いまのところベーリーはポッター体制を支持しているが・・・

グレアム・ポッター監督

とにかく足もとを見つめなおすことだ。

当コラムや試合の解説、情報番組などで何度も指摘したように、チェルシーは人が多すぎる。本稿執筆時点でトップチームは30人。「巨大組織は機能しない」とつねづね語ってきたグレアム・ポッター監督の考え方にはほど遠い。オーナーのトッド・ベーリーは、指揮官の神経を逆なでするかのような補強を繰り返している。

30人近く選手を抱えていると、全員が満足するのは不可能であり、キテレツな補強でチェルシー・サポーターですら反感を抱くベーリーも、人員整理を迫られる。ローン移籍中のロメル・ルカク、カラム・ハドソン＝オドイ、ティエム・バカヨコなども含め、この夏には10人前後がクラブを去る公算が大きくなってきた。

いま、ポッターが信頼を寄せているのはチアゴ・シウバ、ブノワ・バディアシル、リース・ジェイムズ、ベン・チルウェル、ウェズレイ・フォファナ、マルク・ククレジャ、コナー・ギャラガー、エンソ・フェルナンデス……。今週末のアストンヴィラ戦で復帰予定のエンゴロ・カンテも欠かせない。九分九厘、彼らは残留する。

その一方でケパ・アリサバラガ、エドゥアール・メンディ、セサル・アスピリクエタ、ピエール＝エメリク・オーバメヤン、クリスティアン・ブリシッチは退団必至との報道が多く、マテオ・コヴァチッチには、バイエルン・ミュンヘンの影がちらつきはじめている。新監督に就任したトーマス・トゥヘルは、チェルシーを指揮していた当時からクロアチア代表MFを高く評価していた。

また、移籍早々にフィットしたジョアン・フェリックスは6月末までのローンであるため一旦はアトレティコ・マドリーに戻り、8歳からチェルシーでプレーするメイソン・マウントの去就も怪しくなってきた。次代のキャプテン、新時代のアイコンと期待されながら、ベーリーの拙速なチーム創りに怒り心頭。契約延長交渉を頑なに拒否している。

この動きを察知したマンチェスターを本拠とする2チーム、中盤の刷新を目論むリヴァプールが早々と接触との噂も聞こえはじめた。

さらに、ポッター体制の継続が濃厚になった事実を踏まえると、攻守の切り替えに難のあるルカクとハドソン＝オドイ、バカヨコが呼び戻されるとは思えず、ラヒム・スターリングも同じタイプだ。

さて、ここからが移籍市場を読み解く難しさであり、楽しさだ。今シーズンいっぱいはポッターが監督を務め、ベーリーも長期政権を約束しているが、プレミアリーグの残り11試合で勝点が稼げなかったり、チャンピオンズリーグ準々決勝でレアル・マドリーに惨敗したりすると、オーナーの気分はおそらく変わる。

なぜなら、在野には有能な監督経験者が何人もいるからだ。マウリシオ・ポチェッティーノ、ユリアン・ナーゲルスマン、そしてシティのジョゼップ・グアルディオラ監督が、「一日も早くヨーロッパのトップリーグにチャレンジすべきだ。成功する確率は非常に高い」と絶賛するマルセロ・ガジャルドなどだ。

監督が代われば選手の嗜好も代わる。現在の主力が構想外になったとしても不思議ではない。

いずれにせよ、ベーリーはポッター、強化担当とミーティングを重ね、組織としての取捨選択を明らかにしなければならない。これまでのような独断専行では上位との差が広がるばかりで、サポーターのストレスはさらにさらに募っていく。

文：粕谷秀樹