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サッカー フットサル コラム 2025年5月30日

伝統の「14番のキャプテン」を託された17歳の覚悟。前橋育英高校・竹ノ谷優駕が明るくしなやかに発揮するリーダーシップの行方 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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前橋育英高校・竹ノ谷優駕

上州のタイガー軍団にとって、特別な背番号として知られる14番とキャプテンを任されたからには、もうこの1年を全力で駆け抜けるしかない。チームのさらなる成長と、個人のさらなる成長。あえて“二兎”を追い求めながら、この仲間と必ず国立競技場のピッチへ戻ってやる。

「今年はインターハイ、プレミア、選手権と良い結果を残せるようにするのが、自分の高校生活の最後の目標でもあるので、そこをしっかりみんなで表現できたらなと思っていますし、背番号の重みもとても感じているんですけど、その中でも自分のプレーをしっかり出せるようにというのは意識してやっています」

2025年を戦う前橋育英高校の『14番のキャプテン』という重責を担う、グループを明るい空気感で牽引できる17歳。竹ノ谷優駕は紆余曲折のあった高校生活のすべてを懸けて、勝負の1年間をひたすら前へと突き進む。

「いろいろな運もあって、チャンスが回ってきたことで試合に出られたので、頑張った成果もあったなと思いますし、神様も見てくれていたんだなって感じました」。日本一に輝いた昨年度の高校選手権を、竹ノ谷は少しだけ懐かしそうにそう振り返る。

1年の夏に後十字靭帯断裂の大ケガを負ってしまい、ほぼ1年近い離脱期間を強いられたこともあり、苦しい時間が続いていたものの、昨年の夏に戦線復帰すると、左サイドバックとして定位置を確保。選手権では柴野快仁が体調不良で欠場したことで、2回戦以降はボランチで起用されたが、もともとの本職でも存在感を打ち出し、全6試合にフル出場。全国制覇を果たしたチームの中でも、大事な役割を完璧にこなしてみせた。

迎えた高校ラストイヤー。竹ノ谷のリーダーシップは、キャプテンを務めたU-17日本高校選抜の活動でも発揮される。各選手とコミュニケーションを取りながら、急造の選抜をきっちりまとめ上げると、J-VILLAGE CUPでは大会優勝も経験するなど、確かな結果も引き寄せる。

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すると前橋育英でも、山田耕介監督は竹ノ谷をキャプテンに指名。さらに前年度は石井陽(現・明治大)が付けていた、チームをボランチの位置で束ねる絶対的な中心選手に渡される背番号14も、同時に背負うこととなる。

実は入学前から憧れていた“先輩”がいる。2022年のインターハイで日本一を獲得した代の中心選手であり、石井同様に『14番のキャプテン』という立場にあった徳永涼(現・筑波大)を、竹ノ谷は強く意識しているという。

「自分は徳永涼さんに憧れて育英に来たので、徳永さんを超えられるような存在になっていけたらなと思っています。直接は見ていないので、徳永さんがどういうタイプだったかはわからないですけど、厳しい姿勢と声で引っ張るというイメージがあるので、自分もそっちをやりつつ、去年の(石井)陽さんを見ていて、チームワークも本当に大事だなと感じたので、そこをうまく合わせながらキャプテンをできたらなと思っています」

もちろん憧れは憧れだけれど、自分にしか確立できないキャプテン像があることも、本人はよくわかっている。元気に、にぎやかに、はつらつと。ポジティブなパワーを周囲に浸透させることができるのも、この人の大きな魅力だと言っていいだろう。

 

今季のここまでは、悪くない時間を過ごしている。県新人戦では決勝で桐生第一高校を倒して、県内一冠目を獲得。プレミアリーグでも9試合を終えて、暫定3位と好位置に付けており、竹ノ谷自身もフル出場を継続中。ボランチの位置から攻守にバランスを取りつつ、チームを鼓舞し続けている。

インターハイ予選による中断前のラストゲームはプレミアEAST第9節。昌平高校との高体連強豪対決も、セットプレーからの1点を守り切って、アウェイで勝点3をゲット。これで無敗試合も5試合へと伸ばしたものの、キャプテンに現状へ満足する雰囲気は微塵もない。

「若干昌平ペースの時間もあった中で、それを乗り越えたら自分たちのペースになることはわかっていて、その通りになったんですけど、もっと決めるべきところで決め切れないと、試合の流れや展開もキツくなってくると思うので、そこはこれからの課題にしたいですね」

「自分も全部を出し切れているかと言われたら、まだ全然足りないですし、真ん中でボールを受ける部分はもっと出せると思うので、そういうところはさらに経験を積んで出せるようにしていきたいですし、守備の部分は自分のストロングポイントでもあるので、もっと強度高くやっていきたいなと思っています」

チームも、自分も、まだまだこんなものではない。常に課題を抽出しながら、それを乗り越えるための術を探し、見つけ、改善していく。キャプテンとしても、いちサッカー選手としても、ちゃんと携えている向上心が頼もしい。

絶対に負けたくない“永遠のライバル”の存在も語り落とせない。年代別代表の招集歴もあり、今季はプリンスリーグ北信越1部で首位を快走するアルビレックス新潟U‐18のキャプテン、竹ノ谷颯優。名字からもわかるように、優駕にとっては双子の弟だ。

「小学生のころはケンカばっかりだったんですけど(笑)、今は結構仲が良いですね。向こうも10番でキャプテンなので、そこは自分も刺激をもらっていますし、あっちが活躍したらこっちも負けないぐらい活躍したいですし、そういうところは2人でもコミュニケーションを取りながらやっています」

「今は新潟のトップチームの方からも良い評価を得られているみたいですね。ゆくゆくは一緒に代表でできたらいいですし、それが親孝行にもなると思うので、お互いにライバルとして頑張っていきたいです」

群馬と新潟。戦う場所は離れているけれど、それぞれが今と真摯に向き合って、さらなるステップアップを狙い続ける。その先で、同じユニフォームに袖を通し、同じピッチに立つ日が来たら、それは間違いなく最高だ。

ここからはインターハイ予選が幕を開ける。昨年度は準決勝でPK戦の末に敗れ、県7連覇を逃しているだけに、タイトル奪還は至上命題。それは竹ノ谷だけではなく、チーム全員がはっきりと理解している。

「インハイ予選が始まれば、スタメン争いもまたイチからのスタートになると思うんですけど、そこはみんなでライバル意識を持って良い競争をしたいですし、県内にも強いチームはたくさんいて、そういうチームが自分たちを倒しに来ると思うので、そこを自分たちが跳ねのけるぐらい強くなって、しっかり優勝したいと思っています」

“2つの重責”に対して抱いていた重圧は、少しずつ格好のモチベーションに昇華されつつある。誰もが担えるわけではない、前橋育英の『14番のキャプテン』を任されている、エネルギーに満ちたチームリーダー。竹ノ谷優駕が2025年に忍ばせている覚悟は、そう簡単に揺らがない。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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