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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年06月08日

J2第18節 山形×徳島@NDスタ

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ND0608.jpg凱旋の感を問われ、「仙台から思ったより近かったな」と笑ったかつての将。この地でJ1を共に味わった朴訥の指揮官が帰還するのは天童。NDスタです。
2008年の監督就任初年度に、チームの悲願とも言うべきJ1昇格をすぐさま達成すると、翌年に挑戦したトップディビジョンでも、圧倒的な降格候補との下馬評を猛々しく跳ね返し、15位で堂々残留。都合3年間のJ1生活を、クラブとそのサポーターへもたらした小林伸二監督が、2010年までコーチとしてその人望と確かな指導力で多大なる貢献を果たした長島裕明ヘッドコーチを携え、山形の地へ揃って帰ってきました。
現状では山形が勝ち点25の10位、徳島が勝ち点22の14位と、隔てているもののは3つの順位と3つの勝ち点のみ。加えて昇格プレーオフ圏内に当たる6位の千葉が勝ち点27だということを考えても、まだまだ両者に十分過ぎるほど昇格の可能性は残されています。「少し違和感はあるけど、ここに来られて試合ができるというのは嬉しい」と語る小林監督にとって、久々の来訪にも変わらず待ち受けてくれるのは、バックスタンド側からスタジアムを見下ろし包み込む奥羽山脈の豊かな緑景。その風光とは裏腹の、上へ行くか下へ落ちるかのデスマッチは、山形のキックオフでスタートしました。
ファーストチャンスは徳島。3分は左サイド。津田知宏のパスからアレックスが入れたアーリークロスを、うまく収めたキム・ジョンミンのボレーは山形の左SB中村太亮が体でブロックしましたが、まずは2トップが絡んだ格好でいい形を創出します。
ただ、この直後のCKは一転、山形のカウンターに。中島裕希が左へ送り、ロメロ・フランクは正確なスルーパスを裏へ。走り込んだ廣瀬智靖の左足シュートは枠の右へ逸れたものの、この一連のターンでスタンドの温度を上昇させると、8分にもシンプルなアタックが炸裂。秋葉勝のフィードをうまく受けた中島が、左へ持ち出しながら放ったシュートはわずかにゴール右へ。お互いにある程度は繋ぐ意識もある中で、縦へ速く攻める意識も忍ばせた山形が掴んだリズム。全体の流れはフィフティに近い中でも、効果的な手数で徳島ゴールに迫ります。
20分過ぎからはボールを握る時間の長くなったホームチームが明らかに優勢。特にロメロ・フランクと秋葉のドイスボランチが、セカンドへの反応やプレッシャーなどボールアプローチの速さで相手を上回り、中盤を制圧したことで全体に好リズムが波及。21分には右に開いた秋葉のパスから、ロメロ・フランクが中央に切れ込みながらミドルにチャレンジ。ここはDFのブロックに阻まれたものの、ボランチの2人だけでフィニッシュを創出するなど、続く山形の時間帯。
一方の徳島は「せっかく取ったボールの精度が低かった。もう少しいい判断をしていかないと」と千代反田が言及するなど、低いラインではボールを回しながら、テンポアップの大半はロングフィードに。しかし、ターゲットのキム・ジョンミンが「浮き球では勝つが、足元に収まらない」(小林監督)ために、「なかなかリズムができない」(同)展開に。サイドアタックもSBのアレックスにSHの柴崎晃誠で組んだ、J2屈指の左サイドは時折攻撃の芽を創りますが、逆サイドはほぼボールが入らない状態。30分にはその左サイドへ津田が振り分けると、アレックスのクロスを鈴木達也がボレーで叩くも、GKの常澤聡が正面でキャッチ。山形ゴールを脅かすまでには至りません。
35分は山形のチャンス。秋葉の好フィードを中島が頭で落とし、走った伊東俊がゴールライン目前から中へ。林陵平が窮屈な体勢からきっちり枠へ収めたシュートは青山隼が何とかブロックしましたが、同じく35分には秋葉も積極的なミドルを枠の左へ。「とりあえず我慢して、0-0で行ければいいかなと思っていた」という千代反田の言葉は、おそらく徳島の共通認識。先制点へ一段階踏み込まれた山形のギア。
歓喜の瞬間は唐突に。39分、徳島は福元洋平が縦へ付けると、降りてきた濱田武へ猛然と寄せた秋葉はあっさりボール奪取。少し前へ運んでストライカーへ託したラストパス。「ファーストタッチを意識して、いい所に止められた」中島は飛び出すGKを冷静に見極め、左スミへ確実に流し込みます。「献身的な狙いを持った守備」(奥野監督)が誘発した相手のイージーミスを確実にモノにした山形が、以降も中島や秋葉が惜しいシュートを放つなど、完全にゲームリズムを掌握したまま、1点のリードを持ってハーフタイムへ入りました。
後半がスタートすると、「必ず点は取れる」と指揮官に送り出された徳島がようやく掛けたエンジン。50分にはキム・ジョンミンと津田の連携からCKを獲得し、この好機はオフェンスファウルで潰れましたが、51分には津田、鈴木、キム・ジョンミンと回し、藤原広太朗のパスから、最後は濱田が枠内ミドル。風上も味方に付けたアウェイチームの反攻。
56分には小林監督もキム・ジョンミンを諦め、「スペースに飛び出すパワーや空中戦の強さ」を買ってドウグラスを投入。すると直後の58分には、自陣から福元が蹴ったFKにドウグラスが持ち味の"空中戦"で競り勝ち、落としを受けた津田が至近距離からシュート。常澤もファインセーブで呼応し、同点弾とはいきませんでしたが、早くも交替の狙いを1つ体現した徳島。それまで山形が描き、ある程度はその通りに進んでいたシナリオへわずかに入り始めた"ヒビ"。
60分に決断したのは奥野監督。「相手のロングボールに対してセカンドを拾うことが必要なので、安心して後ろが高く押し上げられるように」、廣瀬とスイッチした石井秀典を本職のCBではなくアンカーに投入。前線は林が1枚残り、中島は右SHへスライドした4-1-4-1気味の布陣へシフトして、守備の安定を図ります。
以降はかなり膠着した展開に。お互いにセットプレー以外ではチャンスを創り切れない時間が続き、そのセットプレーもシュートまで持ち込めず。68分と69分は山形。それぞれ右と左からロメロ・フランクが上げたクロスを、それぞれ左足と右足で中島がボレーを放つも共に枠外。74分は徳島。右サイドで5分前に投入されていた古巣対決となる宮崎光平が短く落とし、藤原のクロスを柴崎が狙ったヘディングは枠の左へ。
直後に徳島が切った最後のカードは、青山に替えて大﨑淳矢。76分に山形が右寄り、ゴールまで約25mの位置で獲得したFKは、中村が直接狙うもゴール左へ。「風下の中でも相手の隙を窺いつつ、チャンスを創っていけていた」(奥野監督)山形と、「0-2にならないように我慢しながら、チャンスはあると思っていた」(千代反田)徳島。局面は最後の10分間へ。
徳島に浮き出た綻び。80分、「自分としてはバタバタしているから繋ぎたいという意識があった」千代反田と柴崎の呼吸がずれ、何でもない所から献上してしまったCK。左から中村が正確に二アサイドへ落としたボールへ、全力で突っ込んだ西河翔吾のダイビングヘッドが豪快にゴールネットを揺らします。「イージーミスからコーナーでやられた」と小林監督も渋い顔。熱狂の青白。理想的な時間帯に奪った追加点。山形が大きな2点目を手にしました。
追い込まれた徳島は、83分にも中村の右CKから林に惜しいヘディングを許すなど、もはや反発力も風前の灯火。「自分たちのペースでできていた」(中島)山形を前に、その灯火もほとんど消えかけていたように見えました。ところが、わずかに残っていた小さな灯を再び燃え上がらせたのは、「0-2のままで終わったら何にもならない」と闘志を秘めたCB。
85分、ドウグラスの突破から徳島が得たFK。左から柴崎が蹴り込んだボールは、「何本かチャンスがあれば、相手のマークの付き方でここは外せるというのはわかる」と話したファーの千代反田へ。頭でゴールへ押し込まれたボール。「自信があってああいう動きをした」というベテランの鉄槌。静まり返ったスタジアム。1-2。1点差に。
87分、アレックスの左クロスから徳島が得たCK。左から柴崎が蹴り込んだボールは、DFに当たってエリア内へ上昇。ゴール方向へ向かった軌道にできた人垣。球体が選んだ落下点は左のポスト。GKの常澤も含む密集の中で、球体は次に選んだ津田の頭に当たると、ゴールラインを空中で越えてしまいます。津田と常澤は接触したようにも見え、山形の選手は当然猛抗議をするものの判定は変わらず。2分間の悪夢と狂喜。2-2。点差は霧散しました。
「理想的な試合運び」(奥野監督)から暗転、スコアを振り出しに揺り戻された山形。提示されたアディショナルタイムは4分。90分、中村の右FKから、こぼれに詰めた西河も押し込めず。90+1分、伊東を下げて萬代宏樹を最前線へ投入。90+2分、中村の左FKはシュートまで至らず。90+4分のラストチャンス。中村の左クロスを林が何とか触り、最後に秋葉が繰り出したシュートも枠の左へ。荒木友輔主審が上げた右手と吹いた短いホイッスル。「勝たなくてはいけない試合だった」(山田拓巳)「0-2から2-2にしたというのは、我々にとって大きいものになるんじゃないかなと思う」(小林監督)。明暗クッキリ。終盤に激しく動いた一戦は、両者に異なる意味の勝ち点1ずつが加えられる結果となりました。
徳島は内容だけを見れば、「今日唯一の収穫は勝ち点1を取ったこと。そこしかない」と千代反田も振り返ったように、完全な負けゲームだったと思います。「なかなかチームとして戦えない状態が続いている」(小林監督)中で得た"唯一の収穫"を生かすも殺すもおそらくは自分たち次第。「この勝ち点1を大きなモノと捉えて、何かを変えられるように1日1日練習に取り組んでいきたい」という千代反田の意識を共有できるかどうかが、今後の浮上に大きく影響してくるのではないでしょうか。
対する山形は十中八九掴みかけていた勝ち点3がスルリと手元から逃げていく結果に。「何でだと思います?」と2失点の原因を聞かれた中島が逆質問で首を傾げたように、なかなか追い付かれた要因を検証しにくいゲームだった印象です。やや微妙なジャッジもあった中で、「判定の部分で微妙な部分があったとしても、もっとはっきりした判定になるような努力を自分たちはしていかなければいけない」と前を向いた奥野監督。内容と結果がリンクしない、何とも不思議なドロー劇でした。         土屋

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