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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年11月29日

T2リーグ3位・4位決定戦 FCトリプレッタユース×東京実業@駒沢補助

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komaho1128.jpg勝てばT1への昇格を懸けた入替戦へ。負ければ3年生は引退へ。90分後に間違いなく勝者と敗者が残酷なコントラストを描くサバイバルマッチは駒沢補助です。
昨年もT2のブロック2位という好成績を収め、この3位・4位決定戦に進出しながら、2点のリードを守り切れずに数的不利の東海大高輪台に大逆転負けで敗退し、入替戦進出が叶わなかったFCトリプレッタユース。それでも主力の多くが残った今年は1試合平均4得点という爆発的な攻撃力を武器に、再び同じステージへと堂々帰還。「東実がどういう形で来て、どういう選手がいるというのを叩き込んで1ヶ月やれた」とは米原隆幸監督。この1試合の先にあるトップディビジョンを力強く見据え、初冬のナイトゲームに挑みます。
インターハイ予選ではディフェンディングチャンピオンの実践学園をPK戦で沈め、迎えた選手権予選でも「気持ちで1つ上回れたゲームが多かった」とキャプテンの荻原脩作(3年・横浜市場中)も話したように、接戦をモノにしながら辿り着いたのは西が丘。この日の一戦には荻原を筆頭に、大学でもサッカーを続けたいという3年生が5人残り、最後の置き土産を後輩に残すべく、難敵に立ち向かいます。トリプレッタは下部組織の後輩たちが、東実は引退した3年生も含めたサッカー部員たちが、そして保護者の皆さんや一般のギャラリーも大挙して押し寄せた大入り満員の駒沢補助は冬支度の一歩手前。問答無用の一発勝負は18時30分にその幕が上がりました。
いきなり魅せたのはトリプレッタ。2分、左サイドで獲得したFK。スポットに立った3人の役割は、小さく出す担当とシュート担当とボールには触らず派手に転ぶ担当。結果、村川薫平(3年・FCトリプレッタJY)のシュートはゴール左へ外れましたが、「まずは相手が何をしてくるかわからないとか、コイツら何かしてくるのかと思わせるのも大きい。他にも色々あるんですけど」と笑ったのは米原監督。効果のほどはさておき、まずは意外性満載のトリックプレーで観衆の度肝を抜いてみせます。
3分には宮澤俊太朗(2年・FCトリプレッタJY)が蹴った右CKから、ニアで玉川由(2年・FC PROUD)が惜しいヘディングを放つと、5分に披露したのも練習の成果。中央でファウルをもらったトリプレッタは、宮澤がとっさの機転でクイックリスタート。村川が繋ぐと中島脩人(3年・FCトリプレッタJY)はGKと1対1に。少し持ち出してから右スミを狙ったシュートは、確実にゴールネットへ到達します。「クイックリスタートも練習してきたし、今回はリスタートを仕込んできた」と米原監督。3つ目のリスタートが早くも結実。トリプレッタが1点のリードを奪いました。
東京実業も7分には小澤純(2年・品川荏原第一中)のドリブルから左CKを獲得したものの、入れたボールはトリプレッタDFがクリア。ボランチに入った司令塔の荻原にボールが集まらず、最前線の佐藤太造(3年・MKFC)も孤立気味に。なかなか手数を繰り出せず、攻撃の時間を創れません。逆にトリプレッタは、14分にCBの割田大遥(3年・FCトリプレッタJY)がFKで、直後にも宮澤がCKで東京実業のゴール前を脅かすと、22分に東京実業の滝田輝(3年・品川荏原第一中)が抜け出しかけたドリブルも、割田がきっちりカット。「ウチとしては入りはパーフェクトだった」と米原監督。譲らないゲームリズム。
23分はトリプレッタ。相手のミスを奪い、右サイドで繋いだボールを宮澤が枠に飛ばすも、ここは東京実業のGK濱田隼弥(2年・Y.S.C.C.)がファインセーブ。直後のCKもトリプレッタ。左から宮澤が蹴り込んだCKは、ファーでフリーになっていた玉川へ届くも、丁寧に狙ったボレーは枠の右へ。25分もトリプレッタ。左SBの眞壁亮太(3年・FCトリプレッタJY)がグングン持ち上がり、上げたクロスは中と合いませんでしたが、そのオーバーラップの迫力にザワつく観衆。「1点さえ取れれば主導権を握ってできるゲームだなとは思っていた」という指揮官の思惑通り、攻め続けるトリプレッタ。「経験がなかったので、安定感もなくてアタフタした」と片山智裕総監督も振り返った、1,2年生中心の新生DFラインが懸命に耐える東京実業。
27分もトリプレッタ。ボランチの佐藤健太(3年・ジェファFC)を起点に、中島を経由して大久保広一(3年・FCトリプレッタJY)が放ったシュートは濱田がファインセーブで阻止。31分もトリプレッタ。左サイドをきっちり崩して、大久保がミドルレンジから枠へ飛ばしたシュートは、ここも濱田が必死のフィスティング。相手の首元をジワジワ締め付けるようなトリプレッタの猛攻が生んだ追加点は32分。右サイドで宮澤が倒れながらも粘って右へ。縦に抜け出した大久保のシュートは、ここも濱田が抜群の反応でストップしましたが、きっちり詰めてゴールへ流し込んだのは宮澤。トリプレッタに2点目が記録されました。
さて、2点のビハインドに攻めるしかなくなった東京実業も、39分にはいい形からフィニッシュまで。左サイドで前田航大(2年・MKFC)と宮田剛(2年・川崎橘中)の連携から、最後は滝田がカットインミドルを放ち、ここはゴール右へ外れましたが、ようやくチームファーストシュートを記録すると、44分には佐藤がゴールまで30m弱の距離で得たFKを直接狙い、ここも枠の左へ外れたとはいえ、荻原も徐々にボールを呼び込めるようになり、、わずかながら増えてきた東京実業の手数。
「逆に2点目を取って良くない兆候が出た」(米原監督)トリプレッタに、さらなる歓喜をもたらしたのはT2得点王のあの男。45+1分、名幸龍平(2年・杉並アヤックス)が右へ展開すると、開いていた宮澤は丁寧に中央へラストパス。ここに逆サイドから走りこんできたのは大久保。11番を背負った点取り屋がダイレクトで叩いたボールは、グラウンダーでゴール左スミに飛び込みます。「3点目がああいう時間で取れたのは大きかった」と米原監督も言及したように、少しうまくいかない時間帯でもゴールを奪えるのは強者の証。3-0という意外なスコアで、最初の45分間が終了しました。
「自分たちはまず"気持ち"でやっていこうと言い合った」(荻原)東京実業の反攻は後半開始から。47分、中央でボールを持った前田がスルーパスを狙い、佐藤は一歩届かなかったものの、わずかに漂ったゴールへの予感。51分、左から3年生クインテットの一角でもある小林将之(3年・横浜市場中)がロングスローを放り込み、ニアで前田がすらしたボールはトリプレッタのGK久保田泰一郎(3年・成蹊高)がキャッチしましたが、55分にも宮田を起点に小澤が右へ展開すると、そこにいたのは最終ラインから上がってきた竹内涼太(2年・川崎チャンプ)。シュートはクロスバーの上に消えるも、流れの中からCBがフィニッシュに絡む積極性。完全に変わった流れ。
3年生の意地。60分、左サイドを力強いドリブルで抜け出した佐藤が、視界の先に確認したのはファーサイドへ走り込む同級生の姿。グラウンダーで最高のポイントに通したクロスへ、最後はスライディングで突っ込んだ滝田の右足がボールを捉え、激しく揺らされたゴールネット。絶叫の応援席。すぐさまボールを掴んだ滝田。3-1。赤く燃える駒補。
突然ボールを回せなくなり、縦へ急ぐシーンも見られるなど、相手の勢いに飲み込まれた格好のトリプレッタ。「このチームのパターン。いいゲームをしていても一気に狂っちゃって、ボールを持っているのに慌てちゃったり、動きがなくなって足元になったりする」と米原監督。ただ、「僕もちょっと慣れてきたから、あまり文句は言わない(笑) ギャーと言うともっと崩れちゃうから」と話す指揮官の信頼に応えたのは、トリプで育った攻守の軸。66分、エリア内に潜った村川がドリブルで突っ掛けると、DFもたまらずファウル。トリプレッタにPKが与えられます。キッカーはキャプテンマークを巻いた割田。短い助走から左足で蹴ったキックは、GKの逆を突く完璧な一撃。赤炎を飲み込んだ青氷。再び点差は3点に広がりました。
15歳の躍動。73分に佐藤と中島のドイスボランチに替えて、佐々木龍(1年・FCトリプレッタJY)と廣瀬友紀(1年・FCトリプレッタJY)の1年生コンビをピッチへ送り込んだ米原監督。その指揮官の期待に応えたのは後者。2分後の75分、ピッチ中央でボールを受けると廣瀬はあっという間にGKと1対1のポジションへ。ほとんどファーストプレーだったはずの廣瀬は、何の迷いもなくGKの届かないポイントを見極め、ゴール左スミへボールを送り届けます。「チャンスメイクはできるけど、点が取れないのが課題」(米原監督)という1年生が、トドメのゴラッソ。5-1。大勢は決しました。
ピッチ上に立っている東京実業の3年生4人にとっては、刻々と近付く別れの瞬間。苦しい展開にも「本当に雰囲気は今までのゲームで一番良くできた。引退した3年生も応援に来てくれて、一体感もできて、後半は特に全員が盛り上げてくれた」と荻原が話したように、途切れない応援席とピッチの声。森昌芳監督と片山総監督が発するベンチの熱量。所定の90分間は過ぎ、残すはアディショナルタイムの3分間。
3年生の意地。90+2分、前田がドリブルで右から中央に運ぶと、ボールを引き出したのは荻原。高校生活最後のスルーパスは絶妙のタイミングで滝田へ届き、やはり高校生活最後となる滝田のシュートが到達したのはゴールネット。「後輩に引き継ぐような2点だったんじゃないかなと思う」と言葉を紡いだ片山総監督。得点直後には最後の交替カードとして、ベンチ全員の拍手に送られた小嶋喜大(3年・FC目黒)がピッチへ飛び出すと、ほどなくして駒補に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「もうあと10年くらいでも着ていたい」(荻原)ユニフォームともお別れの時。終わってみればトリプレッタがその強さとスタイルを遺憾なく発揮して、入替戦へと進出する結果となりました。
トリプレッタは持ち味が存分に出たゲームだったのではないでしょうか。後半の立ち上がりから失点するまでは、「余計なことをしたりして、自分たちで仕掛けられなかったよね」と米原監督も渋い顔で振り返りましたが、それも村川と割田でチャラに。最後は1年生まで結果を残してみせるなど、満点に近い"75分間"だったはずです。これで昨年は届かなかった舞台へ勇躍乗り込むこととなったサッカー小僧たち。「最後のチャンスまで持ち込んだので、何とか掴めるように頑張りたい」と米原監督。"観ている人を魅了する"渋谷の雄が、トップディジョンへの道をまた一歩歩み出しました。
東京実業の3年生たちは選手権予選に臨むにあたり、片山総監督へあるプレゼントを渡していました。それは1つの"おまもり"。「今年は片山先生が総監督になって、本当は色々と教えたい部分もあったと思うんですけど、裏方の仕事をということで影になって動いてくれたんです。僕らはやっぱり片山先生に1,2年生の頃から全員が鍛えられてきたので、その感謝の気持ちを込めて、3年生で神社に行き、"おまもり"を買って渡しました」と荻原。9月のゲームに取材で伺った際に「何かみんなが持ってきてくれて、『付けておいて下さい』とか言うんで」と照れ臭そうに"おまもり"を見せてくれた片山総監督。以降は勝ちゲームのたびに「コレのおかげですね」と嬉しそうに語ってくれるのが、1つの"決まり"のようになっていました。
選手権は準決勝で國學院久我山に屈し、この日はトリプレッタにも敗れ、シーズン最後の2試合は連敗で終わった東京実業。そのことを問うと、「この2試合は"おまもり"を持っていなかったんです」と片山総監督から衝撃の言葉が。それを聞いた荻原も「そうなんですか!」と驚いた表情を浮かべていました。ただ、"おまもり"不在で迎えた最後のゲームで、奪った2つの得点はアシストもゴールも3年生。「あの2点が最後までやってくれた証」と片山総監督。試合には勝てなかったかもしれませんが、彼らが既に"おまもり"以上の絆で固く結ばれていたのは間違いありません。試合後、ロッカールームから出てきた荻原をわざわざ呼び寄せ、駒沢の夜空へ胴上げしたのは来年からのチームを担う後輩たち。「世界一高かったです。最高でした」と満面の笑みで語ってくれた荻原。誰よりも東京実業を愛したキャプテンが、誰よりも求めた"絆"でこの日、部員全員は確かに繋がっていたように私には見えました。       土屋

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