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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合はここ数年県内の上位進出常連校に定着してきた共愛学園と、昨年度の選手権全国ベスト8も記憶に新しい桐生第一が相対します。
昨年は県総体準優勝、インターハイと選手権がベスト8と、すっかり群馬の勢力図を塗り替えつつある共愛。県内の有力選手も進路として同校を選択する流れを創ってきた中で、あとはもう1つのカベを破って、県内制覇という悲願を達成したい所です。
一方の桐一は、もはや前橋育英との"2強体制"を築きつつあると言っても過言ではないほど、近年の県内における躍進は目覚ましいものがあります。また、黄大城(京都)、乾大知(群馬)、鈴木武蔵(新潟)、蜂須賀孝治(仙台)と、同校出身Jリーガーの数も年々増えつつあり、育成的な意味でも注目を集めているのは間違いありません。
なお、共愛の奈良章弘監督が小学生時代を過ごしたのは、桐一の小林勉総監督が指導している前橋ジュニア。師弟対決となった一戦は、桐一のキックオフでスタートしました。
先にペースを掴んだのは桐一。5分、右から田中大輔(2年・Az'86tokyo-ome)が蹴ったFKを、ニアへ飛び込んだ斎藤雄大(1年・前橋ジュニア)が合わせたヘディングはわずかに枠の右へ。12分にもやはりFKから、田中のボールを松島奨真(2年・前橋ジュニア)が狙ったヘディングは共愛GK松田敦志(1年)にキャッチされましたが、セットプレーからチャンスを創り出します。
「出られない選手を伸ばすためというか、ポジションもいじって、みんなに経験を積ませることが目的」と小林総監督が語った桐一で、まず目立ったのは本部の先生方からも「みんなデカいな~」という声が期せずして起こるほどの体格の良さ。4バックの平均身長は181センチで、木村光希(2年・前橋ジュニア)と角田駿(1年・前橋ジュニア)で組んだドイスボランチも「ウチに来てから20センチ以上伸びたんだよ」と総監督も笑うほどの長身コンビ。まず、高さとパワーという部分を、特にセットプレー時には1つのアドバンテージとして押し出すことに成功します。
14分も桐一のCK。右から田中が入れたボールを、圧倒的な高さで制した乾貴哉(1年・前橋ジュニア)のヘディングは枠の右へ。16分、今度は左からのCKをここも田中が担当すると、ニアで何とかDFがクリア。小林総監督は「冬から春の優先順位のテーマは"突破"だから、縦に行けるのなら行っちゃってもいいんだけど、もっと繋ぎたかったね」と苦笑いしましたが、SHの出村颯太(1年・前橋ジュニア)と田中がサイドのポケットをしっかり取れるため、縦へのスピードも加速し、セットプレーを数多く獲得していた印象です。
すると、先制ゴールに繋がったのは、違う毛色のセットプレー。22分、右からSBの坂井滉祐(2年・前橋ジュニア)がロングスローを入れると、ゴール前の混戦から共愛DFが手を使ったとの判定で、桐一にPKが与えられます。キッカーは1年生の出村。冷静にGKの逆を突いたキックがゴールネットを揺らし、勢いそのままに桐一がリードを奪いました。
その後も攻守に圧倒するブルー。守備面では「いい形でプレスを掛けて、パスの出所が決まったらそこで奪うというコンセプト」(小林総監督)を忠実に体現。共愛にボールを自由に持つ時間を与えません。また、攻撃面では相変わらずセットプレーが相手の脅威に。26分、田中の右FKをニアで合わせた齋藤のヘディングはクロスバーの上へ。30分、角田の積極的なミドルから獲得したCKを田中が蹴ると、角田のヘディングは共愛DFが何とかブロック。ジリジリ押し込む桐一。
そして前半終了間際の39分、桐一は中盤でしっかりボールを繋ぎ、前線の鈴木順也(1年・ヴェルディSS小山)が左サイドへ展開。絶妙のタイミングで上がってきた乾がクロスを上げ切ると、出村の左足ダイレクトボレーはゴールネットへ突き刺さります。「1年生にもチャンスを与えたいし、ジュニアユースから見ているので、ある程度計算は付く」と小林総監督も話した、その1年生トリオで奪い切った追加点。桐一が点差を2点に広げて、最初の40分間は終了しました。
後半は先に共愛がチャンスを創出。43分、永井郁弥(2年・前橋エコー)とのワンツーから片岡大成(2年・前橋エコー)が放ったミドルは、DFに当たって桐一GK泉水龍作(2年・町田JFC)にキャッチされましたが、前半はなかったシュートがようやく記録されます。
4-1-4-1を敷く共愛は、後半から中盤4枚の並びが少し変化。センター2枚の一角を占めていた永井が左サイドに張り出し、左にいた大河原瑠衣(2年・前橋エコー)がセンターへ。このシフトチェンジで、永井のキープ力がサイドでの基点創りに繋がり、立ち上がりはかなり勢いを持ってゲームへ入ることに成功しました。
とはいえ、桐一も要所に配された昨年からのレギュラーを中心に、相手の勢いをうまくいなすと再びゲームリズムを取り戻し、48分には出村のスルーパスに、右サイドへ3列目から角田が飛び出しクロス。よく戻った共愛の右SB朴明俊(1年・前橋FC)が何とかクリアしましたが、3点目を強奪する機会を窺います。
55分にはインフルエンザの影響でベンチスタートとなった浦丸治也(2年・Az'86tokyo-ome)を坂井に替えて左SHへ送り込むと、その2年生が投入直後に一仕事。58分、田中の左FKは一旦DFに跳ね返されたものの、拾った田中から乾を経由したボールは浦丸の足元へ。躊躇なく左足から振り抜かれたボールは、ニアサイド上部へ一直線に飛び込むファインゴール。決定的と言っていい3点目が桐一に記録されました。
気落ちした共愛へ、さらに襲い掛かる1年生ストライカー。64分、相手のバックパスを必死に追い掛けた鈴木は、GKの小さくなったクリアを奪取すると、角度的にはやや難しい位置から、前に出ているGKを曲げて避ける素晴らしいシュートをゴール右スミへ送り届けます。0-4。点差が広がりました。
「今大会は全員使っている。これで選手層を厚くして、次に繋げられるようにしたい」という小林総監督の下、桐一は68分には森巧(1年)が最前線へ、73分には武田伊織(1年)がCBへ投入されると、最終的な並びは試合開始時と大きくチェンジ。ボランチだった角田は右SBへ移り、左SHだった田中がボランチへ。そして、選手権予選では1トップを務めていながら、「チームとしては当然前に出した方がいいけど、今は一番後ろで状況を把握させて、前に出た時には後ろで得た"強さ"を出して欲しい」(小林総監督)という方針でCBに入っていた、U-17日本代表の招集歴もある松島が右SHへ回るなど、"察知できる選手"というテーマに沿って、ゲームを締めに掛かります。
最後のチャンスも桐一。80分、ゴール前までボールを運び、相手クリアのこぼれに反応した鈴木のシュートはわずかにゴール右へ外れると、程なくして吹き鳴らされたタイムアップのホイッスル。昨年度新人戦王者が連覇へ向けて、力強くファイナル進出を勝ち取る結果となりました。
桐一は現時点でもかなり高い完成度を誇っていた印象です。「前の方は去年のメンバーがほとんど残ってるんだから、これくらいできないと」と総監督は笑いましたが、公式戦の経験を積んでいない1年生の中にも、「冬合宿で伸びたヤツ」(小林総監督)がゴロゴロ。大半が前橋ジュニア時代のチームメイトという強みはあるにしても、個の力という意味では育英に引けを取らないメンバーが揃っているようにも思えます。
育英、桐一共にこの大会は"見極め"を重視しているとはいえ、3年連続の選手権決勝カードは否が応でも意識せざるを得ない対戦。おそらく来年度における幾多の"前哨戦"となるであろうファイナルは、9日の10時30分より前橋育英高校高崎グラウンドでキックオフを迎えます。 土屋
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