ライス獲得には少なくとも1億2000万ポンドが必要だ

デクラン・ライス

『SKY BET』のオッズでは、エヴァートンが降格、解任とも2位に位置づけられている。

ボーンマス：1.29倍
エヴァートン：1.73倍
サウサンプトン：1.83倍

デイヴィッド・モイーズ：1.44倍
フランク・ランパード：3.25倍
ジェシー・マーシュ：7倍

1月16日初回放送の『Foot』でも指摘したように、エヴァートンはすべてがチグハグだ。オーナーのファハド・モシリとビル・ケンライト会長は権力争いを繰り返し、補強プランが現場に降りてこない。ランパード監督とディレクターのケヴィン・セルウェルが意見しても、聞く耳を持たないという。

モシリとケンライトが考え方を改めるか、もしくは退かない限り、だれが監督を務めても、敏腕ディレクターを招聘してもエヴァートンは沈んだままだ。

ジョーダン・ピックフォード、ドミニク・カルヴァート＝ルーイン、アンソニー・ゴードン、アレックス・イウォビといったすぐれた選手たちは、プレミアリーグに残留しても今シーズン限りで退団する、といった噂もチラホラ聞こえてきた。

さて、ウェストハムはどうしたものか。1月14日現在、降格ゾーンの18位。総得点15はエヴァートン、ノッティンガム・フォレストと並んでワースト2。期待のジャンルカ・スカマッカは3ゴールしか決められず、モイーズとサポーターの期待を大きく裏切っている。

リーグ6位タイの25失点を記録する守備陣はまずまずだが、長年の勤続疲労なのか、クレイグ・ドーソンとアーロン・クレスウェルには昨シーズンまでの凄みがない。こうした事実をふまえ、『SKY BET』はモイーズの解任オッズを1.44倍。極めて現実的な数字にしたのだろう。

さらに、デクラン・ライスを引き留めることも不可能に近くなった。かねてからステップアップを希望し、契約更新交渉を4回も拒否している。ウェストハムに未練はない。この夏は100パーセント移籍する。

すでにアーセナルが興味を示し、移籍金7000万ポンド（約112億円）を近日中に提示するという。ウェストハムの希望額は少なくとも1億2000万ポンド（約160億円）だ。

もちろん、メガクラブはこぞってライスにアタックする。ただ、チェルシーはトッド・ボーリー（オーナー）体制下のおよそ8か月で、4億6800万ポンド（約748億8000万円）もの巨額を投下している。さらなる強化費を注げるとは思えない。

リヴァプールはジュード・ベリンガム（ドルトムント）獲得が最優先事項で、少なくとも1億5000万ポンド（約240億円）が必要だ。

したがってプレミアリーグ内で移籍するのなら、マンチェスターを本拠とする2チームに、アーセナルを加えた三つ巴が予想される。

そして獲得の条件は、「チャンピオンズリーグでプレーしたい」と公言するライスの希望をかなえ、なおかつウェストハムが要求する1億2000万ポンドを素早く提示できるか──。

アーセナルはシャフタール・ドネツクが求めていた1億ポンド（約160億円）を出せずに、ミハイロ・ムドリクをチェルシーに奪われた。同じ過ちを繰り返してはならない。

ユナイテッド上層部は、いつでも・いつでも動きが鈍い。

シティは市場の流れを読む術に長けている。イルカイ・ギュンドアンとベルナルド・シウバの去就も微妙だ。ケヴィン・デブライネも32歳になった。

まもなく訪れる新旧交代に備える意味でも、ライスはうってつけのタレントである。

文：粕谷秀樹