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サッカー フットサル コラム 2022年12月13日

スペイン代表の敗退とモロッコ代表の快進撃

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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モロッコ代表 アシュラフ・ハキミ(左)とエン=ネシリ(右)

モロッコ代表、レアル・マドリーの下部組織育ちのアシュラフ・ハキミ(左)とセビージャ所属のエン=ネシリ(右)

スペインではW杯の敗戦処理と歓喜が続いている。

敗退後直ちに代表監督ルイス・エンリケが解任された。1000本以上のパスを繋ぎ枠内シュート1本、というのが4年前のロシア大会とまったく同じという進歩の無さが決め手となった。後任はU-21監督だったルイス・デ・ラ・フエンテ。前監督と違ってクラブ監督の経験はほとんどない。ルイス・エンリケのクラブ式の強化法が通用しなかったので、対照的なプロフィールを選んだ、ということか。

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だが、肝心のショートパスを繋ぐサッカーの次、が見えない。パスサッカーは維持しつつ、マンチェスター・シティがやっているように攻守の切り替えを速くしてみたが、駄目だった。改革が必要なのだが、何をやるべきかがわからない。

どんなサッカーをやっても結局はタレントなのだろうか? 単独で試合を決められるエムバペ、ネイマール、メッシ並みの攻撃タレントの出現を待つしかないような気がしてきた。

スペインの先行きは極めて暗い。4年前よりも時間が経った分、はるかに暗い。

一方、歓喜もまだ続いている。モロッコのお陰である。

スペインには87万人のモロッコ人が住んでいる。私のアパートの上にもモロッコ人家族が住んでいて、スペインを破った時には普段は静かなその部屋から叫び声が聞こえてきた。モロッコの放送局とスペインの局の間にはタイムラグがあったようで、決定的なPKが蹴られる前の雄叫びで、結果がわかってしまった。

私の住んでいるのは裕福な地域ではないので、たくさんの外国人移民が住んでいる。ベルギーでの暴動のニュースが入っていたので用心していたが、何もなかった。スペイン戦後もポルトガル戦後も平和に祝っているだけで、パリやブリュッセルなどのような騒動はマドリッドやバルセロナでも皆無だった。

これはうれしいサプライズだった。

スペインはアフリカに2つの飛び地を持っている。モロッコの領地を占領したメリージャとセウタで、アフリカからの不法移民をめぐるトラブルが日常茶飯事になっている。日常に目を向ければ、モロッコ人たちはスペイン人よりも劣悪な労働環境と住環境を余儀なくされている。

溜まった恨みが、スペインへの勝利で爆発するもの、と思っていた。政治家も警察もメディアもそう思い込んでいたのは、後ろめたさのせいでもあっただろう。

「父と母のどちらが好きか、と問われるようなもの」とあるモロッコ人ファンが言っていた。生まれ故郷のモロッコと育った国のスペインを選べと言われても困る、と。特に、移民の子として生まれた2世たちはスペイン人という意識の方が強いらしい。

代表の主力アシュラフ・ハキミはマドリッド生まれでレアル・マドリーの下部組織育ち。招集漏れしたムニル・エル・ハダディはマドリッド生まれでバルセロナの下部組織育ちで、スペイン代表でもプレー経験がある。彼らには恩はあっても恨みはないに違いない。

偏見や差別はある。国境問題も不法移民問題も間違いなく存在する。だが、スペイン人とモロッコ人の共生が想像以上にうまくいっているお陰で、モロッコの快進撃を手放しで応援できている。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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