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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2012年10月15日

J2第38節 甲府×湘南@中銀スタ

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kofu1014.jpg甦る激闘の記憶。2009年J2第49節。3試合を残して甲府4位、湘南3位で迎えたデスマッチ。湘南が2点を奪い、甲府が2点を返し、最後はアディショナルタイムに坂本絋司が挙げたゴールが決勝点に。アウェイチームが歓喜に浸りました。あれから3年。共に昇格と降格を経験した両者が、堂々の1位と2位という立場で相対します。
19戦無敗のJリーグタイ記録を継続中の首位甲府。引き分け以上で昇格が決定する中、次節から福岡、愛媛とアウェイ連戦が待ち受けているため、「ホームで決めたいという気持ちが強かった」とダヴィが話したように、今日で決着を付けるための90分間に挑みます。
4試合勝ちなし。この終盤戦に来て喫した悪夢の3連敗。愛媛とホームで対戦した前節はスコアレスドローながら、4試合ぶりの勝ち点を獲得。首位からの3ポイント奪取で、再び流れを取り戻したい所です。
選手入場時、赤と青の風船が揺れたホームゴール裏に、緑と青の真ん中にハートを浮かび上がらせたアウェイゴール裏。16643人の超満員。「J1やヨーロッパのような雰囲気」(湘南・曹貴裁監督)の中、湘南のキックオフで大一番は幕を開けました。
勢いを持ってゲームに入ったのはアウェイチーム。2分に高山薫がミドルを豪快に打ち上げると、5分には高い位置でボールを奪った大槻周平もミドルにチャレンジ。「何も怖がる必要はないと思っていた」(菊池大介)湘南が、パワーを持って立ち上がります。対する甲府は、「もう少し繋ぎたかったが、前からの圧力が強く、繋ぐ回数が少なかった」と城福浩監督が振り返った通り、ダヴィへの単調なロングボールが増える展開に。これには遠藤航を中心とした湘南3バックが余裕を持って対応し、モンスターを封殺することに成功します。
さらに15分過ぎからは、永木亮太を中心軸にポゼッションでも優位に。17分にはその永木がミドルを枠内へ飛ばし、22分には遠藤のクサビから、大槻のポストを経由してキリノがバーを越えるミドル。「自分たちのサッカーを立ち上がりから甲府より出せていた」という菊池の言葉にも頷けるような、湘南の時間帯が続きます。
ところが、一瞬で牙を剥いて飛び掛かった甲府。25分、ダヴィとの連携から左サイドを突き進んだフェルナンジーニョは、持って持ってフィニッシュ。GKの阿部伸行を破ったボールは、戻りながらのクリアという遠藤のスーパープレーに阻まれましたが、趨勢に左右されない脅威を相手の喉元に突き付けました。
そんな中で生まれた先制点。緑と青の欣喜雀躍。28分、菊池を起点にキリノは右へ。古林将太のクロスはファーまで届き、「中は全然見えていなかった」という高山が頭で折り返した先には、この大一番でCFを託された大槻。頭で押し込んだボールが揺らすゴールネット。ルーキーの大仕事で、湘南がスコアを動かしました。
ペースを掴めないまま、ビハインドを負うことになった甲府。失点直後にも津田琢磨のミスからキリノに独走を許し、盛田剛平のカバーで事無きを得たものの、なかなか流れに乗り切れません。40分には伊東輝悦のパスを柏好文がスルーで繋ぎ、ダヴィが強引に打ち切ったシュートも、大野和成は懸命に体を寄せ、阿部伸行がしっかりセーブ。「前半はプラン通りというか、選手がしっかりタスクを実行してくれた」と曹監督。1つのゴールが生まれた前半は、"湘南の45分間"で終了しました。
ハーフタイムに「うまくいかなくても我慢しろ!必ずチャンスは来る」と選手を送り出した城福監督。そのチャンスが到来したのは50分。右サイドでクリアボールを拾ったフェルナンジーニョは、そのままクロスを中へ。マーカーを引きつれた柏を越え、届いたファーサイドに走り込んでいたのは井澤惇。そのままインサイドで叩いたボールは、甲府サポーターにとって目の前のゴールネットへ突き刺さります。「色々なプレッシャーはあった」という10番の今シーズン初ゴール。甲府が追い付きました。
しかし、スタメン平均年齢23.18歳の若き"暴れん坊"は冷酷に。失点からわずか84秒後、鎌田翔雅のフィードに走り、一度はロストしかけた菊池が「なんとかコバショーに返そうという気持ちで」足を伸ばすと、拾った古林のクロスをニアサイドに頭でぶち込んだのはキリノ。「前への推進力を失わずに」(曹監督)すぐさま取り返した湘南。あっという間に均衡は崩れました。
2分と持たなかったスコア。53分、永木を起点に湘南のカウンター。キリノの左クロスは永木の頭に当たりきらなかったものの、一気に傾きかけた形勢。56分に城福監督は決断。CBの津田を下げて石原克哉を左SHへ送り込み、井澤をボランチへ、山本英臣をCBへ、それぞれスライドさせる布陣にシフトします。
その3分後、はじまりはフェルナンジーニョのFK。直接狙ったキックはカベに当たりましたが、盛田、ダヴィと繋いで、柏がシュート。遠藤が体でブロックしたボールに、反応したダヴィと大槻がもつれて倒れると、村上伸次主審はPKを宣告します。キッカーはもちろんダヴィ。「本当にものすごいプレッシャーがあった」中、蹴ったボールは阿部もわずかに及ばず。「自分が"終わっていない"ということを証明したかった」今シーズンで、積み上げて積み上げた30ゴール目に小瀬沸騰。両雄相譲らず。点差はまたも霧散しました。
以降はオープンな展開となりましたが、そうなると甲府の"個"が躍動。64分、井澤、柏と回したボールからダヴィのドリブルシュートは枠の右へ。65分、ダヴィの狡猾なラストパスはフリーの井澤に渡るも、シュートは枠の左へ。66分、湘南のFKをキャッチした荻晃太が柏へ繋ぎ、フェルナンジーニョが放ったシュートは、戻った永木がブロック。手数を繰り出します。
ラスト20分はお互いに配置を入れ替え、目指す勝ち点3。70分、甲府は伊東に替えて松橋優を左SHに投入し、石原が井澤とドイスボランチを構成。73分、湘南は先制ゴールの大槻と古橋達弥を入れ替え、キリノが最前線に。シャドーには古橋と一列上がった永木が入り、60分に投入されていた坂本が一列下がって、ハン・グギョンとボランチに並びます。
76分、フェルナンジーニョの右CKを佐々木翔が合わせるも、ボールはバーの上へ。77分、佐々木が右へサイドチェンジを送り、フェルナンジーニョを挟んで、福田健介の上げたクロスにDFが中途半端に触ると、松橋が飛び込むも阿部が好セーブで回避。手数はやはり甲府。ただ、湘南も前へと出ていくパワーは衰えず、勝敗の行方は見えないままで最後の10分間へ。
80分に城福監督が選んだラストカードはドウグラス。井澤がベンチへ下がり、山本が再びボランチへ。85分に曹監督が選んだラストカードは島村毅。古林との交替で、島村は右CBに入り、鎌田が右サイドに張り出します。流れの中からは双方フィニッシュを取り切れず、90分にフェルナンジーニョが枠を越えるシュートを放つと、「89分までは勝ちを狙って、そこから先は勝ち点1を視野に入れて」(山本)、今日達成すべき最大の目標にベクトルを合わせる甲府。
4分が掲示されたアディショナルタイムは湘南の時間。92分、山本のトラップ際を狙ったハン・グギョンのヘディングは上がっていた島村に届き、盛田ともつれてシュートは打てませんでしたが、PKにはならず。曹監督は猛抗議。95分、古橋の右FKは石原がクリア。96分、古橋の右CKも石原がクリア。96分、古橋の左CKも石原がクリア。
そして薄暮の秋空へ吸い込まれたホイッスルは、昇格を告げるファンファーレ。「勝負強さという部分では、ここ数年で一番90分間強い気持ちを持って戦うことのできるチーム」とキャプテンの山本も言い切った"城福ヴァンフォーレ"の結実。"祝J1復帰 そしてその先へ"。甲府がJ1の舞台に1年で復帰を果たす結果となりました。
選手が口々に「悔しい」と話していた湘南にとっては、それでも胸を張れる内容だったのではないでしょうか。「今日プレーした選手は、我々が1年間やってきたスタイルを、最初から最後まで実行しようとしてくれた」と曹監督。残された4試合に、自動昇格となる2位以内を懸けて臨みます。
甲府は昇格と同時に20試合連続無敗のJリーグ新記録を樹立。これについて城福監督は「1つ1つの悔しさを骨身に染み込ませてきた全員の成果」と表現しました。決して前評判が高かった訳ではなく、ハーフナー・マイクやパウリーニョ、ダニエルなど主力も引き抜かれた中、ダントツの成績で達成したJ1復帰。そのチームを率いた城福監督を「話がうまいかはわからないけど(笑)、建前とかは言わないし、言葉がガシッとぶつかってくる。そういうものが伝わってくる人」と評したのは山本です。武骨な指揮官と武骨なキャプテンの間に垣間見えた、確固たる信頼関係。そこにこのチームの強さが凝縮されていたような気がしました。       土屋

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