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サッカー フットサル コラム 2023年7月27日

藤野あおばがW杯日本人史上最年少ゴールを記録。19歳の新星が見せる1年間の急成長の跡

サッカーニュース by 松原渓
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ワールドカップの舞台で、19歳の新星アタッカーが輝いた。

FIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド 2023 グループステージ第2戦で、日本はコスタリカに2-0で勝利。MF猶本光とMF藤野あおばのワールドカップ初ゴールで、2連勝をおさめ、グループステージ突破を決めた。

藤野は、初戦のザンビア戦でMF宮澤の先制弾をアシスト。2試合連続で先発に名を連ねると、立ち上がりからキレ味鋭いドリブルで日本の攻撃に推進力を与えた。

猶本が先制ゴールを決めた2分後の前半27分。相手陣内深い位置で、左サイドから流れてきたボールを受けた藤野は、フェイントを使ったターンでDFマリア・エリソンドを置き去りに。そのままドリブルでエリア内に進入すると、角度のない位置から、GKダニエラ・ソレラのニアサイドを強烈な弾道で打ち抜いた。


予測できないコースを狙ったスーパーゴールに、スタンドがどよめく。次の瞬間、チームメートが駆け寄り、ベンチからも仲間が飛び出してきた。

「得点を決めて一番嬉しいのは、やっぱりチームメートがすごく喜んでくれることですね」

試合後、藤野はつぶらな瞳を輝かせた。

このゴールが、ワールドカップで日本人史上最年少ゴール記録(19歳180日)となった。藤野は、その記録が生まれるかもしれないという情報を、試合の数日前に記者とのやりとりで知っていた。

「ちょっとプレッシャーだな、と思っていました(笑)」

はにかんだように藤野は明かし、快挙を達成した感想をこう続けた。

「もちろん、歴史に名を刻むことも大切なことですけど、チームが勝つことが一番大切だと思っています。若いながら試合に出場させてもらっていて、結果を出すことはすごく大事だと思っているし、(昨年の)U-20(ワールドカップ)の時になかなか得点に絡む機会がなく、焦りもあったので。これが、この1年の自分の変化だと思います。今大会を通してさらにステップアップしたいです」

【チャンスメーカーからゴールハンターへ】

スピードに乗ったドリブル、左右の強烈なシュート。それは、誰が見ても目をひく藤野の武器だろう。

一方、年代別代表から藤野を見てきた池田太監督が一貫して評価してきたのは、「攻守の切り替えの速さ、前を向く力強さ、ゴールに向かう推進力」だ。

昨年8月にコスタリカで行われたFIFA U-20女子ワールドカップでは、背番号10を背負って全6試合に出場し、準優勝に貢献。中盤で攻守を支えたが、ゴール(PKの1点のみ)の少なさが、藤野の心に悔いを残した。

それからの1年で、藤野は急成長を遂げている。特にアップデートされたのは、ゴールを奪う嗅覚やスキルだろう。

U-20ワールドカップから2カ月後の昨年10月にA代表に初招集されると、昨季のWEリーグでは11ゴール(20試合)を決めて得点王争いに加わった。マークが厳しくなればシンプルに味方を使い、判断力と突破力を相乗作用で高めた。

一方、所属する日テレ・東京ヴェルディベレーザの竹本一彦元監督(現強化部長)は、「力んで簡単なシュートを外すことがあるので、それを入れたらもう20点ぐらい取れる」と、さらなる伸び代も口にした。

実際、代表ではなかなか初ゴールが決まらず、葛藤もあった。今年4月の欧州遠征の際、藤野は心境の変化をこんなふうに明かしている。

「1対1で、どうやったら決められるんですか?って(田中)美南さんに聞いたら、『めげずに打ち続けることが大事』って教えてくれて。たしかに、1本外したからってもう打てない、という気持ちでサッカーはできない。チャンスがあれば足を振り続けることを大切にしたいと思います」

代表の先輩たちにアドバイスをもらい、海外と国内の間合いを考えてシュートスキルを磨き、1対1の場面ではゴールを奪うことを前提に仕掛けるようになった。

そして、待望の代表初ゴールは、ワールドカップ前の7月14日のパナマ戦で決まった。代表10試合目のゴールだった。

誰もが認めるシャイな性格の藤野だが、積極的に周囲とコミュニケーションを取るようになったことも大きいようだ。

パナマ戦後、ボランチのMF長谷川唯は、「もともと自分のプレーを出すのが上手な選手ですが、スタメンで出る回数が増えたことによって、話しやすくなって意識が変わったんじゃないかなと思います」と、変化を口にした。

また、守護神の山下杏也加は、「あおばは足の振りが海外の選手に近いし、キックを使い分けられる」と、その力が世界の相手にも通じることを予見していた。

そして今、藤野はワールドカップの舞台で一つずつ階段を登っている。見据えるのは頂点だ。

「日本を代表する選手として覚悟や責任が芽生え始めた中で、ワールドカップのピッチに立てているのはすごく嬉しいです。でも、今が楽しくても結果に結びつかなければ悔し涙で終わるだけだと思うので。チーム全員でやってきたことをしっかり実らせるためにも、最後は世界一という結果をつかみ取りたいです」

日本は7月31日のグループステージ第3戦で、一度も勝ったことがない宿敵・スペインと対戦する。

スペインにも、将来を期待される19歳の新星がいる。藤野がU-20ワールドカップの決勝で対戦し、2ゴールを沈められた快速FWサルマ・パラルエロだ。

「強い相手と分かっていて楽しくないわけないと思いますし、出し惜しみせずに戦いたい。相手の勢いに圧倒されずに自分の良さを出していけたらと思います」

個人としても、チームとしてもチャレンジと位置付ける大一番で、藤野はさらなるステップアップへのヒントを掴みにいく。

文・写真:松原渓
松原渓

松原渓

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。

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