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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2014年05月28日

キリンチャレンジカップ2014 日本×キプロス@埼スタ

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saista0527.jpgワールドカップに向けた国内最後のゲームは「この埼玉スタジアムでは、この4年間でたくさんの成功と素晴らしいゲームがあり、サポーターの方々とも喜びを分かち合えたので、ここで試合をして『行ってきます』というメッセージを発信したかった」と指揮官自らが話す"壮行試合"。キプロス代表との対峙はザッケローニ政権下で2度目のフレンドリーマッチ開催となる埼玉スタジアム2002です。
その起用に注目の集まった内田篤人、吉田麻也、長谷部誠という"復帰組"の内、スターティングメンバーに名前を連ねたのは内田のみ。CBは森重真人と今野泰幸の元FC東京コンビが再結成を果たし、ボランチは山口蛍と遠藤保仁の組み合わせ。1トップには柿谷曜一朗を頂き、19時34分に無数のフラッシュの中でゲームの幕は上がりました。


立ち上がりからアグレッシブな姿勢を見せたのは、国内屈指の強豪APOELに所属する選手がチーム事情で帰国してしまい、一部の主力を欠いてゲームに臨んだキプロス。4分には左SHのヨルゴス・エフレムが積極的な仕掛けから獲得した左CKをコンスタンティノス・マクリディスが蹴り込むと、中央で何とかDFがクリア。5分にはハラランボス・キリアクのフィードから、DFラインの裏へコンスタンティノス・マクリディスが巧みに抜け出し、最後は届かずに川島永嗣にキャッチされるも狙いの1つを明確に。7分にも左サイドで前を向いたエフレムが右足アウトでスルーパスにトライ。1トップのネストル・ミティディスには裏に潜り切れませんでしたが、思ったよりもボールを繋いできたキプロスが、「前半開始直後にいくつかロングボールから裏を取られる場面があった」とザッケローニ監督も言及したように、機を見た"縦"でチャンスの芽を創り出します。
9分に遠藤のミドルでファーストシュートを記録した日本。11分には長友佑都、香川真司、本田圭佑の連携で、オフェンスファウルになったとはいえ、"らしい"パスワークを披露すると、16分にも長友のパスから香川がミドルにトライ。キプロスのGKパノス・コンスタンティヌが胸で弾きましたが、「前半の最初はちょっと硬かったけど、徐々に自分のプレーだったりパスだったりというのはできたと思う」という森重の言葉はおそらくイレブンの総意。いつも通り左サイドを中心にしたアタックで、徐々にゲームリズムを掌握していきます。
21分はキプロスの"あわや"。カウンターから右サイドへ放り込んだボールへ、先に到達していた内田にエフレムはタックルを見舞うと、10日前にJリーグのゲームも担当したパベル・ラチコフスキ主審のホイッスルは鳴らず。中へ切れ込んだエフレムのクロスは森重が弾き出しましたが、このスローインからビンセント・ラバンブナイルは枠外ミドルにチャレンジ。一瞬の隙は見逃さないキプロスの集中力。
ただ、25分を過ぎると日本もそれまで目立ったミドルシュートから、もう1つバイタルに踏み込んだアタックまで。その25分には遠藤を起点に左から本田が柔らかいクロス。飛び込んだ岡崎慎司にはわずかに届かなかったものの、"左で創って右"の狙いも明らか。29分にはビッグチャンス。本田、香川のヒール、柿谷と細かいパスが回り、左スミを狙った本田のシュートはコンスタンティヌにキャッチされましたが、ここまでで一番綺麗なパスワークからのフィニッシュに、ボルテージの一段階上がった青いスタンド。35分にもスムーズなパス交換からFKを獲得し、本田が直接狙ったボールはクロスバーを遥かに越えるも、漂い出した歓喜への気配。
「個のクオリティとスピードに乗った技術を前面に出したサッカーをしていきたいと思っている」指揮官の期待に応えたサムライブルー。43分、左サイドから本田が入れた低いクロスはDFにクリアされましたが、バイタルで拾った山口は素早く右へ。岡崎が浮かせ、香川が潰れると、再三高い位置に進出していた内田がシュート。GKが弾いたボールへ真っ先に反応したのはまたも内田。「今日の出場は45分だと思っていた」という右SBの復活弾に沸騰したスタジアム。意外な伏兵の代表2ゴール目がスコアを動かし、日本が1点のリードを奪って前半の45分間は終了しました。


後半はスタートから日本に3人の交替が。遠藤、内田、今野に替わって、長谷部誠、酒井宏樹、吉田麻也が相次いでピッチイン。これに関しては「ゲーム前からプログラムしていた交替のチョイスだった」とザッケローニ監督も明言。それぞれがそのままの位置に投入されて、残りの45分間を迎えます。
50分にはようやく11番に訪れた決定的なシーン。ペナルティエリア付近で相手にミスパスをプレゼントされた香川は、すかさず縦へラストパス。うまく抜け出した柿谷は左足一閃。しかし、ここはコンスタンティヌがワンハンドのファインセーブで応酬すると、こぼれもDFが必死にクリア。スタイル的に我慢を強いられがちな1トップへ回ってきたチャンスでしたが、追加点を取り切ることはできません。
54分にはキプロスに1人目の交替。キリアクに替えて最前線へオニシフォロス・ルシアスを送り込み、ミティディスが右SHへスライド。長友のカットインミドルを経て、ザッケローニ監督にもさらなる交替を決断。ピッチ脇に登場しただけで大歓声を呼ぶ男。背負った番号は見慣れた13。柿谷に替わって、大久保嘉人が2年4ヶ月ぶりとなる代表戦のピッチへ駆け出していきます。
62分は挨拶代わり。左サイドでボールを受けた大久保は、C大阪の後輩でもある香川からのリターンを引き出すと、左45度のエリアから得意のミドル。DFに当たったボールはクロスバーの上へ外れたものの、「1トップは初めてやった」と語る昨シーズンのJリーグ得点王が、早くもその片鱗を日の丸のサポーターへ披露します。
そして、そのコンディションが懸念されていたキャプテンも「前半を見ていて、ボールを奪われてから切り替えてボールを取った時にチャンスになっていたので、そこを早くしようと思っていた」という姿勢を64分に。中盤でのボールカットから長谷部を起点に大久保、本田と回った流れから、しっかり上がってきた長谷部がミドル。ここはDFのブロックに遭いましたが、67分にも山口、大久保と繋いだボールを長谷部が落とし、香川のミドルはコンスタンティヌの好セーブに弾かれるも、誰よりも早くゴール前に詰めてこぼれ球をキープしたのは長谷部。世界を経験してきた不動のリーダーもコンディションの良さをアピール。押し込み続ける日本。
68分に本田がミドルをクロスバーの上へ外したのを見て、ザッケローニ監督は5人目の交替に着手。70分に岡崎と清武をスイッチさせて、右サイドの活性化を図ると、3分後には本田が右へ展開したボールを清武は鋭いグラウンダークロス。こぼれを狙った長谷部のミドルはDFにブロックされるも、清武からワンチャンス。78分にも果敢なインターセプトから最前線まで飛び出した山口が大久保の浮き球を頭で落とし、本田が枠へ飛ばしたシュートはコンスタンティヌのファインセーブが掻き出したものの、「ここでさらにインターナショナルでの経験やチームに合わせる時間を与えようと考えていた」と指揮官も言及した山口は、守備のケアだけではなくこの時間帯にフィニッシュへも関与。本大会に向けて自らの存在を強烈にアピールしてみせます。
65分にシニシャ・ドブラシノヴィッチ、70分にヨルゴス・バシリウ、72分にピエロス・ソティリウと追加招集となった2人を含む3人を相次いで送り込んだキプロスは、「相手も後半の方が疲れていたので、それは押し込めるなという感じはした」と長谷部も話したように、運動量の低下からロングボールも単発に。ルシアスとマクリディスを2トップ気味に並べた布陣変更も奏功せず、シュートシーンまでなかなか持ち込めません。
ザッケローニ監督が78分間走り切った長友を下げ、最後のカードとしてピッチへ投入したのは伊野波雅彦。究極のポリバレントプレーヤーが配置されたのはそのまま左SB。代表の立ち上げから一貫して呼ばれ続けてきた彼へ、指揮官が寄せる信頼の大きさを象徴するような交替策だったと思います。
85分には一抹の不安。キプロスの右サイド、日本の左サイドでの攻防。タイミングを図ったマクリディスのスルーパスで、香川の裏を完璧に取ったのは右SBのマリオス・スティリアヌ。フリーでエリア内へ侵入したスティリアヌの選択は、角度のない位置からのシュートとなり、サイドネットの外側を叩いたボールを見て、キプロスを率いるハラランボス・クリストドゥル監督は激高しましたが、そのくらい日本にとっては大きなピンチ。左サイドの守備というのは、その受け渡しやスライドも含めてもう少し詰めていく必要性を感じさせるワンシーンでした。
"壮行試合"の終焉。90+3分に清武が蹴った右CKがこぼれ、伊野波が枠の左へ外れるシュートを放つと、58,564人の大観衆を集めた埼玉スタジアムにタイムアップのホイッスルが。「体が重い状態だったから、頭のキレがどういう風に機能するのかを見たかった。その点に関しては非常に満足している」とザッケローニ監督も一定の評価を口にした日本が、いわゆるワールドカップ直前の国内ラストマッチとしては史上初となる勝利を収め、超満員のスタンドへ『行ってきます』というメッセージを良い形で発信する結果となりました。


現状で考えられるテストは概ね成功に終わった90分間という印象です。最大の懸案だった、負傷明けとなる3人の欧州組も上々のパフォーマンスを披露し、大久保というアグレッシブな切り札の効能もある程度見定められたのは好材料。そんな中で個人的に最も大きな収穫だったと感じたのは、「ブラジルでスタメンで出たいなという気持ちが、改めて代表で試合をしてみてより強くなりました」と話した森重と山口が、水準以上の働きで90分間をきっちり締めたことでした。やや会見に登場したのが遅れた理由を問われて、ザッケローニ監督が「ゲームに出ていないメンバーがピッチに残ってトレーニングをしたので、彼らを単純に待っていて、そのトレーニングが終わってから1回ここで締めて、また成田で会おうという挨拶をしただけ」と説明したことからもわかるように、この試合はある意味"壮行試合"という名の負荷を掛けたトレーニング。2ヵ月半ぶりの実戦としては得るものの多い埼玉の夜だったのはないでしょうか。        土屋

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