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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年06月16日

インターハイ東京準々決勝 東海大高輪台×帝京@駒沢第2

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komazawa0615②.jpg第2試合も都内屈指の好カード。「やっていて面白いサッカーをやりたい」(川島純一監督)黄色と黒の新鋭が、「打ちのめされても谷底に叩き落されても、何遍でも這い上がってきた」(荒谷守監督)カナリア軍団に挑みます。
昨年は早稲田実業との入れ替え戦に勝利し、T1昇格を堂々と勝ち取った東海大高輪台。当時もスタメンには2年生が多く、最上級生になった彼らが主力として臨んでいる今年のT1でも、リーグ2位の得点力を武器に白星先行。「T1でやってみて、ある程度やれる手応えはある」と川島監督も自信を見せており、4年ぶりの全国を確実にその視野へ捉えています。
対する帝京はインターハイ、高校選手権共にここ3年は全国まで辿り着くことができず、久々の晴れ舞台へと進出したい所。6月の関東大会では真岡、桐生第一、日大藤沢という各県トップレベルの高校を相次いで撃破するなど、チームは現在上り調子。この大会を古豪復活の足掛かりにしたいという想いは、誰もが抱く共通認識です。正午を回り、一層陽射しも厳しくなった駒沢第2。真夏の装いの中、注目の一戦はキックオフを迎えました。
お互いに繋ぎたい意識はハッキリしている中で、主導権を握ったのは「止める蹴るは向こうの方が上」と敵将にも認めさせた高輪台。「前線にいかにボールを運ぶかにこだわってやっている」と川島監督も話すスタイルで、まずはスタンドの驚きを誘うことに成功します。
すると、先にスコアを動かしたのもやはり高輪台。11分、カウンターから伊藤竜之介(3年・ヴェルディSS相模原)が左へ付けると、吉野崚平(3年・川口在家中)は絶妙のスルーパス。受けた金子真彦(3年・川口戸塚西中)の左足で振り抜かれたボールは、GKを弾いてゴールネットへ収まります。黄色と黒の熱狂はピッチもベンチもスタンドも。高輪台が早くも1点のリードを奪いました。
序盤から1点を追い掛ける展開となった帝京は、「ちょっと回されて受け身になってしまった」と右SHに入った武藤稜(3年・浦和レッズJY)が振り返ったように、ボールを回す能力は決して低くないものの、相手に持たれる時間が長いためにせっかくのマイボールも早く縦に運んでしまうシーンが目立ち、そこは宮下諒也(3年・Y.S.C.C.)を中心にした高輪台ディフェンスにきっちり跳ね返される流れに。16分には栁下大樹(3年・浦和レッズJY)の強引なミドルもDFに当たり、リバウンドを都築洋平(3年・浦和レッズJY)が左へ付けるも、島田武虎(3年・レジスタFC)のクロスは枠を越えてゴールキックへ。25分に相手GKのキックミスから、都築が飛び出してきたGKもかわして折り返しましたが、ここも宮下が的確なカバーリングで回避。ゴールへ迫り切れません。
逆に高輪台は「スルスルッと浮いて、ボールを受けられる」と川島監督も評した吉野が広範囲に動いて一旦ボールを引き出すと、ボールロストは皆無。さらに3トップの右に配された荒川真作(3年・FC駒沢)も得意のドリブルが無双状態に。この2人にボールが入るとほとんど失わないという安心感は、チームに大きな推進力を与えていた印象です。
25分も高輪台。エリア左へ侵入した伊藤は、深い切り返しで1人かわずと中へ。荒川のコースを突いたシュートは帝京GK古島圭人(3年・湘南ベルマーレJY)にキャッチされたものの、惜しいチャンスを創出。30分と32分に古市拓巳(2年・岐阜VAMOS)がそれぞれ左と右から蹴った帝京のCKもしっかりクリアすると、再び訪れたのは熱狂の瞬間。
35分、ここもショートカウンターから左に開いた伊藤は、右でまったくのフリーだった荒川へグラウンダーパス。荒川は寄せるDFを嘲笑うかのようなダイレクトパスで中央へリターン。金子が体を開いて左足で枠へ飛ばしたシュートは、GKの届かない左スミへグサリ。記録された2点はいずれも高輪台。決めたのはいずれも金子。小さくない点差が両者の間に生まれました。
「全然動けていなかった」(武藤)前半で想像以上に苦しい状況へ陥った帝京。36分には左からのクロスを武藤が頭で折り返すも、飛び込んだ都築はシュートまで持ち込めず。38分には高輪台の右CK。小山拡志(3年・インテリオールFC)が蹴り込み、広瀬滉大(3年・FC駒沢)が際どいヘディングを放つと、直後に動いたのは「1点までは我慢だけど、2点入れられるとは思っていなかった」荒谷監督。岩野広基(3年・GRANDE FC)と都築の2トップを諦め、竜崎廉(3年・FC駒沢)と高橋優人(2年・横河武蔵野FC JY)をそのまま最前線に送り込みます。
それでも続いた高輪台のチャンス。40分、エリア左でボールを引き出した金子のシュートは、あわやハットトリックかと思われる軌道でわずかにゴール右へ。40+2分、金子が前線で粘って繋ぎ、伊藤が打ち切った左足ミドルはわずかにゴール左へ。「ノってやってくれた。でき過ぎじゃないですか」とは川島監督。意外な点差が付いた前半は、高輪台が内容もスコアもコントロールした格好でハーフタイムへ入りました。
荒谷監督は後半から早くも3枚目の交替カードを投入。右SBに入っていた尾田雄一(2年・帝京FC)に替えて、相澤柊平(2年・FELICE FC 浦安)を左SHへ送り込み、その位置にいた島田を右SBへスライドさせ、まずは2点を返すための難しい航海へと漕ぎ出します。
ただ、後半も最初の決定機は高輪台。42分、吉野のラストパスから荒川がGKと1対1になったものの、シュートはゴール右へ。ゲームを決める3点目とはいかず、スコアは変わりません。すると炸裂したのは、昨年も猛威を奮っていた帝京得意のセットプレー。46分、右から古市が蹴り入れたCKに、高い打点のヘディングを打ち降ろしたのは栁下。「やってくれる時はやってくれる」と武藤も信頼を口にした、9番を背負うCBの衝撃的な追撃弾。一気に縮まった点差。にわかに見えなくなった先行き。
まるでリプレイ機能のようなシーンは48分、まったく同じ右CKをここも古市が蹴り込めば、ここもハンマーヘッドを栁下が枠内へ打ち下ろしたものの、「高校1年の入学して2ヵ月後くらいからGKを始めた」(川島監督)高輪台の守護神・砂田政和(3年・東海大高輪台中)が、しなやかにビッグセーブ。とはいえ、デジャブのようなシュートシーンに間違いなく強まる栁下への警戒。
そんな中で黄色と黒に訪れた絶好機は51分。荒川が中央をドリブルで切り裂くと、そのままスルーパス。完全にフリーで抜け出した伊藤のフィニッシュは、しかし勢いが弱く古島にがっちりキャッチされてしまいます。そして、この好機以降は「アレにやられちゃいけないと練習はしてきたんですけど」と川島監督も渋い顔で振り返った帝京の"徹底"で一変した流れ。
"徹底"は「竜崎と高橋が入ってきたので、その2人のFWがどんどん抜けて、僕らも走らせながら裏を突いていこう」(武藤)というもの。「センターの2枚は結構跳ね返せていたが、SBの裏へ落とされてから流れが変わった」と川島監督も認めるシンプルな脅威。「意識がハッキリした」(武藤)強みがもたらす、迷いなき裏。
68分は帝京。竜崎のスルーパスから、右へ流れた高橋の折り返しはDFが何とかクリア。直後も帝京。古市の今度は左CKに、三たび挑んだ栁下は勢い余ってオフェンスファウル。69分も帝京。CBの小川一矢(3年・FCトッカーノ)が深い位置から蹴ったFKを、栁下がまたも頭に当てたシュートは砂田がキャッチ。想像以上に高輪台へのしかかる帝京の圧力。
決壊は72分。左サイドの高い位置でボールを持ったSBの木村俊輔(3年・Az'86 tokyo-ome)は、蹴った瞬間に足を攣らせる執念のクロス。ファーサイドで待っていた武藤にとっては、頭上を通過するかと思われた少し長めのボールでしたが、「あそこに走れば何か起きるなと思ったので、とりあえず無心で」飛び付き、伸ばした右足にヒットしたボールはゴール中央へ力強く突き刺さります。「あの子でどれだけ助かっているか。体は小さいけど彼がいなかったら大変」と辛口で鳴らす荒谷監督も絶賛したファイターの同点弾。2点あった両者の差は霧散しました。
押し返せない高輪台は、「蹴られたらキツいなと」(川島監督)三ヶ尻京平(3年・GRANDE FC)と渡邊夢大(2年・FCトリプレッタ)を相次いで投入し、「2トップに変えて前から蹴らせないような」(川島監督)対策を講じましたが、それをも上回る怒涛の荒波。77分、竜崎のミドルは枠の右へ。80分、古市の左CKに対してDFのクリアは小さく、相澤が頭で押し返したボールにオーバーヘッドで飛び付いた栁下のフィニッシュはわずかに枠を越えるも、戦慄のハイテクニック。80+1分、高橋が右へ振り分け、竜崎がピンポイントで送り込んだクロスに、まったくのフリーで待っていた相澤のヘディングは枠を捉えられず。2-2。第1試合に続いて、このゲームも前後半10分ずつの延長戦へと突入することになりました。
後半のアディショナルタイムに退場者を出し、最後の20分間は10人で戦うことになった帝京。逆に数的優位を得て、「いつも通り手間を掛けて、確実な所で裏を狙おう」(川島監督)という指示を受けてピッチへ帰ってきた高輪台。83分は高輪台。渡邊が金子とのワンツーで右サイドを抜け出し、シュート気味に入れたクロスは中と合わず。85分も高輪台。金子が左から狙ったミドルは枠の左へ。87分は帝京。古市のミドルを砂田が懸命に弾くも、後半から途中出場していた阿久津義和(3年・帝京FC)が詰めたリバウンドは、ここも砂田がファインセーブ。両チームが足を踏み入れる最後の10分間。
延長後半スタートから「勝負を決めに行った」川島監督は、吉野を下げて岡田侑也(2年・GRANDE FC)を投入する選択を。95分には岡田も絡んだ流れの中で、3トップの一角からお互いにドイスボランチへとポジションを移していた伊藤と荒川を経由し、三ヶ尻が運んでチャレンジしたシュートは、「一番点を取っているし、ピンチを防ぐのもあの子」と荒谷監督も信頼を寄せる武藤が決死のブロック。98分はこのゲーム最後の決定機。高橋が右へ繋ぎ、阿久津がピンポイントクロス。フリーの竜崎が丁寧に敢行したダイビングヘッドは、しかし砂田が驚異的な反応と身のこなしで超ファインセーブを披露。両者譲らず。駒沢第2は2試合続けてPK戦が勝敗を決する舞台となりました。
1人目は帝京の栁下、高輪台の伊藤と確実にGKの逆を突いて成功。ところが、2人目で飛び出したビッグセーブは古島。このゲームで初めて帝京がリードを奪うと、3人目と4人目はいずれもゴールネットを揺らし、迎えた緊張の5人目。決めれば勝利の帝京。ところが、ここで飛び出したビッグセーブは砂田。絶体絶命の危機を救うと、外せば負けのキックを小山は落ち着いて成功。ここに来ても、なお終わらない熱戦。
6人目はお互いにきっちり沈め、7人目も帝京は成功。後攻の高輪台にかかるプレッシャー。この場面で輝いたのはまたも古島。中央に来たボールを弾き出すと、一瞬間が空いてから狂喜したカナリア軍団。「ピッチの中で一生懸命やっていれば、結果は付いてくると信じている」とは武藤。一時は2点のリードを許した帝京が、今年もセミファイナルへ駒を進める結果となりました。
「ああいうロングボールにやられちゃいけないと練習してきたんですけどね」と川島監督も話した高輪台は、勝利を引き寄せられるポイントがいくつもあっただけに、少し悔しい敗戦になってしまったのは間違いないでしょう。それでも、「攻撃は楽しんでやってたんじゃないですかね」と川島監督。特に前半の彼らが披露したスタイルは、見る人に十分過ぎる程のインパクトを与えていたと思います。"やっていて面白いサッカー"の今後に大いに期待したいですね。
帝京は後半の途中から徹底して前へ蹴ったあの時間帯が、結局一番高輪台へ脅威を与えていた時間帯でした。ただ、そこでゴールを奪い切れるのは、当然選手たちの技量やメンタルの部分に因る所が多いとはいえ、伝統の力を感じます。「2点差を追い付いて、10人でも勝てたというのは今後に繋がる」と武藤。全国を懸けて戦う来週の準決勝は、成立学園との十条ダービーとなりました。         土屋

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