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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年02月10日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝 東京Vユース×横河武蔵野FCユース@西が丘

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nishigaoka0210.jpg「戦意喪失というか、遊ばれている感覚もあった」(横河武蔵野FCユース・吉山遼馬)という"10-0"から1年。リターンマッチは西が丘でのファイナルです。
畠中槙之輔(2年・東京ヴェルディJY)や澤井直人(2年・東京ヴェルディJY)、山口陽一朗(2年・東京ヴェルディJY)、菅嶋弘希(2年・東京ヴェルディJY)など、昨年の高円宮杯チャンピオンシップのピッチにスタメンで立った選手も複数人残り、2次リーグも当然の首位で抜けてきた東京V。今年もプレミアEASTの優勝候補筆頭に間違いなく挙げられる、日本屈指のタレント集団です。
対するは"都内3強"の構図へ鮮やかに風穴を開けてみせた横河。2次リーグ初戦でFC東京U-18を0-1と撃破すると、中2日で激突した三菱養和SCユースも終了間際に飛び出した渡辺悠雅(1年・横河武蔵野FC JY)のゴラッソで、やはり0-1と撃破。厳しいグループを堂々の首位通過で西が丘へ2年ぶりに帰ってきました。
この2チームが最後に公式戦で対戦したのは昨年の同大会2次リーグで、結果は前述したように東京Vが10-0という大差で圧勝。所属するリーグも違うため、「ヴェルディとこういう環境でできるのは1年に1度あるかないか」(吉山遼馬・2年・Az'86tokyo-ome)。返り討ちか、リベンジか。同時にお互いトップとの兄弟対決を視野に入れる、天皇杯予選への勝ち上がりをも懸けた一戦は、少し春の気配さえ窺わせる午後の西が丘でキックオフを迎えました。
「ウチはこの環境に"慣れ"がないので、飲まれた部分はあったと思う」と増本浩平監督が話したように、序盤は横河がFC東京戦や養和戦ほど前に出て行く姿勢を打ち出せず、ややボール回しも停滞気味に。東京Vが主導権を握る格好になりましたが、その東京Vもイージーなパスミスが目立ち、フィニッシュまでは至りません。
すると、10分前後から徐々に「相手が(ウチに)慣れていないこともあって、自分たちがプレッシャーを掛けながら勇気を持って前に出て行くことができた」(吉山)横河に傾き出した流れ。10分には松野崇紀(2年・横河武蔵野FC JY)の仕掛けから得たCKを右から七枝拓己(2年・ディアマント鹿児島)が入れると、ゴール前のこぼれに佐野樹生(2年・横河武蔵野FC JY)が詰めるも、一瞬早く東京VのGK長谷川洸(2年・ヴェルディSS相模原)がキャッチ。
11分にも中盤で"らしい"繋ぎが炸裂し、吉山のスルーパスに反応した松野が中へ。クリアボールを拾った七枝のミドルはここも長谷川の好守に阻まれましたが、直後の右CKもチャンスに。キッカーが吉山に替わると、その吉山はマイナスのグラウンダーを選択。佐野がまたぎ、長岡克憲(2年・横河武蔵野FC JY)のフィニッシュは何とか食らいついたDFにブロックされたものの、練習を積んだであろうトリックプレーまで披露し、東京Vゴールへ迫ります。
さらに続く横河のラッシュ。17分に生まれたチャンスの起点はまたも右SB。根地嶋隼人(2年・横河武蔵野FC JY)のパスから、松野は1人で縦への勝負を挑み、鋭く中へ。ボールは佐野の目前でクリアされましたが、「松野に高い位置を取らせてガンガン行くのはウチのやり方」と増本監督も明言する右の"槍"が、チームのパスワークに最後の彩りを加えていきます。
ところが、緑の勇者はたった一瞬で決定機を創出。19分、三竿健斗(1年・東京ヴェルディJY)は相手のミスパスがこぼれてくると、何の迷いもなくダイレクトで中央にスルーパス。これまた迷いなく走り出していた菅嶋は完全に抜け出し、シュートこそ枠の左へ外してしまいましたが、「ウチがボールを動かしている時にも、ヴェルディは中盤で常に"1本"を狙っているので、常に守備のことを考えなくてはいけなかった」という吉山の言葉にも頷けるような、強烈な"1本"を繰り出してみせました。
以降はほとんど五分に近い形でゲームが推移していきますが、どちらかと言えばボールを握れていたのは横河。そのキーマンは1トップに入り、畠中や羽賀という強力なCB相手にもボールをフィフティ以上に収め続けた佐野。増本監督も「ウチの生命線」と語るだけあって、彼が数秒でも時間を創ることが、中盤3枚や松野の推進力に大きく貢献していたことは見逃せないポイントだったと思います。
一方の東京Vはシステム上のマッチアップと、横河の"2"が流動的だったこともあって、右の小田島怜(1年・東京ヴェルディJY)と左の「今週の頭からチームに合流したばかり」(冨樫剛一監督)という品田賢祐(2年・東京ヴェルディJY)が配されたSBに、比較的フリーでボールが入るシーンが多発。特に品田は持ち味の左足を遺憾なく振りかざし、中盤でボールを動かし切れない流れの中で、大きなアクセントとして相手に脅威を与えていきます。
30分は東京V。ミドルレンジから三竿が狙ったシュートはわずかに枠の上へ。33分は横河。左から七枝が蹴ったピンポイントFKに、CBの初田駿(2年・横河武蔵野FC JY)が合わせたヘディングもわずかに枠の上へ。39分には輝いた横河の"左"。長岡を起点に七枝を経由し、上がってきた左SBの平賀雅也(2年・府ロクJY)が正確に折り返すと、長岡のシュートはヒットせずに長谷川がキャッチしましたが、平賀も機を見たオーバーラップで好機創出。41分にも佐野との連携から長岡が枠外ミドル。ノッてきた横河。
42分に魅せたのは東京Vの"右"。「昨日トップのゲームをフルに出ているが、それが彼のためにもなる」(冨樫監督)と"連戦"に挑んでいた澤井が右サイドを痛烈に突破。ファーへのクロスを安在達弥(1年・東京ヴェルディJY)がボレーで叩いたボールは、当たり損ねが幸いして際どいコースに飛ぶも、横河GK宗仲光(2年・横河武蔵野FC JY)が辛うじて触り、CKへ回避。
そのCKを品田が左から蹴ると、一旦は跳ね返されたものの、こぼれを繋いで左へ。受けた品田は角度と距離から誰もがクロスだと思った刹那、突如としてキャノン砲を枠内に。逆を突かれた宗仲がファインセーブで掻き出しましたが、まさにレフティモンスターと形容すべき一撃に、場内もザワつきます。「前半はゼロで終われればいいと話していた」(宗仲)「悪いなりに0-0でいったことはよかった」(冨樫監督)。お互いに守備面での目標を達成しながら、攻撃面でも持ち味を発揮し合う密度の濃い45分間に、期せずしてスタンドから拍手が起こるような前半はスコアレスで終了しました。
ハーフタイムを挟み、迎えた後半も攻め合う両者。46分は東京V。安在の素晴らしいポストから、澤井が右サイドをぶち抜いての折り返しは宗仲が間一髪でクリア。47分は横河。前半からよく動いていた北原祐希(1年・JACPA東京JY)がうまく抜け出すも、フィニッシュはわずかに長谷川の好守に遭って枠外へ。
48分は東京V。三竿のクサビをうまいフェイクで反転した山口が右へ。小田島のクロスがこぼれたボールを、山口が拾って打ち切ったミドルは枠の右へ。50分は横河。平賀、長岡と回り、佐野のスルーパスに平賀が走り込んで折り返すも、中には誰も入って来れず。後半もアグレッシブなサイドバックが好機を演出します。
52分に動いたのは増本監督。奮闘した北原に替えて、「どうしてもやりたいというので、この決勝という舞台とケガをしていて試合に出るという機会はなかなかないことですし、葛藤はあったが使いました」と、3日の練習試合で手を骨折していた渡辺をピッチへ送り出しました。
54分には品田のアーリークロスから、リバウンドを叩いた澤井のミドルボレーがわずかにゴール左へ外れると、交替で入った渡辺の"ゴリゴリ"もあって、到来した横河の時間帯。59分、細かく繋いだパス回しから一度詰まったボールをまた回収。七枝、長岡、佐野と繋ぎ直し、平賀の折り返しはフリーの長岡に届くも、決定的なシュートはわずかにクロスバーの上へ。さらに61分、渡辺が右からドリブルで1人かわし、引き取った長岡が左へ流れながら枠へ収めたシュートは長谷川がファインセーブ。押し込む横河。
「前に出て行け始めて『イケる』となった時間」(増本監督)であり、「ちょっと気持ちが切れた時」(宗仲)を見逃さなかった王者。63分、相手CKの流れからボールを奪った瞬間に高速カウンターの発動。澤井が左サイドの奥へ放り込み、菅嶋はそれまで同様に猛然と追い掛けると、競り合ったDF相手に一旦不利な体勢になりながらもそこから再び体を入れ替えボール奪取。中へ丁寧に送り込んだボールを、全力で駆け上がってきた安在が、DFともつれながらもキッチリとゴールへ流し込みます。ここぞという場面の集中力と決定力はさすがの一言。東京Vが均衡を破ってみせました。
65分には山口の右CKから畠中が惜しいヘディングを放つなど、一気に勝負を決めに来た東京V。67分には中野雅臣(1年・東京ヴェルディJY)と室町仁紀(1年・東京ヴェルディJY)を入れ替え、「少し中盤の人数を増やすことでボールを持つ時間を長くして、幅を広げたい」(冨樫監督)と安在が右WB、澤井が2トップ下へスライド。元々の最終ライン4枚も品田を左WBに押し上げ、残る3枚がそのまま最後尾に位置する3-5-2へシフトして、中盤の支配を強める采配を振るいます。
一方の横河も68分には中盤の島村直利(1年・横河武蔵野FC JY)に替えて、菅波錬(1年・横河武蔵野FC JY)を"2"の左へ送り込み、七枝を中盤の"3"へ移してこちらも勝負に出ましたが、痛かったのは直後に佐野が負傷交替を余儀なくされたこと。しかも10人で耐えていた72分、澤井のスルーパスから菅嶋がフリーで抜け出し、このシュートは宗仲が驚異的な反応でストップしたものの、こぼれを安在が中へ入れると、エリア内で横河DFにハンドがあったという主審の判定。PKは澤井が難なく流し込み、東京Vに2点目が記録されました。
74分に横河も七枝の右CKを、「何か今日はスゲー当たってんなと思いました」と指揮官も笑って評した初田が、またも惜しいヘディングを放つも枠のわずかに上へ。ここからはある程度カウンターもチラつかせながら、スコアをクローズしにかかる東京Vのゲーム運びが際立つ展開になっていきます。
84分には佐野に替わって投入された服部光洋(2年・横河武蔵野FC JY)が30m近いミドルをクロスバーのわずか上へ打ち込んでみせましたが、これがチームのラストシュート。「90分間をコントロールするということで言えば、ミスの多い試合だったし、もっとトレーニングしなくてはいけないですね」と冨樫監督は話しましたが、終わってみればカウンターとPKでしっかりゴールを取り切った東京Vが、新チームとしての1冠目を手にする結果となりました。
東京Vは「切り替えの部分やボールに対して誰かが速く反応していくという部分は、去年からの継続で意識できている」と冨樫監督が話したように、今日は守備面での良さが目立つゲームだった印象です。それは畠中と羽賀のCBを中心にした"相手の攻撃を凌ぐ"という意味での守備もそうですし、1点目に繋がった菅嶋のような"攻撃に繋げる"という意味での守備も同様。特に菅嶋に関しては、あのスキルにあれだけの献身性が備わっていれば、今シーズン中のトップデビューも十分に可能性があるのではないかと感じました。
昨年は10-0で大敗を喫した相手に、今年は決定機も創りながら2-0。"惜敗"と言っていい成果を出したと、傍から見れば感じた横河。ただ、当事者たちの捉え方は少し違っていたようです。「ウチがやりたかったことができていなかったのが現状。この大会は"前から行ってどこまでできるか"だったが、今日はだいぶ引かざるを得ない時間帯があった。差は縮まっていないと思います」と増本監督が話せば、「相手の強さもやっていることも変わっていなくて、やられていることも一緒なので余計に悔しい。0-2も0-10も変わらないと思う。惜しいゲームじゃダメだった」とキャプテンの吉山。好成績を残した大会の最後に待っていた1試合は、さらなる彼らの成長を促す格好のスパイスになったようです。本当に悔しそうな表情で言葉を紡ぎ出してくれた吉山に「この試合で満足していないんだったら先が楽しみだね」と声を掛けると、「たぶん満足することはないですから」と力強く答え返してくれた姿を見て、今シーズンの横河がより一層楽しみになりました。            土屋

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