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サッカー フットサル コラム 2023年5月24日

アルゼンチンで若者たちが覇を競う。眠れない日々がまた・・・

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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1979 U20ワールドユース マラドーナ

ワールドユースでアルゼンチンを優勝に導いたマラドーナ

「ピッチ、ボッコボコじゃん」

現地時間5月20日に開幕したU-20ワールドカップの第一印象である。いや、実は45年前も同じだった。

1978年ワールドカップを開催したアルゼンチンのピッチコンディションは、どこもかしこもよくなかった。とにかく、ボールがイレギュラーする。冬を迎えて芝生が根づかず、見た目も美しくない。

もちろん、諸事情は理解している。今回、アルゼンチンは代替開催だ。当初は2021年にインドネシアで開催されるはずだったが、新型コロナウィルスの世界的な流行で延期。さらにイスラエルの出場に不快感を示した(根底はパレスチナ問題)インドネシア国内で不満の声が噴出すると、FIFAが開催権をはく奪した。

しかも、この決定が下されたのは3月であり、アルゼンチンは南米予選を突破できなかった。準備不足は改めていうまでもない。劣悪なピッチコンディションが有望な若者たちの未来に嫌い影を宿さないことを、切に切に願うばかりだ。5月22日に行われたチュニジア戦で、イングランドのバジル・ハンフリーズは芝生に足を取られ、左足首を痛めている。

さて、U-20ワールドカップはかつてワールドユースの名称で開催し、79年は日本がホストカントリーだった。宮内聡、風間八宏、柱谷幸一、水沼貴史といったタレントを擁した日本は残念ながら1次リーグで敗退したものの、アグレッシブなスタイルで一定の評価を受けている。

そして、この大会のスーパーヒーローがディエゴ・マラドーナだった。

ベビーフェイスに丸っこいからだつき。スターのイメージに似つかわしくない。フットボールに限らず、当時の憧れの対象は、基本的にシュッとしていた。

いや、イメージなんか人それぞれだ。マラドーナがボールに触れるだけでスタジアム全体に期待が充満する。「どこからでもかかってきやがれ」といった余裕の表情を浮かべながら、強気のドリブルで次々に相手をかわしていく。数人のマークを引き付け、決定的なラストパス。ピンポイントのフィードをタッチライン際に、相手DFラインの背後に配する。

「あいつ、まだ19歳なのか」

丸っこいマラドーナのプレーに、筆者の目は驚きと感動で丸くなるしかなかった。

若き日のスーパーヒーローがリードし、後に横浜マリノス(現・横浜Fマリノス)でプレーしたラモン・ディアスが前線で輝いたアルゼンチンは、決勝でソ連(現ロシア)を下して優勝。マラドーナのパフォーマンスに興奮した多くの観衆がピッチに入り、国立競技場のトラックをヴィクトリーランで酔いしれる。当時の日本では考えられないほど、素敵なフィナーレだった。

また、マラドーナとディアス以外ではロナウジーニョ(ブラジル)、ダボル・シュケル(クロアチア)、ティエリ・アンリ(フランス)、アリエン・ロッベン(オランダ)などがU-20ワールドカップの経験を糧にフットボール界の主役を射止め、今大会にもスーパースター候補生がひしめいている。

コロンビアのセサル・アスプリージャ(ワトフォード)とウルグアイのファブリシオ・ディアス(リベルプール)、イタリアのトンマーゾ・バルタンツィ(エンポリ)は、今大会を契機にステップアップする可能性が非常に高い。

日本にも松木玖生(FC東京)、チェイス・アンリ(シュツットガルト)、北野颯太(セレッソ大阪)、福井太智(バイエルン)など、世界で闘える逸材が揃っている。

カタール・ワールドカップ終了からおよそ半年。今度は南米アルゼンチンで若者たちが覇を競う。眠れない日々がまた始まった。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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