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大津高校が真剣に取り組む部内競争の工夫。福島悠士と開地心之介が語る『校内リーグ』の意義 プレミアリーグWEST 大津高校×サンフレッチェ広島F.Cユースレビュー
土屋雅史コラム by 土屋 雅史「校内リーグ」からプレミアの主力に駆け上がった大津高校・福島悠士
そのリーグ戦の存在を知るきっかけになったのは、3月のサニックス杯を取材していた時のことだ。大津高校のボランチの位置で、印象的なプレーを披露していた福島悠士に話を聞いていると、そのフレーズが飛び出した。
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「自分は去年の一番最初は『校内リーグ』という、県の2部リーグの試合に参加できない人たちと一緒に戦うリーグ戦でプレーしていて、そこから県2部、県1部、プリンスリーグとカテゴリーが上がっていったので、自分では去年の1年間で成長できたと思います」
耳慣れない『校内リーグ』という大会名。さらに福島から詳細を伺っていくと、それが非常に興味深い取り組みだということが、少しずつわかっていく。
「『校内リーグ』というのはサッカー部の中の“青白戦”を、ちゃんとした運営も付けて、バチバチにやるリーグ戦のことです。それぞれのチーム名やスローガンもチームのキャプテンを中心に決めて、1年間そのチームでリーグ戦を戦っていくんです」
なお、“青白戦”というのは、一般的なところで言う“紅白戦”のこと。大津高校は青をチームカラーに定めているため、青チームと白チームが戦う練習内のゲームを“青白戦”と呼んでいるというわけだ。
現在の大津高校サッカー部は、プレミアリーグWEST、プリンスリーグ九州1部、熊本県リーグ1部、同2部の4カテゴリーにチームを送り込んでおり、週末はそれぞれのリーグ戦を戦っているのだが、この各カテゴリーの試合メンバーに入らなかった選手たちで真剣勝負を繰り広げるのが、『OHZU校内リーグ』ということになる。
「去年は県2部の試合がある週は、そっちの方に出ることもありましたけど、だいたいは校内リーグの試合に出ていました」と話すのは開地心之介。この選手もサニックス杯では右サイドバックとして好プレーを連発していたものの、去年までは『校内リーグ』が主戦場だったそうだ。
サッカー部としての公式な活動であり、もちろんコーチングスタッフも視察しているため、ピッチ上の選手たちにとってみれば大事なアピールの機会。『校内リーグ』の各試合が放っている熱量は、とにかく高いという。
「同じチームの選手同士がライバルになって戦う中で、しっかりやるのは当たり前ですし、コーチ陣にもたくさん見てもらえるので、そこで良いプレーができたら自分のランクアップにも繋がりますし、そういう意味では全員が『絶対に勝つ』という想いを持って試合していると思います」(開地)
「試合は相当盛り上がりますね。会場は学校のグラウンドでやることも多くて、土のグラウンドだからこそ燃えるところもありますし、コーチ陣もみんな見に来るので、そこで目立ったらすぐにカテゴリーも上がりやすいこともあって、相当気合は入ります」(福島)
昨年度は7チームが45分ハーフで争うレギュレーションを採用していたが、今年度は部員の増加に伴って、チーム数も9チームに増えた分、試合時間は35分ハーフに変更されることに。より良い競争の環境を整えるため、スタッフ陣も試行錯誤を繰り返しながら、選手たちに実戦経験を積ませる工夫を凝らしている。
校内リーグには学校の生徒も応援に駆け付ける
昨シーズンの6月までは『校内リーグ』で同じ境遇の仲間たちと切磋琢磨し、そこから地道にカテゴリーを上げていったという福島だが、最上級生となった今シーズンはここまでプレミアリーグの全11試合にスタメン出場を果たし、第10節のガンバ大阪ユース戦では初ゴールもマーク。いまや不動のボランチとして、チームに欠かせない主力の立ち位置を確立している。
「最初の3試合ぐらいはプレミアのスピード感に圧倒されて、90分を通して何もできなかったんですけど、それ以降は守備面でもビルドアップの面でも慣れてきて、結構やれてきているので、手応えはあります。ただ、まだチームの勝利に直結するプレーで貢献できていないので、自分のプレーで勝ちを掴めるように、頑張っていかないとなと思います」(福島)
2024年は1年を通じて『校内リーグ』でプレーしていた開地は、今季の開幕戦の静岡学園高校戦でプレミアデビューを堂々と飾ると、3節までは右サイドバックとしてスタメン出場が続く。以降は負傷離脱を強いられたものの、復帰してからは終盤にチームのギアを上げる存在として、途中出場の貴重なカードとしての役割をこなしている。
「初戦の静岡学園戦は自分の思うようなプレーができなくて、『これがプレミアの公式戦なんだな』と思ったんですけど、2節からはしっかりボールも持てましたし、『思っていたよりはできるな』と感じました。去年の校内リーグは45分ハーフを土のグラウンドでもやるので、そこで体力も付きましたし、校内リーグは最後の最後で相手に負けたくないという気持ちが強く出るリーグなので、そこがプレミアでも最後のところでクロスを上げさせないことや、シュートを打たせないという部分に繋がっているかなと思います」(開地)
この日のサンフレッチェ広島F.Cユース戦にも、2人はそろって出場。福島はドイスボランチの一角に入り、巧みにボールを引き出して攻撃のリズムを創出しつつ、持ち味の球際ではバチバチにやり合う姿勢を打ち出す。一方、ベンチスタートだった開地は終盤に右サイドバックへ解き放たれ、短い時間でも攻守に奮闘。試合は1-2で敗れる格好となったが、高校年代最高峰の舞台でも、『校内リーグ』で培ってきた力が通用することを、自らのプレーで証明し続けている。
ピッチサイドのスタンドからは、おそらく『校内リーグ』からのステップアップを狙っているであろう選手たちが、声援を送り続けていた。サイドバックとして彼らの目の前を上下動し続けた開地は、「僕も野口(悠真)さんや大神(優斗)さんを近くで見て、『校内リーグからのし上がろう』という気持ちを持ちながら応援していました」と話しながら、今の自身が部員に与える影響をこう話してくれた。
「自分が校内リーグからカテゴリーを上げて、今はプレミアリーグでやらせてもらっていることも、スタンドにいる選手は知っていますし、『開地さんもああいうふうに校内リーグで頑張ったから、今はプレミアに出れているんだな』と思ってくれて、日々の練習や校内リーグでしっかりやってくれたら、今の1,2年生もレベルアップした状態で来年のプレミアも戦えると思うので、そういう意味では自分が校内リーグで活躍できて、今はプレミアでプレーしているというのは、とても大きなことかなと感じています」
その想いは福島も同様。謙虚な性格も相まって、やや遠慮がちではあったが、最後ははっきりと自分の言葉で、『校内リーグ』出身者の矜持を語ってくれた。
「校内リーグはなかなかプリンスや県リーグの試合に出られない人も多いので、モチベーションを保つのは難しいと思います。でも、自分も校内リーグからこうやってプレミアまで上がれたので、自分で言うのもあれですけど、目標になったらいいなとは思いますし、『自分もああなりたい』という存在として、多少なりとも影響を与えられているのかなと思います」
百戦錬磨の平岡和徳テクニカルアドバイザーや、情熱の指揮官・山城朋大監督を筆頭に、大津高校のコーチングスタッフは、各部員たちの努力の質量を真剣に見定めている。今ある環境で、真摯に、ひたむきに、サッカーと向き合える選手には、必ずチャンスがやってくる。『校内リーグ』から飛び出してくる次の福島は、次の開地は、果たして誰だ。
大津高校が誇る『校内リーグ』の星・開地心之介
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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