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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年03月25日

J2第5節 東京V×熊本@味スタ

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ajista0324.JPGまだ4試合を消化した序盤戦とはいえ、20位に18位と開幕ダッシュに乗り切れなかったチーム同士の対峙は味スタ。是が非でも勝ち点3をサポーターへ届けたい一戦です。
三浦泰年新監督がベンチ入りを自粛した開幕2試合は1分け1敗。ホームで行われた3節の岡山戦もドローに終わると、指揮官や多くの選手にとっても古巣対決となった4節の北九州戦もドローと、いまだ勝ち星に恵まれていない東京V。「今月はあとホームゲームが2つ来るので、どうしても勝点3が2つ欲しい」(三浦監督)中で、そのホーム連戦の第1ラウンドに挑みます。
対するは開幕戦の鳥取に逆転で敗れると、2節も千葉に0-3で完敗を喫し、ホームでの連敗スタートとなったものの、「開き直ってやった」(吉田靖監督)アウェイ松本で今季初勝利を奪い取った熊本。前節のG大阪戦は今シーズンJ2最強の刺客と、堂々打ち合ってのドロー。チーム状況が上向いてきているのは間違いありません。昇格候補と目されていたチームも取りこぼしが目立ち、まだ抜け出すチームがないため、お互いに何とか浮上のキッカケを掴みたい激突は、東京Vのキックオフでスタートしました。
35秒の閃光。右から常盤聡が運んで左へ送ったボールを、小池純輝が思い切って枠内へと飛ばしたミドルは熊本GK南雄太がファインセーブで応酬。「勝ち点3をとにかく取りたい」と口にした小池のアグレッシブな姿勢が、1分も立たない内にいきなり見せ場を創ります。
その先制パンチを繰り出した東京Vは、「思い切って新しいことにトライしてみたいなと」(三浦監督)今までのシステムを大きく変更。最終ラインには右からキム・ジョンピル、刀根亮輔、福井諒司と3人が並び、その前には鈴木惇と「怖がらずにボールをもらえて、前に運べる選手」と指揮官も評した西紀寛を配置。ワイドは右が森勇介で左が小池。前線は高原直泰を頂点に、飯尾一慶と常盤がシャドーに入る、3-4-3でこのゲームに入ってきました。
7分には東京Vにチャンス。西が右から蹴ったFKをファーで福井が折り返すと、刀根の強引なボレーは枠の右へ。8分は熊本。仲間隼斗が粘り強いキープからラストパスを送り、齊藤和樹が抜け出しかけるも小池がスライディングで何とかクリア。惜しいシーンは創り合いますが、徐々にゲームリズムは東京Vへ傾いていきます。
そのキーマンは今シーズン初スタメンに「迷わず前に仕掛けようと思っていた」と振り返った小池。「相手が広がりを創っていたので、なかなかこっちが上手くプレッシャーを掛けられずに先手を取られた」と吉田監督も言及したように、ある程度しっかりボールを回す意識の中で、サイドへ張り出した小池に1対1で勝負させる場面をチームとして狙っていたのは明確。本人も「両ウイングが僕と森さんだったので縦に行っていいというのがわかりやすかった」と、ボールが入ったらすべて勝負。21分には福井からパスを引き出し、縦に抜け出し中へ。DFのクリアを西が狙ったミドルは原田拓が体でブロックしましたが、左の高速ジェットが相手に脅威を突き付けます。
とはいえ、「シュートまでは行けていなかったけど、別に感覚的には悪くなかったし、狙い通りの守備はできていた」と北嶋秀朗が話した熊本も、前述の小池には少し手を焼いた印象がありますが、その他のアタックには概ね余裕を持って対応。逆に20分を過ぎたあたりからは、ボールを回す時間帯も創れるようになり、いい意味でゲームを膠着状態に持ち込みます。
35分は熊本。片山奨典のパスから黒木恭平が北嶋とのワンツーで左サイドを抜け出し、上げたクロスは中と合わず。38分は東京V。ピッチ中央、ゴールまで約30m強の距離から森が直接狙った無回転FKは大きく枠の上へ。39分は熊本。仲間が右からカットインしながら強引に打ったミドルは力なく枠外へ。開始35秒の一撃以降は、なかなか両チームに得点の匂いが漂ってこないまま、スコアレスで前半の45分間は終了しました。
ハーフタイムを挟むと、早くも動いてきたのは三浦監督。「自分が思っているようなリズムとテンポは出なかった」と、前線でなかなかサポートを得られない中でも奮闘していた高原に替えて、中後雅喜を投入。中後はボランチに入り、西が1列上がってシャドーの位置へ。常盤が最前線にスライドし、攻撃のギアチェンジを狙います。
後半のファーストシュートは熊本。47分、左サイドで片山が縦に送り、藤本主税はクロス。仲間のダイレクトボレーは中後が体でブロックしたものの、悪くない立ち上がりを見せると、50分には小池にカットインミドルを許すも、51分に北嶋も負けじと右サイドからゴリゴリと運んで枠内ミドル。53分には藏川洋平がグラウンダーで絶妙のカットパスを縦に送り届け、わずかにマーカーより前へ出た齊藤が、GKの鼻先でチョコンと弾いたシュートはゴール左へ。「後半はボールを動かせるようになった」と吉田監督。着火した赤い駿馬。
58分には三浦監督が2人目の交替策に着手。前半から不安定なフィードやパスが多かったキム・ジョンピルを下げて、これがJリーグデビューとなる吉野恭平をそのまま3バックの右へ送り込み、守備面のてこ入れと最終ラインから始まるポゼッションへの修正を図ります。
ゲームスイッチが押されたのは64分のターン。まずは東京V。GK佐藤優也が完璧なフィードを打ち込むと、受けた小池の加速して加速して枠内へ収めたシュートは南がファインセーブで回避。すぐさま熊本。北嶋を起点に仲間が縦へスルーパス。齊藤はいいトラップから抜け出し、GKと1対1になりましたが、シュートは枠の左へ。お互いに創り合った決定機が2段階引き上げた、ゲームそのもののギア。
味スタに轟いたのは緑の咆哮。66分、ここも佐藤のフィードを小池が頭で繋ぐと、西は縦へ絶妙のグラウンダーパス。飯尾は自分の間合いでドリブルを始めると、マーカーを中へのフェイントで振り切り、そのまま全力でフィニッシュ。ボールは名手・南もさすがに届かないゴール左上、最高のコースへ収まります。この日のスタメンでは唯一の下部組織出身となったキャプテンの痛烈な一発。ホームチームがとうとうスコアを動かしました。
さて、決して悪くはなかった流れの中で失点を許した熊本。吉田監督も腰を上げ、70分には前線でうまく基点を創っていたように見えた北嶋と五領淳樹を、71分に黒木の枠越えミドルを挟み、ボランチの原田拓と養父雄仁をそれぞれ入れ替え、中盤にリズムチェンジを施すと、76分にはその養父が好フィードを送り、最前線へ移った仲間がいいトラップからスムーズに放ったシュートはDFのブロックに遭いましたが、燃やし続けるゴールへの高い意欲。
そして83分、吉田監督が最後に切った手札は、藤本に替えて送り出した高橋祐太郎。今シーズンもCBとFWの併用が続き、メンタル的にも難しい中で「それでも自分にしかできないと思って、しっかり準備していかなくはいけない」と話すハイタワーがこの局面で、最前線へと送り込まれます。
86分に訪れた熊本の決定機。養父が右へ展開すると、「結果として下がる形になってしまった」(小池)東京Vの寄せが甘いのを見た藏川はアーリークロス。フリーで合わせた高橋のヘディングは、しかし枠を捉え切れずゴール左へ。「自分の武器を考えると、あそこは絶対に決めないといけない」と自ら猛省した決定機逸。追い付けない熊本。
しかし、諦めなかった背番号3のFWに再び訪れた、"自分の武器"の生かし所。88分、五領のポストプレーから黒木を経由して、仲間が右へ。ここに上がってきた藏川は、ほとんどフリーならば"自分の武器"に抜かりなし。最高のクロスに、密集の中でも「絶対これは抜けてくるなと思って」頭から飛び込んだのは高橋。重なった"自分の武器"が貫いた東京Vゴール。「しっかり相手DFの間でポジション取りを意識して、ゴールへ向かってプレーした結果」と話した高橋の同点弾。熊本が執念で追い付いてみせました。
「相手のうまい交替に対して、こっちがうまく対応できなかった」と指揮官が言及したホームチームを尻目に、逆転を果敢に狙うアウェイチーム。90+3分、高橋が左へ捌くと、上がってきた片山はピンポイントで中へ。フリーで飛び込んだ齊藤でしたが、頭には当たらず佐藤が決死のパンチング。こぼれをミドルレンジから狙った黒木のシュートは福井がブロック。こぼれを藏川が終盤3度目のアーリークロスを送り、福井のクリアは自陣ゴールへ向かうも佐藤がキャッチ。94分20秒、木村博之主審のファイナルホイッスル。双方に意味合いの大きく異なる勝ち点1ずつが振り分けられる、ドローゲームという結果になりました。
熊本は決して悪くない流れの中で失点を許しましたが、「1点取られた後に、最後追い付いたということについては、徐々にチームも進歩しているのかなという気はする」と吉田監督も話したように、意地を見せて敵地でのドロー決着。ここ3試合は明らかに内容の向上が見て取れます。「自分にできることを頭の中でしっかり整理して試合に臨んでいる」と高橋が話したように、"自分の武器"のさらなる見極めと打ち出しの集積が、チーム力向上へと昇華させられるだけのポテンシャルは十分に兼ね備えている印象を受けました。
東京Vは少し選手の持ち味が相乗効果にまで届いていないような戦い方が気になります。スタメンでドイスボランチを組んだ西と鈴木は、このゲームに関して言うと推進力と展開力という"自分の武器"をほとんど出せずじまい。高原に関しても、なかなかボールが入らず、パスを呼び込んでもサポートが不十分な状態で45分間の交替というのは、やや消化不良だったかもしれません。選手個々の技術は間違いなく、チームの志向すべきスタイルも見えてきている中で、今後どの程度組織の中でいい形の"個"が出てくるのかは、注目して見ていきたい所です。         土屋

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