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モイーズ(写真)率いるウェストハムは、今夏の移籍市場で約225億円もの巨額を手にしている
現地時間8月8日、ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズ(以下ウルヴズ)から残念な情報が届いた。
ジュレン・ロペテギ監督退任──。
予想された動きではある。中華人民共和国のスポンサー企業『復星国際』が業績不振に陥り、資金を投下できなくなったからだ。
エースのルベン・ネヴェスをアル・ヒラルに売却したのは経済的な理由であり、マテウス・ヌニェスやペドロ・ネトといったタレントに好条件のオファーが届けば、スポンサーの事情が最優先される。
したがって、ロペテギの選択は正解だ。なぜならウルヴズは、もはや闘える状態ではない。なお、ロペテギ退任の翌日、ガリー・オニール(前ボーンマス)が新監督に就任した。ウルヴズ上層部も、監督交代は想定内だったようだ。
さて、エヴァートンも経済的な危機に直面している。直近3シーズンの赤字が3億7200万ポンド(約662億円)にもおよび、フィナンシャル・フェアプレーに抵触した疑いが濃くなった。
当然、人員整理を迫られる。ドミニク・カルバート=ルーイン、ドワイト・マクニール、アレックス・イウォビといった人気銘柄に届くオファーは、赤字を補填するためにも受け入れざるをえない。
デマライ・グレイは退団を直訴した。
ショーン・ダイチ監督が、ロペテギと同じ選択肢を考えていたとしても責められはしない。
経済的なダメージを負ったクラブにとって移籍金の高騰は深刻であり、今夏はサウジアラビアという予期せぬ敵も現れた。市場は予断を許さず、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督、リヴァプールのユルゲン・クロップ監督ですら、中東に警戒の色を強めている。
一方、ウェストハムは潤っている。デクラン・ライスをアーセナルに、ジャンルカ・スカマッカをアタランタに放出し、1億2650万ポンド(約225億円)もの大金を手にした。
ただ、市場の前半は後手を踏むケースも少なくなかった。デイヴィッド・モイーズ監督が、「なにをノロノロしているのだ!?」と不満を露わにするほど、7月2日付でスポーツディレクターに就任したティム・シュタイテンの仕事はスピード感を欠いていた。
スコット・マクトミネイとハリー・マグワイア(ともにマンチェスター・ユナイテッド)、ジェイムズ・ウォード=プラウズ(サウサンプトン)に対して推定市場価格をはるかに下まわる額を提示し、けんもほろろに断られもしている。
移籍市場に詳しいメディアの話を総合すると、シュタイテンが示した金額は “お笑い種” だったという。その後の交渉により、マグワイア、ウォード=プラウズとは合意に至る公算が大きいとはいえ、モイーズはやきもきしたに違いない。
ディレクターの出来・不出来はチームの運命を左右する。シュタイテンは “不退転の覚悟” でウェストハムを、モイーズを支えなくてはならない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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