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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年05月13日

J2第14節 栃木×長崎@グリスタ

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tochigi0512.jpgバクスターの系譜を引き継ぐ名将同士の対峙。4位栃木と2位長崎という、今節屈指の好カードとなった上位対決はグリスタです。
前節こそ愛媛の前に3-0という大差で敗れたものの、そこまでは4連勝と好調をキープ。失点もここまでリーグ2番目に少ない9失点で4位と、松田浩監督体制5年目での今シーズンは、もはや昇格争いに食い込むことへ何の意外性もなくなってきた栃木。さらなる浮上を懸けて、勝ち点2差の長崎をホームで迎え撃ちます。
一方はJリーグ昇格初年度にもかかわらず、前節のドローでとうとう2位にまで順位を上げた長崎。どのチームも簡単に勝ち点を重ねられない戦国模様を呈しているJ2の中でも、「1人1人がよく考えているので、お互いがお互いをカバーする意志統一もできている」と高杉亮太が話した通り、高木琢也監督の下、個々の力の最大値をうまく掛け合わることで、10戦無敗という快進撃を続けています。確実に夏の気配が青い芝から漂うグリスタは13時キックオフ。廣瀬浩二がボールを蹴り出し、ビッグマッチはスタートしました。
お互いに前線からのハイプレスを敢行し、なかなかチャンスが生まれずに立ち上がったゲームで、ファーストシュートがもたらした先制点。8分、自陣深くでボールを持った長崎の右WB金久保彩へ、猛然とチェイスを仕掛けたのは栃木のハードワーカー系ストライカーの廣瀬。執念のカットから中へ送ったボールはDFに当たったものの、こぼれに反応したクリスティアーノは右足一閃。ゴールネットへ突き刺さった弾丸。廣瀬とクリスティアーノの"らしさ"が融合し、まずは栃木が1点のリードを奪いました。
さて、「前からのプレッシャーは予測していた」(高木監督)中で、そこから失点を喫してしまった長崎のファーストシュートは、岩間雄大が放った可能性の薄い17分のミドルまで待つことに。「もっと相手のSBの所でハマると思ったのに全然ハマらず、後手を踏んでパスで外されることがかなりあった」と高杉が話せば、「いつもなら連動してハマる所が1人浮いたり、僕がプレスを掛けた時にパスを出されたり、うまくハマらなかった」とは左WBの山田晃平。守備の狙いが外れ、いい形での攻撃へと繋げられません。
ところが、18分にハマったもう1つの狙い。栃木が最終ラインでパスを回していたシーン。「前にも横にも行けるポジションを取っていた」山田の視界が捉えたのは、パスのわずかなズレ。「『コレは取れそうだ』と思って、思い切りプレスを掛けた」山田の足に大和田真史のクリアが当たると、ボールが選んだのは山田の足元。1つ中へ持ち出して打ち切ったシュートは、右ポストの内側を叩いてゴールへ転がり込みます。「相手の最終ラインで引っ掛けようというのは、チームとしてあった」と高木監督。狙い的中。長崎が"仕返し"のような形で追い付いてみせました。
「与えるべきではないゴール」(クリスティアーノ)でリードが霧散した栃木でしたが、失点以降もゲームは冷静にコントロール。27分には菅和範のクサビを近藤祐介が収め、クリスティアーノのパスからパウリーニョが放ったシュートはDFがブロック。33分にも近藤、パウリーニョと繋ぎ、クリスティアーノのヒールを経由して、上がってきた菅のシュートは金久保が体でブロック。「セカンドボールはだいぶ向こうに行っていた」と山田。掛かる黄色の圧力。
40分にピッチを貫いた高速カウンター。長崎のいいパスワークが神崎大輔のスルーで途絶えると、そこから栃木の雷光が発進。クリスティアーノのパスを引き出した廣瀬が左へ送ると、まったくのフリーで走り込んで来たのは「彼も菊岡(拓朗)と遜色のない状態でいつもスタンバイしてくれている」と松田監督も認めた杉本真。トラップから左足で綺麗にミートしたボールは、ゴール右スミへ迷いなく飛び込みます。今季初スタメンの小柄なハードワーカーが大仕事。再び栃木が一歩前へ出ました。
以降はホームチームのラッシュ。43分、クリスティアーノの直接FKはカベに当たりましたが、直後にも菅のフィードから廣瀬が抜け出し、杉本のあわやというシュートが。45分にはクリスティアーノの左CKを、ファーで大和田が合わせたヘディングは枠の右へ。さらに45+1分にはチャ・ヨンファン、45+2分にはクリスティアーノがそれぞれミドルを放つなど、3点目への意欲も十分。栃木が1点のアドバンテージを握って、最初の45分間が終了しました。
ハーフタイムを挟み、迎えた後半のファーストチャンスも栃木。47分、クリスティアーノが右から蹴り込んだCKを、當間建文が頭に当てたボールはわずかに枠の左へ。50分には長崎にも好機到来。前半途中に岩間の負傷交替を受けて急遽ピッチへ送り出された前田悠佑のパスから、小笠原侑生が右サイドを突破し、折り返しに走り込んだ井上裕大のシュートは、しかし枠を捉え切れず。頭を抱える井上。点差は変わりません。
「アタッキングサードから先はなかなかやらせてもらえなかった」(高木監督)状況の中、先に動いたのは元ストライカーの指揮官。61分、神崎に替えて古部健太を左WBへ投入。山田が左から右へスライドし、前田はアンカー気味のポジションへ。その前に金久保と井上を配し、前線にも水永と小笠原が並ぶ3-3-2-2気味にシフトさせ、同点、そして逆転を目指します。
とはいえ、「点を取ってからはしっかりブロックを作るのが基本」(高木監督)。水も漏らさぬと形容される栃木のゾーンブロックは、「負けている状況だから、前から行く意識はあった」(山田)長崎の侵入者をほぼ完璧に捕獲。エアバトラーの水永翔馬も大和田と當間がいい態勢では競らせず、ポジティブに膠着させた展開を生み出し、確実に潰していく時間。
高木監督の決断は75分。切った最後のカードは、山田に替えてチームトップスコアラーの佐藤洸一。最終ラインも右から高杉、下田光平、山口貴弘、古部の4バックにチェンジ。中盤は前田をアンカーに金久保と井上が1つ前へ並び、前線も水永を頂点に置いて、その下に佐藤と小笠原が入る4-3-3で最後の勝負に出ます。
逆に手持ちのカードをフルに残していた松田監督は、77分に1人目の交替。「本当によくやってくれた」と賞賛した杉本を下げて、こちらもチームトップスコアラーのサビアを前線へ投入。近藤をSHへずらし、当然追加点を狙いつつも、もう一度ハイプレスの意識を徹底させます。
長崎の3分間。85分、古部の横パスをもらい、「チャンスがあればどんどん上がっていこうと思っていた」高杉がコースを突いたシュートは枠外へ。86分、小笠原、古部と繋ぎ、佐藤が粘って足を伸ばしたシュートは菅がきっちり体でブロック。87分、山口のフィードを水永が競り合って落とすも、佐藤のミドルはヒットせず。ようやく掴んだチャンスの芽も摘み取られ、栃木は87分に近藤と三都主アレサンドロ、90分に山形辰徳と赤井秀行を入れ替える、磐石のゲームクローズ。「危ない場面もそうない」(松田監督)展開で、整えた"終わらせる"手はず。
交差した悪夢と奇跡。90+3分、GKの金山隼樹もゴール前に駆け上がってきた長崎のCK。「どんな試合でも諦めるということは、自分の中ではない。最後まで信じてゴールを目指した」金久保が右から蹴ったのは、意外にもアウト気味のストレートボール。その球体は「GKの前に立って少しでも邪魔できれば」とゴール前に入った高杉へ一直線。「結構低いボールで誰も触らなかったので、『オイオイオイ』と思いながら」突き出した頭。1秒後の狂喜。今季セットプレーでの初ゴールは衝撃の同点弾。諦めない長崎が土壇場でゲームを振り出しに揺り戻しました。
諦めない栃木。90+3分、キックオフのボールを三都主が左へ送ると、クリスティアーノは中へ。ルーズボールにいち早く反応し、宙を舞ったサビアのオーバーヘッドは、DFに当たってわずかにゴール右へ。95分10秒、熱闘に終わりを告げる前田拓哉主審のホイッスル。「2ポイントを逃してしまった」とクリスティアーノ。「我々にとっては大きな勝ち点1になった」と高木監督。両者譲らず。意味合いの大きく異なる勝ち点1ずつが、双方に加えられる結果となりました。
「コントロールできていた試合」(松田監督)にもかかわらず、最後の最後で白星が逃げていった栃木。「2点とも崩された失点ではない」(近藤)中でのドローは、悔しさが残る結果でしょう。それでも守備の安定も含めて、やはりこの順位にいるのが納得できるような強さを同時に見せてくれたのも間違いありません。今シーズンは最後まで昇格争いに絡んでいくのではないかなと、個人的には感じました。
「常に先行される展開の中で、最後のあの時間帯で追い付けたのは素晴らしい。選手たちは本当によく頑張った」と高木監督も語った長崎は、これで無敗記録を11試合まで伸ばしています。印象的な全員のハードワークを問われた山田は「ハードワークはチームの特徴というよりもしないといけないことなので、そこは毎日の練習から意識している」とキッパリ。「一戦一戦必死に全力で戦っている。そういう気持ちの部分がこういう結果に繋がっているのかな」とは金久保。旋風も14節まで吹き続ければ、もはや日常。見えてこない長崎の"着地点"は果たして何処に。       土屋

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