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グレアム・ポッター監督
「余計なことしやがって!」
各クラブの強化担当は、怒りの矛先をチェルシーに向けている。
なにしろとにかくバラまいた。夏と冬の移籍市場を合わせると5億1000万ポンド(約816億円)。グレアム・ポッター監督の「多くには関わっていない」という発言でもわかるように、とくに冬の市場はオーナーのトッド・ボーリーが中心となって選手をかき集めている。
豊富な資産を有しているのだから、自由に使えばいい。20代前半の選手にターゲットを絞った強化もうなずけるとはいえ、いくらなんでも払いすぎだ。
高くても4000万ポンド(約64億円)といわれたマルク・ククレジャに5700万ポンド(約91億円)を投入し、ミハイル・ムドリクに6125万ポンド(約98億円)、エンソ・フェルナンデスに1億600万ポンド(約170億円)……。彼ら2選手の場合は、交渉先の要求をすべて飲み込む契約解除金を支払っている。
この動きは7月に再開する市場に大きな影響を及ぼすだろう。「チェルシーはカネを出す」と考えた各クラブは移籍金をつりあげ、市場価格の1.5〜2倍を提示するに違いない。要求額を満たせるクラブは限られ、市場の動きは鈍化する。ステップアップを目論む選手たちにとって、好ましい状況とはいえない。
また、チェルシーは人員整理も急務だ。2月3日の当コラムでも報じたように、センターバックだけで7人も抱えている。センターフォワードと両ウイングも4人ずつ擁するなど、現時点でトップチームは36人もの大所帯だ。
さらにローン移籍中のロメル・ルカク(インテル・ミラノ)、カラム・ハドソン=オドイ(レヴァークーゼン)、バシール・ハンフリーズ(バーダーホルン)などを加えると、40人前後の選手がひしめき合っている。
したがって、夏に新戦力を獲得するにしても、15〜20人を放出しながら、戦力と経済のバランスを整えなくてはならない。「ドルトムントのジュード・ベリンガム、ナポリのヴィクター・オシメーンあたりに惜しげもなく大金を注ぐ」と、いくつかのメディアが報じているが、このまま人員が膨張していけば補強費と選手の給料だけで経営は疲弊する。
今シーズンの乱獲によって、プレミアリーグとUEFAの監視が厳しくなった。支出が収入を著しく超過した場合、ファイナンシャル・フェアプレーの対象になることをボーリーはわかっているのだろうか。
「人が多すぎると組織は機能しない。全選手を満足させるのは不可能だ」
大きくなりすぎたスカッドに、ポッターも危機感を抱いていた。
2月26日のトッテナム戦を除き、2〜3月はトップ6との対戦が一度もない。スケジュールに恵まれたようにも映る。しかし、ここまでのパフォーマンスを踏まえると、右肩上がりは考えづらい。下部組織出身のメイソン・マウントが、今シーズン限りで退団を決意との噂も流れはじめた。
“起爆剤” が欲しい。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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