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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2013年01月05日

高校選手権準々決勝 作陽×桐光学園@ニッパ球

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mitsuzawa0105.jpgここでの勝敗はまさに天国と地獄。聖地への最終関門はクォーターファイナルです。初戦の高円宮杯プレミアWEST対決となった富山第一戦を、後半アディショナルタイムの同点弾からPK戦で切り抜けた作陽。続く3回戦は三野草太(3年・AZUL滋賀FC)の2発など、大量5ゴールを奪って一昨年王者の滝川第二を粉砕。6年前にあと一歩で届かなかった頂点へ挑みます。
プリンス関東王者の肩書きを引っ提げ、優勝候補として臨んだ桐光学園。共にJ1内定の強力2トップを擁した四日市中央工業との"候補"対決を、奮起した市森康平(3年・茅ケ崎第一中)と野路貴之(3年・横浜F・マリノスJY)の2トップだけで3点を奪い、4-2で一蹴すると、佐賀商業からも3ゴールを挙げて快勝。3戦連続となる"ホーム"を追い風に、さらなる先を見据えます。これが三ツ沢会場最終日ということもあってか、スタンドには10500人の観衆。全国常連校同士のビッグマッチは作陽のキックオフでスタートしました。
立ち上がりから勢いは作陽。5分には佐々木宏太(2年・SAGAWA SHIGA FOOTBALL ACADEMY JY)が積極的なミドルで、桐光GK長津大裕(2年・横浜F・マリノスJY追浜)にファインセーブを強いると、そのCKから横川矩久(3年・イルソーレ小野FC)が入れたボールに、松本啓祐(3年・アヴァンサールFC)が当てたヘディングはヒットせず。6分、飛び出したGKのクリアは小さく、松本が無人のゴールへ飛ばしたかったシュートもヒットせず。10分にはルーズボールを右SBの丸野了平(2年・EXE90FC)がミドルに変えるも枠の左へ。攻撃のリズムがスムーズに創られていきます。
とりわけ、この時間帯で目立っていたのは1トップ下に入っていた横川。時には中央で、時にはサイドへ開いて、ドリブルをアクセントにショートパスの中心として躍動。彼の受けて捌いては、かなり効いていた印象を受けました。
「DFラインを下げさせたかったので長いボールを使ったが、セカンドを拾えなかった」と佐熊裕和監督が話したように、序盤はセカンド回収で岡村憲明(3年・FCフレスカ神戸)と山本義道(2年・FC NEO JY)で組んだ作陽のドイスボランチに後手を踏み、なかなか攻撃の手数が出てこなかった桐光は、12分にファーストシュート。市森が頭で繋ぎ、野路のボレーは枠を越えましたが、ようやくチャンスを1つ創ると、掛かり始めた2トップのエンジン。13分、多田八起(3年・シーガル広島JY)のフィードに反応した市森の思い切り良く打ち切ったシュートは、作陽GK太田純貴(2年・ガンバ大阪JY)が何とかセーブ。15分、松井修平(3年・川崎フロンターレU-15)がうまい浮き球スルーパスを裏へ落とすと、野路のランニングボレーはわずかにクロスバーの上へ。
緩めないラッシュ。16分、右からキャプテンの大田隼輔(3年・町田JFC)が投げたロングスローをニアで市森がフリック。野路の決定的なボレーは当たりが弱く、太田がキャッチ。直後にも市森とのワンツーから野路が左へ送ると、抜け出しかけた菅本岳(3年・犬蔵中)には作陽のキャプテンを務める米原祐(3年・FCフレスカ神戸)が好カバーで何とか回避。一気呵成に攻め立てます。
ただ、この攻勢も続いたのは10分間あまり。20分を過ぎると、再び流れは作陽へ。24分、横川が獲得したFKを渡部健士朗(3年・イルソーレ小野FC)が入れたボールは長津がパンチング。29分、左SBの渡部が積極的に攻め上がって繋ぎ、松本の枠内ミドルが長津を強襲。30分にもこの前後から切れ味を増し、「付き切れない所はあった」と敵将も話したドリブラーの平岡翼(2年・ポルベニル カシハラ)が右サイドから中央を斜めに切り裂き、佐々木のリターンからシュートを放つも、ここは小松勇樹(3年・横浜F・マリノスJY追浜)が体でブロック。徐々に漂い始めた先制点への香り。
ところが、スコアを動かしたのは関東王者。34分、右サイドで得たFK。松井がファーサイドまで飛ばしたボールを、諸石健太(3年・横浜F・マリノスJY・U-18日本代表)が頭で折り返すと、小松のシュートは枠を外れたものの、これがちょうどいいコースへ。最後に押し込んだのは大田。「繋ぐべき所をしっかり繋げず」(佐熊監督)、なかなかチャンスも創れなくなっていた"ホームチーム"の先制弾。押し込まれていた桐光がアドバンテージを握る格好で、最初の40分間は終了しました。
「ボールが回ることは前半で確認できた」と作陽の野村雅之監督。「ポジションバランスを崩してもいいからボールを動かせと」いう指示を徹底させて、選手を後半のピッチへ送り出します。42分、松本のパスから横川が左足で放ったミドルはクロスバーの上へ。45分、山本のミドルも枠外へ。失わない積極性。50分にも平岡が左へ送ると、横川のシュートは大田にブロックされましたが、取り続けるフィニッシュ。
「ボールを"持たせる"分には構わない」(佐熊裕和監督)とある程度割り切っていた桐光も、前半よりは松井を軸にボールを握る時間は増え、チャンスを創出。54分、橋本裕貴(3年・町田JFC)を起点に、松井が浮かせて裏へ送るも、野路はスリップしてシュートまでいけず。55分、右サイドでボールを持った橋本は、野路からのヒールリターンを受けて、シュートまで持ち込むも、戻った岡村がブロック。追加点とまではいきません。
57分に野村監督が決断した1人目の交替。最前線の松本に替えて、一昨日の2ゴール男・三野を投入。59分に横川が放ったミドル、60分に渡部の左FKから米原のヘディングと2つの決め切れないシーンを経ると、62分には2枚目のカードとして、佐々木と永松達郎(2年・ガンバ大阪JY)を入れ替え、1トップに入った三野の下には、右から平岡、横川、永松といずれも170センチ前後と小柄ながら、高いアジリティで勝負するアタッカーを並べます。
何とかまずは1点を返したい作陽でしたが、その前に立ちはだかるのは、「ギリギリの所でシュートコースへ寄せることができる」(佐熊監督)"人垣"構築に定評のある桐光ディフェンス。65分、河面旺成(3年・セレッソ大阪西U-15)が裏へ送り込み、右にいた平岡がカットインしながら左足で放ったシュートは、諸石がブロック。69分、渡部のフィードからこぼれを三野が枠へ飛ばしたシュートは、中島駿(2年・町田JFC)が体でブロック。
72分、河面が蹴ったボールを三野はシュートへ持ち込みかけるも、多田と小松が2人で懸命にブロック。「アレはプリンスでやっている所の経験値。Jクラブとやるとああいう機会が多いので」と佐熊監督も言及した、"体でのシュートブロック"に桐光の選手たちは躊躇なくトライ。その飛び込む姿勢が、作陽のチャンスを1つずつ潰していきます。
しかし、作陽の地道な"雨だれ"が桐光の"石"をとうとう穿ったのは76分。米原のフィードから、右サイドを平岡が切り裂いて切り裂いて、ゴールラインギリギリで残したボールを中へ。永松は冷静にトラップすると、右へ流れながら腰を回し切ってズドン。これがゴール左スミへ力強く転がり込みます。初戦に続き、今日も終盤での貴重な同点弾が飛び出し、桐光のアドバンテージは霧散しました。
「ギリギリの所のせめぎあい」(佐熊監督)で追い付かれた桐光。78分、多田に替えて佐藤建太(3年・湘南ベルマーレJY)を送り込むと、79分には松井のスルーパスから濱本が上げたクロスは丸野が桐光のお株を奪う体でのブロック。80分には市森と田中昇平(3年・桐光学園中)も入れ替え、「最後までチャンスは来るだろう」(佐熊監督)と狙う勝ち越し弾。野村監督は80+3分、最後の交替カードとしてGKを太田から末藤敬大(2年・アヴァンサールFC)にスイッチ。明らかにPK戦を意識しての交替を、アディショナルタイムに敢行します。
三ツ沢沸騰。80+4分、「ウチの1つの持ち味」と佐熊監督も認めた大田のロングスロー。右から投げ入れられたボールをニアで小松が競り合い、こぼれたボールはファーサイドへ。待っていたのはプリンス関東1部得点王の野路。冷静に、そして冷酷に、ゴール左スミへ流し込んだ、正真正銘のサヨナラゴール。「今日の前半は持ち過ぎたりしていたが、何とか我慢して使った」と指揮官が振り返ったストライカーが自分の任務を見事遂行。桐光が16年ぶりの国立切符を劇的に引き寄せる結果となりました。
「ギリギリの所まで選手が諦めないで戦った結果」と佐熊監督が評価した桐光は、細部までよく鍛えられているなという印象を改めて持ちました。特に再三のシュートブロックは、必ず最後まで目線を切らずにボールへ飛び込んでいることの証。これは、例えばJリーグクラスのディフェンダーでもそこに課題を抱える選手もいるほどで、この徹底は日頃のトレーニングの賜物なのは間違いありません。
いよいよ見えてきた頂点にも「たぶん選手たちは『前評判が高い』とか『優勝候補だ』とか思っていないと思う。僕らは常に挑戦者の気持ちは持っている」と佐熊監督。「組織を創ることで個が伸びてきた。1試合1試合自信を持ってピッチで戦ってくれている」(佐熊監督)桐光が、"候補"から脱却する瞬間は着々と近付いています。        土屋

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