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山根視来と登里享平という両サイドバックが移籍し、センターバックも頼みのジェジエウが欠場中。守備ラインには大きな不安があるのだ。
山東戦でのその不安が的中してしまったものの、パス自体は回っていた。
だが、湘南戦ではパス回し自体がうまくいかなかった。
湘南は“川崎対策”を完璧にこなしていた。川崎のアンカー橘田健人にボールが渡ると、湘南のツートップのルキアンや鈴木章斗がしつこくチェック。さらに、インサイドハーフの脇阪や山本悠樹にボールが入った瞬間に、すぐに激しくチャージして川崎のパスを分断してきたのだ。
相手のストロングポイントを分析して対策を立て、それを選手たちが忠実に遂行するのがJリーグのサッカーなのだ。川崎のパス回しは、当然、Jリーグでは研究しつくされているから、簡単にそれを許してもらえないのだ。
ACLで対戦するアジアのチームは個人能力の高い選手は多いものの、戦術的な緻密さには欠ける。また、川崎との対戦経験がない(少ない)。だから、川崎としてはパスが回しやすいのだ。
では、Jリーグでも川崎が再びパス・サッカーで相手を圧倒する姿を見ることはできるのだろうか?
鬼木達監督は強気だ。山東戦敗戦後にも「今のスタイルは変えない」と断言したし、湘南戦の後にも「今のメンバーに期待している」と語った。
たしかに、昨年はかなり苦しんで順位的にも8位と低迷したものの、リーグ戦終盤には橘田、脇阪や瀬古樹などが成長して、奇麗なパス回しができるようになっていたし、絶対のキープ力で川崎の中盤を支える家長昭博も健在だ。
さらに新加入の山本も早くも川崎のサッカーに順応しており、素晴らしい動きを発揮しているし、同じく新加入の左サイドバック三浦颯太も攻撃参加でクレバーさを見せている。
ポジティブな点も多いのだ。試合を重ねていくことで川崎のパス・サッカーは復活できるはずだ。後は、不安を抱える最終ラインが安定すれば、川崎も優勝争いに加わってくるはずなのだが……。
湘南戦では19歳の高井幸大がセンターバックとして先発した。高さとスピード、クレバーさを兼ね備えた期待のDFなのだが、やはり経験不足。前半は消極的な守備でファウルも多かった。それでも、後半には見違えるようなプレーを見せてラインブレークして相手ボールを積極的にカットし、その潜在能力の高さを見せた。
「カウンター・プレス」型と「ポゼッション」型の競り合いが続くことによって、Jリーグのサッカーの水準はさらに上がっていくことだろう。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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