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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年08月12日

J2第28節 岐阜×神戸@長良川

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nagaragawa0812.jpg22位と2位のお互いに"浮上"を懸けたサマーバトル。真夏の三名泉ダービーは30.3度の長良川です。
前々節の岡山戦に勝利し、開幕以来今シーズン初めて最下位から脱出した岐阜。ところが前節の徳島戦で悔しい敗戦を喫すると、わずか1試合で再び順位表の一番下へ逆戻り。経験豊富なベテランの木谷公亮、新外国籍選手のバージェとヴィンセント・ケイン、さらに逆輸入Jリーガーの中村祐輝など、積極的な補強を後ろ盾に何とか反撃攻勢と行きたい所です。
対するは1年でのJ1復帰を至上命令に、ここまで順調に勝ち点を獲得してきた印象のある神戸。とはいえ、積み重ねた17の勝利の内、3点差以上で大勝したゲームはわずかに2試合。むしろ拮抗した僅差のゲームを確実にモノにしてきた勝負強さが光ります。中でも開幕当初は予想されていなかった岩波拓也とイ・グァンソンのCBコンビが、ここに来て纏ってきた安定感はJ2屈指。結果だけではなく、未来への希望も着実に芽生え始めています。ゆかたデーに心躍る8月のナイトマッチ。岐阜城を望む舞台は整い、ヒマラヤマンのキックインセレモニーを挟むと、バージェがボールを蹴り出してゲームはスタートしました。
ファーストシュートは神戸。3分、マジーニョが左から蹴ったCKを田代有三は得意のヘッドで枠内へ収めるも、岐阜GK時久省吾がキャッチ。直後も神戸。マジーニョのパスから、J2を震撼させているおなじみ"ポポキャノン"はクロスバーの上へ。8分にも茂木弘人のフィードにポポが追い付いて左クロス。飛び込んだ田代にはわずかに届きませんでしたが、まずは自動昇格圏内に位置するチームの勢いを持って、ゲームに入ります。
ただ、「悪くない入り方をした」と行徳浩二監督が話したように、攻め込まれた岐阜もしっかり反攻。6分には最終ラインの木谷が好フィードを送ってCKを獲得。さらに12分には野垣内俊のフィードを樋口寛規が頭で繋ぎ、柴原誠のボレーは神戸GK徳重健太が何とかセーブしたものの、長いボールからゴールを窺うと、16分にはビッグチャンス。服部年宏が左へ振り分け、流れた樋口がクロス。ニアでバージェが競り勝ち、柴原のボレーはオフサイドの判定でしたが、「試合に飢えていたこともあって、非常にアグレッシブにやってくれた」と指揮官も認めた柴原の積極性が、神戸ゴールを続けて脅かしました。
さて、20分を過ぎると「ボールはある程度持てる」(安達亮監督)中でも、なかなかポポと田代の2トップにボールが入らず、攻撃が停滞し始めた神戸に対して、「しっかりとプレッシャーを掛けられて、中盤でボールを奪ってからのカウンターはいくつかできた」と行徳監督も言及した岐阜が、にわかに獲り始めたセットプレー。23分、美尾敦の右CKがこぼれると、樋口の枠内ミドルは徳重がキャッチ。26分には神戸もポポの35m直接FKが猛烈に枠を越え、スタンドをどよめかせましたが、27分も柴原の突破から右CKを獲得。29分には柴原が、30分には樋口が、それぞれCKのこぼれ球をミドルまで。神戸の中盤を締めていた田中英雄も「ちょっとCKが多いなとは思っていた」と言及するなど、ハイサイドをうまく使い始めた岐阜へ徐々に傾き始めたゲームリズム。
それでも「個のスキルが高い」(行徳監督)神戸が突如として牙を剥いたのは35分。徳重のキックに田代が競り勝ち、カバーに入った新井辰也のクリアを体に当てたポポは独走。右へ流れながら放ったシュートは、コースを狭めた時久がファインセーブで回避しましたが、1分後には前半で最も良い流れからの決定機。田代が右へサイドチェンジを送り、奥井諒は橋本英郎に預けてゴー。ポポがダイレクトで右へ落とすと、走り続けた奥井が抜け出し、やや力んだシュートは枠の左へ外れたものの、「重たいというか、歯切れがない」(安達監督)流れでも一発で決定的なシーンを創り出せる怖さを、岐阜へ突き付けます。
ところが、42分にスタジアムを揺らしたのは九州からやってきたあの男。前半だけで7本目となるCK。右からそのすべてを蹴っていた美尾が、ゾーンで守る神戸ディフェンスの山を越し、ファーへ届けたボールに飛び込んだのは木谷。頭2つは抜け出した打点から撃ち下ろすと、徳重もわずかに及ばず。「おこぼれをもらった感じ。入って良かったです」と"らしい"感想で笑った木谷の加入後初ゴールは貴重な先制弾。岐阜が1点のリードを奪って、最初の45分間は終了しました。
後半最初のスリリングなシーンは1分経たない内に。左サイドへの展開から美尾がクロスを送り、ファーへフリーで走り込んで来た樋口のシュートは、しかし枠の右へ。50分には樋口が、51分には森安洋文が相次いでフィニッシュを取るなど、先に手数を繰り出したのは岐阜でしたが、ここから一転した流れ。
52分、田代が頭で競り勝つとマジーニョは左へ。小川慶治朗はドリブルでGKも外してシュートを放つも、ここはライン上で新井が奇跡的なヘディングクリア。55分、前線まで上がってきていた左SBの茂木が、カットインから思い切って打ったシュートはクロスバー直撃。56分、ポポの左CKから最後はマジーニョが狙ったミドルはDFがブロック。怒涛のラッシュに重なる悲鳴。
安達監督の決断は57分。「マジーニョがどうしても引いてボールを受けてしまうので、ボランチが1枚になるならという判断と、攻撃的に行きたい」という狙いから、田中を下げて松村亮を投入。中央に入ったマジーニョをやや押し出す形で橋本がアンカー気味に位置し、松村は左へ、小川は右へスライドという配置転換で、掴み掛けている得点への流れを強奪するための采配を振るいます。
58分は神戸。入ったばかりの松村を起点に、小川の落としをマジーニョは枠越えミドル。62分も神戸。小川、奥井と右サイドで回し、ポポのクロスをうまく収めた松村は、右へ流れながら難しいシュートを枠内へ収めるも、ヒットしたのはクロスバー。度重なるピンチに、たまらず動いたのは行徳監督。63分、「中央の所でプレッシャーが掛からなくなってきたので」柴原とリ・ハンジェをスイッチし、「ボランチ3枚で僕がセンター」と服部が話したように、森安、服部、リ・ハンジェが中央でトレスボランチ気味に並び、右に樋口、左に美尾という、4-1-4-1気味の4-5-1で、、もう一度着手した中盤の守備強度向上。
すると、岐阜は攻撃に関してほとんどがクリアボールになってしまう中で、前には1トップのバージェしかいないために、ボールを相手に拾われる状況が続くことになり、自陣に釘付けと言っていい状態に陥りますが、ここで「前からしっかり守備してくれた」(服部)「前から追えていたのは大きかった」(木谷)と両ベテランが口を揃えて賞賛したのは、「後半は難しい状況になったと思う」と流暢な英語で話してくれたバージェ。彼が前からロングボールの出所を追い回し、フィフティ以下のクリアにも果敢にランニングを怠らなかったことが、後ろに与えていた好影響は見逃せないポイント。76分にはフォローのない状況でドリブルを敢行し、ファウルで止めたイ・グァンソンにイエローカードを出させるなど、マケドニア代表歴を持つ"アラサー"FWが、東洋の酷暑をものともせずに、守備面で抜群の貢献を果たします。
逆に「思ったより真ん中を閉じられていた」(橋本)状況下で、神戸はなかなか攻撃のアイデアが出てこず、「どうやって相手のディフェンスを崩してシュートまで持っていくかの全体像が描けなかった」と安達監督。68分には田代に替えて杉浦恭平を送り込むも、シュートまで至らないと見るや、77分には小川を下げてハイタワーの都倉賢を投入するなど、やや采配もチグハグだった印象。橋本も「結構中盤でのセカンドは相手に行っていた印象があった」と話すなど、攻める時間とチャンスメークの数が比例していきません。
そうは言っても、常に一発のある"個"を取り揃えている神戸。その脅威へ敢然と立ち向かい、敢然と立ちはだかったのは「自分がチームに入ったから連敗なんて絶対にイヤだった」と語った34歳のCB。80分に松村の鋭いスルーパスをカットしたのも、直後にフリーで抜け出した都倉のシュートを懸命に戻ってブロックしたのも木谷。家族もスタンドに駆け付けた中、"単身赴任のお父さん"は体を張り続けます。
83分には岐阜に千載一遇のチャンス。樋口が左へ送ったボールの行き先はバージェ。対峙したマーカーを軽やかに外し、右スミへ巻いたシュートは枠を外れたものの、一瞬の溜息を経てすぐさま巻き起こった拍手。献身のストライカーが再びチームに与えた勇気。
87分は神戸。マジーニョの振り分けから、ポポの左クロスを茂木が打ち切ったシュートはクロスバーの上へ。89分も神戸。岩波拓也のフィードに都倉がヘディングで応え、飛び込んだポポのシュートは木谷がブロック。90分も神戸。杉浦が右から蹴り入れたCKは、シュートまで至らず。行徳監督も2枚目のカードとして、奮闘のバージェをヴィンセント・ケインに入れ替え、前から追わせることで託したゲームクローズ。
90+2分、都倉のシュートに体を投げ出したのも、ポポのシュートを頭で跳ね返したのも木谷。193センチのイ・グァンソンも上がって、迎えた90+4分のラストプレー。右から杉浦が入れたクロスを、ヘディングで大きくクリアしたのも、やはり木谷。まるで吸い寄せられるかのように向かってくるボールを、結果的にほぼ100%の確率で弾き返したクリアの最後がこのシーン。数分早く打ち上がった花火の祝砲に少し遅れて、長良川の夜空へ鳴り響いたタイムアップのホイッスル。ホームデビュー戦で披露した、名刺代わりとも言うべき木谷の攻守に渡る活躍で、岐阜が3試合ぶりのホーム勝利をサポーターへ送り届ける結果となりました。
バージェが「運もあったんじゃないかと思う」と話したように、クロスバーに嫌われた場面も含めて、神戸は"運"がなかったということも間違いなく言える敗戦だったと思います。とはいえ、失点シーンを振り返って「ケアはしていたが、セットプレーからの失点は最近狙われている」という安達監督の言葉を、「ファーで高い選手が狙うというのは研究されている」と1つ詳細に掘り下げたのは田中。無得点ということももちろんですが、明確なウィークポイントから喫した失点の方が、修正すべき喫緊の課題かもしれません。
「新加入選手もフィットしてきて、ちょっとずつではあるが、次のゲーム、次のゲームとステップアップしていきたい」と話した行徳監督率いる岐阜。そのステップアップに欠かせない存在が、「他の選手にも自分に対しても厳しく高いレベルでやってくれる」とその指揮官も信頼を寄せる木谷です。今日に関してはゴールという大きな"オマケ"に目が行きがちですが、やはり一番の貢献度は最終ラインにもたらす安定感と安心感。今シーズンの鳥栖ではほとんど出番を与えられなかったものの、まだまだこのレベルでも通用する選手であることを、十分過ぎるほどに証明して見せた90分間でした。「今日勝つことは誰も信じていなかったと思う」と笑ったバージェに、「僕はジャイアントキリングだと思っていない」と言い切ったのは木谷。そういう類の言葉を自ら打ち消し始めるための準備は、彼らの加入で少しずつ、かつ確実に整いつつあるのかもしれません。     土屋

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