こそが序盤の大きなポイントに。
3分、9分、15分とゴールも含めて、柏が決定的なシーンを創ったのはすべて右から。この3シーンでいずれも裏を簡単に取られてしまったのは、これが新潟でのデビュー戦となるソン・ジュフン。「相手のCBの所もコミュニケーションが取れていない部分があったし、不安定な部分もあった」と工藤が話せば、「人を変えたことでハマりが見つけられなかったのかな」とは大谷秀和。柳下正明監督も「立ち上がりから守備においての役割をみんなが理解できていなくて、そこをうまく使われた」と明言したように、ソン・ジュフンと周囲の連携が不安定だったことで、どうしてもラインを上げ切れず、新潟から見た左サイドの裏を使われ放題に。また、ボランチの舞行龍も田中へマンツーマン気味に付くことで最終ラインに吸収されてしまい、5バックのような後ろが重たい時間が続いてしまいます。
20分には新潟も田中亜土夢のパスを受けた鈴木が、左からカットインしながら枠へ飛ばすも柏のGK菅野孝憲が確実にキャッチすると、25分には柏にまたもビッグチャンス。右サイドを高山と2人で崩したレアンドロが中へマイナスに送り、工藤のシュートを松原が懸命にクリアしたボールは右のポストにヒット。こぼれに反応した田中のシュートは舞行龍が体を投げ出してブロックしましたが、最初の15分よりは落ち着いてきた展開の中で「セカンドボールが拾え、バイタルで受けるという所で主導権を握れた」と工藤も話した柏のリズムは変わらず。
すると、34分にスタジアムを揺らしたのは「あの威力はイメージ以上」と本人も驚くゴラッソ。橋本和、レアンドロと回ったボールをピッチ中央で引き出した茨田は、ワントラップで持ち出すとそのままミドルにトライ。「トラップした時に若干ボールが浮いたおかげで、自分の振った足に綺麗に乗った感じ」と自ら振り返ったボールは、凄まじいスピードでゴールネットへ突き刺さります。「あれだけ速い球が飛んでいってゴールに入ってくれると気持ち良かった」という言葉にも頷ける、茨田の弾丸ミドルが炸裂。スコアボードの数字が"2"に変わりました。
前半終了間際のラッシュも柏。45分、田中が左へ振り分け、橋本が上げたクロスをニアで工藤がヒールフリックを敢行も、走り込んだ高山には合わず。45+1分にはレアンドロと工藤が絡み、ハイサイドに潜った茨田が右からクロスを放り込むと、大井が何とかクリア。45+2分にも田中の右CKがこぼれ、ゴールまで数メートルの距離から3バックの中央を任された増嶋竜也が放ったシュートはクロスバーの上へ外れ、その増嶋は頭を抱えましたが、セットプレーからも決定的なシーンを。「ゲームに入る準備が雲泥の差」とは柳下監督。柏が2点のアドバンテージを手にして、最初の45分間は終了しました。
「柏の3トップはほとんどFW3人ということで、守備になった時にボランチにマーキングさせたいと。SBはアウトサイドのWBを抑えて、最終的に後ろは5対5の形にして、その分2列目の選手をもっと前でプレーさせたかった」という狙いから舞行龍をボランチで使ったものの、「本当は90分やらせたかったけど、周りのストレスがどんどん溜まりそうだったので」やや本領を発揮できなかったであろうソン・ジュフンを下げて、小林裕紀を投入した柳下監督。舞行龍を最終ラインに落とし、全体のバランスを取り戻しに掛かります。
後半のファーストチャンスは新潟。47分、前半から積極性を見せていた松原が裏へ落とすと、マーカーを後方から追い抜いた鈴木がボールにリーチ。飛び出した菅野と交錯しながら触ったシュートは枠の右へ外れましたが、ナビスコでは得点ランクトップを走る20歳が、ゴール裏のオレンジサポーターを沸かせます。
ただ、反撃態勢に入った新潟の致命的なポイントは「球際の所もあまりプレッシャーを感じなかった」と大谷が振り返ったように、球際の緩さが如実に出た守備時のセットプレー。48分には田中の左CKを、増嶋がドンピシャで合わせたヘディングは守田がファインセーブで回避。56分にはまたも田中が左CKを蹴り込むと、工藤が密集に頭で入れたこぼれを橋本が利き足でボレー。これも守田が素晴らしい反応で掻き出しましたが、続けざまに決定的なシーンを創出します。
トドメもやはりセットプレー。58分、田中が連続して右から蹴った2本目の、トータル8本目のCKに渡部が飛び付き、こぼれたボールを再び渡部がハーフバウンドで叩いたボレーは、ゴール左スミへ一直線に飛び込みます。「甲府戦はちょっと自分たちらしくなかったというか、やらなきゃいけないことが出せなかったという所で言えば、連戦の中でリーグとナビスコは別物だけど、今日は自分たちがやらなきゃいけない部分をどうやっていくのかが非常に重要だったと思う」と大谷も位置付けていたゲームで怒涛の3ゴール。柏が大きな追加点を奪いました。
手痛い3点のビハインドを負った新潟は、失点の直前に当たる55分に鈴木と替えて川又堅碁を投入していましたが、なかなか流れを一変させるまでには至らず。65分にはレオ・シルバが左サイドへスルーパスを繰り出し、田中亜土夢の入れたクロスに川又が走り込むもわずかに合わず。68分には2枚目のカードとして岡本と田中達也をスイッチさせ、何とか図りたい攻撃のギアチェンジとパワーアップ。
それでもゴールの匂いはホームチームに。71分には高山とレアンドロの連携から、右へ展開したボールを茨田がファーへクロス。収めた田中は縦に持ち出しながら必殺の左足を振り抜くと、高速シュートはクロスバーに激しくヒット。80分にも投入されたばかりの小林祐介が中盤でボールを拾い、レアンドロとのパス交換からエリア付近へ。最後はレアンドロのラストパスがDFに引っ掛かったものの、ここ最近存在感を増し続けている19歳も、すぐさまゲームに入ってみせます。
せめて1点を返したい新潟は、「田中達也さんが入ってきて、中途半端な所で受けてターンされたりしていたので、それが嫌だった」と大谷も話したように、田中達也はかなりの広範囲を動き回って、チャンスメイクに奔走。87分には大野が上げた左クロスの処理にDFがもたつくと、その田中達也が浮き球をそのままダイレクトボレーで狙いましたが、ボールは左ポストに直撃するとそれがこのゲームのファイナルシュート。「今日の試合は攻守において新潟を上回ることができたのではないかと思う」とネルシーニョも評価を口にした柏が、グループ首位に躍り出る大きな3ポイントを獲得する結果となりました。
新潟にとってはなかなか厳しい90分間になってしまいました。「柏はこのゲームを落としたら非常にチャンスが少なくなるということで、スタートからかなりハイスピード、厳しいプレーで来るということは分かっていたはずだが、その準備をしていなかったのが、90分通してこういう結果になったんじゃないか」と柳下監督。「17番の選手の特徴が把握し切れてなく、3番の選手がどう操っていいのかで苦戦しているなと思った」と工藤も言及したように、最終ラインの不安定さが色々な所に伝染した部分は否めません。とはいえ、「彼にとっては残念な交代だったけど、まだまだゲームはあるので」と指揮官も話したように、たった1試合のパフォーマンスで色々ジャッジするのは早計。ソン・ジュフンの今後には是非注目したいと思います。
「前節甲府相手に3失点したという所で言えば、今日ゼロで抑えて結果を出したというのはものすごくチームにとって大きなこと」とキャプテンが振り返った通り、3ゴールという結果ももちろんですが、久々の出場となった増嶋がさすがのパフォーマンスで勝利に貢献したことも、この結果の意味合いをより強いものにしているのは間違いありません。ともすれば引きずる可能性もあった敗戦から、わずか中3日で掴んだ内容と結果の手応え。「順位やチーム状況をしっかり切り替えられているのかという所も含めて、重要なゲームをしっかりモノにできたのはチームが成長している部分」と大谷。埼玉スタジアムへと続く連覇への道。太陽王が再びその進む方向を自ら照らし出した水曜の夜でした。 土屋
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