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最終ラインのすべてと守備的MFで機能するゴメスの汎用性は、イングランド代表でも貴重なアイテムだ
イングランド代表は、依然として優勝候補である。1966年に自国で開催したワールドカップ以来、58年ぶりのタイトル獲得の可能性は決して小さくない。
ハリー・ケイン、フィル・フォーデン、ブカヨ・サカを擁する前線は世界屈指の破壊力を有し、ジュード・ベリンガムとデクラン・ライスが軸となり、トレント・アレクサンダー=アーノルドとコビー・メイヌーが彩を加える中盤も非常に魅力的だ。
また、右ウイングとトップ、二列目中央で高精度のパフォーマンスを維持するジャロッド・ボーウェン、正確かつ距離の出るパントに定評があるジョーダン・ピックフォードなども、計算できる戦力といって差し支えない。
ただ、鉄壁と考えられていた両サイドバックには負傷者が続出している。
リース・ジェイムズ、キーラン・トリッピア、カイル・ウォーカー、ルーク・ショー、ベン・チルウェル……。彼らの肉体が悲鳴を上げた。5選手とも本大会に間に合うとはいえ、トリッピアとチルウェルは膝に、ジェイムズとウォーカー、ショーは大腿部に不安を抱えながらの闘いになるリスクもある。
だからこそ、複数のポジションをこなせるリーヴァイ・コルウィルとリコ・ルイスは必要だ。そしてもうひとり、ある男がクロースアップされている。
ジョー・ゴメスだ。
近年は前十字靭帯、アキレス腱、膝蓋骨などの負傷に苦しみ、所属するリヴァプールでも定位置をつかめないどころか、ベンチ入りすら許されない日々が続いていた。28試合に出場した2019/20シーズンを最後に、20/21シーズンは7試合、翌シーズンは8試合。フィルジル・ファン・ダイクのパートナーを、イブライマ・コナテやジョエル・マティプに譲っていた。
しかし、負傷が完治した昨シーズンは21試合に、今シーズンは28節終了時点で24試合に出場し、その実力を改めて見せつけている。得意とするセンターバックやライトバックだけではなく、アンディ・ロバートソンとコスタス・ツィミカスが不在の場合はレフトバックとして、さらには守備的MFでもユルゲン・クロップ監督の期待に応えた。
「ケガで休んでる間は心のバランスを崩しもしたけれど、監督はつねに気遣ってくれた。彼の優しさには感謝するしかない」
3月22日からのFIFAウィークでイングランド代表に3年5か月ぶりの復帰を遂げたゴメスは、クロップ監督のサポートに胸を熱くしていた。
カタール・ワールドカップの4バックは、右からウォーカー、ジョン・ストーンズ、ハリー・マグワイア、ショーが基本だったが、両サイドバックは先述したとおりで、CBもともにコンディションに一抹の不安がある。
いま、ゴメスの実力を再認識するときがやって来た。5月23日で27歳。選手として脂が乗る年齢を迎え、負傷欠場している間に精神的タフネスも身につけた。
ヨーロッパ選手権で完全復活を世界にアピール──。素敵なシナリオじゃないか。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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