最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は共に3回戦を4-1で制した攻撃型チームの邂逅。新潟代表の帝京長岡と京都代表の京都橘が横浜の地で相対します。
初戦の中津東戦は3ゴール、3回戦の鹿児島城西戦は4ゴールと、全国の舞台でもその破壊力を存分に披露している帝京長岡。新潟入団が内定している小塚和季(3年・長岡JY FC・U-18日本代表)が注目を集める中、「たぶん小塚より上手いですよ」と谷口哲朗監督も評する長坂拓海(3年・長岡JY FC)やキャプテンの三田陽介(3年・長野上松中)と、その小塚で構成される3シャドーは大会屈指。「新潟県の歴史を変えたい」(三田)一戦を迎えました。
対するはこちらも3試合で9ゴールとアタッカー陣が躍動している京都橘。得点ランクトップタイの小屋松知哉(2年・宇治FC JY)と3回戦で華麗に3アシストを記録した仙頭啓矢(3年・FCグリーンウェーブU-15)の2トップは、「あの2人にあとは任せとけという感じ」と守護神の永井建成(2年・京都FC長岡京)も信頼を寄せたように、"無"の状態から一瞬でゴールを生み出せる特急コンビ。大旗を掲げての古都凱旋を本気で狙います。個人的に準々決勝最注目カードは、京都橘のキックオフでスタートしました。
「立ち上がりはいつも良くない」(三田)という帝京長岡は、このゲームも序盤から京都橘に主導権を明け渡す展開に。その京都橘は、小屋松と仙頭の2枚が今日もフルスロットルで走り回る中、それと同じくらい右の伊藤大起(3年・京都FC長岡京)と左の中野克哉(1年・YF NARATESORO)を配したSHも積極的に前へ。8分には小屋松が左へ展開すると、中野のクロスに飛び込んだ伊藤のヘディングはクロスバーを越えますが、SH2人のコンビネーションからフィニッシュを取り切ります。
ただ、ここぞの決定力はやはりこの2人。9分、右SBの倉本光太郎(1年・京都サンガU-15)が縦にフィードを送ると、右へ流れた小屋松はワンタッチでDFをかわしてドリブル開始。運んで折り返したボールを、「最初の1点を取ることにこだわっていた」という仙頭は強烈に右スミへ叩き込んでみせます。ゲームは予想通りと言うべきか、京都橘2トップの躍動で動き始めました。
さて、10分にはフリーで抜け出した山田貴仁(2年・長岡JY FC)が枠はわずかに逸れたものの、決定的なシュートを放つなど、一瞬輝きを放った帝京長岡でしたが、「相手のプレスに押し込まれてしまったし、寄せが甘くて相手を自由にさせてしまった」と小塚が振り返ったように、なかなか攻守でいい所を発揮できません。
逆に12分には仙頭のスルーパスから、小屋松が1人かわして折り返したボールはDFが何とかクリア。16分、倉本のパスを受けた中野は、トラップからスムーズに移行したシュートを右サイドネット外側へ。21分にもボランチの釋康二(3年・京都JマルカFC)がスルスルと持ち上がって、自ら枠内ミドル。直後のCKを中野が蹴ると、こぼれを小屋松が狙ったシュートは帝京長岡GK亀井照太(3年・FCトリプレッタJY)がキャッチしましたが、続くラッシュ。23分にもCBの林大樹(1年・京都サンガU-15)が、パスカットからそのまま持ち上がって枠内ミドルを飛ばすなど、全方位から攻撃性を押し出します。
25分には帝京長岡も小塚の左CKから、ファーで滝沢秀哉(3年・加茂暁星高)がヘディングで合わせるもボールは枠の左へ。27分は京都橘。小屋松のパスから、仙頭が打ったシュートはわずかにゴール左へ。28分も京都橘。仙頭がドリブルから優しく裏へ浮かせると、小屋松のループボレーはわずかに枠の上へ。徐々に合い始めた2点目への照準。
そして、「2トップのスピードある攻撃を警戒し過ぎた」(谷口監督)相手の隙を突いたのは1年生アタッカー。29分、中野からパスを引き出した小屋松は、後輩想いの優しいスルーパスでリターン。左サイドを抜け出した中野は、落ち着いてGKの左脇を破るシュートを、ゴールへ流し込みます。米澤一成監督率いる今年の京都国体選抜にも名を連ねたルーキーが大仕事。点差が広がりました。
「正直凄く痛かった」(谷口監督)2点目を奪われ、小さくないビハインドを追い掛ける展開となった帝京長岡は、焦りからかいつもの連動性溢れる攻撃も鳴りを潜め、高い位置でボールを動かせません。33分には小塚が左足で狙ったミドルも大きく枠を越え、39分には仙頭が果敢なプレスから、小屋松とのワンツーを経て、枠内ミドル。「自分たちのサッカーが何もできなかった」と谷口監督。京都橘からすれば、満点に近い内容と結果を得て、ハーフタイムに入りました。
「自分が自分が、というプレーが多かったと監督に言われた」と三田が話し、「無駄な40分間を過ごしてしまった」と語ったその谷口監督は、後半開始から交替策。三田を下げて、「昨日、夕食の後に出場を直訴してきた」という負傷離脱していた星田朋弥(3年・小針FC JY)をスクランブル発進。「エンジンを掛けて、ギアを上げて、後半は絶対に点を取るんだ」と選手を送り出します。
後半は開始15秒で生まれたチャンス。早速右から星田が上げたクロスに、山田が合わせたかったヘディングはヒットしなかったものの、「1年間MVP級の活躍をしてきた」と指揮官も認める3年生が、投入早々にいいプレーを披露して見せます。
すると、すぐさま動いたスコア。47分、長坂の左クロスを星田がDFに当てたシュートを経て、右サイドで獲得したCK。丸山晃生(3年・長岡JY FC)がショートで動かし、小塚が入れたクロスは跳ね返されましたが、拾った丸山が再び放り込むと、島村旭(3年・FC緑)がGKをよく見てフワリと浮かせたループが、スローモーションのような軌道でゴールの中へ吸い込まれます。選手交替がもたらした推進力。1-2。点差はわずか1点。
「思うような攻撃はできていた」と小塚。システムも4-2-3-1から4-1-4-1気味にシフトした越後のサッカー小僧軍団が一気に躍動。52分、丸山がドリブルで突き進んでそのまま放ったシュートは、永井が懸命にファインセーブ。53分、長坂が粘って残し、山田のフィニッシュは永井がキャッチ。55分、栁雄太郎(2年・長岡ビルボードFC JY)が右へ展開すると、星田のグラウンダークロスは山田が当て切れず。59分にも小塚の左CKから、あと一歩でシュートというシーンも迎えるなど、完全に形勢は逆転しました。
63分には京都橘に後半最初のチャンス。仙頭の左CKはファーまで抜けてきたものの、小屋松はシュートを打ち切れず。ここまで京都橘が後半記録したシュートはゼロ。67分、両チームに交替が。京都橘は伊藤を下げて、3回戦でゴールを決めている赤澤祥平(2年・FCグリーンウェーブU-15)を投入。帝京長岡は右SBの風間元樹(3年・長岡JY FC)に替えて、永井勝輝(3年・長岡JY FC)を最前線に送り込み、右SBにCBの滝沢が、CBに中盤アンカーの島村が、栁と並ぶドイスボランチには「相手も枚数をかけて守備してきたので、前を向いてボールを触ってもらおう」(谷口監督)と小塚をスライドさせ、何とか1点を返しに動きます。
70分に訪れた得点機は京都橘。70分、ピッチ中央から仙頭が思い切って狙ったミドルは、激しくクロスバーにヒット。突き放せないスコア。72分は帝京長岡。小塚とのコンビネーションから、栁が上げたクロスは永井がフィスティングで回避。73分も帝京長岡。右CKを2人がスルーで外すも、島村のシュートはヒットせず。「ちゃんと体を張れていた」と永井。「後ろの安定感の強さは感じている」と仙頭。残すは5分とアディショナルタイム。
76分には谷口監督も最後のカードとして、181センチのFW笛木浩大(3年・新潟西高)を送り込み、永井とのハイタワーで勝負。直後のCK。左から小塚が蹴り込んだボールを、ファーで滝沢が戻したヘディングは永井ががっちりキャッチ。追い付けないスコア。米澤監督は77分に小屋松と吉川達也(3年・京都サンガU-15)を入れ替え、前からのプレスを増強。
アディショナルタイムは2分。「正直吐きそうだった。はよ終われと思った」と永井が語る120秒も確実に消し去り、三ツ沢に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「全員が1つになって戦う大事さがわかってきた」とは、体調不良で隔離されていた状態を経て、やっとベンチに入った高林幹(3年・京都サンガU-15)からキャプテンマークを譲り受けていた仙頭。古都の新鋭が首都の聖地で戦う権利を自ら勝ち取る結果となりました。
新潟県勢初のベスト4進出はならなかった帝京長岡。ただ、日本屈指の豪雪地帯で、これだけの"見ていて楽しい"スタイルのチームが創り上げられて全国を席巻したことは、色々な環境を抱える日本中のチームへ大きなエールを送ったのではないかと思います。「新潟でもここまでできるということを、全国のサッカーをしている人に見せられたと思う」と小塚が話せば、「今まで自分たちのやってきたことを全国に見せられた」と三田。「この大会は楽しいし、気持ちがいいし、終わってしまって寂しいですが、この喜びを知っているからこそ1年間頑張って、またここに戻って来たいと思います」と語った谷口監督も、最後は「さすがに今日はできないかもしれないですけど、明日から雪かきさせます!」といつもの明るさを取り戻し、全国の舞台を堂々と去っていきました。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!