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サッカー フットサル コラム 2022年3月16日

一朝一夕にして、すなわち財力だけで強くなれるはずがない

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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レアル・マドリー戦でゴールを決めたキリアン・エムバペ

レアル・マドリー戦でゴールを決めたキリアン・エムバペ

キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)とレアル・マドリーの交渉が、大詰めを迎えた。現地時間の3月18日までには決着、ともいわれている。

ドルトムントのアーリング・ハーランドが、マンチェスター・シティへの移籍を決心したという。タブロイド紙『Daily Mail』の記者でありながら、シティ関連の情報では信ぴょう性もスピードも群を抜いているジャック・ゴーガンが3月11日に報じ、有力紙『Times』も「1億ポンド(約155億円)で合意」と13日に伝えた。

さて、今夏の移籍市場で最も注目すべきはパリSGである。冒頭に挙げたエムバペだけではなく、トラブルが絶えないネイマールの放出も検討しているとの噂が聞こえてきた。チャンピオンズリーグ・ラウンド16のマドリー戦で屈辱的な逆転負けを喫したため、マウリシオ・ポチェッティーノ監督は今シーズン終了を待たずして解雇されるかもしれない。

さらにリオネル・メッシ(バルセロナ復帰?)、セルヒオ・ラモス(MLSへ?)、アンヘル・ディ・マリア(ベンフィカが興味津々?)といった30代の選手を手放し、チームを根底から創り変えるプランが浮上した。

また、ナセル・アル・ケラフィ会長とスポーツディレクターのレオナルドも、今シーズン限りで契約を打ち切られる公算が大きくなりつつある。

悪くない選択だ。

強豪、名門と呼ばれるクラブの多くは、歴史と伝統に培ったDNAが脈々と受け継がれていく。前述したマドリー戦でも、パリSGは嫌というほど思い知らされた。

ルカ・モドリッチが、カリム・ベンゼマが、トニ・クロースが勝利のためにからだを張る。歴戦の勇士が身を粉にしているのだから、ヴィニシウスやエデル・ミリトン、エドゥアルド・カマヴィンガなどの若手が刺激されないはずがない。

そして選手たちの奮闘を、サンチャゴ・ベルナベウが後押しする。マドリディスタの異様なテンションにより、パリSGは平常心を失った。彼らの本拠パルク・デ・プランスが、こうしたムードを醸し出したケースがあっただろうか。ベテラン勢もクラブに対するLOVEが感じられない。

2011年5月に『カタール・スポーツ・インベストメント』が買収した後、その財力によって急速に力をつけているとはいえ、これといった実績はない。クラブ創立も1970年と若く、130年目を迎えたリヴァプール、120年目のマドリーに比べると、所詮は新参者だ。

昨シーズンは準決勝2試合ともに退場者を出してシティに屈した。18-19シーズンはアウェーのラウンド16第一戦を2-0で先勝しながら、ホームの第二戦は1-3。弱体化する一方のマンチェスター・ユナイテッドに、アウェーゴールの差で敗れた。今シーズンのマドリー戦も含め、ビッグファイトでは非常に脆い。

直近9シーズンのリーグ1では7回の優勝。財力の違いを見せつけている。だが、CLは一昨シーズンの準優勝が最高到達点で、16-17シーズンから3年連続でラウンド16の壁を突破できなかった。

一朝一夕にして、すなわち財力だけで強くなれるはずがない。偉大なる先達が血と汗を流したからこそ、名門のいまがある。パリSGは、まだまだ浅い。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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