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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2014年03月17日

J2第3節 松本×長崎@アルウィン

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yamaga0316.jpg勝ち点6を携えた雷鳥が今シーズン初めて自らの住処に降臨する一戦。緑のサポーターが待ちに待ったホーム開幕戦は当然アルウィンです。
最終節まで昇格プレーオフ進出の可能性を残しての7位フィニッシュが昨シーズン。J参入3年目にして、一足飛びに遥かなる頂をその視野へ確実に捉え始めている松本山雅FC。今シーズンは地元出身の日の丸経験者・田中隼磨もチームに迎え入れ、叶えるべき目標はただ1つ。開幕戦は船山貴之の八ットトリックで東京Vを沈めると、先週の熊本戦はサビアの移籍後初ゴールで堂々たるウノセロ。スタートダッシュを加速させるべく、このホーム開幕戦に臨みます。
大胆さと繊細さを併せ持ち、もはや国内屈指の名将として地位を確立しつつある高木琢也監督に率いられ、その指揮官ですら望外の昇格プレーオフ進出を果たすなど、昨シーズンのJリーグにおける最大のサプライズを巻き起こしたV・ファーレン長崎。その成績を考えれば、今シーズンは逆に追われる立場も想定される中、ホームでの開幕2試合で1勝1敗という結果を経ても、スタイルはもはや不変の領域。大久保択生、三原雅俊、野田紘史、東浩史といったピンポイント補強の新戦力も早々にフィット。このゲームで白星を先行させたい所です。「これだけの大声援で発奮しないヤツはいない」と反町康治監督にも言わしめるスタンドに、この開幕戦を一目見ようと詰め掛けた観衆は14048人。おなじみ老若男女が揃いも揃って振り回すタオルマフラーの大輪が咲き誇る中、長崎のキックオフでゲームはスタートしました。


ファーストシュートはアウェイチーム。5分、2シャドーの一角を担う奥埜博亮が左へ回すと、佐藤洸一のリターンを受けた奥埜は枠内ミドルを放ち、ボールは松本のGK村山智彦にキャッチされたものの、早速前線のコンビネーションでチャンスを創ると、次のシュートも長崎。10分、右サイドでの崩しから奥埜がヒールで流したボールを神崎大輔は低いクロス。逆サイドから突っ込んだ野田のヘディングは枠の右へ外れましたが、まずは長崎がリズムを掴みます。
一方の松本は「個人的にはこみ上げてくるものがあった」とアルウィンのピッチに立った感想を振り返った田中が絡む右サイドにチャンスの萌芽は見られるものの、長いボールを駆使する中でもシュートシーンは創り切れず。14分に岩上祐三が蹴った左FKは相手のクリアに遭い、17分にやはり岩上が左から入れたFKをサビアがヘディングで枠へ飛ばすも、ここはオフサイドの判定。21分にアルウィン名物となりつつある岩上のロングスローが飛び出すも、ゴール前にこぼれたボールは長崎DFが何とかクリア。フィニッシュまでの道筋をなかなか辿れません。
長崎好リズムの一要因は「セカンドボールも拾えて、こっちのいい流れで前半はやれていた」と三原が語り、「前半に関してはセカンドボールがまったく拾えなかった」と岩上も同意した、"セカンド"の回収。中盤のゾーンで発生したルーズボールは、「ほぼ一緒に練習していないけど、2人でボールを拾いながら結構近い距離感でパスも動かせたので、今日はやりやすかった」と話す三原と黒木聖仁のドイスボランチがことごとく回収。特に黒木はパートナーの言葉通り、合流したばかりにもかかわらず、しっかりチームにフィットしており、高木監督も「チームに入って時間はまだまだ浅いが、彼は実戦向きだと思っているし、彼の経験値は我々の選手が持っていないもの」と一定以上の評価を与えていました。
加えて反町監督が自軍の出来について指摘したのは「相手はミドルを打つチャンスも、バイタルにボールを入れるチャンスもあった。ボール保持者にほとんど行かず見てしまっていた、我々らしくないディフェンス」。岩上も「自分たちもやっていて全然行けていないことはわかっていた」と認めており、長崎は可能性を自在に選択。22分には野田のパスから三原が枠の右へ外れるミドル。23分には東、奥埜、佐藤と回るスムーズなパス交換から、右CBを務める岡本拓也が放ったシュートはDFがブロック。26分にも東と奥埜が絡み、佐藤が打ち切ったシュートはDFがブロックするも、前線3人だけでフィニッシュまで。さらに28分にも神崎の大外を回った三原のクロスは村山がキャッチしましたが、「前半は松本の攻撃を抑えて、自分たちの攻撃ができたかなと思っている」と高木監督。続く長崎の時間帯。
29分にカウンターから岩沼がDFに当たるミドルを放ち、ようやく1本目のシュートが記録された松本。難しい展開の中で、しかし3バックの中央でゲームを見ていた多々良敦斗は「バイタルを使われてもそこで1点入っちゃうわけではないし、最終的にゴールを守れば良いので、ああなってしまったら割り切ってやるしかない」と戦況を冷静に判断。実際にバイタルを使われる中でも、決定的なピンチは確かにほとんどなく、三原も「最後の所の崩しまでは行けていなかった」と振り返っています。
38分も長崎。カウンターから東が右へスルーパスを通すと、追い越した佐藤のシュートはわずかに枠の右へ。41分も長崎。左サイドでの崩しから奥埜と三原を経由し、佐藤が落としたボールを黒木が叩いたミドルは枠の右へ。松本からすれば「前半はかなり向こうに主導権を握られたゲーム」(反町監督)ではあったものの、「ゼロで抑えられたことは良かった」と岩上と多々良が声を揃えたように失点は許さず。スコアレスで最初の45分間は終了しました。


後半もスタートから勢いを持って入ったのは長崎。47分、黒木を起点に岡本が右のハイサイドへ落とし、神崎のクロスに飛び込んだ奥埜はシュートこそ打ち切れなかったものの、サイドからのいい崩しを披露。直後のCKを岡本が蹴ると、こぼれを狙った奥埜のシュートはオフサイドのジャッジ。49分にも黒木が素早く始めたFKから神崎が右クロスを送り込み、東のシュートは何とかDFがブロック。「後半も入りは結構こっちのペースだった」と三原。ハーフタイムを挟んでも流れは変わらないのか。
「中盤でプレスに行ってボールを奪わなくてはならなかったのに、アグレッシブさがなかった」チームに策士・反町康治が施したのはシステムチェンジ。中盤アンカーに岩沼俊介を置いて、その前に岩上と喜山康平を配置。前線には船山貴之とサビアを並べた3-1-4-2気味のシステムで、「後ろが少し重くならないように中盤でプレスをという狙い」を授けます。
この采配が効き始めたのは長崎のラッシュをうまくやり過ごした55分過ぎから。「俊介をアンカーに置いたことによって、真ん中から入れられるシーンがあまりなくなった」と多々良が話せば、「後半はある程度中盤の3人でセカンドを拾うことができた」と岩上。長崎の中盤を預かる三原も「相手が2トップにしてきたことで、こっちが後ろに意識を持っていったこともあって、ちょっと中盤を拾われ出した」と感じていた様子。58分には1本のフィードに船山が抜け出し、粘って左へ付けると、サビアのシュートは間一髪で戻った岡本がブロックしたものの、ようやくホームチームにチャンスらしいチャンスが訪れます。
高木監督も57分に東と小松塁を、61分に黒木と前田悠佑を相次いで入れ替えるなど、傾き掛けていた流れを食い止めるべくベンチワークを駆使しましたが、岩上が左CKと左ロングスローで手数を繰り出すと、63分に田中が高い位置で奪ったボールを中に送り、船山が潰れてファーへ届いたボールは岩上がふかし、ようやく掴んだ決定機を逃してしまうも、このあたりからスタンドのボルテージも一段階アップ。加えて67分には少しシュートシーンで痛んだサビアとの交替で、塩沢勝吾がピッチへ走り出した瞬間に沸騰したアルウィン。まさにこれが「ホームのアドバンテージとアウェイのディスアドバンテージ」(高木監督)。
68分は松本。岩上の右FKはシュートまで繋がらず。69分も松本。塩沢、船山と回ったボールを岩上が打ち切ったミドルは枠の左へ。72分も松本。岩上の右FKと右ロングスローは何とか長崎が回避。75分も松本。喜山が入れた左FKのこぼれを犬飼智也が拾い、田中が粘って右からクロスを上げ切ると、飯田のシュートはDFに当たるも、こぼれたボールは船山の足元へ。決定的なシュートはクロスバーを越えてしまい、頭を抱えたゴール裏のサポーターもすぐさま気を取り直して奏でるチャント。「後半はゴール裏の方に攻められるので、後押しは感じることができた」と多々良。"共に、前へ"。"共に、ゴールへ"。
81分に高木監督が切ったのは3枚目、つまり最後のカード。3バックの左に入っていた下田光平に替えて、送り出したのはエアバトラーの水永翔馬。指揮官曰く「松本が塩沢選手を入れてきて、長いボールを使ってアグレッシブに来るのかなという想定はしていたので、こっちも飛び道具というか水永を入れて、少し同じようなシチュエーションでやってみようと」。続けて「ソリさんがそういう形でやってくるのであれば、僕も対抗しましょうかというくらいで入れた」と冗談めかして。最前線には190センチの小松、185センチの佐藤、180センチの水永とトリプルタワーを並べて勝負に出ます。
効果覿面。82分、後方からのフィードを入ったばかりの水永がきっちり落とし、小松の思い切ったボレーはクロスバーを大きく越えるも、まさにやりたい形でシュートシーンまで。「怖さというよりは徹底しているなと思った」と苦笑いを浮かべたのは多々良。85分には岡本の右FKに、フリーで飛び込んだ水永のボレーはゴール右へ。シンプル故に脅威。「風もあって軽く雨も降っていたし、ワンバウンド目が伸びてゴール前まで行かれちゃうのが嫌だったので、ちょっと深めに取って対応はしていた」(多々良)と松本ディフェンスも万全の備えを。
87分は松本。岩上の右ロングスローを喜山が頭で繋ぐも、飯田真輝はシュートまで持ち込めず。88分も松本。岩沼が右からショートで始めたCKも最後は長崎DFがクリア。90分も松本。岩上がハーフウェーライン付近から蹴ったFKは一転、長崎のカウンターに。奥埜が右サイドを運ぶと逆サイドを並走していた神崎が玉林睦実に引っ張られて転倒。最後は山口のミドルが枠の左へ大きく外れたものの、目の前でその転倒シーンを見ていた長崎ベンチは猛アピール。確かに気持ちはわかりますが判定は覆りません。
ラストチャンスは長崎。90+3分、岡本が後方から放り込んだFKを、水永がさすがの打点で叩いたヘディングも村山の手の中に収まると、ほどなくして吹かれた佐藤隆治主審のファイナルホイッスル。「前半の出来から考えれば、引き分けは妥当なのかなという感じは正直した」と反町監督。昇格候補同士の激突はスコアレスドロー。両者に勝ち点1が振り分けられる結果となりました。


「長崎の一人一人の選手を見ても我々より少し上」と反町監督も認めたように、長崎は率直に強いなと。バイタルでの崩しに見られたようなワンタッチツータッチでのコンビネーションと、90分間最後まで走り切れるベースの体力という"柔と剛"にプラスして、トリプルタワーを生かしたパワープレーなど、その選択できる戦い方や駒も充実。確かに後半は押し込まれる時間もありましたが、本当に危険なシーンは数えるほど。間違いなく今後も昇格争いに加わってくるチームだと確信しました。
松本は難しいゲームを乗り切ったなという印象です。「チャンスは何回か創れたので、そこで決め切れれば勝てたというのもあるが、すべてに関して相手の方が上回っていた。負けなくて良かったなというゲーム」とは岩上。トータルで見れば勝ち点3より勝ち点0の可能性の方が高いゲームで、勝ち点1を積み上げたのはポジティブな結果だったとも言えるのではないでしょうか。とはいえ、前述したように相手の力を認めた上で反町監督がキッパリと紡いだのは「やっていく内に個々の能力の高さを逆転するのが私の仕事なので、これから頑張っていきたいと思う」という言葉。反骨の知将が見据えるこの先へ。雷鳥の頂を目指すロングフライトはもう始まっています。      土屋

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