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ただ、プラン通りにいかなかったのは、前半のプレッシングの掛け合いの中で京都の圧力に押されてゴール前に釘付けとされ、また、相手のプレッシャーの強さのためロングボールを正確に蹴れず、ボールを支配され続けて2点を失ってしまったことだった。
2点のビハインドを追う後半は、東京Vはメンバーも入れ替えて、中盤でパスをつなぎ、ポジションを入れ替えながら選手たちが次々とスペースに顔を出す攻撃に切り替えた。
「その分、前線で人数が足りなくなるというリスクがある」と城福監督。
だが、このコンセプトのチェンジが功を奏して、60分を過ぎるころからは東京Vが京都の守備を切り崩し、前半とは打って変わって京都をゴール前にくぎ付けにした。
そして、78分に交代で入った山見大登がドリブルで仕掛けてPKをゲットして1点差とすると、最後は左サイドのスローインから稲見哲行が入れたロングボールを綱島悠斗が頭でつなぎ、齋藤功佑が中を見てグラウンダーのクロスを入れ、相手の背後を取った染野が決めて同点に追いついた。
つまり、前半の2失点という想定外の出来事はあったものの「前半は戦えるメンバーでバトルをして、後半に入ってパスをつなぐ攻撃サッカーに切り替える」というのは城福監督のプラン通りの展開だったのだ。
新潟戦、京都戦と、後半になって攻撃力を挙げて土壇場で追いつくという展開は(失点の部分は想定外としても)、大枠としては監督の想定通りの展開だった。だから、城福監督は記者会見の席でも、余裕を持って試合を振り返ることができたのだろう。
ただ、5試合を終えて、東京Vは0勝3分2敗。依然として勝利がなく、17位と降格圏ぎりぎりのところにいる。
前半、パスをつなげないのを覚悟のうえでバトルを展開する中で失点を最小限に防ぐこと。あるいは、全体としては守備的な戦いをするにしても前半のうちから攻撃の形をより多く作ること。そして、後半だけでなく、前半のうちからもっとパスをつなぐサッカーを出来るようにすること……。
そして、最終的には2つの戦い方をはっきり区別するのではなく、同じメンバーでも試合の展開によって切り替えながら90分を通して戦えるようにする。
結果は出ていないが、東京Vにとって「課題」は明らかだし、試合を積み重ね、経験を積むほどに、若い選手たちは試合の進め方を覚えていくはずだ。
結果が出ていないことで動揺することなく、今の戦いを続けていけば、間違いなくチーム力は上がっていくはず。90分間ハードワークを惜しむことなく戦い、そして、リスクを取りながらもしっかりとパスをつないで攻める。そういう志の高いサッカーを、これからも迷うことなく続けていってほしいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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