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サッカー フットサル コラム 2022年6月17日

ピッチに戻れなかった選手たちの悲劇を繰り返してはならない

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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カタールW杯の舞台「ルサイルスタジアム」

カタールW杯の舞台「ルサイルスタジアム」


本来なら、いまごろワールドカップが開幕している。監督、コーチ、スタッフ、選手はもちろん、われわれメディアもシーズンの余韻に触れることすら許されず、クラブから代表への仕切り直しを迫られてきた。

普段はフットボールに興味を示さない出版社から原稿の依頼があったり、バラエティ番組のスタッフからインタビューされたり、しかも「スキャンダル、ないすか」と超くっだらねえ質問。オフシーズンにもかかわらずそこそこ忙しい。

しかし、ことしの夏は静かだ。

通常の大会と異なり、カタール・ワールドカップは11月21日に開幕する。平均の最高気温が41度に達する6~7月は、選手たちの健康を損なうリスクが非常に大きい。だから冬に開催。なるほど一理あるって、騙されてなるものか。11月の平均も25度だ。フットボールに適した環境ではない。

組織委員会は『Advanced Cooling Tech』なる技術で気温を調節するというが、どの程度の効果があるのか見当もつかない。

「11月のカタールは過ごしやすい」

貴賓席とピッチを一緒にするとは!? FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は相変わらずトンチンカンだった。

そしてなにより、休みなく働いている選手たちの体調が気にかかる。

20-21シーズン終了後、ヨーロッパ選手権とコパ・アメリカが開催された。わずかな休養の後に21-22シーズン突入。各地区のワールドカップ予選が佳境を迎え、今年6月のヨーロッパではネーションズリーグが再開した。

アフリカ選手権に参戦したサディオ・マネとモハメド・サラーは21-22シーズンの試合消化数が73にも及んだ。いつ壊れても不思議ではない。

しかも、23-24シーズンからチャンピオンズリーグのフォーマットが代わる。

決勝進出までの道のりは、従来の13試合から17試合。リヴァプールのようにCLとFAカップ、リーグカップでもファイナリストになると、プレミアリーグを含めて年間67試合のハードスケジュールだ。

ここに代表戦、ビジネス最優先のフレンドリーマッチが加わった場合、年間80試合を消化する選手も出てくる。

かつて、チェルシーのチームドクターを務めていたエヴァ・カルネイロも、狂気の日程による体調不良を危惧していた。

「ハイレベルのプレー、72時間ごとの試合、さらに日々の練習も選手たちの肉体に負担をかけます。プライベートジェットで移動したとしても、旅は睡眠のリズムに少なからぬ影響を及ぼします。日程の都合で早朝に戻ってくるようなケースは疲れが一気に出て、免疫力が低下する傾向があるのです」

「疲労を引きずったままプレーすると、なんらかの感染症を患ったり、大けがをしたり、リスクが付きまといます」

現地時間6月16日、プレミアリーグが22-23シーズンの日程を発表した。8月第一週の開幕から、ワールドカップのために中断する11月12日まで、基本的には週1試合のペースが続く。

しかし、CLやヨーロッパリーグ、カンファレンスリーグが9月に2試合、10月に3試合、11月に2試合、ネーションズリーグも9月に2試合が予定されている。この日程が緩和されるも見込みは、いまのところ……いや、この先も絶対にない。

したがって、ワールドカップに出場するような選手は週2試合をこなし、ほぼ無休でカタールに向かわざるをえない。

試合中に倒れ、二度とピッチに戻れなかった選手たちの悲劇を繰り返すことなかれ。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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