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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
全国経験も有する都立の雄であり、名将・山下正人監督が率いる都内屈指の曲者集団と、カナリア色のユニフォームを纏った高校サッカー界の巨人が激突する第2試合。会場は引き続き駒沢第2です。
新チームの立ち上げとなったT2の開幕戦は6失点での大敗。それでも、「ここから『こんなもんじゃねえよ』というのを見せなきゃいけないしね。目標ができていいんじゃない?」と不敵に笑ったのは山下監督。その言葉通りにリーグ戦でも着々と調子を上げ、迎えた今大会は初戦の東海大菅生戦に1-0で競り勝つと、先週の2回戦は2ヶ月前の開幕戦で6点を奪われた多摩大目黒に延長の末、しっかりとリベンジ成功。勢いを持ってクォーターファイナルに挑みます。
カナリア軍団最後の全国制覇となっている、22年前の選手権優勝を達成したキャプテン・日比威ヘッドコーチが今シーズンから監督に昇格。コーチングスタッフにも若い指導者が多く、新たなフェーズに突入した感のある帝京。今大会は初戦の永山戦こそ7ゴールを奪って快勝を収めましたが、先週の早稲田実業戦は大苦戦。2点を先制され、一時は逆転まで持って行ったにも関わらず、なんと再逆転を許す展開に。最後はPK戦で何とか勝ち上がったものの、4失点という現実に「ディフェンスを徹底してやっていくというのが、今の帝京のあるべき姿」と話す指揮官は不満顔。そのムードを払拭するためにも、この試合は無失点が最優先事項です。スタンドはほぼ満員の注目具合。日曜正午の好カードは駒場のキックオフで幕が上がりました。
ファーストシュートは2分の駒場。SHに入ったレフティ朝比奈賢伸(3年・目黒第十中)が左からクロスを放り込み、逆サイドのSHを務める秋葉遼太(3年・練馬開進第一中)のボレーは枠の左へ逸れたものの、ダイナミックな展開でチャンス創出。4分にも相手ボールをかっさらった秋葉が右サイドをえぐり切り、折り返したボールはDFが何とかクリアしましたが、8分にも左から中原和馬(3年・FC古賀JY)が鋭い左CKを中央へ。まずは駒場が勢いよくゲームに入ります。
「指示通り裏へ蹴っていった」と山下監督も振り返った通り、駒場のファーストチョイスは縦。この狙いは前線に入った吉澤泰成(3年・横河武蔵野FC JY)がファーストもセカンドも体を張って収めたことで奏功。ここにサポートへ入る中原や、サイドの秋葉や朝比奈がしっかり絡むことで、セットプレーも続けて獲得。16分にはキャプテンの末永直輝(3年・FCトリプレッタ)がハーフウェーライン付近から蹴ったFKを、吉澤がバックヘッドで狙ったシュートは、帝京のGK渡辺聖也(2年・FC多摩)がキャッチ。22分にも右から篠原力(3年・FC東京U-15むさし)が入れたFKはこぼれ、朝比奈が狙ったミドルは帝京のCB平井寛大(3年・帝京FC)が体でブロック。24分と26分には共に朝比奈の仕掛けから、吉澤と中原が相次いで枠外ミドルにトライするなど、積極性で上回った駒場の続く攻勢。
さて、関東予選とT1リーグが続けてやってくる過密日程も考慮し、「火曜の堀越戦から5人くらい入れ替えた」(日比監督)帝京は、なかなか前でポイントが創れず、サイドでの主導権も明け渡す展開に。34分には2トップの一角に起用された古塚和寛(3年・鹿島アントラーズつくばJY)を起点に高橋優一(3年・横河武蔵野FC JY)、鈴木啓太郎(2年・ジュビロSS浜松)とボールを回し、高橋が枠へ飛ばしたシュートは駒場のGK芹澤遼太(3年・目黒中央中)が何とかキャッチ。36分にも高橋が右へ振り分けたボールから、鈴木が入れたクロスはファーへ流れてチャンス逸。ゴールの匂いを漂わせることができません。
ボールアプローチも速い駒場のチャンス再び。37分、末永のシンプルなフィードに吉澤が競り勝つと、前線の片岡勇介(2年・FCトリプレッタ)が裏へ抜け出しかけるも、ここはオフェンスファウルの判定。40分、末永が放り込んだ球足の長いFKは渡辺がパンチングで回避。「前半は良かったと思うよ」と山下監督。駒場がゲームリズムを掴んだ40分間は、スコアレスでハーフタイムに入りました。
一転、後半はカナリア軍団の反攻が。44分にボランチの磯野拓也(3年・川崎フロンターレU-15)が左へ展開。SBの宮崎智成(3年・帝京FC)が上げたクロスに、飛び込んだ安部心葵(3年・北区十条富士見中)はわずかに届きませんでしたが、前半には見られなかったサイドアタックがいきなり。46分に1人目の交替として古塚と古市拓巳(3年・岐阜VAMOS)を入れ替えると、直後には前線へスライドした磯野がCKを獲得し、古市が蹴り入れたボールをフリーの下川雅人(3年・FC町田セルビアJY)が叩いたヘディングは枠の右へ外れるも、決定的なシーンを創出。さらに47分には、鈴木に替えて長倉昂哉(2年・さいたま木崎中)を送り込み、一気に流れを引き寄せに掛かります。
「大きく蹴ったボールに対して、疲れて足が止まっているから、サイドハーフも中に入ったボールは絞って行けるように少し前へ上がれと。前へ気持ちを持っていくように」と選手を送り出した山下監督でしたが、相手の圧力で攻守の時間は逆転。48分には上がってきた右SBの伊藤富一(2年・FC東京U-15深川)がクロスを送り込み、ファーでバウンドを合わせた朝比奈のボレーはゴール左へ。50分には右から篠原が蹴ったCKを渡辺が弾くと、枠内へ収めた朝比奈の鋭いミドルは中原に当たってしまいゴールキックへ。7番のレフティが続けてシュートを放つも、ゴールネットを揺らすことはできません。
55分は帝京。古市が左へ回し、縦に持ち出した安部のクロスを、高橋がボレーで狙ったボールはクロスバーの上へ。58分も帝京。宮崎の左FKがこぼれ、拾った高橋のボレーは駒場の左SB山口将弥(3年・北区赤羽岩淵中)が果敢にブロック。59分も帝京。押し寄せる波状攻撃から、左のハイサイドまで飛び出した尾田雄一(3年・帝京FC)の折り返しを、安部がフリーで打ったシュートはゴール左へ。攻める黄色。守る青。
「押し込まれるのはわかっていたんだけど、押し込まれた時の次のボールを拾えなかった」(山下監督)駒場も、時折手数は。64分には中原、片岡と繋がり、右から敢行した朝比奈のカットインミドルは枠の左へ。69分には篠原が右へ送ったボールを、片岡がクロス気味のシュートに変えるも枠の左へ。直後にも篠原が短いドリブルから打ち切ったミドルはゴールのはるか左へ。決定機を迎えるまでには至りません。
最終盤は帝京のラッシュ。70分、一旦失ったボールを奪い返した磯野が右から折り返し、走り込んだ長倉はわずかに届かずDFがクリア。71分、磯野、安部とパスが回り、尾田が左から入れたボールは芹澤が何とかキャッチ。日比監督は安部と青野紘季(3年・波崎第一中)もスイッチさせて勝負に。山下監督はここまで奮闘したCBの北澤燎平(3年・インテリオールFC)が足を痛めた状況を受けて小松謙祐(3年・Forza'02)を、さらに中原に替えて副島陸(2年・FC東京U-15むさし)を相次いで投入し、試合はラスト5分間とアディショナルタイムへ。
75分は帝京。ピッチ中央、ゴールまで約20mの距離から長倉が直接狙ったFKはわずかにクロスバーの上へ。76分も帝京。磯野のパスから尾田とワンツーを決めた高橋が打ち切ったシュートは、ここもクロスバーの上へ。79分も帝京。長倉が倒されて奪った左FKを古市が蹴るも、ボールはラインを割ってゴールキックへ。「シュートブロックとか最後の所で頑張ってやっていた」と山下監督も称えた駒場が凌ぎ切り、スコアの動かなかったゲームは前後半10分ずつの延長戦へ突入しました。
エクストラタイムの構図は一層鮮明に。81分は帝京。尾田のフィードに長倉が競り勝つと、ここは飛び出した芹澤がしっかりキャッチ。84分も帝京。駒場DFのバックパスが小さく、全力で寄せた長倉より一瞬早く芹澤がクリアしてオフェンスファウルに。88分も帝京。負傷交替を余儀なくされた長倉を笹沼和紀(3年・帝京FC)と入れ替えた直後に、青野のラストパスに高橋が反応するも、間合いを詰めた芹澤が必死にセーブ。攻める黄色。守る青。
エンドの変わった93分には帝京に決定的なシーンが。カウンターから高橋が短く出し、溜めた磯野は右へラストパス。青野と芹澤の1対1は、しかし「相手が2枚ゴール前にいる中で、ディフェンスが1枚しかいなかったので、逆サイドにパスがあるかなと思っていた」という芹澤が足に当てる超ファインセーブで回避。歓声と悲鳴が交錯するスタンド。続くスコアレス。
95分も帝京。宮崎の左CKを下川がシュートへ持ち込むも、副島が体を投げ出してブロック。こぼれに反応した尾田のシュートはクロスバーの上へ。99分も帝京。味方のクリアボールを磯野が頭で繋ぐと、左へ流れながら腰を回した高橋のシュートはわずかにゴール右へ。100+1分も帝京。左から宮崎が放り込んだCKも駒場ディフェンスが掻き出すと、主審が鳴らしたタイムアップを告げるホイッスル。両雄譲らず。セミファイナルへの切符はPK戦で奪い合うことになりました。
先攻は駒場。キャプテンマ-クを巻いた1人目の末永がきっちりGKの逆を突いて重責を果たすと、輝いたのは「負けたら自分のせいになるのでそういう所は怖かった」と振り返る守護神。帝京1人目が向かって左へ蹴ったボールを、芹澤は確信を持って弾き出します。飛び出したガッツポーズ。この試合で初めて手にした"リード"。
駒場2人目の篠原がきっちり沈めれば、帝京2人目の磯野は「あそこに蹴るには相当の自信があって、うまい子じゃないと狙ってこない」と山下監督も認めるコースで成功。逆に駒場3人目のキックは帝京の守護神を任された渡辺が弾き、ポストに当たったボールはピッチ内へ。カナリア軍団へ傾き掛けた流れを、しかし強引に引き戻したのは「1本止めたあたりから楽しくなっちゃった」背番号1。
帝京3人目のキックは向かって右の際どいコースを突きましたが、再び飛び出したのは芹澤のガッツポーズ。「1本止めればいいよと言っていた」という指揮官も望外の"2本目"。「実際はたまたまなんですけど当たりました」と笑った芹澤。リードはそのまま続き、駒場4人目の朝比奈、帝京4人目の尾田もゴールネットを揺らし、決めれば勝利の駒場5人目は吉澤。短い助走から選択したコースは左。GKの選択は右。吉澤と芹澤へ向かって走り出した青いイレブン。「昨日は『PK戦になったら負けるから、順番もおまえらで決めろ』って言って、タバコ吸いに出ちゃった」と笑顔で明かしてくれた山下監督。駒場がそのPK戦をきっちりモノにして、関東大会の出場権獲得へ王手を懸ける結果となりました。
前半の攻勢から一転して、後半と延長は耐える時間の長かった駒場でしたが、「試合の中でディフェンスができたりすると、試合中でも自信が持てるのかなと思いました」と芹澤が話したように、守備陣の集中は時間を追うごとに高まっていった印象も。辛口で鳴らす山下監督も「今日はよく頑張りましたよ」と一定の評価を与えていました。実は駒場は昨年末の地区新人大会で4回勝って、関東予選への出場権を獲得したチーム。「この大会はイチからやってきたので、少しずつでも成長しているのかなと思います」と語ったのは殊勲の芹澤。山下軍団の歩みはまだまだ止まりそうにありません。 土屋
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