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サッカー フットサル コラム 2022年11月9日

チェルシーは人を大切にすべきだ。最悪の人事だけは避けたい

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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スターリング

アーセナル戦で精彩を欠いたラヒム・スターリング

まさに “おとなの対応” である。

「チェルシーで過ごした日は有意義だった。思っていたよりも早く終わってしまったけれど、これも契約の一環と割りきるしかない。わたしではどうすることもできない、とでもいえばいいかな」

「マンチェスター・シティとのチャンピオンズリーグ決勝(2020-21シーズン)では、信じられないようなレヴェルの試合で優勝できた。ほかにも満足できる闘いがいくつもある。しばらくは現場から離れるよ。いまは休養が必要なんだ」

チェルシーのトマス・トゥヘル前監督が、穏やかに語ったという。9月7日の解任は青天の霹靂だったに違いないが、恨み・つらみは発しなかったようだ。

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さて、トゥヘルの後を受けたグレアム・ポッター監督は、公式戦7勝3分2敗。一見、申し分ない内容にも映るものの、プレミアリーグ14節のブライトン戦で1-4の惨敗。続くアーセナル戦はプレー強度に大差をつけられ、0-1の敗北を喫している

「選手たちはよくやっている。この敗北の責任はすべてわたしにある。勝利も敗北もプロセスの一部なんだ。試合を通して痛み、苦しみ、喜びを覚え、さらに上のレヴェルをめざしていく」

ブライトン戦終了後、ポッターは敗北を潔く認め、動きの悪かった選手たちを批判しなかった。公の場で選手を罵倒する監督の求心力が低下することを、47歳の指揮官はすでに悟っている。彼もまた、おとなの対応を心得ていた。

「3シーズンにわたってほぼ同じ陣容でプレーしているアーセナルは、完成度が非常に高い。プロセスが始まったばかりのわれわれとは根本的に違う。しかもケガ人が多すぎる」

アーセナル戦終了後も、ポッターは選手たちを責めなかった。ラヒム・スターリングとピエール=エメリク・オーバメヤンが、絶望的なほど精彩を欠いていたにもかかわらず、だ。

たしかにケガ人が多すぎる。エンゴロ・カンテ、ケパ・アリサバラガ、ベン・チルウェル、アーニー・チュクエメカ、ウェズレイ・フォファナ、リース・ジェイムズは復帰の時期が明らかではなく、マテオ・コヴァチッチは膝と足首に慢性の痛みを抱えている。

したがってローテーションができず、消化試合だったチャンピオンズリーグ6節のディナモ・ザグレブ戦にも、メイソン・マウントを起用せざるをえなかった。

こうした状況を、オーナーのトッド・ボーリーは理解しているだろうか。現地時間11月9日はマンチェスター・シティとのリーグカップ、12日のプレミアリーグは好調ニューカッスルとのアウェーゲームだ。3~4連敗も考えられる。

6年前の同時期には、1勝1分3敗でジョゼ・モウリーニョのクビが飛んだ。当時のオーナーは、辛抱できないロマン・アブラモヴィッチである。

中長期的な展望に基づき、ボーリーはポッターを招聘したはずだ。現状が思わしくないとはいえ、すべての責任を新監督に押しつけるのは早計であり、アンフェアだ。シーズン途中の就任は難しく、だれもが “いい人” と認めるポッターでも、100%の信頼を得るまでには至っていない。

わずか二か月程度で最悪の人事に至った場合、チェルシーとボーリーには天罰が下る。

人を大切に──。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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