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サッカー フットサル コラム 2023年3月31日

ナーゲルスマンとコンテ・・・それぞれの別離と感情的なしこり

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ユリアン・ナーゲルスマン

ユリアン・ナーゲルスマン前監督

「僕らの関係は信頼と感謝でつねに満たされていた。あなたは素晴らしい監督で、素晴らしい人間だ」(レオン・ゴレツカ)

「監督、すべてあなたのおかげだ。ありがとう」(ダヨ・ウパメカノ)

「わたしのキャリアのなかでもトップ3に入る名監督だった。感謝している」(ヨシュア・キミッヒ)

バイエルン・ミュンヘンに所属する選手のSNSから、ユリアン・ナーゲルスマン前監督を支持する声が聞こえてきた。ゴレツカは「ナーゲルスマンの仕事を成功に結びつけるのが僕らの仕事」とも付け加えていた。

スポーツディレクターのハサン・サリハミジッチとはことあるごとに対立していた。

インターナショナルウィークの最中にクラブより個人の都合(休暇)を優先した。

起用法をめぐってサディオ・マネと犬猿の仲に至り、トニ・タパロヴィッチ(前GKコーチ)の処遇によりマヌエル・ノイアーとの間に確執が生じた。

ナーゲルスマン解任の理由にはさまざまな憶測が飛んでいる。

バイエルン側は「ピッチ上の問題に伴う成績不振、ロッカールームの不和」を記者会見で挙げ、サリハミジッチは「うまく噛みあわなかった」という表現を何度も用いていた。

しかし、ナーゲルスマンを招聘した2021年7月1日、バイエルンは「長期的な人選に基づく人選」と公式発表した記憶がある。伝統や格式を踏まえると、33歳(当時)の青年将校が率いるには荷が重いことを知りながらの抜擢だ。

本稿執筆時点でブンデスリーガは首位ドルトムントに1ポイント差の2位。チャンピオンズリーグとDFBポカールはベスト8進出。三冠の可能性を残しているのだから、ナーゲルスマンは及第点だろう。

CEOのオリヴァー・カーンは少数の腹心と外部のコンサルタントしか信用しないとの噂がもっぱらで、サリハミジッチは移籍市場で目に見える成果が出ていない。バイエルンが抱える問題は上層部の姿勢ではないだろうか。ナーゲルマン解雇は責任転嫁にも映る。

ちなみに新監督は、極めて好戦的なトーマス・トゥヘルだ。

さて、突然の解任となったナーゲルスマンとは対照的に、アントニオ・コンテが大方の予想どおりトッテナムを去った。

「ボスがイラつく気持ちも分からなくはないが……」

ピエール・ホイビュアがほんの少しだけ寄り添い、ソン・フンミンは「監督が辞めたのはわたしの責任」と唇をかんだものの、「自分勝手な選手ばかりだ」「ファイティング・スピリットとプロ意識を著しく欠いている」「野心が微塵の欠片も感じられない」と、トッテナムを全否定したコンテを惜しむ声は聞こえてこない。

ユベントスとミラン、インテル、そしてチェルシーに多くのタイトルもたらした名将もノースロンドンでは無冠。任期はわずか1年5か月に終わった。

それにしても、なぜ記者会見でありとあらゆる感情をたたきつけたのだろうか。

「胆のう摘出手術後の体調が思わしくないため、一日でも早く故郷イタリアに戻ろうとしている」

イタリアとイングランドのメディアは同じ見方をしていた。それならばトッテナムのダニエル・レヴィー会長と話し合い、「健康上の理由で退任」という落としどころがあったはずだ。感情的なしこりを残すだけの別離は合点がいかない。

マンネリ化したトレーニング、事前にスケジュールを決めないこと、敗戦や不振の責任転嫁など、コンテは求心力を完全に失っていたという。

ただ、ハリー・ケイン、ウーゴ・ロリス、ロドリゴ・ベンタンクール、そしてホイビュアを除く多くの選手が、自分勝手だったり、ファイティング・スピリットとプロ意識を著しく欠いていたりするのはたしかだ。コンテの指摘は的を射ている。

要するに、このクラブはいつまで経っても “スパーズィー”(イングランド・フットボールの造語で「だらしながない」を指す)なのだ。

2001年1月にトッテナムを買収した後、レヴィーはすでに11人の監督を解雇した。補強の成功例も多くない。コンテの態度が好ましくないとはいえ、会長みずからが野心を明確にする必要性もある。

タイトルより収益の安定、向上に重きを置きすぎた現状では、プレミアリーグを、ヨーロッパを制してやるといった野心が微塵の欠片もないのなら、いますぐクラブを手放した方がいい。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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