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だが、フォーバックとスリーバックのどちらが「原点」であるとは言えない。
もともと、女子代表は長い間フォーバックで戦っていた。男子に比べると体も小さく、運動量の少ない女子選手ではピッチの幅を3人でカバーすることは難しいとも言われていた。
池田太監督も就任直後は従来のフォーバックで戦っていた。だが、ワールドカップまで1年を切った2022年秋になってスリーバックに切り替え、当初は慣れないシステムに戸惑いがあったものの、ワールドカップまでに間に合わせてグループリーグでスペインを破るなどの大健闘につなげた。
そして、ワールドカップ修了後には熊谷をアンカー・ポジションに上げたフォーバックに挑戦を始めたのだ。南萌華と高橋の両センターバックの成長によって、熊谷をMFに上げることができるようになったのだ(熊谷はヨーロッパのクラブではボランチとしてプレーする方がはるかに多かった)。
一方、かつて池田太氏が監督を務めて「世界一」に輝いた年代別代表ではスリーバックで戦うことも多かったので、若い選手たちにとってはスリーバックの方が「原点」なのかもしれない。
いずれにしても、2試合を異なったシステムで戦い、そのシステム変更が功を奏してオリンピック出場権を獲得した経験は大きい。
男子の日本代表は、森保一監督就任後、何度もスリーバックに挑戦していたが、うまく機能することはなかった。だが、2022年のカタール・ワールドカップを間近に控えた準備試合でスリーバックが機能し、本大会ではハーフタイムでのシステム変更が成功してドイツやスペイン相手に逆転勝ちを収めることができたのだ。
女子代表(なでしこジャパン)も、オリンピックを前に2つのシステムを併用できるようになった。次の機会には、試合の途中でシステムを切り替えることにもトライしてほしい。中2日の厳しい日程で強豪と戦うパリ・オリンピックでは、日本の大きな武器となることだろう。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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