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サッカー フットサル コラム 2022年10月11日

猪木さんは窮屈な常識が当てはまらない凄い人だった

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ハルク・ホーガンと握手をかわす猪木さん

ハルク・ホーガンと握手をかわす猪木さん

10月1日、アントニオ猪木さんが天に召された。

猪木さんとの時代は筆者がプロレス雑誌の記者だった当時の三年にも満たなかったが、なかなかに濃密で、スリリングだった。

初めての出会いは1982年1月8日、後楽園ホールの男子トイレである。用をたしていると、突然、猪木さんが入ってきた。レスラーとメディアが使用するトイレが分かれているわけでもないのだから当然だけれど、小便器の前に立つ筆者の隣に猪木さん。出るものも出なくなる。

数分後なのか、数十分後だったのか、控室に改めて挨拶に向かう。

「はじめまして、粕谷と申します」

頭を下げ、名刺を手渡す(だったと記憶している)。

「さっき、トイレであった人だろ。よろしくね」

気難しいと聞いてきた猪木さんは、そこそこ機嫌がよかったみたいだ。この日は藤波辰巳(現・辰爾)と初代タイガーマスクを従え、アブドーラ・ザ・ブッチャー、ダイナマイトキッド、ベビーフェイス組を迎え撃っている。

稀代のスーパースターは、基本的に近寄りがたい。ただ、リング上の話題ではなく、コンディションを維持する方法、たとえば食事や睡眠時間に関して質問すると、「興味深いテーマだよね。勉強しているんだな」と笑ってくれた。マジですごく嬉しかった。

さて、猪木さんはモハメド・アリさんとの異種格闘技戦、IWGP構想、北朝鮮でのビッグマッチなど、常人では考えられないアイデアで世間を驚かせた。

猪木さんがアリさんと闘ったからこそ、異種格闘技戦は現在でも人気を博している。IWGPは猪木さんが世界統一にこだわった結果であり、いまやプロレス界で超メジャーなタイトルだ。

そして日本と国交がない北朝鮮で試合? しかもメインイヴェントはリック・フレアーとのシングルマッチ? いやはや、凄い行動力だ。

さらにフィデル・カストロ(キューバ共産党初代中央委員会第一書記)との親交や、イラクで人質になった日本人の解放に尽力するなど、政治家だった当時は独自の外交ルートを発掘し、世界中をあっといわせている。

いやいや、プロレスラーが政治家になる発想が常人ではありえないのだから、本当に窮屈な常識が当てはまらないお人だ。いわゆる「猪木の常識は非常識」である。

また、スタン・ハンセンやハルク・ホーガンなど、プロレス界ではイマイチ認められていなかったファイターのポテンシャルにも火をつけた。

得意技のウェスタンラリアットで相手の首の骨を折ったハンセンは、攻撃的すぎるスタイルが嫌われていた。しかし、猪木さんはすべての技を受けてみせた。

「ミスター・イノキと出会っていなければ、プロレスラーとして成功しなかった。恩人のひとりだ」

ハンセンはいまでも感謝を惜しまない。

不器用すぎたハルク・ホーガンとの一戦でも、力任せの投げ、打撃を必殺技に見せる受けの美学で凄みを漂わせた。

「ミスター・イノキこそがイチバンのプロレスラー。安からにお眠りください、マイ・ブラザー」

ホーガンも哀悼の意を表している。

世界中に惜しまれながら、猪木さんは旅立っていった。いまごろ、空の向こうでジャイアント馬場さんと酒を酌みかわしているのかな。それともBI砲を再結成し、ジャンボ鶴田さん、三沢光晴さんのコンビをかわいがっているのかな。レフェリーは山本小鉄さんで、解説はマサ斎藤さん。

合掌。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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